二人
ライルさんのおかげもあり何とか街から抜け出せた。
今は街から離れた森でキャンプをしている。
倒しても、倒してもらちがあかなかったあいつらをドバルは
「やっぱりウジ虫だろ?」
と言い、ライルさんも?マークを頭に出しながら頷いた。
…絶対わかってないよ、ライルさん。
僕は皆に回復用の星水を渡した。
その星水をまじまじとドバルは見た。
「う~ん、ライルも魔法使いってことは星水飲んだんだよな?」
学んだことを確認するようにドバルはライルに聞いた。
「え、はい。私も親から貰って飲みました。魔法使いになれる星水ってポーションより甘いですよね」
「あぁ、確かに少し甘いかもしれません」
ドバルは甘いとかの話よりもポーションという聞きなれない言葉に?をだし、僕に助けを求めた。
…確かに僕は教えなかったけど、それくらい知っててあたりまえだろ、馬鹿。
「本当に馬鹿なんですね、ポーションは回復用の星水のことです。○○の星水っていうの面倒だしややこしいでしょ?ちゃんととそれぞれに名前があるんです。因みにライルさんが言った魔法使いになれる星水はマジェンジというんです」
「ネーミングセンスないな。マジックする人にチェンジ!みたいな?」
ドバルはライルさんを見て笑った。
そしてライルさんは僕の方を見て首をかしげた。
「物知りなんですね…えっと」
ライルさんは僕を見て戸惑った。
あ、そういえば名前いってなかった。
「僕はジェリオスです。自己紹介が遅れてしまいすみません」
僕が頭を下げるとライルさんはいえいえと手を振って頭を下げた。
ドバルよりも年下なのに礼儀正しい。
もしかしたら割といいところのお嬢様とか…?
ライルさんはドバルと僕を交互に見た。
「二人ともそっくりですね~。んと、黒い服の方がドバルさん?」
「おう!俺達双子なんだ。似てるのは見た目だけだけどな~」
ドバルはもう既に名乗っていたらしい。
双子と聞いてライルさんはびっくりして再度僕たちをまじまじと見た。
「どっちがどっちかわかんなくなりそう…。あ、でも前髪の分け目と肌の色がちがいますね!」
ドバルは僕の方を向いた。
ライルさんと二人で僕をじっと見る。
「あいつ色白だよな?」
「うん、真っ白。病気?」
「たぶん違う。病気ならあんなにお口が元気なわけがない!」
とこそこそ。
まったく、黙って聞いていれば…。
「真っ白なのはな、食べないからだ!」
「ご飯食べないんですか?」
「うん、超小食!でな、一番の欠点は弟のくせに俺を馬鹿っていうんだ」
そこまでこそこそしていたライルさんがいきなり大きな声を上げた。
「え、ドバルさんがお兄さんっ!?」
僕は黙って聞いていたのだけど思わずふいてしまった。
ですよね、自分で言うのもあれですがそう思いますよね!
ドバルも僕に負けないくらいに盛大にふいた。
ライルさんは慌てて謝った。
「あわわ、すみません!その、ジェリオスさんがお兄さんかと思ってました」
ドバルはふくれっ面で僕の隣に立って気を付けをした。
「見て、俺の方が背がでかい!…ちょっとだけど」
「身長で兄、弟が決まるわけじゃないと思いますよ?というか、そういう子供っぽいところが幼く見えるんですよ。馬鹿ですね。あ、馬鹿なのはもとからでしたね、すみません」
ドバルは笑いながら僕のほっぺを引っ張った。
「なんだって~?」
ライルさんが不安そうな困った顔でこっちを見ていた。
「二人ともやめてくださいーっ」
「ライル、これは俺たち兄弟の戦いなんだ!」
とド…馬鹿が。
僕は馬鹿の手を払い落し、自分の頬をなでた。
「ドバル、知ってますか?ドバルのドはド馬鹿のド。ドバルのバは馬鹿のバ。ドバルのルは留守番もできない馬鹿のルです」
「って全部馬鹿かよっ!てか留守番できるし!そもそもだれ決めたんだよ!?」
「僕が即興で決めました」
「ジェリオスかよ!」
「僕以外にだれがいるんです?」
「え、確かに…じゃなくて!」
と、どうでもいいやり取りをしていたらライルさんが笑った。
どうやらつぼに入ってしまったようだ。
苦しそうにお腹を抱えて笑っている。
「す、すみません。面白くて…っ」
と言いながら笑ってる。
「俺たち、兄弟漫才できるな」
ドバルが笑顔で僕に言った。
僕は全力で首を横に振った。
「嫌です、馬鹿の相手は疲れます」
そのあともしばらくライルさんは笑っていた。
ライルさんが落ち着いた頃にはもう夕方だった。
ドバルが手際よくご飯の準備を始めた。
何人分作ればいい?という話からドバルはハッとした。
「あ、そういえばライルは家に帰らなくていいのか?」
そういえば家族が心配しているかもしれない。
すると僕たちの心配とは裏腹に少し照れた顔をしながらで首を縦に振った。
「いいんです、あのとき丁度家を追い出された後だったから…。あの、もしお邪魔でないならご飯ご一緒させてください」
僕もドバルも驚いた。
追い出されるようなことをする子じゃないのに…。
「もちろんご飯はOKだけど、何か悪いことしたのか?」
ドバルの質問にライルさんはよくわからないんです、と言った。
「たぶん私が本当の家族じゃないから面倒になったんだと思います」
ドバルはそれを聞いて怒りに満ちた顔をした。
「そんな理由かよ」
「たぶん。あ、でもお世話してくれてたので感謝しています。孤児だった私たちを拾ってくれました、とっても感謝です」
「私たち?」
僕はライルさんのほかにもいたのですか?ときいた。
すると少しさびしそうにしたあと、バッグからくまのぬいぐるみを出すと
「私のお姉ちゃんです。このくまちゃんはお姉ちゃんのなんです。お姉ちゃんは私を自動車っていう魔動機からかばって死んじゃいました。でも、このくまちゃんはおねえちゃんだから悲しくないです、ずっと一緒にいるから」
僕は申し訳ないことを聞いてしまったと謝ろうとしたが、彼女の言葉がとても強く、言っていることが本当なんだと思って謝れなかった。
もしライルさんに謝ったとしても気にしないでくださいと言われてしまいそうだった。
「あ、色々と気にしないでくださいね。…んと、どうして兄弟で旅を?」
ドバルは僕の顔を見た。
まぁ、ライルさんもウジ虫と会ってしまったし。
僕はライルさんにこれまでの成り行きを説明した。
その間にドバルは三人分のご飯を作った。
「ごちそうさまでした」
もう日は落ち、僕たちの旅の成り行きも説明し終えライルさんは焚き火の前で空になった容器を重ねた。
「それにしてもすごいですね、感動の再会の後は一緒に世界を救う旅なんですね!」
なんか大きく意味をとられてしまった。
ま、まぁいいか。
「あの、私もその旅に連れて行って下さい!私、お話を聞いてお役に立ちたいと思ったんです」
ライルさんの急な提案に僕たちはびっくりした。
「お願いします、なんでもしますから。戦うのだって怖くないです。それにいろんな所を見たいんです…」
頭を深々と下げてライルさんは言った。
ドバルはライルさんの頭に手をのせた。
「いいぞ!一緒に行こう♪いいよな、ジェリオス?」
ドバルは笑って僕を見た。
ライルさんも顔をあげ僕を見る。
「ええ、ライルさんは魔法使いとしてとても優秀な方です。僕からお願いしたいくらいです。でも本当に危険ですよ、いいんですか?」
「わ~、ありがとうございます!!大丈夫です、また襲われてもおどおどしませんっ!」
心強い仲間が増えた。
ドバルも喜んでいる。
幼いが彼女はドバルよりも理解力があって、さすが魔法使いだと思っていた。
魔法使いのだいたいは自分で星水をコントロールするための呪文ややり方を本などで勉強し、修行して魔法を習得する。
案外簡単になれるものではない。
これだけ才能があり、天才なら施設側が実験材料にしたくなるのも納得だ。
「そういえば、なんでライルはウジ虫に絡まれてたんだ?」
僕が考えていた時にドバルがライルさんにきいた。
「家から出て、くまちゃんと遊んでいたら声をかけられたんです。一緒に世界の役に立とうって。でも昔お姉ちゃんが変な人についていくんじゃないよ、って言ってたのを思い出して断ったら連れて行かれそうになって…そしたらドバルが助けてくれたんです」
食事中にドバルは俺のことは呼び捨てでいいぞ、とライルさんとさらに仲を深めていた。
「なぁウジ虫ってロリコンの集まりなのか?」
…なぜその単語を知っててポーションとか知らないんですか。
僕はガックリ、というか呆れながら違います、と否定した。
「男の子も多かったです。狙われたのはライルさんが素晴らしい魔法使いだからだと思いますよ」
そういうとライルさんは否定した。
「私なんてまだまだです…」
「俺としたら魔法使えるだけすごいと思うけどなぁ」
ドバルは立ち上がると食器をもった。
「あ、僕が洗ってきます。ドバルはライルさんとゆっくりしていてください」
強引に食器を奪うと近くに水場があったなと思いだし、そこに向かった。
作ってもらったんだしこれくらいやりたい。
ドバルは僕より人を笑わせるのが得意だからライルさんと一緒にいた方がいい。
きっとなんだかんだで家を追い出されたことを気にしているはずだ。
思ったより近くにあった水場に僕はしゃがんだ。
水場は地下水を魔動機でくみ上げている。
だからただで使い放題だ。
近年旅人が増えたおかげでこうした水場ができた。
僕は長袖の服なので濡らさないように袖をまくった。
僕の腕は過去に打たれたたくさんの注射の痕が生々しく残っている。
できれば自分でも見たくないのだがそうも言ってられない。
先日宿に泊まった時、あの馬鹿が
「一緒にお風呂入ろうぜ」
と言った時は本気で焦ってしまった。
もちろん断ったのだが…。
僕は早く終わらせようとスポンジを取った。
こうして一人でいるとドバルたちは大丈夫だろうかとか、何しているんだろうとか考えてしまう。
ドバルと出会ってまだ数日なのにすっかり一緒にいることが当たり前になってしまっていることに気付く。
ドバルは人懐っこいから…誰に育ててもらったんでしょう。
僕は自分の話はたくさんしているのに、ドバルの話をあまり聞いていないことに気づいた。
村から出た後に少し話したときは確か、気づいたらユハンナ村にいたと言っていた。
自炊のやり方や畑仕事などは近所の人が丁寧に教えてくれたらしい。
その時に剣の扱い方も学び、よく肉を取るために小さいころから大人と共に狩りに行っていたらしい。
本当に僕とは逆だ。
僕は一年前に施設から脱走するまで外の世界を知らなかった。
あの暗くて狭い無理やり人が詰め込まれた部屋と廊下と、実験室が僕の世界だった。
僕はすべての食器を洗い終え、ランタンをもって立ち上がった。
もうすっかり夜だ。
早く帰って寝よう。
あ、でも今日は僕が見張りやろうかな。
とりあえず戻ることにした。
戻る途中、人の気配に気づき僕は足を止めた。
暗い森の中なのでよく見えない。
するとその気配は勢いよく近づいてきた。
「だれですか?」
戦闘姿勢に入り振り返る。
すると幼い女の子が森から出てくるのが目に入った。
「お、ウジ虫じゃない!ドバルー、人だぞー」
ウジ虫?
ドバル?
その子をよく見るとライルさんだった。
違うところといえば雰囲気は勿論、髪の毛を頭についていた大きなリボンでポニーテールにしていることだ。
そしてなにより口調が違った。
考えているとライルさんは僕に近づいてきた。
「ジェリオスって言ったっけ?ライルがお世話になってるね」
僕の名前も知っている。
「ライルさんじゃないんですね、あなたは?」
彼女は笑うとくまちゃんをバッグから出して僕に見せつけた。
「あたしはライン。ライルの姉だよ、よろしくね~」
お姉さん?
確か亡くなっているとライルさんは言っていた。
もしかすると生きていた?
そんな疑問に気付いているかのようにくまちゃんをバッグにしまうと僕にしがみついた。
「私はおばけなの♪今はライルの体を借りてお話してるの。君、本当に細いんだね」
彼女は無邪気にそういうと僕から離れた。
お姉さんの霊に憑かれてる…?
でも、話からしてライルさんは気付いてないようだった。
「ライルさんには秘密、ですか?」
僕がそういうとラインさんは驚いた顔をした。
「わー、あたしが今言おうと思ったことも当てちゃうんだ…。ドバルの弟恐るべし!!てね。でもそうしてくれるとありがたいな」
「どうして妹に言わないんですか?それともいえないんですか?」
僕がきくとラインさんはん~、と唸った。
「ライルは昔からあたしに頼りっぱなしだから。少し自分に自信を持ってほしいの。だから言えるけど言わな~い」
すると丁度ドバルがやってきた。
「ライン、走るの速いぞ~。あっ、ジェリーじゃん」
ドバルは僕をジェリーと呼び片手をあげた。
そして近くに来ると食器をしまう袋を出してくれた。
「そのジェリーって呼び方なんですか?」
食器を入れながら僕はドバルにけち付けた。
「ラインと考えた!なかなかいいだろ?」
ラインさんを見るとピースをして笑っていた。
はぁ、まったく…。
「そういえばさ、ウジ虫が襲ってきたから逃げてきたんだ」
ラインさんもウジ虫がどうとかいってたな…。
ということはすぐ近くにいるかもしれない。
「とりあえず動きましょう」
二人は頷いた。
「あ、あのさ」
再度ラインさんは僕たちを見て口を開いた。
「ライルのこと、ありがとう。これからお世話になると思うけどよろしく。あの子情けないから男で守ってやって?もちろんあたしも楽しいからちょくちょくライルに体借りるけどね!」
「もちろん!」
僕はドバルとはもってしまった。
そしてお互いに顔を見合わせた。
それを楽しそうにラインさんは笑った。
「二人ともなんだかんだで似てるよね!」
「ドバルと似てるなんて最悪です」
「はぁ、ひどい奴だな!双子って感じじゃん!!」
「ね~!いいよね」
三人の旅のはずだったが、四人だった。
ラインさんはドバルと気が合うようだ。
とりあえずウジ虫に気をつけながら森を移動しよう。




