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双子星  作者: ユエラ
15/33

余興



二人を再び迎え入れた後、天想魂崖を下りて小さなお帰りパーティを開いた。

これがとても盛り上がった。

ダイチさんがドバルとともに盛り上げてくれて、僕たちはずっと笑っていた。

「天使に会えなかったなぁ~」

「あたしたちは会ったよ。なんかうっすらだったけど…」

そういえばエリウスさんは天使に会いたいと言っていたんだった。

ラインさんが天使がこんな感じだったとか話をしている。

「今度会ってみたいな~」

エリウスさんとラインさんはその後も天使の話で盛り上がっていた。

そして次の日に話し合って僕たちは一度グズルに向かうことにした。

魔動機を本当に必要としているのか…それを確かめに行かなくては。

それに天狗との約束もある。

なるべく早くに何とかしてあげたい。


僕たちは今マーリアの中心よりも南側にいる。

もっと南に行くと自然を大事にするグズルとの国境に入る。

通行所などは必要なく、自由に国の間を行ったり来たりできる。

因みにラズさんたちの出身国、セリアファクトは海の上に浮かぶ島国だ。

とても広大な土地はマーリアとグズルで取り合ったという歴史がある。

…そのころから両国の仲は悪かったのかもしれない。

まぁ、その時に現セリアファクトにどちらにも属さない中立の人間が移り住み、国を立ち上げた。

だからその名残もあるのか自由気ままに過ごす人が多い。

話を戻そう、グズルは魔動機や魔術を追及するマーリアとは全く正反対で、自然第一、昔ながらの生き方を大事にしている。

魔動機もほとんど使わないで生活していて、魔法使いも少ない。

生活は狩りや農業、酪農で養っていてたくさんの部族や集落がある。

国王はおおらかな男性だと聞いているが実際は頑固で怒ると手がつけられなくなるという噂もある。

なるべく機嫌を取りながら交渉しなくては…。

そもそも一般人と会ってくれるのだろうか。

ラズさんは自分の役職を使ってもいいと言っていたが、セリアファクトに帰れなくなるようなことになったら申し訳ない。

色々と策を考えておかなければ…。


「ウジ虫の施設って近くにね~の?」

ドバルがつまらなさそうに呟いた。

道中彼らとも会うことなく、気味が悪いほど順調に進んでいた。

「俺はてっきりウジ虫と闘わなきゃなんないと思ってたのに、静かで…。ウジ虫なんだからウジ虫らしく出て来いよー!」

そうは言っているけど出てこなくていいと思っているんだろう。

でも僕もここに着くまでに十人くらいは会うかと思っていたのだが、まだ一人として会っていないのは気になっていた。

静かすぎる気がする。

彼らは以前マーリアと手を組んだはずなのに一番栄えている大都市を破滅させてしまって、それの後片付けに手間取っているのだろうか?

「でもでないことはラッキーじゃねぇの?」

ダイチさんが、最近やっと打ち解けてきたらしく気軽に話しに乗る。

ドバルとしては僕も普通の話はあまりしゃべんない方だし、ラズさんは話しかければ返事はするが基本的物静かだから同性で乗りの合う話し相手がほしかったみたいで、とても喜んでいる。

「そうなんだけど、なんか嫌でさ」

「なして?」

「今までずっとウジ虫見てきたからいないとなんか…モヤモヤすんだよ」

ダイチさんがドバルから突如離れた。

そして近所の奥様(近所なんて僕にはないけど)のように手を口元にあてて横眼でドバルを見る。

「あらら~、ドバルったらウジ虫なんかに恋しちゃったわけ?」

「…恋?」

ドバルが…たぶん聞いたことがないであろう言葉に首をかしげる。

するとダイチさんの方が拍子抜けしてしまう。

「…おまえ、人生で恋したことないの?」

ドバルがわからないなりにに頷く。

ダイチさんが猛スピードでドバルのところに戻り、腕を組む。

「なんだよ、いきなり」

「なんだよじゃねぇよ。ドバルは誰かを好きになったことないの?」

そう言われて真剣に悩むドバル。

しばらくして彼は笑って言った。

「ジェリーも好きだし、ダイチも好きだし、みんな大好き!」

と。

それにはさすがのラズさんも小さく笑っていた。

ダイチさんは肩を落とした。

「お前はゲイか、ホモか?…異性を好きになったことないの?ってこと!」

因みに僕は、ない!

そもそも好きという感覚がわからない。

「異性ね、エリウスとか?」

そうドバルが言った瞬間、一瞬だけ殺意がわいた。

一か所はダイチさんから。

それと…もう一か所あった気がしたけど…?

「…え、私?」

もちろん皆聞いているわけで…。

エリウスさんが自分を指さす。

「もちろん、ライルとラインもな。エリウスは話しあうし、ライルとラインはなんか妹…みたいな?」

僕はほっとした。

殺意も消え、ドバルがただの馬鹿だということを思い出させてくれる。

ダイチさんが苦笑いして腕を離した。

「なんていうか、ドバルには勝てないわ」

「そもそも戦えないだろ、ダイチは?」

「バーカ、そう言うことじゃないって。ドバルは本当に面白い」

「馬鹿って言ったな!!ん、でもジェリオスに言われるのと何か違う感覚だ!!」

よくわからん。

一人で盛り上がってんじゃないよ、まったく。

「ジェリー、この気持ちはなんだ!?」

「しりませんよ…わ、馬鹿!くっつかないでください!」

「そうそう、この馬鹿の感じ…って馬鹿って言ったなぁ!!」

はぁ、何というか巻き込まれて迷惑だよ…。

でも…不思議と笑ってしまうんだ。


あれから2日経った。

食料などは足りているし、そこまで疲れるような戦闘もなかったので町などには寄らず、グズルだけを目指して歩いていた。

その間もウジ虫には会わなかった。

僕もすっかり存在を忘れていた。

しかし…

「あの、あれって…」

ライルさんが指さしたのはウジ虫の社員。

白い箱を持って走って山の方に行った。

「追いかけるぞ!」

ドバルの後について皆で気づかれないように追いかける。

ウジ虫は僕らに気づくことなく山まで行き、そこにある洞窟の中に入って行った。

「なにしてんだろ?」

エリウスさんが興味心身に覗き込む。

後ろからダイチさんとラズさんが遅れてきた。

「…ダイチの調子がよくないみたいだ」

そうラズさんに聞いて僕はダイチさんの隣に行った。

彼は近くの木にもたれるように座っていた。

そして僕を見ると片手を上げた。

「大丈夫、こんくらい…」

そういう顔色はあまりよくなかった。

「無理しないでください。…洞窟の中からものすごい星水を感じます」

初めて目にしたがダイチさんの症状はとても変わっていた。

体のあちこちに蕁麻疹が出ていて、特に手はひどかった。

彼の体は風邪をひいたように熱くほてっていて呼吸が苦しそうだった。

「ダイチさんは治癒魔法でも症状が出ますか?」

僕の問いに彼は静かにうなずいた。

…ならエリウスさんでもだめか。

「いまからちょっと試してみますので、苦しくなったら手を挙げて下さいね」

「…了解」

僕は彼の頭に手をのせた。

そして彼の中の星水を外に出す。

エリウスさんにやったことと同じこと。

これは魔力を使ってやっているわけじゃないから大丈夫だと思うんだけど…。

でも不思議な感じがする。

いくら外に出してもまるでダイチさんに引き込まれるように外の星水が入っていく。

僕は体内でうまく星水と合わなくて拒絶反応が出ているんだと思っていたけど、ちゃんと適合しているようだし…。

僕は手を離した。

「あまり変わりませんか…?」

するとダイチさんはふらふらしながら立ち上がった。

「大丈夫、サンキュー。楽になった」

でも実際は何も変わっていない…。

出た分が入っているんじゃ意味がない。

ダイチさんが僕に気を使ってくれたんだろう。

「ダイチ、ここで一緒に残ろうか?たぶん洞窟の中に行くからさ」

ドバルがこっちまで来て言うと彼は首を振った。

「いや、いいよ。少し楽になったから邪魔じゃなかったら連れてって…」

「じゃぁ、無理しないのと、辛くなってやばかったら俺に言うこと!それでいいなら一緒に行こう?」

ドバルがもしもの時は俺がちゃんと責任持つから、というので僕もOKを出した。

ラズさんやエリウスさんもいるし…。

僕も気を配りながら進もう。


中に入ると薄暗くはあったが燈篭が設備されていた。

「割と深そうだなぁ」

ドバルが暗くて何も見えない奥をじっと見る。

あの役員もまだ歩いているんだろうか。

そして行き止まりについた。

そこには簡易に作られた扉があった。

「開けますね?」

ライルさんが扉に手をかけて開く。

開いた瞬間僕の周りに凄まじいほどの星水が押し寄せた。

一度だけ…この感覚を感じたことがある!

これは…。

その時僕の後ろでドサッと言う音が聞こえた。

「ダイチ!!」

ラズさんが抱える。

ダイチさんは気を失っているようだった。

でも蕁麻疹も増えているし、呼吸もさっきとは比べ物にならないほどに浅くなっている。

「俺が連れてく!」

ドバルがラズさんとかわろうとすると、ラズさんが首を振った。

「俺が戻る。ドバルたちは先に進んでくれ…ちゃんと守る」

エリウスさんが私も、と言ったがそれをラズさんは拒んだ。

「戦力は多い方がいい。エリウス、心配するな」

「…うん、わかった。外で待ってってね。ダイチ、早く良くなってね…」

ラズさんはダイチさんを抱えたまま走って外へと行った。

「大丈夫かね~?」

気づくと髪を結んだラインさんが扉をあけきって立っていた。

「死ぬことはないと思います。遠くに離れれば次第に良くなっていくはずです」

だから僕はラズさんに何も言わなかった。

彼は僕が何も言わないのもなぜかと理由を分かってくれている。

本当に察しのいい人だ。

「ダイチさんはラズさんがいるから大丈夫です。それと…皆さんあれを見て下さい」

僕は扉の中を指差した。

そこには綺麗な透き通った湖があった。

「洞窟の中なのに、すげ~!綺麗」

ドバルが言っていることに間違いはない。

でも水なんかじゃない。

「あれが…星水の原水です」

扉を開けた瞬間に僕を取り囲んだ感覚。

あれはあの実験の時に初めて原水に触れた時とおんなじ感覚だった。

何とも言えない微妙な感じ…。

「あれが?」

ドバルの言葉に頷いて僕らは湖のある空間へと入る。

あたりには水揚げポンプのようなものがあり、きっとそれで汲み上げているのだろう。

こういった原水のある場所を買い占めて魔動機の開発や施設に使っていたんだろう。

「触らないでくださいね、特にドバル」

「馬鹿じゃないから大丈夫だって!だって触ったら消えるって聞いたことあるしな」

皆で湖を眺める。

僕も見るが、あの実験のことを思い出して胸元が苦しくなった。

「ウジ虫が静かだったのはここの調査で忙しかったからかもしれませんね…」

「ご名答よ」

後ろの方から声が聞こえて僕らは振り返る。

扉が閉まる音が聞こえ、僕らは戦闘隊形に入った。

「そんなに怒らないの。私たちがあなたたちを殺すつもりならとっくに殺ってるわよ」

声と口調は女性だが、顔にかかるように深くフードをかぶっている社員が扉の前に立っていた。

「じゃ、なんでそこにいんだよ」

ドバルが剣をいつでも抜ける体勢を保ちつつ聞く。

「…ちょっと気が向いただけ。ほら、偉い人が来る前に帰ったら?」

彼女は扉の横に移動する。

「それと、私たちはグズルとはうまくやっていけないわ。野蛮人は面倒臭いんだもの」

「どうしてそれを僕たちに?」

彼女は小さく笑った。

ウジ虫はグズルとうまくいかなかったということだろうか?

「さぁね、気まぐれよ。…次会うときは最期よ」

そう言って扉を開ける。

僕は信用しきれなかった。

もしかすると時間稼ぎで扉の先にはたくさんの役員がいるかもしれない。

もとから戦う気では来たのだが、薄暗くて足もとがはっきりしていないところよりも、ここの方が明るいので戦いをうまく運びやすい。

…それにここは星水の原水がたくさんある。

だから僕にとっては最高の戦いの場所。

きっと星水の原水の力、星水の本当の力をこの場で魔法陣もなしに扱えるのは僕くらいだろう。

この人を信じていいのか…?

「ジェリー、行こう?」

僕が振り返るとエリウスさんが真剣な顔で扉を指差した。

僕はエリウスさんがそう言う理由が聞きたかった。

でも彼女はドバルと同じように信頼できる所があるからどうしようか考えてしまう。

「強い人が来る前に早く行った方がいいと思うの。罠ならかかってなんぼだと思うし。それに私は…その人を信じたい、んだ」

エリウスさんの言葉に何か突っかかりながらもドバルたちも賛成のようなので、僕は頷いた。

皆が扉を走って出て、僕は最後に出ることになった。

「何かしら?」

彼女の前で僕は止まって、顔を一目見ようと思った。

しかしフードに隠れて何も見えなかった。

「あなたはいつ、universal starに入ったんですか?」

それが分かれば僕が知っている人物かどうかがわかる。

以前も言ったように一年前までなら役員の顔と名前くらいは覚えている。

しかしアルフという人は知らない人だった。

もしかすると新入社員なのかもしれない。

それに顔を隠す必要があるということは何か隠したいことがあるのかもしれない。

まぁ、教えてくれるはずはないと思っているけど…。

「そんなこと聞いてどうするの?」

「…次にお会いしたとき、あなただと判別するためです」

彼女は首をかしげた。

「貴方はもしかして…いいわ。入社したのは一年前。たぶん貴方がいなくなってから。じゃぁね、また会いましょう?」

もうこれ以上は話すことはないと言わんばかりに彼女は僕に背を向けた。

僕のことにも気づいたようだった。

僕もみんなに追い付くように走って広場を出た。


途中、みんなは僕を待っていてくれて合流できた。

「なんもされなかったか?」

「大丈夫です」

ドバルが返事を聞くと笑って走り出した。

しばらく走ると何事もなく出口に着いた。

外の太陽の光がまぶしく感じられ、僕にはそれがとても懐かしく感じた。

「ラズ!!ダイチは?」

近くの木陰にラズさんは立っていて、エリウスさんが彼を見つけるとともにそこまで走りだした。

「大丈夫だ。エリウスたちも大丈夫だったか?」

「うん…」

僕たちも二人の所へ行くと、ラズさんが一人一人の顔を見回して微笑んだ。

「話は後で聞こう」



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