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そして俺は今日も戦場に立つ  作者: ののくん
ダークイービル基地「ジェノサイド」壊滅作戦編
12/28

牢獄

「質問したい。あの岩の壁はなんだ」

 帰還した俺は、真っ先にクロス・S・ラフレに聞いた。当然だ、作戦の邪魔になる人物の戦力は隅々まで知る必要がある。

「いいだろう。答えてやる。あれは『グランドコントロールブレード』お前のリボルバー同様、コントロールウェポンだ」

「なぜそれが外部に漏れている、そんな兵器ここでしか作れないんじゃないのか」

「ええそうよ、あれが敵の手に渡っていたとは。私も知らなかったわ」

 使えない。なぜそんな兵器を管理できない。

 呪いがなければ一発殴ってる。

「情報がほしい。あの武器はなんだ」

「あれは大地の力。岩石化人類(グランドグマ)の協力で作り上げた兵器。地面にその剣を突き刺せば、そこを中心に約半径一キロの範囲の大地を操ることができる。だが、その兵器は膨大すぎる精神力と魔力を使うことが必要になる。どんな人類でも使うことはできない。だから我々はそれを完全に撤去した」

 グランドグマ、2000年前の全人類突然変異現象によって体を岩石に変えられ、その8割が意思を持たず知性すら持たない。だが、ここ数百年で意思を持ったものも現れたという。

 大地の声を聞くことができ、どこからでも戦況を見渡せる。だが彼らは戦争を好まない。

 おそらくクロス・N・グリッドと手を組んだのは自分たちで平和の国を作るためだろう。

 だとしてもあの計画に賛同しているゲス野郎だ。

「それより貴様、さっきから無礼だ。立場を考えろ」

「グッ!」

 体が重くなった。跪けということか。

 呪いの影響で俺は自分の意思を相手に伝えることができなくなってしまった。ちょっとした命令でもすぐ呪いが発動する。不便だ。

「まあいい、どの道君の兵器なら勝てる」

「その根拠は?」

「言っただろ、あの兵器は魔力と精神力を相当使う。持久戦に持ち込めばお前が有利になる。持久戦ならその兵器の得意分野だからなあ」

 そういって彼女は去った。

 狭い牢屋生活が続き3週間はたったか。相変わらず窮屈なのは変わらない。

「そうだ、父上から渡し物がさらにある。二丁目のリボルバーとこの牢屋の鍵だ。それと命令」

「命令?」

「ああ、命令だ、私の奴隷となれ」

 なるほど、駒はある程度進めば昇格(プロモーション)できるが、奴隷は別。駒より権利がない。もう俺は逃げられない。だから牢屋から俺を出したのか。

 牢屋に出たのに自由になった気がしない。

 自由になったら行くところなんて一つしかない。あの研究室だけだ。

(面倒な命令ばかりしやがって)

 いつもどうり知り合いは避け、いつもどうり階段を降り。いつもどうり、研究室を開けた。

 見たらエリカが着替えていた。

「あ、」

 裸体を見たらすぐに後ろに振り返る。0.5秒でできることだ。

「みっ、みた!?」

「数秒で見れると思うか。安心しろ何も見てない」

 まったく。早くP38のところに行きたいのに、女って生き物は。

「俺に女の裸体を見る趣味はない。後ろを向いたままP38のところに行く、道を空けておけ」

「ああ、待って!」

「ん?」

「その...私の後ろ立っててくれる?」

 は?コイツ、ついに頭壊れたか。俺に体を見てほしいと言っているようなものだぞ。

「ほら、あそこ」

 上を見ると監視官が二人、見ていた。

「ああ、なるほど」

 彼女は裏切る可能性がある。どんな状況でも対応できるようにしているのか。

 だとしてもあの目は完全に女の裸体を見て興奮してる馬鹿の目だ。

「分かった。そっちに行く。見ても恨むな」

「やっ!見ないで!」

 無理を言うな。互いに後ろを向いたまま移動するんだ、距離が分からない。

「ん?なんだその背中の傷」

「見ないでって!」

 はあ、こういうときどうするべきか、考えとくべきだったか。対応が難しい。

「もう一度聞くがその傷はなんだ」

 背中には熊にでも引っかかれたような傷があった。

「ああ、これは、お姉ちゃんが。私はクロス家の中でも落ちこぼれで。一回父上の部屋に閉じ込められたことがあって。それで私がそのことを父上に話したら怒られて。お姉ちゃんが怒って『買ってきたムチを使いたいからそこに突っ立ってろ』て言われて」

 あの女、その親も狂ってるがどいつもひでいな。

「私は、ってちゃんとガードしてる!?」

「ああ、してる。まったくめんどくさい。風呂に入るときもこうやって見られてるのか」

「ええ、そうよ!」

 ああ、うるさい。

「ねえ、私、落ちこぼれ、なのかな」

「いや、優秀だからこうまでしてお前を利用しているんだろうが。優秀じゃなきゃとっくに殺してる」

「そうわよね、あっ、もう着替えたからいいわ」

 やっと終わった。さっさとP38のところに行くか。

「待って。もうちょっとここにいて」

「は?ふざけるのもいい加減にしろ。そろそろP38の整備に行きたい」

「うん、分かってる。それでもいてくれますか」

 なぜ敬語。まあいい、どうせ暇だ、いてやるか。

「クソ、分かった。いてやるから。さっさと用件を話せ」

「用件なんてない。そばに、いてほしい」

 意味不明だ。

 だが、少し分かった。彼女は孤独すぎる。俺も前世でいじめられ孤独だったとき誰かにいてほしかったしな。

 俺はそこに10分ほどいて、彼女と少し会話した。

 二人しかいないこの牢獄は何もなく寂しく、そして冷たい。

 だが彼女がいる牢獄はどこか温かく感じた。

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