流星の弾丸
ダークイービルの基地は全部で12の基地があり、帝国軍基地を囲むように配置されている。
しかし計画が漏れることを避けるため、基地の排除はクロス・S・ラフレ、俺、そして知性のある9種族に任せられる。
そして彼らは特殊な魔術兵器が支給される。それが『コントロールウェポン』、さまざまなものを操ることができ、どれも非常に強力、ゆえに膨大な精神力が必要となる。
しかしこのリボルバーは魔力の消費も精神力も必要とされていない。そんなものを裏切る可能性のある人間に渡すわけには行かないとクロス・N・グリッドは絶対に裏切れない俺に渡した。
ヤツは仲間なんて信じていない。裏切る可能性のある駒は誰であろうと力を与えない。
クロス・N・グリッドは悪魔のような人間だ。
だがそんな人間に宣戦布告した人間がいた。ダークイービルのリーダー、『ヘル・レヴェル』。
NでもRでもSでもない人間。彼らは奴隷、もしくは罪人である。
彼の正体は不明、そもそも人間じゃない可能性だってでてきた。終焉の再開の日、俺の故郷に魔術を撃ち込んだのは彼だった。そしてその魔術は明らかに第10位以上の魔法。つまり彼は人間ではない。
そんな彼は俺にとって希望だ。俺はヤツに従うしかない、逆らえない、ヤツの計画を粉砕できるのは、彼だけだ。だが俺はヤツらと戦う。それが命令だから。
「こちら、ドット・N・フリーズ、まもなくジェノサイドに到着。これより任務を開始する」
『了解しましたわ、N風情さん。もう一度言っておくけどこの任務は極秘よ。敵にも味方にも情報が漏れないように徹底しなさい』
「了解」
もうこれ以上ヤツに反発はできない、ダークイービルが勝つことを祈る。
『こちら監視塔、こちら監視塔。帝国軍基地方面から敵らしき戦闘機を発見』
「了解した。敵の数は?」
『それが...1機のみです』
「1機だとなめられたものだな。まあいい、総員!警戒態勢!すぐにB29部隊を出せ!」
「もう気づいたのか。さすがは我々に宣戦布告するテロ組織。こいつは胸が躍るナア」
さあ、楽しませてくれよダークイービル!!
(まずはB29が7機か、7対1、心が折れそうだな)
リボルバーを構え、P38のスピードを上げた。
「敵が来たぞ総員戦闘準備だ!」
『『了解!!』』
「まずは、一人!」
リボルバーの引き金を引くと青い銃弾がまっすぐB29に向かった。まるで流星のように美しく。青く光る弾丸はB29に命中した。当然だ、魔術兵器はこういうものだ。
弾に当たったB29は、魔力の流れができる。真っ黒な機体に青く光る血管が流れ、機体は生き物になった。
「さあ、B29!お前の味方を消し炭にしろ!!」
クロス・S・ラフレの言ったことは以外に本当で、命令したとたんB29は狂ったかのように仲間を討った。
「ほう、すごいなあこの武器。本当に敵の機体を奪える。じゃあ、3対3に持ち込むか」
リボルバーの弾丸は再び流星のように銃口から飛び出し、B29を奪った。
「これで3対3だ。敵を討ち取れ!B29!」
「シャライ!!どうして我々を攻撃する!!」
『違うんです!!B29が勝手に動いてて、僕は、何も...』
「クッ...分かった。すぐにB29から脱出せよ!」
B29から脱出しようと無駄だ。あの機体は俺が操ってる。弾丸の魔力がある限り、お前達を襲い続ける。
「逃げてみろダークイービル!!」
こちらの戦力はB29が2機、P38が1機。向こうはB29が3機。よし、そろそろ基地への攻撃を開始するか。
「P38!ジェノサイドの攻撃を開始せよ!!残りのB29は敵のB29の殲滅だ!各自行動開始!!」
戦闘機に意思は無い。だが生物となったP38は俺の命令に答えたかのように、エンジンを鳴らし基地に急接近した。
「よし!機関砲を撃ちまくれ...!!」
確かに目の前には基地があった。俺は確かに基地に攻撃していた。
なのにそこは岩の壁が立っている。全速力で突っ込んだP38ではこの一瞬にして出来上がった壁を避けることはできない。
「まさか!魔術!?」
回避不能、そう思えた。が、P38は生物、ただ前に進むことしかできない機械とは違う。
「お前!?何を?」
機体はありえないほどのスピードで回転し上昇。あの壁を回避したのである。
よく見ると基地はドーム型の岩で守られていた。
「なんだあれは!?」
あれは間違いなく魔術。だがもしそうだとしたら第5位クラスの魔法だった。基地全体を覆うその岩の壁、絶対に突破は不可能。
「くっ...しぶとい」
『こちら、クロス・S・ラフレすぐ帰還しなさい!その岩の壁、おそらくグランドコントロールよ』
「そのことは後で話してもらう、ドット・N・フリーズすぐに帰還する」
P38を急旋回させ、俺は帰還した。
「B29はもういい、自爆しろ」
B29は、味方同士で衝突、自爆した。
ジェノサイド基地壊滅作戦は失敗に終わった。