復興
何事もなく宿に着いた僕たちはエリウスさんをベッドに寝かせた。
ダイチさんはまだ帰ってきていなかった。
「ジェリオス、さっき言ってたのはどういうこと?」
ここまで来るのにずっと考えていた様子のドバルは我慢しきれなくなって僕に尋ねた。
「国それぞれ違う血、つまり遺伝子を持っているのは分かりますか?」
「…ノー」
「何恰好つけて言ってるんですか。…簡単に説明するとグズルの人はほとんどの人が褐色の肌を持っています。でもマーリアの人はグズルに比べて薄い肌の色をしています。環境にもよりますがそれは遺伝子で決められているからです」
「じゃぁ、セリアファクトは?」
「セリアファクトはいろいろな所から人が集まってできた国。様々な遺伝子が混ざっています」
ドバルはメモをしながら聞いていた。
「それで遺伝子が毒にどう関係してんの?」
「あの毒の病はグズルの遺伝子を持った人が発症しやすい、ということです」
エリウスさんの場合は自分から取り込んでいるのでノーカウント。
「本当はグズルの人を連れて行ってそれが証明できればいいんですけど、治療法がないので…」
「殺すのは絶対だめだ!」
「ええ。しかしこの説が本当だとすると僕たちのあとをつけていた人が木に魔法をかけた異国者ということになります」
「またはその仲間?」
僕は頷いた。
なんとなく見えてきた。
「明日、少し大きく行動します。…エリウスさんがおきてくれればいいんですが」
「また、連れてくのか…?」
ドバルが嫌そうな顔をした。
「僕だって休んでいて欲しいです。でもきっと次で犯人の尻尾をつかめる。…今からに王に会ってくるからエリウスさんをよろしくお願いします」
僕は何か言いたそうにしていたドバルを置いて部屋を出た。
国王は忙しいというのに僕と話をする時間をすぐにとってくれた。
最初にエリウスさんの様態が聞かれたので今日目を覚ましたことを伝えた。
「そうか、安心したよ」
「今はまだゆっくり休んでいます、数日したら回復するんじゃないでしょうか」
「…素晴らしい回復力だな。国の皆は2、3日で命を落としたというのに」
「彼女にはいつも驚かされます…実は」
僕はエリウスさんが木の毒を取り除いたことを説明した。
その間ずっと彼はひげを弄っていた。
そして言い終わると手を話し、落ち着いてお茶を飲んだ。
「エリウスちゃんが…」
それっきり彼は黙った。
僕は出されたお茶に手をつけずに国王だけをまっすぐに捉えて続けた。
「明日の早朝、危険区域4にエリウスさんを連れていく予定です」
「無理だけはさせないでくれないかな」
「わかっています。彼女が行くと言ったら行きます。…では失礼します。お忙しい中お時間頂きありがとうございました」
僕は一礼して建物を出た。
…明日が勝負だ。
翌日、僕はダイチさんと二人で国王の所に来ていた。
まだ薄暗い時間、だが彼は起きていた。
ドバルとエリウスさんはもう危険区域に向かっている。
今頃ついているころだろう。
危険区域4という場所は他の場所に比べてモンスターが少ない。
ドバル一人でも大丈夫だろう。
それにエリウスさんにも作戦を説明したら無理をしない程度に戦闘に参加してくれるそうだし、ちょっと不安だけど何とかなるだろう。
今回彼女には無理に毒をとりこまないようにも言ってあるし…。
さて、僕たちは僕たちでやることをして早く向こうに向かわなくては。
「…無言のままどうしたんだい?私はこう見えて忙しいのだよ」
席に座って僕たちは何もせずただじっと国王を見ていた。
「僕たちにお構いなくお仕事なさってください」
「王様って大変なんだろうなぁって思って見学を…」
国王はこの時始めて嫌そうな顔をしたが落着きを保って書類に目を通していた。
「そういえばエリウスさんがどこの国出身かご存知ですか?」
「…マーリアではないのかな?私があったのはマーリアだったよ」
「実際どこ出身なんだろうな。俺と会ったのもマーリアだったけど、あいつ転勤ばっかりしてたみたいだから…」
「国王はグズル出身なんですよね?そうしてマーリアに?」
僕が聞くと手を止めてこっちを見た。
その目は冷たく光っていた。
「観光だよ。マーリアの国がどんな国なのか知りたかったんだ」
「いい国ですよね」
「…そろそろエリウスたち木の所までいったかな?」
「君たちは行かなくてもいいのかい?」
「一緒に行きます?」
僕が笑って言うと国王は首を振った。
「病気にはなりたくないからね」
「大丈夫ですよ、国王はあの毒にやられませんから」
そういうと彼はピクリと動いた。
僕はダイチさんと目を合わせた。
「俺たちはあの毒がグズルの先住民の血を濃く持ってる人が病になりやすいということを発見したんだけど…」
「国王、純血じゃないですよね」
ダイチさんが調べた資料を国王の前に置いた。
「悪いと思ったんだけど、調べたからわかってるから…どっかの馬鹿野郎みたいに逃げんなよ」
重い声でそう言い僕の横にたつ。
国王はそれに目を通した。
「昨日、後をつけていたのはあなたですよね?」
遅れて宿にやってきたダイチさんに国王がその日一日何をしていたのかも調べてもらった結果、僕たちが外出していた時間とまるっきり同じ時間に彼もいなかったことが分かった。
「それにそのひげで隠れている首元にあるバッチ…universal starのものですよね?」
「…どうやら私の負けのようだね」
国王は立ちあがった。
「私はセリアファクトで生まれた人間だ。グズルとマーリアのハーフだよ。…でも国民を助けたいのは本心なんだ。そのことを会社に伝えたら国民たちが魔道機を必要とする環境を作ればいいって」
僕は席を立った。
「今からドバル達の所に行きます、一緒に来てくれますよね」
国王は静かに頷いた。
…急がなきゃ。
国王に聞いたところ今ドバル達をウジ虫の役員があとをつけているらしかった。
僕はドバルに誰かの気配を感じたら状況に応じて探して倒していいと伝えた。
あの二人の事だから戦っているんだろうなぁ…。
「王様、一つ聞いて言い?」
「…なんだい?」
「会社に頼らないで救う方法はないのかな?俺、沢山あいつらのしてきたことを聞いてきたんだけどいい会社だとは思えなんだよ。世界の平和のためとか言いながらやり方が間違ってるような気がするんだ…」
ダイチさんは走りながら言った。
「国を助けたいって気持ちがあるなら別な方法を探してみない?きっと何かあるはずだよ!」
「若いのはいいな。私ももう少し若かったら上手く出来ていたのかもしれないな…」
「見つけました!二人はここにいてください…」
僕が振り返ると国王が静かに笑っていた。
「大丈夫、逃げはしないよ」
僕は一礼をしてウジ虫と戦っている二人の所に向かった。
「ドバル!!」
魔法でウジ虫を倒しながら彼の所に行くと、ドバルはエリウスさんをかばいながら戦っていた。
「悪ぃ、ちょっと数多くて」
「ドバルとジェリーたちが来るまでに片づけてビックリさせようって言ってたんだけど…」
エリウスさんも具合悪そうではあるが大丈夫そうだ。
「それじゃあ、3人でちゃちゃっと片付けますよ!」
「うん!」
僕はドバルが前に出れるようにエリウスさんの前に立ち、魔法で援護をした。
エリウスさんも魔法で回復してくれる。
「ねぇ、王様悪い人だったの?」
エリウスさんが近くに来た敵を魔法ではじき返しながら言った。
「悪い方ではありませんでした。ただ方法が間違っていただけです」
それを聞いて彼女は安心したように笑った。
「良かった。気づけたんだね」
「ええ」
「ならグズルはいい国になるね。王様すごく優しい人だから…。本当は王様が犯人だってわかってたの。でもそういうことする人じゃないって思って、言えなかった、信じれなかった」
「エリウスさん…」
「でもやっぱりいけないことはいけないよ!ウジ虫もそれに気付いてほしいな…」
僕は頷いて前を向いた。
ドバルが次々にウジ虫の役員を倒していく。
僕は本当に素敵な仲間と共に戦っているんだと改めて実感した。
結局エリウスさんはここまで来たんだからと、木の毒を吸い取って行った。
国王の家にお邪魔してエリウスさんを寝かせつと王はお茶を持ってきた。
「安心してくれ、毒は入ってないから」
とお茶を一口飲んだ。
「君たちにはいろいろと迷惑をかけてしまったね」
「俺たちは何もしてねぇよ」
ドバルがお茶を一口で飲みほしていった。
「私は国王をやめようと思うんだ」
「え、なんでだよ!国民のこと思ってるって…」
ダイチさんが言うと彼は頷いた。
「国民の事は思っている。でも今回その国民を危機にさらしたのは自分だってことくらい承知している…国王なんて言えないさ」
ウジ虫の社員でもある国王。
こんなにもいい人もいるんだな、ウジ虫の中にも。
僕が否定しようと思った時、後ろから声が聞こえてきた。
「王様はここをいい国にして償うべきです」
「エリウスさん…」
ベッドに座って彼女は国王を見つめた。
「間違いに気づいたら直せばいいんだもん。失敗は成功のもと。王様は優しいから大丈夫だよ、ね?」
「し、しかし…」
「王様、道に迷ったら優しい誰かが必ず助けてくれる…この世界悪い人ばっかりじゃないんだよ。私は昔王様に助けてもらったみたいにできることをしたいの。それに皆王様の事を慕ってるんだよ」
エリウスさんが何かをダイチさんに頼んだ。
ダイチさんは頷いて国王に紙を見せた。
それを見た国王は目を涙ぐませながらエリウスさんの隣に行った。
「王様似るいて調べてた時にたくさん村の人から話を聞いて回ったんだけど、いい話がたくさんあって…とりあえずメモっといたんだ」
ダイチさんが僕たちに説明する。
すごくいい人だったんだ…。
「エリウスちゃん、ありがとう。私、国王を続けるよ」
「王様…!」
エリウスさんは国王に抱きついた。
そしてしばらくして離れるとベットから降りた。
「私にもまだやれることがある…王様と王様が大好きな国民のために!」
そう言って手を胸元に当てる。
…もしかして!!
「エリウス、何すんだよ!」
ドバルも気づいて叫ぶ。
あたりの空気が徐々に変わって行く。
「この国の増幅してしまった毒、全部もらうね」
そう言うとどこからともなくあの靄が現れ、物凄い勢いで彼女の中に入って行く。
こんなにたくさんを不調の時に取り込んだら…!
「エリウスさんやめてください!死んでしまうかもしれませんよ…」
声は届いてるはずなのにエリウスさんは止まらない。
「…こんの、馬鹿エリー!!」
ドバルが僕の後ろから走ってエリウスさんの所に行った。
そしてエリウスさんの手をつかんだ。
「ド、ドバル!?」
「何もしないで見てるの嫌だったんだよ!だから少しくらい分けてもらうからな」
すると靄はエリウスさんだけでなくドバルの方にも流れて行った。
僕たちは驚きで見ているしかなかった。
後から思えば馬鹿らしい発想だと思った。
数日後。
僕は国王に聞いて近くにいるウジ虫を殲滅させた。
弱くて面白くなかった。
でも施設のようなものを作ろうとしていたのを阻止できたからよかったと思う。
エリウスさんとドバルはあのあと数日間寝たきり状態が続いて、ダイチさんがずっと看病していてくれた。
国王もさらに忙しくなって、僕も相談役としていろいろと提案させてもらった。
ウジ虫について何か知っていることはないかと尋ねたがあまり僕たちに有力な情報はもらえなかった。
表向きの活動の方しか知らないようだったし…。
「いや~、うまかったなぁ」
「グズルのデザート、最高だったね~♪」
国王は宿代、食事代、そのほかにも沢山の金銭的支援をしてくれた。
何から何まで助かる。
つい昨日偶然にも一緒に目を覚ました二人はすっかり元気で、これまで食べれなかった分の食事を一気にとった。
そして国王と話をして僕たちは僕たちのやるべきことのために国を出ることにした。
次に目指すはセリアファクト。
だいぶ時間が経ってしまった。
今頃ラズさんたちは何をしているんだろう。
早く合流したい。
話したいこともたくさんあるし…。
「ジェリオス、置いてくぞ~」
「今行きます」
ちょっと考え事をしているだけで皆とこんなにも距離があく。
歩幅がせまいのかな?
ちょっとだけ大股で歩くことにしよう…皆と並んで歩けるように。




