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双子星  作者: ユエラ
13/33

崩壊



僕たちはダイチさんのいる街を目指していた。

…あのときレイさんに聞いたこと。

『あいつらは大きい病院のある街にずっと手を貸してきた。でも町のお偉いさんがなぜか企業の手はいらない、とすべての取引を断ったの。その理由は企業の施設が次々に破壊されていること…。その理由を彼らは事故と言っているけど、事故ばかりの企業何か信頼性に欠けるわよね。それでその街に行って話し合いをするそうよ。ま、私は一度も手を組んだことない企業だからどうでもいいんだけどね、面倒くさいし』

レイさんは最近知ったと言っていたが本当に助かった。

…もしウジ虫が行っても街が断ったらあいつらは大人しく帰るだろうか。

これ以上の信頼は失いたくないだろうし、でもあの街が一番ウジ虫の利益に貢献していたから…それに僕らのこともある、下手したらってことも考えておこう。

「なぁ、ジェリオス」

それまでラズさんと話していたドバルが僕の隣に来た。

「何ですか?」

「ダイチに会えるかな、エリーも戻ったからさ」

約束したからというドバルに僕は笑って頷いた。

「街についてから二手に分かれましょう。片方はダイチさんのところに、もう一方はウジ虫のところに。それでどうでしょう?」

ドバルはそれを聞いて安心したように息をもらした。

「ありがとう、ジェリオス!」

「お礼を言われるようなことではないです」

別れるならドバルとエリウスさんとライルさんをダイチさん組みにいれて、僕とラズさんでウジ虫のところにするのが妥当な気がする。

もしもこっち組が戦闘になった際には戦わないで逃げよう。

「よ~し、行くぞ!!」

ドバルの声に僕たちは歩く速度を速めた。


街に着くと僕の想像を超えたことが起きていた。

頭の整理が追い付かない、僕は深呼吸をした。

「なんだ…これは」

ラズさんも驚きの声を上げる。

街は建物が崩壊し、逃げ惑う人々、停止する魔動機…大惨事だった。

「…ダイチ!!」

エリウスさんが何かを思い出したように走り出した。

彼女は病院に向かっているんだ!

「エリー待てよ!俺らも行くぞ」

ドバルも追って走り、僕らも走る。

街の中にウジ虫の姿はない。

何がここまでしたんだ?

まだこの街にいるはずなんだ。

そう考えながら走っていると後ろの方から強力な星水の気配を感じ、僕は振り返った。

「皆さん、よけてくださいっ!」

僕が言うとみんなも振り返り、左右に避ける。

その間を光の塊が光の線を伴って通過していった。

「あぁ、よけやがったな…?」

壊れた建物の上、そこには黒い帽子をかぶった髪の長い男が。

軍服のような服にチェーンをたくさんつけて、両手には拳銃を持っていた。

「誰だ!!」

ドバルが剣を抜いて構えた。

「見て分かんない?俺、universal star特殊部隊副隊長のアルフ。またの名を漆黒の雨、アルフ!!」

どうだっ!!とがっつり上から目線のアルフ。

僕らが静かに(可哀そうな目で)見ていると彼は不安そうな顔で目を細めた。

「あ、あれ?なんだよ、静かになって!…あ、そうか俺に恐れをなしたかっ!?ふ、どうよ。この俺のかっこよさ!!」

うわ~、また馬鹿な奴が出た。

ウジ虫もよくこんなの社員にしたな。

「そこのお嬢さん、俺と夢の世界に旅立たないかい?」

としまいにはエリウスさんに言う。

彼女はきょとんとした顔のまま答えた。

「寝るの?なら今はちょっと急いでるから、ごめんね」

…あぁ、夢の世界=寝て夢見てる、ってことですね。

ていうか断ってよかったのに、エリウスさん。

「え、何、そう言う感じ?」

黙っていればかっこいいアルフもきょとんとする。

あー、もう面倒だ。

僕は低レベルの魔法をアルフに向かって打った。

詠唱もなしに現れた魔弾にアルフは気付くこともなく、まともに食らう。

そのまま後ろに倒れた衝撃で頭をぶつけた(いい)音が聞こえた。

「さ、行きましょうか」

僕がそう言うと、みんなが頷いた。

「くそ…置いてくなっ!!」

後ろからの声に僕は振り返った。

そこにはまたあいつが。

頑丈なんですね…。

「…はぁ」

「そこ、ため息つくな!!」

ドバルにため息つかれて…馬鹿の下に言ったよ、こいつ。

「…聞いて?」

いきなり何か言いだしたし…。

「俺さ、みんなを連れて話し合いに来たんだよ。でな、断られたら偉い人だけ殺せって言われてきたのに、連れてきた子供たちが勝手に町の人まで殺しにかかって…しまいには建物まで破壊するっちゅーな?もう怒られるの俺だから勘弁してほしい」

子供…!?

「子供たちってもしかして…」

「おう、施設で作ってる奴らだよ。俺の命令聞くようにできてるからって言われたのにそんなことないじゃん!!最悪だぜ、ゴミ寄こされてさ」

やっぱり…。

勝手にベラベラしゃべってくれる馬鹿でよかった。

でももう戦争兵器として…いや、戦争のために試しでやっているのか。

「おい、お前!ゴミとか言うな!!お前らが子供を変えたんだろっ!!」

ドバルが叫ぶとアルフは?と首をかしげる。

「なんでお前が切れるわけ?俺の方が、切れてんだよっ!!!」

アルフは銃口をドバルに向けて引き金を引く。

…なるほど、アルフの能力は魔力で塊を作り、それを鉄砲の弾として発射するものか。

魔法とあまり変わらないが、詠唱が不要で早くに攻撃することができる。

あの拳銃自体も特注だろう。

星水が集まりやすいようにできている…。

「あれ?」

しかし何度も引き金を引いても弾が生成されない。

僕たちも拍子抜けしてしまった。

い、今がチャンス?

そう思ったとき、アルフの上に何かが落ちてきた。

「むぎゅっ!!」

潰された声が聞こえる。

「…いいクッションね」

アルフの上に立っていたのは間違えもしない、レイさんだった。

「ドバル!!手伝いに来たぞ」

レオナードさんの声に僕らが振り返る。

後ろからはレオナードさんとキャロさんとチェイさんが。

レオナードさんは腰から二本の剣を抜く。

「他の企業の人たちは病院に向かってたですぅ!」

チェイさんがドバルに伝える。

そしてアルフの上にいた彼女は、驚くほどのジャンプ力で僕たちの前に着地する。

その時も声が聞こえたけど、無視で。

「はぁ、はぁ、みんな早いよぉ。あ…ここは僕たちに任せて下さい!」

キャロさんが遅れてやってくる。

その時アルフが立ち上がった。

「ずいぶんと頑丈ね。ゴキブリ?」

レイさんがにらむ。

彼には聞こえていないようで、アルフは拳銃を見る。

「ん?なんで出ないんだ?役立たず」

アルフは諦めたように拳銃をホルダーにしまり、下に降りてくる。

そして腰から小刀を取り出す。

「もういい、おまえら全員殺す」

アルフは帽子をかぶり直し、腰についていたチェーンをスルスルと外し、小刀と合体する。

するとあたりの空気が変わった。

アルフから馬鹿らしさが抜けた…というかなんというか(笑)

「なんだ?」

レオナードさんが様子が変わったアルフを見る。

アルフの目は先ほどまでにはないほどの殺意に満ちている。

「…小刀についている石を見て下さい、あれが星水の塊です。あれからものすごい魔力を感じます。彼はあれのせいで人格が歪んでいるんです!」

僕は石を指差した。

真っ赤に光るそれは見るだけで寒気がするほどの禍々しさを放っている。

きっと力を発揮するためにあのチェーンが必要なんだろう。

アルフはそのチェーンを振り回し、僕たちに向かって刀の付いた方を投げ飛ばす。

それをレオナードさんがはじき返す、しかしアルフはものすごいスピードで体勢を立て直して何度も投げてくる。

ドバルが加戦しようとするが、それをレオナードさんが止める。

「ドバルたちは早く病院に!!」

「…わかった!!」

僕らは、ドバルの後を追って走った。

すると後ろからまた魔力を感じた。

僕が振り返るとアルフがレオナードさんに攻撃をしながら魔法を使っていることがわかった。

詠唱なしに使っている?

これも石の力…!

僕が振り返って、防ごうと結界を張るのよりも先にアルフの攻撃が届いてしまう…。

「…まずい!」

そう思ったとき、目の前が真っ暗になった。

でも体は無傷で、目を開けると何かの中にいることがわかった。

よく見るとそれはたくさんの白い…手。

僕が触れようとするとそれはまるで貝殻のようにゆっくり開いていった。

「僕に任せて…!」

すべてその手が地面に戻っていくと、目の前にはキャロさんが。

彼にはあの夜よりも黒い魔力が渦巻いていた。

僕は思わず身震いをしてしまった。

僕よりも魔力がある…ましてこんな魔力を人間が扱えるわけがない。

「びっくりさせてごめんね。さ、早く行って!あの人は僕たちが、やります」


4人にまた貸しを作ってしまった…。

でも今は感謝して病院に急いだ。

「ダイチ、死なないで!」

エリウスさんが祈るように言う。

彼女はあの日のことを覚えているのだろうか。

ラズさんがエリウスさんの隣を心配するように走る。

そして病院に着いたはいいが、入口があかない!!

「…っ!!」

ラズさんがガラスの扉に向かって体当たりをするもびくともしない。

ドバルもともにやるが、壊れない。

僕の魔法なども試したが傷一つ、つかなかった。

「…ダイチ。部屋にいて!!」

エリウスさんが入り口とは違う方に走る。

「エリー待って!」

僕たちが後を追うと病院の横についた。

たくさんの窓が並ぶ。

「…バニラアイスクリーム、空へ」

エリウスさんがそう言うと光の翼が彼女の背中に現れた。

そのまま空を飛び、ある窓のところでとまった。

窓をノックし、あいた窓の中に入っていく。

あそこの部屋はダイチさんの部屋…!

「エリーって天使なのか?」

ドバルが彼女の姿が見えなくなった時、ラズさんに尋ねた。

「人間だ。あれも魔法、なんだろう?」

顔を向けられて、僕は頷いた。

そしてあの日聞いたことを伝えた。

「エリーってすごいんだな…。俺も飛びた~い!アイスも食いたい…」

ドバルがうっとりした声で言うと、上からダイチさんを抱いたエリウスさんが下りてきた。

「ダイチ!」

ドバルが久々の再会にダイチさんの手を握る。

エリウスさんの羽が消える。

「ドバル、元気?」

「おう、ダイチも元気そうでなによりだよー!エリウス戻ったから連れてきたぞ、約束守れてよかった」

ラズさんも頷く。

「ありがとう、みんな」

ダイチさんが僕たちを見渡す。

みなが久々の再会を喜んだ。

「ダイチとりあえず今は病院を何とかしよう。正面扉を開ける方法知らない?」

エリウスさんがダイチさんにきくと彼は正面まで走った。

僕たちもまた扉の前に立ち、試したことをすべて伝えた。

「…なかから開くのは知ってるんだけど、今扉が全部鍵かかって開かないんだよね。中にぼろぼろの服を着た子供たちが来て、人を襲ってるんだ…。それが起きてから扉がロックされたから…」

ダイチさんは必死に考えてくれた。

ただ、ダイチさんの情報で行くと病院の誰かがウジ虫とグルってことだ。

「おーい、親父!聞こえてんなら開けろ!!いつもそうやって誰かを傷つけて恥ずかしくねぇのか!」

監視カメラに向かってダイチさんが叫ぶ。

そういえば彼のお父さんはこの病院で有名なお医者さんだった。

ダイチさんのお父さんはどんな人なんだろう…。

そもそもお父さんがいなく育った僕には普通も異常も分かんないんだけど。

ダイチさんが叫んでしばらくすると何をしてもあかなかった扉は開いた。

「…行こう」

僕たちはドバルを先頭に中に入って行った。


中はひどかった。

こんなの病院じゃない。

中で怪我している人を見ては治癒魔法を使っていたエリウスさんをライルさんが止めた。

ダイチさんがとてもつらそうな顔をしていて、それをドバルが励ます。

きっと彼の友達もいたんだろう。

「ドバル、ダイチさんをお願いしますね」

「え、ああ、いいけど…」

僕は他のみんなと連れてここをこうした元へと走る。

そこに行くと子供たちがたくさん。

魔法を使って、感情のない顔で僕たちを見る。

「あれが原因…」

ラズさんが息をのんだ。

「はい。あの子供たちが僕と同じ被験者。前に言ったドールです」

エリウスさんが胸に手をあてた。

「私は体が動かなくなった時も意識があったんだよ。まるで私じゃない誰かが私の体を乗っ取ってる感覚で不思議な感じだった。あの子たちもそうなら私は…」

「僕はドールになったことがないからわかりませんが、エリウスさんの場合はとても特殊です。あの子供たちは洗脳されているようなものです、だから意識自体が戦うことでいっぱいなんです…。だから」

僕がそこまで言うと、向こうから魔法を発してきた。

僕は結界を張り、それを防ぐ。

「今、助けるからね…」

エリウスさんが僕の気持ちを分かってくれたようで、空中から弓を取り出す。

ラズさんもそれを見て走り、子供の一人を斬る。

ライルさんには無理はしないでと言っていたが、彼女も魔法で子供の動きを止める。

「見た目は子供ですが、身体能力は大人以上です。気をつけて下さい!」

僕も結界を解き、攻撃魔法に切り替える。

一斉に攻撃をする。

煙が辺りを包みこんだ。

そしてその煙が消えると僕ら以外に生存者はいなくなっていた。

「空の世界はいいところだから、人間らしく生きて…」

エリウスさんが目に涙を浮かべて祈る。

「エリウス…行くぞ」

ラズさんが彼女の手を引いて僕たちのところに戻ってきた。

僕もライルさんを連れてドバルたちのところへ向かった。

…これからウジ虫は本格的に人間兵器を使ってくるかもしれない。

そしたらやっぱり僕がなんとかしなくちゃ。


戻るとドバルたちはいなかった。

探そうとした時に彼らは奥から戻ってきた。

「あ、ごめん、ごめん」

ドバルが笑顔で謝る。

なんかあったのかな?

「…あのさ、俺も旅に連れてってくれないかな?」

ダイチさんが突如頭を下げた。

僕たちは顔を見合わせた。

ただドバルだけを除いて。

「俺からも頼む!」

「でもダイチ、病気治ったの?」

エリウスさんが尋ねるとダイチさんは首を振った。

「まだなんだけど、足は引っ張らないから。心配もしなくていいからさ」

「何の病気なんだ?」

ラズさんの質問にダイチさんは僕を見て言った。

「星水アレルギー」

…星水アレルギー?

聞いたことない名前だ。

「まぁ俺が勝手に名前つけたんだけどさ」

とダイチさんは頭をかく。

エリウスさんが僕たちに補足説明をしてくれる。

「私とダイチは同じ小学校出身なんだけど、入学したら星水を飲むっていう教育方針で入学式のときに飲んだの。そしたら一人だけ倒れて意識なくなった生徒がいて、それがダイチだったの」

ダイチさんも前に入学してすぐに入院したと言っていたな…。

「んで親父が調べたら俺の体が星水を拒んでるみたいで、熱出たり蕁麻疹出たりとか、ひどい時はぶっ倒れたりするみたい。病院では星水に慣らすって言って毎月何回か星水を点滴で入れてたんだけど…結局慣れなかったんだよなぁ」

…施設みたいなことを?

まぁこんな症状きいたことないし、どうすればいいかなんて僕にもわからない。

ただダイチさんがそれで死んでしまうことがなくてよかった。

「戦いはできないけど邪魔しないし、他のことで役に立つから連れてってください!」

再度頭を下げられた。

僕としては星水にかかわることでもあるからダイチさんのことも考えると反対だった。

「ダイチ、家なくて…さっき親父さんに俺が連れてくっていっちゃったんだんだよなぁ」

ドバルが最終兵器と言わんばかりにわざとらしくため息をついた。

そんなことされても困る。

一緒に旅をするのはいいけど体調が心配だ。

でも家がないって言うのは困るよな…。

「ジェリオスもいいよな?」

気づけば皆が同意したようで僕だけが返事をしていない状況になっていた。

「…ええ。治療法を僕も探してみますが、僕たちは星水に大きくかかわっているので無理はしないこと。あと、僕は星水の塊みたいなものだから近くにいると症状が出るかもしれません…それでも大丈夫ですか?」

僕がそう言うとダイチさんは大きく頷いた。

「ありがとう!これからよろしくな」


僕たちは病院を出てキャロさんたちのいたところに向かった。

もう外は静かになっていて荒廃していた。

僕たちがつくとアルフの姿はなく、4人が座っているのが目に入った。

向こうも僕たちに気付いて立ち上がる。

「無事かぁ~!!」

ドバルが叫ぶとキャロさんが手を大きく振った。

僕たちが走って4人のところに着くと、みんなはけがの手当てをしていた。

「ごめんね、逃がしちゃった…。アルフを倒した後に隊長がやってきてアルフを連れてどこかに消えちゃった」

「キャロが追ってたんだけどついさっき見失って…」

僕は謝る二人に首を振った。

そして頭を下げた。

「本当にありがとうございます。僕は何をお礼とすれば…」

「お礼なんていらないよ!僕らが勝手にやったんだからさ」

キャロさんが笑う。

「あ、あのさお願い…なんだけどいいかな?」

突然キャロさんが思いついたように僕に言う。

僕は頷いた。

「ありがとう。あのねここ、僕たちの知っている世界じゃないみたいなんだ。だから戻るために力を貸してほしいの」

ドバルがそれを聞いて首をかしげた。

「国に追われてるんだったら、こっちの世界にずっといればいいのに…そしたら追われないぞ?」

「それじゃつまらないじゃない。なんか私たちが逃げたみたいで」

レイさんがムスッとする。

ってか、そこなんだ…。

「ま、まぁそういうことで僕たちは戻るよ。じゃないとうるさい人が若干一名いるし…あはは」

そう言ってキャロさんは眼帯に触れた。

僕はわかりましたと言って、何をすればいいか尋ねた。

「空間を裂いてほしいんだ。僕一人だと一人が通れるくらいの時間しか作れなくて、僕が置いてきぼりになっちゃうから…。こっちの世界でうまく使えなくて」

空間を裂く…かまた難しいことをいうなぁ。

僕もやったことはないけど何とか手助けできるならやってみよう。

「どうやればいいんですか?こちらの魔法で空間を裂く、なんてことをした人間が過去にいないもので…」

「大丈夫、僕が大きいところはやるから。ジェリオスは僕が広げた空間を魔法でしばらくの間その状態で保ってて欲しいんだ。合図するから」

僕は頷いてバッグから星水の瓶を取り出した。

「あ、皆さんは下がってってください。特にダイチさんは…」

「了解、行こう。みんなも元気でな!本当にたくさんありがとう!」

そうドバルがいうとみんな見える範囲で離れてくれた。

僕はバッグから出した瓶のふたを外し、それを飲んだ。

通称エルフの星水。

これは回復用ではなく、魔力を増幅させるもの。

後付けって感じなものだけど。

僕たちが施設で注射されるのはこれ。

「いつでも大丈夫です」

僕が4人の顔を見るとキャロさんが誰もいないところで手をかざした。

その瞬間にあの禍々しい空気が辺りを包む。

「……」

キャロさんの顔つきが変わって手をかざしたところが陽炎のように歪む。

そしてパチパチと音が鳴って一瞬で空間が引き裂かれる。

「…ジェリオス、お願い」

「はい!」

僕はキャロさんの隣から魔力を高め、空間の裂け目に魔法の糸をイメージして閉じてしまわないように括り付けた。

「さ、みんな入って?」

キャロさんが言うと3人がどんどん入っていく。

「ジェリオス、皆にお礼を言っといて?」

「お礼を言うのは僕たちの方です、ありがとうございました」

キャロさんが裂け目の前に立って言う。

「えへへ、とっても楽しかった!みんなも大変そうだけど、お互いに頑張ろうね。バイバイ」

キャロさんは遠くにいるみんなにも手を振って裂け目の中に入って行った。

僕はそれを確かに確認して魔力を抑えた。

空間は閉じられ、4人は元いた世界に帰って行った。

僕がその場に立っていると離れたところにいたみんなが寄ってきた。

「帰っちゃったね」

ライルさんが少しさみしそうな声で言った。

「キャロさんが皆さんにお礼を、と。楽しかったって言ってましたよ」

「俺らも超楽しかったよな!元気になった!!」

僕たちは4人との別れを惜しみながらも次に向かって頑張ることを再度決意した。



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