ルーネ
世は、中世時代。時代の波に飲まれない屋敷があった。
内装は、北欧のはずなのに、屋敷は東の島国のような平屋建てだった。
外装は、北欧神殿を思わせる。
ギャップが激しかった。
そこに、住んでるのは、我関せずという風に寝転がっている少年と、ゴスロリ調のメイド服を身に纏った少女だった。
少女の方は、雑巾で必死に掃除をしている。泣きながらだ。
「ネル・・・まだ汚い」
「ルーイ様・・・寝てて何もして無いくせに命令しないでください」
少年の名は、ルーイ。少女の名は、ネル。
ネルは、うんざり顔でルーイに言ったが、無視をされた。そして、ルーイはネルに言った。
「主人の命を、まっとうするのが当たり前だろう」
「くっ・・・なんで我が儘主人に・・・」
ルーイは、エクソシストだ。ネルは、ルーイに召喚された、“アクマ”と“テンシ”のハーフだったのだ。
ネルの言葉に、カチンときたのかルーイはネルに、更に酷い命令をしたのでした。
それは、いつもの光景です。
「ん?・・・・仕事みたいだ」
やっと重い腰を上げたルーイ。
ネルは、いつの間にか黒い封筒を持って来た。
ルーイは、ネルが持ってた封筒を奪い、乱雑に開けた。
封筒には、白色の毛筆で『天誅』と書いてあった。
ルーイは、趣味が悪いと思いながら中身を読んだ。
ネルは、封筒の中身が気になる様子で、ルーイの周りをウロウロする。それに苛立ったルーイは、ネルの頭を容赦無く殴った。
ネルは、涙ぐみながら、頭を押さえて座り込んだ。
「・・・・チッ」
読み終えたようで、手紙をポイッと投げ捨てた。
その手紙を、ネルはサッと取った。
「ん〜。なになに・・・・『ローイド橋にアクマ出没』・・・・また?」
ローイド橋というのは、北欧の無名諸国で一番大きいとされる橋だった。
そのローイド橋は、アクマが一番出やすい地区なのだ。
「行くぞネル!」
外は、雪が積もってる。真冬の寒さが身に凍みる。
コートの襟を立てながら外を歩く。
はく息は白く。唯一出てる頬が赤くなる。
「寒くねーのか?」
「私は、平気ですぅ!」
未だにメイド服のネルを見て言ったルーイ。
ネルは、まだ怒ってるのか不貞腐れてる。
「見えてきたな」
暗い闇に浮かぶ橋の街灯。
空しいほどに人の気配は無い。
「・・・・来る」
ネルは言った。シーンと静まり返ってる闇の中に、ネルの低い声が響いた。
そのネルの言葉に、表情を変えて、コートから何かを出した。
それは、雪のような銀色の銃だった。
銃を構えた途端に現れたのは、人だった。
でも、人と違うところがあった。それは、目はクレヨンで塗りつぶされたように真っ黒くて、澄んではいなかった。
口は、裂けたように大きくて、耳も狼のようにフサフサだった。
アクマは、銃を持ったルーイよりもネルに襲いかかった。
「ネル!!」
「っ!!」
なぜか動かないネルに叫ぶルーイ。
ルーイは、今まで出したことのないスピードでネルの元に向かった。
「くはっ!!」
「ルーイ様!!」
アクマの手がネルに当たる直前にルーイは、ネルを庇った。
攻撃を受けたルーイは、吹っ飛ばされて街灯にぶつかった。
息をし辛そうにしてるルーイ。
「・・・・許さない。ルーイ様に手を出すなんて」
聞こえるか聞こえないかの声で言ったネル。
例え、どんなことされても自分の主だ。手を出されて、普通でいられない。
「覚悟なさい!!」
一瞬で、アクマに近付いて、アクマの右足を払った。体制を崩したアクマの顔に、ネルの膝が当たる。
後ろに反り返ったアクマに、白い光りがぶつかった。
白い光りの元を目で追うと、ルーイが肩で息をしていた。
どうやらルーイの銃がアクマを貫いたようだ。
「ルーイ様!!」
怪我を負ったルーイに近付くネル。
しゃがみ込んでルーイの顔を覗き込むと、殴られたネル。
「痛っ!!何するのよ!!」
「アホ!!なんで動かなかったんだ!!」
涙目のルーイが叫んでた。
「心配して・・・くれてたんですか?」
「違う・・・」
「涙目ですよ?」
「痛かっただけだ!!」
フフッと、笑ってルーイを背負ったネル。
一度アクマの方を見たが、灰になり消えたのを確認してから家路に着く。
「・・・ありがとうルーイ様」
「・・・・別に」
凄く幸せで、身体が熱くなったのを感じて笑うと、殴られた。
「何するんですか!!」
「笑うな」
本当に幸せだったんだ。こんな幸せも良いな、と思ったネルだった。
ルーイは、見慣れた町並みを見つめて考えた。どんな奴が現れても守る、と。でも、こんなことを言ったら調子にのるな、とも思った。
ツンデレっぽく無いなぁ。もっと頑張って欲しかった。