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双子星  作者: ユエラ
27/33

結界




僕たちはメリッサさんを見守っていた。

範囲が広いということといつもと星水の流れや濃度が違うということでなかなか結界は完成しなかった。

僕が手伝えればいいんだけどメリッサさんのように上手くできないしそれに糸がばらばらだとできた結界も壊れやすくなってしまう。

僕は一人メリッサさん達から離れて、この泉を一周することにした。

一ヶ所で止まって僕は泉の中を覗いた。

透き通った原水には僕の顔が映っていた。

僕に書かれた魔法陣…か。

ドバルの言葉を思い出しながら僕は原水を見つめていた。

もし僕がここに入ったとしても消えることはない。

もっというと原水が僕の中に取り込まれることもない。

魔法陣は発動しなくては意味がない。

だから僕の胸にある魔法陣も消えないだけで何の意味もない。

「…ウジ虫は何を考えているんだ」

最近のウジ虫はおかしい。

戦争を起こすために各国を回っていたと思っていたら自分たちが自ら攻撃を仕掛けて…世界中から信頼を寄せているのは分かるが国にまで攻めてしまったらさすがにごまかしきれないと思う。

何が目的なんだ?

考えても出ない答えに僕は考えるのをやめた。

…そろそろ皆の所に戻ろう。

そう思って僕は立ち上がった。

星水に映った僕の後ろに見知らぬ人が立っていた。

「…!」

僕が振り返るのと同時にその人は僕のお腹を思いっきり蹴った。

原水に映った僕と僕が重なり、大きな音を立てて原水の中に落ちた。

星水が僕に反応して光を発する。

…上に上がらなきゃ!

僕はまだ痛いお腹を左手で抑えながら上を目指して泳いだ。

そして何とか地面に手をつけて這い上がった。

少し体がひりひりしているが何とか生きていたようだ。

案外僕には原水に触れられる魔法陣も備わっているのかもしれないな。

なんて冷静に考えてる暇はなかった。

僕の前にはその人が立っていた。

「ジェリオス!!」

ドバルの声が聞こえる。

僕はふらふらしながら立ちあがり。その人を見た。

以前会った人のようにフードをかぶって顔を隠している。

「へぇ、流石だね」

その人は声から察するに男の人だろう。

「…何が目的ですか?」

「聞いたって無駄じゃない?どうせここでお前は俺たちに捕まるんだからさ!」

そう言って彼は腰にさしてあった剣を抜き僕に斬りかかった。

僕がそれをかわすと彼はもう一本取り出し、連続して斬り付けてきた。

「どうした?大人しくついてくるつもりになったのか?」

「…っ」

魔法を使おうと思っても隙がない。

ドバルがここに来るまで時間がかかる。

メリッサさんの結界もまだまだ掛かりそうだ。

…さて、どうしたものかな。

僕は自ら原水の中に飛び込んだ。

やっぱり僕に星水が集まってくる。

僕は水中から奴を見て、そこに向かって魔法を放った。

物凄い威力で放たれたそれは原水を揺らして水面に向かって飛んで行った。

しかしそれは彼の剣によって弾き返され、洞窟の壁に当たって消えた。

初めてだから仕方ないんだけど原水の力をうまく扱えない。

山が壊れて星水が漏れたら大変なことになる。

そう考えていたら水面から剣が飛んできた。

それは僕の腕を掠って星水の中へ溶けていった。

なかなかやるな…。

僕は炎魔法を放ち、星水を蒸発させた瞬間に足元にクリスタルで足場を作りそれを蹴って水面に飛び出た。

そして空中でその星水の濃い蒸気をクリスタルに変換させ奴に投げ飛ばした。

僕はそれが彼に当たったかを確かめずにドバルのいる方へと移動した。

「大丈夫か!?」

ドバルが僕に触れようとした。

「あまり近づかないでください。原水が付いてるので…」

僕は大きく深呼吸をして息を整えた。

「あいつ、ウジ虫か?」

ドバルが僕が落ち着くのを待って訊ねた。

「おそらくそうだと思います。俺たちと言っていたから他にもいると思います。気をつけてください」

ドバルは頷いて剣を抜いた。

「俺、あいつをやるからジェリーはメリッサ達の方を頼んだ」

「了解です。足場が悪いので注意してください」

僕とドバルは反対側へと走った。

走りながらコートを脱いで原水を絞る。

「あの…ジェリオスさん、これ使ってください」

ライルさんが駆け寄ってきて僕にタオルを渡してくれた。

「ありがとう」

それを受け取って濡れた髪を拭きながらメリッサさんに声をかけた。

魔力を操りながらメリッサさんは僕よりも先に声を発した。

「あんた、嘘つきね。どこが人間よ」

たぶん星水の原水に落ちても生きていることを言っているんだろう。

「…すみません。人間じゃないわけではないんです」

「原水に落ちて消えないのに人間じゃないって言えるの、あんたくらいよ?」

「そうですね…」

なんで怒られてるんだろう?とか思いながら僕はドバルを見た。

僕の放ったクリスタルは奴にダメージを与えられていたようだ。

怪我をした彼の動きは鈍くなっていた。

ドバルはそこをついて激しいバトルを繰り広げていた。

「…悪いけど結界張るのにはまだまだ掛かるわ。作るのに精いっぱいすぎて他に手が回らない」

メリッサさんは僕に言った。

「どうしたらいいかしら?」

「申し訳ないんですが今はウジ虫の駆除を先にしましょう。まだ湧いてでてきそうなので」

僕の言葉にメリッサさんはため息をついた。

彼女が手をおろそうとした時、僕はその手を急いでつかんだ。

「いきなり何よ…!」

「まだ消さないでください」

僕はメリッサさんの手からでている魔力の糸に触れた。

そして泉全体を囲んでいたその糸を操って原水の中に沈めた。

「何をしたの?」

僕が手をおろすとメリッサさんも手をおろし僕を見た。

「原水の中に入れておけばせっかく作った糸もすぐには消えないと思います」

メリッサさんはしばらく僕の顔を見ていたが目をそらすと何も言わずに鞭を取り出した。

「ジェリー、入口!」

ラインさんの声が聞こえて僕たちは振り返った。

そこにはアルフとそのほか大勢のウジ虫。

「とうとう来たんだね…」

ラインさんが構える。

僕がその隣に立つとアルフが拳銃を向けながら叫んだ。

「おい、そこの茶髪!!嘘ついたな!!」

この短時間で嘘つきと2回も言われるとは…。

僕はため息をついた。

するとメリッサさんが僕たちの前に立ってアルフを指でさした。

「あ、さっきの面白い奴じゃない。ねぇ、ライン。彼の名前なんだったかしら?」

「バカチョゲフ」

ラインさんが嫌味ったらしく言い、二人で大爆笑する。

「まじダッサイ名前!!」

「バカチョゲフだってぇ…ぷぷぷ」

二人の理不尽で容赦ない言葉の暴力。

アルフはウジ虫の視線を感じ、顔を真っ赤にさせた。

「このやろうっ!!!いいか、お前ら全員まとめて俺が殺す!」

アルフが無差別に銃を撃つ。

「はぁ!」

メリッサさんが鞭を自分の前で振ると、それが地面に当たった瞬間に結界が張られる。

そしてその結界の上からラインさんが空中でライルさんと入れ替わり雷を落とした。

「ジェリオスさん、私達に任せてドバルの方に行ってください!」

僕は二人を見た。

「何してるの、馬鹿一人に任せたらどうなるかわからないわよ?」

「メリッサさん」

僕に名前を呼ばれて彼女は結界を張りながら何?と訊いた。

「僕の事を信じてくれなくても僕はあなたのことを信頼しています。あとはお願いします。全てが終わったらちゃんと説明しますから…」

それを聞くと彼女は鼻で笑った。

信頼の意味がなんとなくわかったんだ。

ドバルがメリッサさんに話をしている時にふっと気付いた。

信頼と言うのはしようと思ってすることじゃくて一緒にいてその人を知って、お互いにわかりあって初めてできるものなんだと思う。

僕は彼女に言われた通り、考えすぎていたんだろうな。

メリッサさんはもしかすると僕にこれを教えてくれるためにわざとあんな態度をとっていたのかも…いや、それはないか。

でも今ならころころ変わる彼女でも背中を任せて戦える。

僕は彼女と共に戦っているラインさんを見た。

「ライルさん、ラインさんもお願いしますね!」

「まっかせなさい♪」

彼女たちは微笑むとウジ虫を次々になぎ倒して行った。

それを見てから僕は走ってドバルの方に向かった。


ドバルと僕の息を合わせた攻撃に彼はなすすべもなく追い込まれた。

「へっ、やるじゃねぇか」

それでも口は減らなかった。

「ジェリー、こいつどうする?」

ドバルが剣先を彼に向けて威嚇しながら僕に言った。

「俺を殺しても何もないのは良くわかってるよな?」

「おまえは黙ってろ」

彼はフードの下で笑っていた。

どこからこの余裕が生まれてくるんだ?

それが気になっていた。

「あなた方は何をしようとしているんですか?」

僕が思い切って尋ねると彼は両手を広げた。

「さぁね。俺らは命令された通りに動いてるだけだし知らないよ。それに君のような実験体に教えることはないさ」

ドバルがきれて剣を振ろうとしたのを僕は止めた。

そしてそのあと僕が何かを尋ねても答えようとはしなかった。

ドバルは痺れを切らして僕を見た。

「こいつ、もういいか?すんげぇ、腹立つ」

ドバルがそう言って剣を振り上げた時、僕は後ろからの気配に気づきバックしながら振り返った。

「…お久しぶり」

そう女性の声が聞こえたかと思うと水の魔法が僕に直撃した。

彼女が狙っていたのはドバルだった。

僕はドバルを守るようにそれに当たり、壁まで飛ばされた。

「ジェリオス!」

ドバルが走ってきて僕を起こしてくれた。

「大丈夫か!?」

「ええ…生きてますよ」

多少耐性がある水魔法よりも壁に当たった背中が痛い。

でもドバルに当たらなくて良かった…。

僕が起き上がるとその女性は僕たちと戦ってボロボロになっていた男性と並んでこちらを見ていた。

「あなた、この前会った人ですよね」

彼女は静かに頷いた。

「この前ってマーリアの原水の時か?」

ドバルが僕の前に立って剣を構えて言う。

「そうです。あの時僕たちを逃がしてくれた人です」

「覚えてくれていて嬉しいわ」

彼女も男性と同じようにフードをすっぽりかぶっている。

ウジ虫も悪趣味な方に走りだしたのか?

「…で、あんたは何やってんのよ」

彼女は僕たちではなく男性の方を見て言った。

「はぁ!?言っとくけど2対1だったんだからな!」

「それが何だってのよ。私が来なかったら死んでたのよ?感謝しろ」

「何でそうやって喧嘩の時は上から目線なんだよ!このババァ」

「ババァですってぇ?あんたと年変わらないわ!!」

なんだか兄弟げんかみたいのが始まってる。

ドバルが僕の顔をキョトンと見ている。

「わかったから黙れ」

「お前が黙れ」

僕は面白いものを見つけたのでドバルの隣に立って彼らの後ろを指さした。

するとドバルも気づいたようで笑った。

僕たちは気づかれないようにそーっと後ろに下がった。

「…はい、注目~♪」

彼らはその声の主がいる場所…自分たちの後ろを振り返った。

そこにはラインさんが立っていた。

彼女はくるっとまわってライルさんに代わると雷を発生させて自分に向けて撃った。

雷をまとったライルさんは再びくるりと回るとラインさんになり、高く跳んだ。

「仲良し姉妹、秘奥義!!」

彼女はそう言って片足を突き出し、急降下した。

「ライダーキーーーーック!!!!」

ものすごい音が聞こえて土埃がまった。

それが爆風のように僕たちを襲う。

「ゲホゲホ…」

ドバルがせき込む。

すると急に土埃が僕たちを避けるように流れ始めた。

「お待たせ、こっちも終わったわよ」

僕が目を開けてみるとメリッサさんが両手を腰に当てて立っていた。

彼女の結界のおかげで土埃が無くなったのだ。

メリッサさんの服は所々切れていたものの大きなけがはしていないようだった。

「無事でよかったです」

「申し訳ないけどバカチョゲフには逃げられちゃったわ。あいつ、逃げ足だけは早いのね。気付いたらいなくなってたわ」

呆れながらそう言う。

視界が開けてくるとラインさんがドバルの前まで走ってきた。

「ドバル、どう?私達の必殺技は!!感想、求む」

ドバルは真面目な顔でラインさんを見た。

ラインさんも今までにない真剣なドバルの顔を見て唾を呑んだ。

「ライン、ライル」

「は、はい!」

「お前らかっこいいなっ!!!俺もやってみたい!!」

そう言ってドバルはジャンプした。

ラインさんがドヤ顔をした。

「何て言ったって仲良し姉妹秘奥義ですからぁ?かっこいくて当然ですわよ」

口調がもう良くわからないよ、ラインさん。

「しかも!ライルとラインの名前をかけてライダーとしまして、キックでございますよ、ええ!!」

「かっちょえー!!!」

メリッサさんはじっと僕を見ていた。

「ジェリオス!」

僕はドバルに呼ばれてびくっとした。

絶対振られると思って逃げていたのに…!

ドバルは僕の方に走って寄ってくると手をがっちりつかんだ。

「ジェリオス、俺と一緒に…」

「やらないっ!!!」

ドバルの言葉をさえぎって僕は叫んだ。

「なんでだよ!」

「やるならあなた一人でやってください」

「兄弟でやらなきゃ意味ないんだよっ!」

「嫌です。ほら、ドバルがお兄さんと弟をやるなら可能だと思いますよ」

「そこで前の話を持ってくんな!!」

ドバルがうるさいから僕は耳に指を突っ込んだ。

…なんかしゃべってる。

ドバルの後ろではラインさんとメリッサさんが笑っていた。

「!?」

僕たちは地面の揺れを感じた。

耳から指をとって僕はあたりを見回した。

「洞窟が崩れそう?」

ライルさんが心配そうに上を見た。

「あれを見て!」

メリッサさんが何かに気づいて指をさした。

そこでは先ほどの二人が壁に向かって攻撃をしていた。

「遊んでる暇はなかったわね」

メリッサさんが冷や汗をかきながら言った。

「どうするの…ってちょっと!」

僕とドバルは何も言わず同時に走りだしていた。

二人に向かって僕は魔法を放ち、ドバルはそれに当てるように剣を振った。

ドバルの剣が僕の魔法を絡ませる。

「ていやーっ!!」

剣の衝撃と魔法が一緒になって二人に襲いかかった。

確実にそれは当たったと思われた。

だが、そこには誰もいなかった。

「…どこにいった!?」

「ドバル、危ない!」

ライルさんの声でドバルが振り返るが、遅かった。

「チッ」

「うわっ!」

メリッサさんが鞭でドバルの片足を引っ張り転ばせる。

それのおかげでドバルは相手の攻撃に当たらずに済んだ。

でも顔面を地面に強打した。

おでこからは血が流れている。

「…邪魔、しないで」

ドバルに攻撃を当てようとしたのは僕たちがよく知っている人だった。

「サーティス、後は頼んだわ」

「了解」

洞窟の入り口にはさっきの二人がいた。

「あなたも、私も、皆…生き埋め」

サーティスは僕を無表情で見て言った。

あの時の怪我は治っていないようだった。

捨て駒にされたということか…。

「ライルさん!」

「はい!」

彼女は僕の言いたいことが分かったようで入口にいる二人に向かって魔法を放った。

しかしそれはサーティスの斧によってかき消された。

逃がすわけには…!

僕が原水に手を突っ込み濡れた手でクリスタルを一瞬で作り入口に向かって放つ。

でもそれも無駄だった。

「じゃぁな」

男性が入口の細い穴に入った時だった。

いきなり爆発が起きて二人ははじき出された。

「誰!?」

煙の中から人影が見えた。

赤いマントを靡かせたその人は背中から大きな剣を抜いた。

「セリアファクト騎士団団長、ラズフェルトだ!」

「ラズ様ぁ♡」

その声とともに姿が現れるとメリッサさんが手を頬に当てて物凄い速さでラズさんのもとへと行った。

「メリッサ、怖かったですぅ」

「…くっつくな」

久々にあのメリッサさんを見た。

でもそんないつもの様子を見ている暇はなかった。

天井が崩れて原水に落下した。

「みなさん、できるだけ泉から離れて!!」

僕の言葉に皆が離れる。

…このままだと天井が崩れて原水が漏れるのも時間のうち。

なんとかしなくては!

僕たち三人はラズさんの隣まで走り、サーティス達を見た。

「助太刀に来た」

「ありがとうございます。でも戦況はよくありません、むしろまずいです」

ラズさんが敵3人を見て、崩れかけている天井を見る。

「どうすればいい」

「ラズさんは皆を連れてここを出てください。あとは僕が何とかしますから」

ドバルがそれを聞いて僕を見た。

「それなら俺も残る!」

「あなた馬鹿ですか?」

「馬鹿じゃねぇよ!弟を置いて逃げる兄がいるか!」

ドバルと僕が顔を近づけて張りあう。

すると僕らの視界にメリッサさんがひょこっと現れた。

「あのさ、私に提案があるんだけど…」

僕たちは一斉にメリッサさんを見た。

「お話は、終わり…!」

その瞬間、サーティスが僕達に向かって斧を振るった。

「させん!」

「邪魔すんな!」

ラズさんとドバルがそれを受け止めた。

「ラズ様、あいつも来るんでしょ?」

「…ああ!!」

メリッサさんはそれを聞くと走って原水の近くに移動し、先ほどの糸を

原水から取り出して続きを始めた。

それを見て黙って見ていたフードの男が剣を抜いてメリッサさんに斬りかかった。

「させないよ!」

「…チビがっ」

ラインさんが剣を蹴り飛ばした。

そしてニヤッと笑った。

「ジェリオス」

サーティスの攻撃を防いでいたラズさんはドバルと息を合わせて彼女を弾き飛ばすと僕を横目で見た。

「あそこを…」

ラズさんは僕に目で天井を示した。

「任せてください」

僕には彼が何を言いたいのか分かった。

頷くとラズさんはドバルを連れてサーティスに斬りかかった。

僕はラズさんが示した天井に向けて魔法を放った。

でも威力が足りない。

僕は原水を片手で汲んで口に含んだ。

…一発にかける!

僕はそれを飲んだ。

体中の星水が震える。

天井に焦点を合わせ、空気中の星水を手に集め魔力を膨張させる。

「!?」

フードの女が僕を見て走ってきた。

…もう、遅い!

僕はそれをありったけの力で飛ばした。

反動で僕は飛ばされて宙に舞った。

でも僕は優しい何かに受け止められた。

「ありがとう、ジェリオス」

「こちらこそ助かりました」

僕はピンクの髪が揺れるのを見ていた。

彼女はメリッサさんの近くの地面に僕を下ろすと光り輝く羽をしまった。

「遅れてごめんね」

メリッサさんは僕たちの方を見ようとしないでひたすら結界を張るために魔力をつむいでいた。

「入口から入ってきなさいよ、エリウス」

エリウスさんは僕が空けた天井から入ってきた。

僕は見れなかったけど穴から差し込む外の光とともに現れたエリウスさんの姿は天使そのものだっただろう。

「だってミラがね、勝利の女神になりきるならばやっぱり空からでしょ!とかいうから。私は女神さまなんかにはなれないのに、あの人はまだ私が天使だって信じてるの。困っちゃう」

「ミラだもの、仕方ないわ。私はあんたが悪魔に見えるけどね」

「で、何すればいいの~?」

エリウスさんは何も気にせずにそう言った。

「手伝って」

メリッサさんはそう一言だけ言った。

「いいよ」

エリウスさんは何をして欲しいとも言われていないのに頷くとメリッサさんの横に立った。

「…させないわ!」

フードの女が手を構えた。

魔力が集中する。

「ジェリオス」

「あなたに言われなくてもわかってます!」

僕の名前を呼んだメリッサさんにそう言って、魔法障壁を張る。

「どけてっ!!」

「二人には触れさせませんよ」

「…邪魔しやがって、屑が」

彼女のその言葉に反応した人がいた。

その人は僕の後ろにいた。

「…おね」

「エリウス、集中して!」

「あ、うん…ごめん」

僕はひたすら障壁を張り続けていた。

それぞれの場所でそれぞれが戦っていた。

「…ラストスパート!」

「アイスクリームの加護を!」

「それって何よ」

僕の後ろで結界ができたカチィンという音が聞こえた。

落下してくる岩も弾かれる。

そうとう精度のいい結界を張ってくれたようだ。

「…撤退」

サーティスさんがそれを見て二人に言う。

「仕方ねぇな」

「また怒られるわねー」

フードの女の人の所に2人が集まった。

エリウスさんは急いで振り返った。

「ちょっと待って!」

「…何」

フードの人たちを見てエリウスさんが躊躇いながら口を開けた。

「二人は、私の…」

「さ、帰りましょう。またね…」

そして女性が魔法でテレポートした。

「…」

結界の中にいる僕たちの方に皆が集まってくる。

3人の気配が完全になくなったことを確認するとそれぞれ武器をしまった。

「皆、怪我はないか?」

ドバルが僕たちの顔を見回して笑った。

「大丈夫そうだな」

でもドバルはエリウスさんを見て止まった。

「あれ、エリウス?」

彼女はドバルに名前を呼ばれてはっとした。

「あ、ごめん。話聞いてなかった」

「大丈夫か?」

ラズさんが心配する。

「うん。何でもないの。あ、怪我した人がいたら言ってね!魔法かけるよ」

いつものエリウスさんに戻ってドバルは安心したようだった。

エリウスさんはドバルの言うとおりに僕たちに治癒魔法をかけて回った。

天井が崩れ、眩い光が僕たちをさした。

でも僕の心は晴れなかった。

それはあのフードの二人が言った言葉が心に残っていたから。

僕はエリウスさんに訊こうかと思ったのだが止めておいた。

僕が首を突っ込むことではない。

きっと一番戸惑っているのは彼女だろう。

僕に治癒術をかける彼女の手は珍しく震えていた。

彼女たちの一番近くにいた僕にははっきりとその言葉が聞こえた。


「またね…エリウス」



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