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双子星  作者: ユエラ
12/33

魔物(番外編?)

今回出てくるキャラ説明。

キャロ・首には長いマフラーを巻き、右目に眼帯をしている少年。右目には世界最凶の魔物といわれるメビウムが入り込んでいる。それにより世界から追われている。メビウムのせいで成長が止まったり体調不良だったりと忙しいがなんでもこなせるスーパー男児。幼馴染のレイにこき使われる苦労人。

レオナード・魔物と人間のハーフ。最初はキャロを討伐するための部隊に所属していたのだがキャロの魔法の虜になり一緒に逃亡し始めた。赤い髪で少し隠れているが左目の下に十字の痣がある。キャロの可愛さに悶えるイタイ男。

レイ・キャロの幼馴染。キャロとメビウムが一つになった事件の当事者。とある町のお嬢様。素直じゃないゆえに他人に冷たく足癖が悪い。本当はキャロの中に潜むメビウムをどうにかしてあげたいと思っている。ジャスミンティが大好き。

チェイ・ちいさな竜の子供。人の姿はおさげの女の子。キャロの中に勝手に入りその姿を魔法で変えてはレオナードをいじって遊んでいる。レイによく抱かれている。


(同じ中学のときに考えていたキャラたちが出てきます)




案の定宿の入り口にはドバルたちがいて部屋を取っていた時だった。

「う~ん」

僕は悩む声を出すドバルの隣に並んだ。

「どうしたんですか?」

「わっ!びっくりした、来んの早くね?」

「まぁ、色々と。で、どうしたんです?」

ラズさんが僕とエリウスさんも確認し、説明してくれた。

「部屋が満室なんだそうだ」

…なるほど。

近くの町と言っても次に近いところでも歩いて2日はかかる。

できれば今は休んでおきたい。

「…」

その時二階へ上る階段から僕たちを見下ろす少年に僕は気付いた。

年は10歳いかないくらいの子供だった。

彼は僕と目が合うと、ぺこっと頭を下げて階段を下りてきた。

あんな知り合いはいないんだけどなと考えていると少年はドバルの前まで来たようだった。

「あ、あの…」

「ん、なした?」

皆も少年の方を見た。

「二人部屋でよければ使ってください。僕たち使わなくてもいいから」

僕は少年がどんな意志で言っているのかさっぱりわからなかった。

それこそウジ虫の作戦かもしれない。

僕は彼の眼を目を見ようと試みた。

目を見れば考えてることが分かるかもしれない。

でも僕の方からは彼の右目しか見えない、そしてその右目は眼帯で覆われていて何もわからなかった。

「何してんだ~?」

階段からもう一つの声が聞こえた。

僕らと同年代くらいの青年。

「あ、あのさ。部屋なんだけど僕たちは外で寝てもいいよね?」

少年が青年に尋ねる。

青年は首を縦に振った。

「キャロの言うことを聞かないわけないだろ?」

「ありがとう!そう言うわけで一部屋ですけどどうぞ」

キャロと呼ばれた少年は宿のおばさんに勝手に手続きを取ってしまった。

しかもお金は向こう持ち。

…何を考えてるんだろう。

「ありがとう!!ジェリオス、一部屋もらったぞ!」

「…あの」

僕はキャロさんの方に近づく、そこでやっと彼の顔があらわになる。

黒い髪の毛がサラサラ揺れて彼が僕の方を見る。

本当に子供らしい顔つきで、でも隠れている右目が僕は気になって仕方なかった。

「どうしてここまでしてくださるんですか?…今、ちょっと用心深くなっていて真相を知りたいんです。もし不快な思いをされたら申し訳ございません」

少年はそんなことないよと首をぶんぶん振った。

「ただ、疲れてるみたいだから元気な僕たちよりもあなたたちの方が宿に泊まるべきだと思ったの…。本当はもう一部屋譲りたいんだけど、ねぇ」

と微妙な顔で青年を見る。

「あー、そうだよなぁ。たぶんあいつに言ったら『はぁ、なんであたしが知らない人の為にベットから土の上に行かなくちゃならないわけ!?あんたたちだけで行きなさいよっ』って言うぞ、絶対」

そう言って笑う。

こちらの青年は左の眼の下に変わった形の痣があった。

耳も普通の人間とは違った形をしていて、瞳も少し違う感じがした。

「まぁ、そんなんだから一部屋で許してくれな?」

…聞く限り本当に善意なようだった。

「わかりました。本当にありがとうございます、お金は僕たちが出しますので…いくらですか?」

「わー、ダメ!いいんだよ、僕が勝手にお願いしたんだからお金くらい払わせてください」

キャロさんは宿のカウンターの前に立って、僕を阻止した。

青年がその間にドバルに鍵を投げ渡した。

「部屋、5号室な。…たぶん大丈夫とは思うけど隣がうるさくても我慢してくれよ。言うと怒るから」

「サンキュー!」

二人して同時に親指を立てて、ドバルは本当誰とでも打ち解けれるんだな…感心しますよ、本当に。

…とりあえず二人部屋が手に入った。

「んじゃ俺も一緒に外で寝る!」

突然ドバルが青年に言う。

…まぁ、二人部屋ならライルさんとエリウスさんに使ってもらうのが一番だろうし。

僕がラズさんに目で僕の考えてることを伝えると彼もわかってくれたようで同意だと頷いた。

「お邪魔でなければ僕らもご一緒させていただいてもいいですか?」

そういうことで僕たち男性陣とキャロさんと青年はともに外で寝ることになった。

ライルさんのことはエリウスさんに任せても大丈夫だろう。


外で僕たちが準備をしているとキャロさんたちが荷物を持ってきた。

「すみません、説明してきたんでもう大丈夫です」

「むしろすみません、助かります」

まだ夜には早かったので旅の話をサラッとしたり、自己紹介をしたり、残りの仲間の話をする。

こうやって他の旅人と共に寝るのは珍しいことだった。

「レオナードとドバルは雰囲気が似てるね」

キャロさんはいつものようにドバルに敬語とかいらないかんな、と言われ丁寧な言葉遣いが少しなくなったが、まだ大人っぽくふるまっているような気がする。

こんなにまじめな子供が最近は多いんだろうか。

ライルさんもこうだった。

「俺たち前世双子だったとか?」

レオナードとは青年の名前。

彼はドバルとハイタッチをした。

「かもな!仲間だ~」

「おうよっ」

本当に意気投合してる。

「でもドバルは馬鹿ですよ?」

「馬鹿じゃねーしっ!!な、ラズ」

黙ってみていたラズさんが振られて口を開く。

「時々、抜けてるところがあるけどな」

全否定しないラズさん、さすがです!

「ほらな!」

「いやいや、馬鹿じゃないって認めたわけじゃないから」

んだと~と切れるドバル。

僕が鼻で笑ってやるとキャロさんが笑った。

「本当に面白い。でもレオナードもちょっと抜けてるよね」

「キャロの方が抜けてるって。んでもって、すぐ人の心配するし…」

「それはいいことじゃないですか」

僕が言うとレオナードさんは顔をしかめた。

「そうなんだけどさ、それで兵士とかに見つかって追いかけられるっていう」

「ごめんねー?」

彼らは国を相手に逃げているらしい。

そしてとても遠い所から来たらしく地名を聞いてもさっぱりわからなかった。

だから何の国から逃げているのかというのまではわからなかった。

「気にしてると思うか?俺はどこまでもキャロについてくって」

言葉も顔も、ドバルに似ている。

本当に…。

「ありがとう、今度レオナードの好きなもの作ってあげるよ」

「料理作るのか?」

珍しくラズさんがキャロさんに自分から尋ねた。

「うん、料理は僕の仕事なんだ」

「ラズの料理はうまいんだぞ~」

口を開けたドバルがよだれを垂らしながら言うので、僕はドバルのコップをよだれの滴る下にそっと置く。

「そうだ、今日一緒に作りませんか?」

キャロさんの提案にドバルが…ドバルとレオナードさんが歓喜する。

「もちろんだ」

ラズさんの返事に一番喜んだのはその二人。

もちろん僕も…。

「でもお前は幼いのに、料理ができるのか。偉いな」

ラズさんがキャロさんの頭の上に手を置く。

「小さいころからレイちゃんにやらされてたから…」

レイちゃんというのは彼らのほかの仲間。

そしてキャロさんの幼馴染らしい。

先ほど宿でレオナードさんがまねをしたのは彼女のまねだ。

お嬢様らしく、顔パスでいろいろできるくらいらしい。

ただレオナードさんいわく性格がツンデレで、素直じゃないのがいけない、とのこと。

レイさんのほかにはチェイさんという竜の女の子と旅をしているそうだ。

まだ子供でしかも人間の言葉を使えるらしい。

あまり好戦的ではなく、よく語尾に「~ですぅ」というのが特徴だと聞いた。

チェイさんに対してはレイさんも素直らしく女らしく見え…これ以上を言うと殺されるらしいので黙っとく。

「それより僕、何歳に見えますか!?」

急にキャロさんがまじめな声でラズさんを見上げた。

身長も低いし、声も高いし、幼い顔もしている。

まぁ、普通の子供という感じだと僕は思う。

「8歳!」

ドバルがラズさん無視で答えた。

それを聞いた彼は一瞬固まったかと思うと、しゃがみこんだ。

彼の周りの空気がどんどん暗くなって、重くなっていく。

「やっぱり子供なんだ…」

ドバルが助けを求めてレオナードさんを見るとやっちゃった、っと肩をすくめた。

「僕は15歳なんです」

首に巻いてる体に不似合いなマフラーに顔を埋めてそう言ったキャロさんは、ぐすんと鼻をすすった。

…それにしても15歳!?

さすがに僕も驚いてしまった。

「俺の2つ下?」

ドバルが謝りながらも驚きを隠せないようだった。

「あれ、ドバル俺と同い年だ!」

レオナードさんが今度はドバルに対して驚く。

「まじで!?因みにジェリオスも同じだぞ。双子だから」

そういうと涙目のキャロさんが顔をあげた。

「え、嘘!僕の年よりもびっくり情報だよ、それ!…似てるとは思ってたけど、双子?性格あんまり似てないんだね」

ラズさんが見つめられて頷く。

「似ているかと言われれば正反対な双子だ」

「でも双子だもんな!」

「もうちょっと馬鹿じゃなかったらよかったのにとつくづく思います」

因みにと僕がラズさんに尋ねた。

「おいくつなんですか?」

「俺か…。俺は19だ。今年で20だな」

今日話してて一番の大きい声がみんなから聞こえた。

僕は黙ってたけど、もう21とかかと思ってたよ…。

今日学んだこと。

人は見かけによらない。


そうこうしているうちに夜になり、二人は約束通りにご飯の準備を始めた。

すると町の方から人影が見えた。

「ご飯食べに来た」

茶髪でプロポーションのいい女性が鋭い目つきで不機嫌そうにキャロさんに言う。

「これが、レイ。睨まれた人は気絶するという驚異の能力者だ!!」

ぼそっとレオナードさんが僕に耳打ちをする。

そんな能力があったなんて知らなかった。

新しい魔法かな?

「はじめまして、ジェリオスと言います。キャロさんたちの部屋をいただいてしまってすみません」

僕はやめとけというレオナードさんを押し切り、挨拶をした。

魔法には耐性ある自信あるし。

彼女はくるっとこっちを向いた。

目つきが悪いのか怒っているからなのかはわからないが、確かに鋭く僕を見る。

「部屋はキャロ達が勝手にやったことでしょ。だから私には関係ないわ…まぁ、これも何かの縁。よろしく」

「こちらこそ」

レオナードさんがぽかんと僕を見ていた。

「レイが、なんか素直だ!!槍が降る、ロンギヌス、ゲイボルグ!?」

そういうとレイさんが一瞬で彼のもとに移動し、踵落としを一発…。

ええ、血だまりができましたとも。

「我が同志よっ!!」

ドバルが意味わかってんだか知らないけどそう言ってレオナードさんを起こす。

「きゃ!な、なしたの!?い、今回復するっ」

また違う声が聞こえたと思うとエリウスさんだった。

レオナードさんに治癒魔法をかける。

「う、ぅぅ…」

「大丈夫ですか!?」

レオナードさんが目を開いた。

「あれ、俺死んだ?なんか天使見える」

「どうしよ、治んないよ~」

「ほっとけば治るわよ…あ、そうだ」

レイさんがにこにこと不敵な笑みを浮かべてキャロさんの方に行った。

ライルさんも来ていて、人形を抱いたままレオナードさんを見てあわあわしている。

「レオナード、目を開けなさい!」

レイさんの声にみんなが、もちろんレオナードさんもレイさんの方を見る。

そこには猫耳の付いてメイド服を着て、しっぽまで付いてるキャロ…さんが。

「レオナード、大丈夫!?」

「なっ…」

彼は声を失った。

だれだってそうなるよ!!

と思ったらレオナードさんは再度倒れた。

「回復します~!」

エリウスさんがあわてる。

「きゃ、キャロ?」

ドバルがそう言うとにこにこして歩いてくる。

ついている鈴がチャランチャランと鳴る。

「はぁい、どうしたんですか~?ボク、キャロだよ~ですぅ」

僕はこの一瞬でこれがキャロさんじゃないとわかった。

ドバルは気付いてないようだった。

「あなた、チェイさんですか?」

「わぁお、気づかれたですぅ!?そうで~すよ~」

すると一瞬光ったかと思うとキャロさんはさっきと同じ格好をしていて、彼の手の中には緑色の小さな竜の子が。

初めてみた竜はかわいらしい顔だった。

小さな羽根で空を飛んだかと思うと空中で一回転した。

そして一回転し終わる頃には少女の姿になっていた。

「はじめまして、ですぅ!」

「もう、レイちゃんもチェイも来たなら言ってくれればよかったのに!それに僕おもちゃじゃないんだから、ちゃんとやってもいいか許可取ってほしいな」

キャロさんが頬を膨らませてラズさんのところに戻って行った。

そのころにはもうレオナードさんは復活。

なんなんだ、この人たち。

僕たちは唖然とすることしかできなかった。

なんていうか、本当に何が何だか訳がわかんない。

「あれ、キャロ!?お、怒ってない?俺のキャロ~!!」

そう言ったのは間違いなくレオナードさん。

エリウスさんがどうしようと悩みこんでいる。

これはもう回復魔法がどうとか、エリウスさんの力が足りないとかじゃないと思うから安心てください…。

「ほっときなさい、私たちはゆっくりしましょ?キャロ~」

「はい、どうぞ」

キャロさんがどこからともなく現れてレイさんやほかのみんなにお茶を汲み、配っていく。

そして颯爽と帰っていく。

忙しそう…。

「ジャスミンティ、おいしいわよ?本当はクッキーも付けたいけどご飯前だから我慢ね」

彼女たちにはこれがいつも通りなんだろうな。

それはそれで凄い…。

僕たちはされるがまま、というかその場にいるだけでいっぱいだった。

さすがのドバルの顔も?マークを出してどこか遠くを見るような眼でその場にいた。

あぁ、今ならその気持ちもわかるよ?

「宿のご飯よりこっちの方がおいしいから、たくさん食べなさい」

「ラズも料理すごーく上手なんだよ、だからおいしさ倍増だね!!」

レイさんはエリウスさんと仲がいいようで話をする。

僕からするとエリウスさんレイさんがよく怖くないですね、だったけど。

レオナードさんに踵落としとか…そもそもなかいいのか悪いのか。

「本当においしいんだよな~」

まぁ、このようにけろっと治った彼はレイさんたちの話の中に入っているわけだが。

「またせたな」

声の方を見るとラズさんとキャロさんがご飯を運んできたところだった。

美味しそうな匂いはずっとしていたが見た目も本当においしそう。

僕たちはご飯の準備を手伝だった。


料理の種類もたくさんあり、それぞれがそれぞれにおいしい。

「ラズさんがいて助かりました~」

「俺も新しい知識を学べてよかった」

ラズさんはキャロさんとずっと話をしている。

普段は無口な彼もたくさん話していて、こんなに話しているのを見るのは初めてかもしれない。

因みに僕たちは二人の料理を無言で食べていた。

あまりのおいしさに手が止まらない。

自分が小食であることを憎みたくなるほど…。

「あ、レオナード。グリーンピース残さないの!」

彼のお皿の上には緑の丸い豆が。

「嫌いなの?」

「これだけは…ドバル代りに食って?」

「野菜育てるのがどれだけ大変だと思ってんだよ。でもその分愛情とか入ってるから食べろ~」

まぁ農家だったしね。

「そーゆうキャロも食えよ!!」

キャロさんは僕以上に小食だった。

それぞれの料理を一口も食べていないように見える。

小柄だし…補足すると身長はライルさんよりも小さいが年はライルさんより2歳年上である。

「食べたもん。んと、ラズさんと、ほら…味見したからお腹いっぱいなの」

なんだか歯切れの悪い言い方が気になったが実際そうだろう。

ラズさんはたくさん食べる人だし味見をいくらしてても食べれそうな感じである。

「デザートも作ったから、レイちゃんに食べられる前に食べた方がいいよ」

もうすでに半分ほどなくなっている。

もちろんレイさんが主食を無視に食べたからである。

「ドバルも止まりませんよ…?」

そう、奴も食ってる。

これは競争になるな。

僕は先にお皿に取ったからよかったけど。

今日の夕飯は大皿に盛ったものを自分でとって食べる方式であった。

急に気になってライルさんの方を見ると競争しているデザートを食べたそうにしている。

しかし近寄りづらいみたいだった。

僕はライルさんの隣に行った。

「これ、手をつけてないのですが食べますか?」

そう言うと彼女は頬を染めた。

「いいんですかっ!?」

「ええ」

僕が笑って言うとますます頬を染めて、笑った。

「ありがとうございます、いただきます!」

受け取った瞬間に食べて、にこにこする。

その笑顔を見て僕はあげてよかったと思った。

それに今は不安定になっているんじゃないかと心配していたので、元気な姿を見れて少し安心した。

それにしても料理の中には見たことのない料理があった。

きっとキャロさんの国での料理なんだろうな。

とても面白い味しているし、触感も柔らかいと思ったらしゃりっとした触感に変わったりと不思議な感じだった。

一種の魔法みたいに感じた。

僕も全部食べられてしまわないように食べられるだけ食べることにした。

せめて全部一口は食べたい。


あんなにあった料理もきれいに空になった。

皆でごちそうさまをして、皆でお皿を洗ったり片付けをしたりした。

「本当においしかったね、おやすみなさ~い」

それが終わると女性陣は宿に戻って行った。

そしてまた男だけが残る。

「僕、見張りやるからみんな寝てね?特にドバルたちは熟睡していいからね」

キャロさんがそう言って僕たちにお茶を汲む。

気が利きすぎる人だ。

「キャロも寝ないと…」

ドバルが言うことに僕も同感だ。

「ううん、僕あんまり寝ないんだ。んと、眠くないの。だから気にしないで!ね、レオナード?」

「うん、こいつ不眠症すぎるから。それに部屋足りなかったんだし…休まなきゃなんないんだろ?」

僕は頭を下げた。

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますね」

今は休まなくちゃ、この後ウジ虫と会ったら辛い。

僕たちは素直に甘えることにした。


皆が寝床に入り、キャロさんだけが夜の中に一人になる。

僕たちは布団に入った瞬間に眠ってしまった。

「…今日は楽しかったね、そうでもなかった?」

なんだか目が覚めて、寝返りを打つとキャロさんの声が聞こえた。

誰かと話をしている口調だが、ドバルもラズさんも寝ている。

見るとレオナードさんも寝ている。

…楽しかったね?

ということはレイさんとかだろうか?

「また、そう言って…。相変わらずだね」

耳を澄ましてもキャロさん以外の声が聞こえない。

なら独り言?

ん…?

そのとき僕は一つの疑問を抱いて、起き上がった。

「あ、起しちゃった?ごめんなさい」

キャロさんは僕に気づくと頭を下げた。

「いえ、そういうことじゃないんです。それより、誰とお話ししてたんですか?」

それを聞くとマフラーを握って困った顔をしてしまった。

…やっぱりおかしい。

風が少し強くなった。

「無理に言わなくてもいいですよ。キャロさんのこと信頼してますから」

「あ、はい。………ジェリオスは」

しばらくしてキャロさんが僕の名前を呼んだ。

…あぁ、なるほど。

僕はこのとき一つの確信を得た。

「ジェリオスさんは魔法使いなんですか?」

もっと違うことを言われると思って構えていたが。

僕は頷いた。

「はい、一応は。キャロさんもそうですよね?」

「うーん、まぁ。僕自身には魔法を使える能力なんてないんだけどね…」

キャロさんも僕がそのことに気付いているとわかっていると思う。

「空気中の星水が異常だったのはそれが原因ですね」

目が覚めて意識がはっきりして気づいたのだが、星水の流れがおかしかった。

まるでキャロさんを避けるように星水が通っていて、なおかつここ一体の星水が外に逃げるように薄くなっていた。

「星水っていうのはよくわからないけど、たぶん。こっちの世界ではジェリオスみたいな魔法使いが当たり前なの?」

「…僕が、特殊なだけです。普通の人間とは違うので」

キャロさんは逆に僕のことをどれほど気付いているんだろう。

初めは変わった雰囲気の子供だと思っていたが、話をしているうちにこの子の性格や力がなんとなく見えてきた。

彼も僕とは違うかたちで特殊な人間の部類…。

レオナードさんも違うオーラを出していたけど、それよりも嫌なオーラが彼にはある。

夜になってはっきりわかった。

「この空気を作っているのはキャロさんの意思ですか?」

僕はさっきから何かわからないものにずっと見られている気がして嫌だった。

これ以上踏み込むなと言われているように感じる。

「ううん、違うよ。大丈夫、何もしない…何もさせないから」

キャロさんは笑顔で言った。

彼の笑顔、表情のすべてが真意だと思う。

「僕も一緒に見張りやりますよ。おかげさまで魔力も回復できました。…僕は貴方に危害を加えませんから話しましょう?」

「眠くなったらいつでも寝ていいからね?」

キャロさんの同意をもらい、話を始めた。

いやな空気はおさまり、しだいに星水も集まってきた。

そのあとから僕たちは世間話や当たり障りのない程度の昔話などをした。


夜が明け、僕たちは朝食の準備をした。

僕は料理に自信がなかったからお皿を渡したりとかしかできなかったけど。

それでもキャロさんが助かるよ、と言ってくれるから嬉しかった。

「ありがとう、やっぱり一人よりは早いよね」

「僕は何もしてないですよ」

みんながいつ起きてもいいように準備を終え、座る。

「キャロさん、一つ聞いてもいいですか?」

「ん?いいよー」

「universal starってご存知です?」

キャロさんはしばらく手をあごにあてて考えていた。

「聞いたことはあるよ。何かの会社?」

「はい。僕らはそこと闘っているんですが、何か情報を頂けたらと思いまして」

「それならレイちゃんに聞くといいよ。レイちゃんはお嬢様だし、いろんな会社のことに詳しいから。こっちにきてからも色々情報集めてたみたいだよ。あ、僕から聞いとこうか?」

「いえ、大丈夫です。ありがとうございます、後ほど尋ねてきます」

そう言うとキャロさんはお茶をくれた。

僕はそれをもらい、飲んだ。

暖かくておいしい。

「ジェリオスはいつもそんなに丁寧なの?」

キャロさんが自分用のお茶を汲んで隣に座った。

「え?まぁ、いつも通りですけど…丁寧ではないと思いますよ?」

「丁寧だよ。僕はうまく敬語使えなくて…。どうやったらそんなにうまくできるの?」

僕は困ってしまった。

本で読んだ文章がだいたい「です」「ます」口調だったからなんでか調べたら敬語というものだと知った。

サクラも施設の人間も敬語は使ってなかったからなぁ。

「恥ずかしい話、僕は一年前に言葉をちゃんと学んだんです」

「一年前!?」

キャロさんは首をかしげた。

僕は頷いて、お茶を一口飲んだ。

「その時に文字、言葉というものに出会ってひたすらに本を読んだり、普通の人間とともにやっていけるように、と他の人の言葉を聞いてノートにまとめたんです。そしたらこんな感じになってしまいました…」

「ドバルにも敬語使うもんね…」

「あいつは馬鹿だから不要だと思うのですが癖で…。でも敬語と言っても丁寧語なだけなんですけどね。語尾にです、ますをつければだいたいは大丈夫ですから簡単ですよ。キャロさんはできてると思いますが…」

キャロさんもお茶を飲み干し、僕のカップも持って立ち上がった。

「そんなことないよ。でも頑張ってみる!あ、チェイはどうなの?ですぅ、って言うよね。あ、ありがとう」

僕も立ち上がりキャロさんの手伝いをする。

「どういたしまして。チェイさんのはちょっと…敬語ではないと思います。なんて言うのかはわかりませんが小さいうが語尾に入るのは少し違うと思います」

「そっかぁ。頭いいね!僕ももっと本読まなきゃな~」

そのあとラズさんが起きて僕たちは作ったご飯を渡し、そろそろ起こそうということで二人を起こしたのだった。


しばらくして僕はレイさんのところに行くことにした。

ウジ虫についての情報があればいいなと思いながら、部屋をノックする。

「どうぞなのですぅ」

チェイさんの声が聞こえて僕は扉を開いた。

「お邪魔します」

僕の姿を見ると竜の姿だったチェイさんは驚いたようにレイさんのところに飛んでゆく。

レイさんは僕を静かに見据えた。

僕はおはようございます、と挨拶をして彼女の近くに行く。

「なにかしら?」

「universal starという企業について何か知っていれば教えていただきたくてきました」

彼女はチェイさんを抱き、頭をなでた。

「universal starねぇ。その企業はつい最近知ったからあまりよく知らないのよね」

僕はため息をついた。

もし何か、何でもいいから情報がもらえれば…。

そう考えるとがっかりだった。

「でも」

僕が帰ろうと思ったときレイさんはお菓子を出して、チェイさんに渡して笑った。

「あいつらの一部がこれからどこに行こうとしているかは知ってるわ」


僕がキャンプ地に戻るとエリウスさんたちが来ていた。

みんな揃っていたので僕はこれからどうするかをサラッと伝える。

話し終わると二人が近寄ってきた。

「あれ、レイたちは?」

レオナードさんは僕と来ると思っていたようで首をかしげた。

「後で来るそうです」

ドバルが僕の顔を見て、もう行くことを悟ったようだった。

「すみませんが僕たちはもう行きますね…」

「部屋、サンキューな!ごはんも超うまかった!!」

二人が残念そうな顔をする。

各々に挨拶し、ご飯おいしかったねとか、また会いたいねと話を交わす。

そして僕らは荷物を持った。

「…また、会えるかな?」

キャロさんが僕らに袋に入ったお菓子を渡しながら言った。

どこまでも人のためにするのが好きな子なんだ。

「もちろん、会えるに決まってるだろ?」

ドバルが笑って言うと彼もレオナードさんも笑った。

「バイバイ~、レイさんとチェイちゃんによろしくです」

ライルさんも二人に手を振って、僕たちも歩きだす。

たった一日の出会いだったけどとても楽しかった。

また次会った時は僕も彼らのために何かをしてあげよう。



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