暗闇
街道を通れば5日かかる道のりをたった3日で国の首都についた。
城下町であるここは人々で賑わっていた。
僕たちはまず城に向かった。
「城って、でかいよな!俺の村何十個分かな?」
ドバルが言っていた通り、お城は本当にでかかった。
入口には警備の兵隊がいる。
「潜入するんだろ、どうすんの?」
ドバルが若干、お城にテンションをあげながら言った。
僕の案はウジ虫になり済ますこと。
疑われたら、サーティスの名を出せば通れると確信していた。
彼女が外で動いたことはない、きっと誰も知らない。
「…俺が何とかしよう」
僕が言おうとしたとき珍しくラズさんがそう言った。
彼を見ると任せろ、と歩き出した。
「城の中すげ~っ!!」
ドバルがはしゃぐのも無理はない。
中は本当にきれいだった。
ラズさんは堂々と僕たちを連れ、警備員に何かを提示した。
「セリアファクト国の騎士団長、ラズフェルトだ。以前言っていたものを届けに来た」
そういうと警備の者は深々と頭を下げ、扉を開けてくれた。
以前国の騎士団をしていたと言っていたが、まさかセリアファクトだとは思わなかった。
それに今も現役なんて聞いてなかったため驚いてしまった。
「セリアファクトってどんな国?」
ドバルがライルさんに聞いたが彼女も首をかしげた。
セリアファクトは基本的外交をしない。
故にどんな国かはよく知られていない。
「とても穏やかでいい国だ」
ラズさんはほほ笑んだ。
3つの国のうちウジ虫を求めていないのはセリアファクトだけだ。
「…お届け物は?」
僕がラズさんに聞くと、彼はあぁ…と何かを思い出すように空を見たあと、バッグから箱を取りだした。
「以前マーリアの王が国に遊びに来たことがある。その時に食べたお菓子が忘れられないというんで、届けるようにと言われていた」
「それって早くしなきゃならない用事じゃないんですか!?」
と僕が言うと、彼はいいんだと言った。
「国王は面倒だから暇ときやってきてくれと。それよりもお土産を持ってこい、とってもいいものを持ってこい、と言われた」
おーい、どっかの馬鹿にそっくりじゃないですか、国王!
その時ドバルの顔が目に入った。
同じ馬鹿だけどお前じゃない方の馬鹿だ。
「あいつはそういうやつだ。だから大体のことは何をしても許してくれるだろう…興味がないだろうという方が正しいか」
国王をあいつって、ラズさん!!
僕はラズさんに心の中で突っ込みながら国王がいる謁見の間を目指した。
国王は若い男性だった。
お菓子を渡すと喜んで頬張った。
ラズさんがうまく話をしてくれて王が話をきいてくれることになった。
「universal starの者がこちらにくると伺いました」
彼はお菓子を食べながら僕を見た。
ドバルはずっとお菓子を見ていたが、そこはスルーで。
「彼らと手を組まないでいただきたい。私はそれをお願いするためにまいりました」
王は黙ってお菓子のふたを閉めた。
そして足を組むと嫌、といった。
「こちらとしてはありがたいのだ。そんなの聞けるか」
…こいつイライラする。
僕が話を続けようとした時、隣でドバルがこぶしを握りしめて声を上げた。
「お願いです、あいつらはグズルとも手を…」
「お待たせいたしました…マーリア国王」
後ろで扉が開く音がして入ってきたのは白い髪を靡かせた女性。
服は黒く、ひらひらと動いている。
「universal star、社長代理…サーティス」
…間に合わなかった!
彼女は僕を睨みながら歩き、国王の前で膝まづいた。
「お初にお目にかかります」
それからの僕たちはひどい扱いだった。
国王に強制的に城から出され、次に城に入っていいのは騎士団長のラズさんだけといわれ、ご丁寧に警備員に街の外まで追い出された。
それもサーティスがすべて提案したことだ。
彼はすべて頷き、指示に従っていた。
ということはuniversal starの申し出を断るわけがない。
「ジェリオス…」
遅かった。
これでウジ虫の計画はまた一つ進んだということだ。
「ジェリオス」
ドバルがさっきから僕の名前を呼んでいる。
「ジェリオス」
「なんですか!?」
僕はため息をつきながら言った。
ドバルは僕の顔を見ると不機嫌な顔をして、両手で僕のほっぺをつねった。
驚いてドバルを見た。
「馬鹿」
「な…!」
「たこの足が10本っていうくらいに馬鹿!一人で考えるなって!俺は…馬鹿だけど、ラズとか年上なんだから話せばいいだろー。みんなで次を考えればいいじゃん!!」
そこまで言うと、ドバルは僕から手を放した。
「なんで、わかんないのかな…?俺に似て馬鹿だな、ジェリオスは。俺が言いたいのは、もっと俺たちに…」
「邪魔」
ドバルがその声が聞こえるより少し早くに僕の手を引いて下がった。
そこにいたのはサーティスだった。
彼女は一人だった。
「おまえ…!!」
ドバルが敵意をむき出しにした。
ほかのみんなも身構える。
「…R‐9、探した」
彼女は僕を見る。
ドバルがそれを遮るように僕の前に立った。
「そんなの名前じゃない、ここにいるのはジェリオスだ!」
サーティスはドバルを見ることなく、僕を見つめていた。
エリウスさんがサーティスを敵と判断したのか空中から剣を取り出した。
それにも動じない彼女に僕は寒気が止まらなかった。
「連れてく…行こう?」
サーティスは手を差し伸べた。
「ジェリオスは行かない!!ウジ虫なんかのところに行くもんか!」
ドバルは戦いを覚悟したのか剣を抜いた。
そして僕の方を振り向くといつものように笑った。
「俺が守ってやる」
僕は正直サーティスとの戦いを避けたかった。
たぶん僕が大人しくついていけばみんなは無事に済む。
でも、行きたくない!
僕が頷いたのをドバルは見るとサーティスに向かい合った。
それを見た彼女が目を閉じ、背中から大きな斧を取り出した。
「来ないなら…無理やり、連れてく」
僕たちは戦闘に入った。
ドバルがサーティスに斬りかかり、そのあとをエリウスさんが空中より追撃した。
その間に僕とライルさんは彼女から距離をとる。
彼女は無表情のままドバルとエリウスさんの攻撃を斧で楽々受け止めると、それを振り払った。
宙に浮かんだエリウスさんがすぐさま剣を消し、ロングボウを作り出した。
ドバルが大勢を整え直し、走り出す。
その反対からラズさんが剣を構え、行く。
魔力を帯びた矢が彼女をめがけて放たれた。
「…弱い」
一瞬のことだった。
重そうな斧を持って一歩も動かなかったサーティスが消えた。
もといた場所には砂埃が立っていた。
「どこにいった!?」
ドバルが足を止め、叫んだ。
僕も一瞬のことで理解できなかった。
次の瞬間ごすっという鈍い音が聞こえ、彼女が姿を現した。
「エリウス!!」
ラズさんの声にみんなが彼女を見る。
空中にいたはずのエリウスさんは地面にあおむけになっていた。
その頭もとにサーティスはいた。
「違う…施設にいない」
エリウスさんにそういうと彼女は斧を片手で振り上げた。
ラズさんが走った。
ライルさんも詠唱を始める。
大魔法を使うつもりなんだ。
僕は魔法で彼女の手を打った。
するとサーティスは僕の方を睨んだ。
しかしそのタイミングでラズさんがサーティスを斬った。
「ゴミ」
斬れた彼女は霧となって消えると、ラズさんの後ろに実体を持ったサーティスが現れた。
「…くっ!」
ラズさんが振り返ると彼女はその首を掴んだ。
その手は上にあがり、ラズさんの足が浮く。
「化け物か!?」
ドバルが走った。
そしてすぐさま詠唱を止め、髪を結んだライルさんも走る。
「ラズ!!」
もう少しで二人に届くという時にで彼女は足をとめた。
そのまま頭を抱えその場にしゃがみ込む。
「ラインさん…?」
僕は自分に強化魔法をかけ、魔法を詠唱しながら走った。
ドバルが間に合うかどうか…。
ラズさんの手から剣が落ちる。
「さよ、なら」
彼女がそういうとラズさんの首を掴んでいる手にさらに力が込められた。
その時、風が通った。
「あれ?」
彼女の手からラズさんが落ちる。
サーティスはバックステップで距離をとる。
「ラズに…触れないでっ!!」
僕たちは目を疑った。
立ち上がるラズさんの前に立っていたのはエリウスさんだった。
「ドール、じゃない?」
サーティスは首をかしげた。
「あなたの思い通りにはさせない!」
エリウスさんが、しゃべっている?
僕はラインさんの隣にしゃがんだ。
走っていたドバルがやっとたどり着きエリウスさんの隣に立つ。
「エリウス!戻ったのか!?」
「うん、ドバル!ありがとう」
エリウスさんは暖かな笑顔でドバルに頷いた。
そしてラズさんが剣を持ち直したのを見ると真剣な顔をしてサーティスを見た。
「どうしてジェリオスを連れて行こうとするの?」
僕はラインさんの肩を優しく支えながらサーティスを見た。
彼女も僕の視線に気づいたのかこちらを見た。
「…一番、適合率が高いから」
彼女はふっと息を吹いた。
「ジェリオスさん…気を、つけて」
ラインさんが僕の耳元で言った。
その瞬間、僕の目の前にサーティスが立っていた。
いやな汗が流れていくのを僕は感じた。
僕を見下して憎みのこもった顔で…。
「ジェリオスーっ!!」
ドバルの声が聞こえた。
「どうして、あなたなの?」
そしてそのサーティス言葉を最後に僕は意識を失った……。




