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双子星  作者: ユエラ
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想像




街を出てダイチさんに教えてもらった通りに北に進んだ。

買い物は街に着いたときに終わらせていたので、すぐに出ることができた。

僕は草むらの中を歩いていた。

「ジェリー、そろそろおしえてくれよ~!」

ドバルが僕を呼んだ。

下を向いてずっと考えていたため、顔をあげるとみんなとすっかり距離が開いてしまっていた。

僕は走って追いつくと深いため息をついた。

「な、なに?変な呼び方で呼ばないでください!とか言うの?」

ドバルが僕のため息を自分に対してだと思ったらしく、先手を打った。

「違います、馬鹿って言われたかったんですか?」

ドバルは全力で首を横に振った。

「ですよね。ま、馬鹿なんですけど…。それよりも城に向かう理由を教えます、ね」

馬鹿っていうな!!という声を無視し、僕は話を始めた。

売店で聞いた話、僕が施設できいた戦争の話をした。

そして自分自身が思う組織の今後の動きを述べた。

とりあえずサーティスの話はしなかった。

そこまで話すと道は険しくなっていた。

「だから僕は国王に会ってウジ虫と組まないでくださいとお願いしたい。ただマーリア国は奴らを求めています。そう簡単に説得できないと思います。もしかすると、ウジ虫と直接闘うかもしれません…それも今までとは比べ物にならない強い人と」

僕はサーティスを想像しながら言った。

彼女は僕よりも実験はされていなかったが、両親が大魔術師で彼女自身も魔法に長けていた。

しかしサーティスは魔法を嫌っていて、剣に磨きをかけていたらしい。

だから物理も魔法も強い。

そこを気に入られ組織の一員としてすぐに活躍した。

そして非常に冷酷で目が合った敵は死ぬまで追うという。

もし彼女と闘うとして、今のメンバーで挑んで勝てるのか自信がなかった。

僕自身彼女を見たことがあり、若干の情報を持っているというだけなので実力はわからない。

「…強い人って?」

ドバルが息をのんだ。

僕はどう説明しようか悩んだが、はっきり言うことにした。

「…僕のように実験で変えられた強化人間とか」

ドバルたちには実験でどうなるのかを詳しく教えていなかった。

「僕たち被験者に求められたのは空気中、体内、うまくいけば他人の星水を自由に操れる力。星水を自在に操ることができれば魔法も何でも出来ますから。そして戦争の兵器として戦うこと。もちろん人を殺すことをためらってはいけません。施設の課題で実習を行うときは仲間同士で戦いました。勝たなきゃ生き残れない」

ライルさんが深刻な顔をしている。

あの施設のモニターを思い出しているのだろう。

「この先もし戦うことがあれば、被験者は何も思わないで人を殺すと思います。人間が死んでしまうのも殺すことも苦じゃないから…。僕はずっとそれが嫌でした。それをやらせるウジ虫はもっと嫌いです!だから戦争はおこしちゃいけない。阻止しなくてはいけないんです」

ラズさんが僕を見て頷いた。

「俺たちなら大丈夫だ、できる。それにドバルが一番やる気だ」

「おうよ、だって超最低な奴だってーのよくわかったし、手加減なしだ!!敵は強い方がいいっていうじゃん?燃えてきたぞ~!」

ドバルが新しく買った剣の柄を握って笑った。

ライルさんも頷いた。

「ジェリオスさん、もし会ったことある人と闘うことがあって辛かったら言ってください。私が代わりに戦いますので」

僕より小さい子に心配されるなんて…。

「大丈夫です、ちゃんと僕も戦います」

「よし、ラズと特訓だな!」

ドバルがにこっと笑った。

なんだ、僕だけが深刻に考え過ぎているみたいじゃないか。

そうだよね、やってみなきゃ分かんない…。

すこしだけ希望が見えてきた気がした。


しばらく歩いていると森に入った。

足もとが安定していない。

モンスターもちょくちょく見当たる。

大きな木の根元に来た時ライルさんが僕たちの先頭に立った。

その髪がポニーテールだったのでラインさんだとすぐにわかった。

ラインさんは僕たちを手で制し、止まらせた。

「…おまえは?」

雰囲気が変わったことにラズさんは驚いた。

あぁ、そういえばまだラインさんに会ったことがないんだ。

ドバルがラズさんに説明をした。

「なるほど、髪型で見分ければいいのか」

ラズさんが頷くとドバルがえっ?と言った。

「そんな簡単な見分け方があるのか!?」

「馬鹿、今さらですか?逆に今までどうやって見分けてたんですか?」

僕がきくと

「雰囲気!」

と一言。

ラインさんが前を向いたまま笑った。

「馬鹿だ、ドバルは馬鹿だ!馬~鹿っ」

「馬鹿じゃないって!!」

するとそれまであとをついてきたエリウスさんもラインさんの隣に並んだ。

「お、エリウスだっけ?あなたもわかるの?」

急に真面目な表情をしてラインさんがある一点をエリウスさんとともにみる。

「何かいるんですか?」

僕はラインさんに聞いた。

僕やドバル、ラズさんには何も感じない。

何かいるのか?

「…あの木の上に天狗がいる」

ラインさんがそういった。

天狗というのは自然の中に住んでいる仙人のような存在だ。

特徴は赤い顔に長い鼻だ。

風を自由自在に操れるという。

そして人間には滅多に姿を現さないと聞く。

「天狗がどうしてこんなところに?」

自然がなくては生きられない天狗には機械国家マーリアよりもグズルの方が住みやすいはずだ。

その時木が揺れたかと思うと目の前に鼻の長いお面をつけた人が現れた。

「我は人間。おまえは人間か?」

声から察するに女性であろう人は自分のことを人間といった。

天狗は人間ではない。

ということは彼女は天狗と人間の間をつなぐ係りということか。

だからお面なんだ。

ラインさんは僕たちを制していた手を下した。

「あたしは…半分、かな?」

少しだけ悩んだ声を出し、そう答えた。

ラインさんはお化けだから天狗の気配がわかったのだろうか?

「どうして天狗がいるの?あたしたち、ここを通りたいんだけど…」

「我々はもともとグズルにいた。それなのに先ほど見知らぬ人間がここに連れてきた。そいつらがお前らを殺したら森に返してくれるといった。我々は無差別に人間を襲わない。だから駄目だ。通せない」

「要するに、天狗は人を殺したくないからここを通らないでっていうのね?もし通るなら…」

全力で戦うことになる。

天狗を連れてきた人間というのはおそらくウジ虫だろう。

奴らに僕たちの行動が読まれている?

ダイチさんにこのことを教えてもらわなければ僕たちは街道を進んでいた。

もしかしてダイチさんが…いや、それはないはずだ。

「どうする?」

ラインさんが僕たちに振り返った。

ドバルもラズさんも僕を見る。

「ジェリオス…」

「…通ります」

僕は一歩前に出てそう言った。

するとあたりの空気が一気に変わった。

空気中の星水が大木の周りを蛇のように渦巻いた。

僕の後ろでそれを感じたドバルが息をのんだ。

「ただ、ひとつ提案があります。ただで通ろうとは思いません」

僕だって馬鹿じゃない。

天狗に勝てる強さはない。

戦わないで通れるならそうしたい。

「なんだ、人間。言ってみよ」

彼女がそういうとあたりの空気が少し和らいだ。

僕は冷汗をぬぐった。

「ありがとうございます。あなた方をここに連れてきた人間は機械を作り自然を破壊しています。僕たちの目的は彼らを倒すこと。僕たちはそのためにここを通らせていただきたいのです。賢い天狗ならば彼らがあなた方にとっても悪い人間だとお分かりになるはずです。ならば従う必要はないはずです。…僕はマーリア国王にお会いした後、グズル国に行こうと思っています。その時にあなた方をグズルに返すと約束しましょう」

そこまで言って僕は深々と礼をした。

これは僕にとって博打だった。

もしウジ虫が僕らを悪人だと天狗に言っていれば、つじつまが合わなくなる。

それにグズルに返すといっても計画的な案が思い浮かばない。

それは皆も心配していることだと思う。

だが、実際彼らは異国の地にきて動けずにいるだけだと思う。

なら場所を丁寧に教えればかえれるはずだ。

それに掛ける!

すると草木がざわめき、彼女が僕の前に立った。

「それは本当か?嘘か?」

そういい一瞬で僕の首にナイフを当てる。

みんなの不安が背中に伝わってきた。

ドバルが僕のところに来ようとしたの感じた。

それを僕が遮った。

「僕は嘘をつきません」

彼女はしばらく僕を見ていた。

お面越しに見える目は僕の心を見ているかのような目だった。

そして後ろの仲間を一瞥すると

「…天狗は人間を殺さない。試しただけだ」

そういって彼女は僕から離れた。

僕も安堵の息を吐いた。

さすがに死ぬかと思った…。

「了承。我々は人間を信じよう。これを人間たちに渡す」

そう言って渡されたのは木で作られた天狗の人形。

「先にグズルに行き、人間たちがグズルに着いたらこれに刃を挿せ。…急いでいるのだろう?我々は場所が分かればよいのだ。気長には待つがあまりにも遅すぎるのならばその時の人形の持ち主をここに連行させてもらう」

かなり信頼してくれていることを僕は悟った。

天狗の気遣いに感謝し、丁寧にお辞儀をした。

「我々はお前のことを信じる」

「必ず約束は守ります」

すると彼女は霧となって消えた。

天狗の気配も消えた。


「は~、心臓バクバクした…」

ラインさんがその場にしゃがむ。

「ラインさんが気付いてくれて助かりました」

僕がラインさんに手を差し伸べるとそれを掴み、彼女は僕を睨んだ。

ラインさんが立ち上がると、手を放した。

「どうしてジェリオスさんはそういう怖いことをす…」

そこまで言ってラインさんは止まった。

すると持っていた天狗の人形を誰かに奪われた。

その方を見るとドバルがいた。

僕から天狗の人形を取ったのはドバルだった。

「これ、俺が持っとく!」

もし天狗の堪忍袋の緒を斬ってしまったら持ち主がここに連れていかれてしまう。

「ドバル、さっきは来てくれてありがとうございました」

「…俺もジェリオスみたいに頭が良かったら良かったのにな」

ドバルは人形を優しくバッグに入れると前を向きなおして先を歩いて行った。


「…ラインさん、少しいいですか?」

みんなより後ろの方で彼女を誘った。

「なぁに?ジェリーがあたしをナンパ?」

ラインさんはいつも通り明るくふるまった。

僕はいいえ、と短く返事をした。

僕には一つ気になったことがあった。

「さっき、僕のことをジェリオスさんって言って自分で驚いてましたよね」

手を貸してあげたとき、ラインさんは僕のことをさん付けで呼んだ。

ラインさんにそう呼ばれたことないし、そう呼ぶのはライルさんだ。

僕は少し違和感を覚えた。

彼女がそのあと止まったのもドバルがいたのを見たからじゃないと思う。

「何かあったんですか?」

ラインさんは下を見た。

「ジェリーは鋭いなぁ」

そういうとバッグからくまちゃんを取り出し、僕に渡した。

「私たち、最近変なの。どっちがどっちかわからないの。…違う、あたしじゃなくてライルが・・ずれてる」

僕にはその意味がわからなかった。

ライルさんの体にお化けになったラインさんが憑依していると僕は解釈していたが、まだ何かありそうだ。

「…どういうことですか?」

彼女は顔を上げた。

髪はポニーテルなのに表情はライルさんに見えた。

「そうだよね、これから足を引っ張りたくもないし。でも…ジェリオス、もう少しだけこのままでいさせて?いつか、ちゃんと話すから。まだライルにはあたしのことを秘密にしててくれる?」

僕は頷いた。

彼女がそういうなら僕は信じよう。

「ありがとう。…ジェリオスはドバルに比べて話しにくい人だと思ってたのにそんなことないんだね。やっと少し馬鹿が移ったってことかな?」

「そんなに僕を馬鹿と一緒にしたいんですか?」

僕は彼女にくまちゃんを差し出した。

ラインさんは笑うとそうかもね、といった後に髪をほどいた。

「えと、ジェリオスさんはドバルとそっくりです」

ライルさんが僕からくまちゃんを受け取ると僕の手を引いて走った。

「置いてきぼりにされちゃいます…!」


夜、事件は起きた。

事の発端は皆様のご想像通りあの馬鹿。

「うぇ~」

あの馬鹿が

「ご飯を当番制にしよう!今日はジェリーな!」

なんていったからこうなった。

「あの、僕…料理苦手なんですけど」

前もって僕は忠告した。

というか、ちゃんとした食事をここ一年で初めて知った僕が料理なんてできるわけがないだろう。

ほら、案の定ドバルが変な顔をしている。

でも無難なサンドウィッチにしたのにどうして?

「…独特な味、ですね?」

ライルさん、無理して食べないで下さいまし。

「でもこれくらいなら食べられる範囲だぞ」

ラズさんフォローなんですか、それ?

「無理に食べなくていいです」

僕が言うとラズさんはもう一個サンドウィッチをとった。

「いいや、エリウスの料理に比べればとてもおいしい」

「エリウスの料理…?」

ドバルがエリウスさんの顔を見る。

次々にラズさんは食べ、それを飲み込むと答える。

「ああ、あいつの料理は…何とも言えない不味さだ」

「逆に気になる…」

「絶対危ない、危険」

ラズさんが苦い顔をしていた。

僕は施設でおいしい料理を食べたことなかったから、それくらいかな、と勝手に想像していた。

でもドバルが当番制にしたんだ。

エリウスさんが戻れば作ることになるだろう。

…ラズさんが止めないのなら。




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