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双子星  作者: ユエラ
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入国





セリアファクトへはグズルから船で行く。

船に乗ったのは初めてだったけどよくわかった。

僕は船が苦手だ。

景色はきれいで風も気持ちいしとてもゆっくりできたんだけど、だんだん具合悪くなってきて…。

どうやら船酔いというやつらしい。

最悪な気分だった。

しかも隣のベッドではドバルも同じ症状で寝ていた。

エリウスさんとダイチさんには双子だね~と笑われたし…突っ込む気力もなかったんだけどさ。

変な所似てなくていいから…。

そんなこんなで具合悪い船旅だった。


「ただいま、我が国よ~っ!!」

エリウスさんは船から降りて地面に足が着いた瞬間にそう言って笑った。

はぁ、やっと船から解放される。

「あ、そっか。エリーはセリアファクト出身なんだよな」

元気になったドバルが言うとエリウスさんは首を振った。

「ううん。私はマーリア出身だよ。でも今はセリアファクトに籍を置かせてもらってるの」

「籍って何?」

「それくらい知ってってくださいよ…籍って言うのは」

僕は呆れながら説明をした。

「なんだかんだ言って説明する所、優しいよな」

ドバルがダイチさんに言うと、ダイチさんも頷いた。

「エリウスさん!」

「は、はい!」

僕がそれを見ながら彼女の名前を呼ぶとびっくりした様子で返事をした。

「道案内、よろしくお願いします」

それを聞くと今度は満面の笑みで道を指さした。

「任せて!行くよ~」

ついて歩きながら周りを見る。

マーリアやグズルとも違って空気が透き通っている感じがした。

ただ北にあるということで少し肌寒かったが。

もっと北に行くと雪が積もっているらしい。

道路もマーリアのように舗装されているのだが自然もちゃんと残してあって、共に協調しているような印象を受けた。

「ね、なかなかいい国でしょ」

エリウスさんは自慢げにたくさんの事を紹介してくれた。

でも国王の事を聞くと

「う~ん、実際会ってみた方がいいよ。面白い人だから怖くないよ~」

としか言わなかった。

国王がいる街はこの港からすぐ近くらしい。

僕たちは周りを見ながら歩いて言った。


道中向こう側から走ってくる人影を見つけ、僕たちは歩みをとめた。

どんどんと近づいてくるにつれそれが僕たちの知っている人だと分かった。

その人物は勢い余ってドバルの体にめり込み、ようやく止まった。

「あ、あわわわっ!!だ、大丈夫ですかっ!!」

「だ、大丈夫……」

「ごめんなさい!!」

「大丈夫ですよ、馬鹿は頑丈ですから。それよりよく僕たちが着いたのわかりましたね、ライルさん」

彼女は曲がっていたリボンを直すと僕の方を向いた。

「ミラフィーンさんが教えてくれました!」

「…どちら様ですか?」

僕が聞くとエリウスさんが教えてくれた。

「セリアファクトの王様だよ~」

「え、国王!?」

「うん。ミラフィーンさんが魔法でドバル達が来たのに気づいて、呼んできてって…」

「何かあったのか?」

ダイチさんが倒れているドバルを起こしながら言った。

「…ウジ虫が来たんです」

「ゆっくり話している時間はなさそうですね…急ぎましょう」

「私先に行ってるね!!」

エリウスさんは羽を出現させ、飛んで行った。

「お城まで案内します」

「お願いします」

僕は復活したドバルと顔を見合わせた。

とにかく急ごう。


お城はとても綺麗で気品を漂わせていた。

そこに不似合いな様々な色をした軍団。

「手を組んでくれなきゃ街壊すって…」

そうライルさんが教えてくれた。

「ここまで大きいことして良く正義の集団みたいなこと言ってられるよな」

ドバルの意見に僕も同感だ。

ただの馬鹿だろう。

僕たちは裏口からお城の中に入り、ライルさんの案内で部屋に入った。

「おー!待ってたよ」

そこには美人な女性がお菓子を食べながら座っていた。

「ライルちゃん偉いっ!お菓子あげる♪」

「ありがとうございます」

そして彼女は歩いてきてライルさんにお菓子を渡すと、僕たちの顔を覗き込むように順々に見ていった。

そして僕とドバルの顔を交互に見てつぶやいた。

「…どっちがジェリオス?」

「僕です」

ドバルの顔を見ていた彼女は僕の方に来てにっこり笑った。

「本当にそっくりだね!名札でもつけといてよ~」

「嫌ですよ!それで僕に用ですか?」

「あ、うん。ラズフェルトから聞いてて、どんな人かと思ったら普通な人じゃん」

…なんで僕の肩に手が乗ってるんだろう。

ドバルもダイチさんもあっけにとられている。

もしかして、この人が…

「あの、失礼なことをお聞きしますが…ミラフィーン国王ですか?」

ひらひらとした衣装(ドレスでは無い)を着たその女性は笑って僕から離れた。

「そうよ。イメージと違ってびっくりした?よく言われる!」

…国王は思ってたよりもフレンドリーだった。

「そ、それよりもミラフィーンさん大事なこと忘れてませんか?」

ライルさんに促され思い出した様子の彼女は真剣な顔をした。

「忘れてた。なんだっけ、ウジ虫が来て今大変なの。どうにかなんないかしら」

あぁ、僕もすっかり忘れてた。

「どうしたらって…今戦闘中ですか?」

「うん、騎士団が戦ってる最中。今から私も行くけど一緒に来る?」

「もちろん行く!」

ドバルが勢いよく返事をした。

すると国王は親指を立ててついてきて、と言って部屋を出た。


国王について行くとそこは城の正面だった。

思ったよりもウジ虫の量が多い。

「さってと、やっちゃうか」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!国王自ら戦いに行かれるのですかっ!?」

「何、その硬い口調。ミラフィーンって呼んでくれる?」

「つっこむとこ、そこですか!?」

「それ以外に何があるの?」

もうドバルと戦う気満々だ。

…どうにでもなれ。

「で、少年。作戦は?」

国王が僕を見る。

「は?」

「だから作戦!」

「…僕が考えるんですか?」

「うん、もちろん。今参謀役いないんだよね、ウチ」

何て適当な…。

自由すぎるだろっ!!

と言いたくなったけどここは我慢。

「そうですね、しいて言うなら…無理せず頑張ろう」

僕がそう言うとドバルとライルさんがぽかんとした。

「ジェリー、それないわ」

「だ、大丈夫ですか?熱とかない?」

なんだかダメ出しを食らったし、しまいには心配までされたよ。

そんなに駄目だったかな?

「…じゃぁ、深追いせず自分ができることを最大限に生かしましょう」

そういうと二人と国王はすっかりやる気になった。

…さっき言った言葉をニュアンス変えていっただけなのにな。

僕は戦う前から疲れてしまった。

とりあえず、頑張ろう。


思ったよりも早くにウジ虫を撃退することができた。

僕たちは城に戻り、大きな部屋に案内された。

「いや~、助かった!」

国王…ミラフィーンさん(あの後も国王と呼んでいたんだけど名前で呼ばなきゃ無視する、なんて言われて仕方なく呼ぶことになった)は置いてあった椅子の上であぐらをかいて座ると笑って僕たちに頭を下げた。

「ラズフェルトから聞いてたけど、本当に強いわね」

「ミラも強くてびっくりしたぜ~」

国王に対してミラ、なんて失礼な呼び方を使っているのはもちろんドバルしかいなくて、でもそれを笑顔で受け入れているのも国王で…なんだか友達感覚じゃないですか。

「ま、ゆっくりしてきなよ。何もしてやれないけどさ」

彼女の後ろにはラズさんとエリウスさんがいつもとは違った雰囲気でたたずんでいた。

あれ、そういえばメリッサさんがいない。

「ラズフェルト、エリウス」

「はい」

「とりあえずお仲間を部屋に通してあげて。何部屋使ってもいいから」

「了解で~す」

エリウスさんは僕たちの方へと歩き出した。

「あ、すみません。話したいことがあるんですけど」

僕がミラフィーンさんを見て手を挙げると彼女は笑ったまま言った。

「明日ゆっくり聞くから、今日は休みなさいな」

そう言われて僕は軽く頭を下げると僕たちを越して入口の方に移動していたエリウスさんが扉を開けた。

「案内するね、出発~!!」

僕たちはそう言って元気よく歩き出したエリウスさんのあとをついて行った。


お城の中をゆっくり見ると、外見よりも広く感じた。

マーリアの城よりも大きいと思う。

「ねぇ、皆は一人一部屋がいい?」

エリウスさんは前を見たまま言った。

「任せるよ。そういえばエリウスたちはどこで寝るんだ?家?」

「私たち騎士団専用の部屋があるからそこで寝るよ」

「専用とかカッコいいな!あとで遊びに行っていいか?」

「大歓迎だよ~♪一緒にアイス食べようね」

「わ、私も行っていいですか?」

心配そうに言ったライルさんにエリウスさんが振り返った。

「もちろんだよ!」

それを聞いて笑ったライルさんを見た後、彼女は扉の前で立ち止まった。

「ここから…あそこまで!人数分の部屋だよ」

エリウスさんの後ろにも同じように扉が広がっていた。

「とりあえず好きな部屋使って?」

それが言い終わった途端、ドバルは一番遠い部屋に走った。

そしてそこで手を振った。

「ジェリー、お前隣の部屋なぁ!!」

「なんでドバルが決めるんですか。まぁ、別にどこでもいいんですけど…」

僕は肩をすくめながら歩いた。

後ろでは皆が部屋をそれぞれ決めたようだ。

ドバルは満面の笑みで仁王立ちして待ってるし。

「寝れなかったら来いよ~」

「大丈夫です、むしろドバルがいなくて久々にゆっくり寝れると思うと最高な気分ですね」

「言ったな!!いいぞ、夜来ても一緒に寝てやんねぇから!」

「行かないから安心してください」

「ぐぬぬ…」

ドバルは悔しそうに僕を見てきた。

「馬鹿の相手は疲れます。先に部屋に入りますよ」

そう言って扉に手をかけた。

「また後でな~」

いつものように明るい声を聞きながら僕は部屋に入った。

部屋の中は外の光がたくさん入っていて明るかった。

白を基調とした部屋。

ベッドの上にはお城の地図が置いてあった。

僕はそれを見て覚えると近くにあった机の上に置いた。

「…」

窓を開けると風が入ってきた。

少し寒い風は独特のにおいがしていた。

セリアファクトは3カ国の中で一番北に位置する国。

そういえば雪が積もっていると聞いていたけどここら辺はまだ草木が青々としている。

窓の外を見ると山が見えた。

その山は真っ白だった。

しばらく山を見ていたが、流石に寒くなったので窓を閉めてベッドに座った。


気が付くと部屋の中は茜色に染まっていた。

「あれ…?」

僕は目をこすった。

寝ちゃったみたい…。

背伸びをして起き上がる。

すると、タイミング良くノックの音が聞こえた。

「はい」

僕がそう返事して扉を開けると目の前には伸ばした髪を三つ編みにして前に垂らしたメイドさんが立っていた。

僕の顔を見て微笑むと一礼した。

「わたくし、皆様のお部屋を担当させていただきます、マリンと申します。何かございましたらわたくしにお申し付けくださいませ」

慣れた口調で丁寧に言うともう一度頭を下げた。

「ご丁寧にありがとうございます。僕はジェリオスと言います。こちらこそよろしくお願い致します、マリンさん」

「あ、そういえば…」

マリンさんは何かを思い出したようで廊下に出て行った。

「どうしたんですか?」

「さっきここでジェリオス様の部屋の扉をた叩く方を見たんですが…お仲間さんでしょうか?」

「そうだったんですか、寝てて気づきませんでした」

僕がそう言うと彼女は慌てたように振り返った。

「すみません、起こしてしまいましたねっ!!」

「大丈夫です、ちょうど起きた所でしたので」

「ならよかったです…またミスっちゃったら怒られちゃう」

「怒られる?」

「あ、すみません。こちらの事です!で、では失礼いたしました!」

マリンさんは頭を僕に下げてから廊下の奥の方に早歩きで行ってしまった。

それを見届けてから僕はドバルの部屋の前に立った。

そしてノックをすると返事よりも先に扉があいた。

「お、ジェリー」

「僕に用事があったのはドバルですか?」

「俺」

それだけ言ってドバルは笑った。

「で、用事って何ですか?」

「あー、何だっけ。忘れた」

「そうですか、それじゃぁ思い出したら来てください」

「え、ちょ、ちょっと待て!」

僕が帰ろうとしたらドバルが腕を掴んできた。

「思い出した?」

「全然!でもせっかく来たんだからちょっと話そうぜ」

僕は仕方なしにドバルの部屋に入った。

もうカーテンが閉まっていて、電気が付いていた。

ドバルは僕を椅子に座らせてベッドに座った。

「ジェリオス、見たか?」

「何を?」

「真っ白な山!!」

「あぁ、見ましたよ」

「すげぇよな!雪なんだろ、触ってみたい…」

「触っても体温で溶けてしまうと思いますよ?」

「そうなのか!?じゃぁ、空気みたいなものなのかな?」

「ちゃんとした個体ですよ。溶けるってだけで…そう、アイスみたいなものですよ」

「甘いの?」

「さぁ…?でも空気中のごみとか混ざってるから食べない方がいいですよ」

「一気にまずそうになった」

と、いつものように話す。

でもそんなドバルの顔はいつもとは違って何か迷っているように見えた。

部屋に来て言いたかったことを思い出したのだろうか?

僕は自分から聞いてみた。

「さっきから何を迷ってるんですか?僕でよければ話聞きますよ」

少し優しめに尋ねる。

するとドバルは僕から目をそらして深いため息をついた。

ドバルがこんな顔するなんて思ってもみなく、僕は不意打ちを食らったが落ち着いてドバルを見続けた。

「何かあったんですか?」

「うん、まぁ…」

ドバルは頭を掻きながら言った。

「実はさ、さっきウジ虫と戦っただろ?その時に知り合いに似た人を見つけちゃって…。でもあの子がウジ虫にいるわけがないんだ、絶対に」

「どうして言いきれるんですか?」

「だってあの子は…」

ドバルは辛そうにつぶやいた。

「もう死んでるはずだから」

「どういうことです?」

「俺の住んでた村あっただろ。あそこに住んでた女の子なんだけど、ジェリオスと会った日に話したんだけど、その後すぐ村から俺たちは逃げたからあの爆発で死んでるはずなんだ」

その子はユハンナ村でウジ虫に殺された。

ドバルはそう言った。

確かに僕たちもぎりぎり逃げ切れたようなものだ。

もしもその子が気付いて逃げていたとしても爆発から逃れられるのか微妙な所だ。

「その子を見つけてどうしたんですか?」

「追いかけたよ。でも見失っちゃって…今生きているかもわかんねぇ」

僕は立ちあがった。

「確認しに行きましょう。今なら間に合う」

「できるのか!?」

ドバルも立ち上がり、目を輝かせた。

僕は頷いた。



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