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爆天砕地ダテカイザー  作者: 相羽マオ
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第6話 結成!?スーパーなロボットチーム!

 ダテカイザーは正義のロボットである。今日も急なメンバーの増加に気圧されながらも愛と正義の為に戦うのだ。



「彼女たちがカナン姉妹」


「ローラーン・カナンよ」

「…ミリア・カナン、です」


姉がローラーンで、妹がミリア。若い。まだカイと同じくらいではないか。

 ローラーンの方は明るいオリーブ色の髪で、耳を覆うあたりまで延びている。快活な印象で、背丈はあまり高くはない。虹彩はヘーゼル色だ。

 ミリアは、姉と似ていた。髪の色、目の色、身長はほとんど同じ。違うところというのはあまりなく、ミリアの方が髪が少しだけ長いことぐらいだ。

 妹の方が内気な性格らしく、体を半分姉の後ろに隠している。服装も似ており、姉が紫の、妹がターコイズブルーのパーカーを羽織っている。

「カイ、もう詮索はしないように」デイトンが釘を刺す。

「分かってるよ」刺さった。


「私はエーリRに乗ってるわ」

「私はエーリLです…」

「彼女たちは姉妹だというのは言ったね。1歳差らしいけど、詳しい事は話してくれないんだよ~」

「そりゃあ…」

「こんな変な奴には話したくないよなぁ」うんうんと頷いた。


「君、カイっていうんだっけ?君の戦い、見たよ」

ローラーンが話しかけてきた。どうやら、エラント支部の戦いのことらしい。

「おう…」

「無茶するみたいね、君。面白い」

カイの顔を覗きこんで、ニッと首を傾けて笑う。向日葵みたいだ、となぜかカイは思った。

「お姉ちゃん、迷惑だよ…」

妹のミリアがローラーンの服の裾を掴んでぐいぐいと引っ張っている。

「そうね、また後で」

足早に行ってしまった。その後をミリアが付いていく。


「大丈夫か、あの妹は…」

「でもパイロットなんでしょ?」

「そうだねぇ」

男が口を開いた。

「あの娘たちのロボットはすごいよ。あとで見てみるといい」

嬉しそうに喋るので、カイはなんとなく分かった。こいつ、メカニック魂の人間か。

 よくよく見ると男の白衣のポケットには六角レンチやスパナが入っている。そんなものロボットの整備に役立つのかしらないが、そっち系統の奴ではあると確信した。



「最後に彼だ」

現れたのは、大人の男性だった。20代の後半くらいだろうか。清潔感がある。髪は黒で、男性にしては少し長く、襟足にかかるくらいだが、違和感はない。襟付きの水色シャツを着ていて、洒落た社会人のカジュアルな格好に見える。長身で落ち着いた雰囲気があり、いかにも人生経験が豊富そうである。面倒見のいい兄ちゃんのようにも見える。


「ソリル・ヘイゼルだ。よろしく頼むぜ、少年」


気さくに話し掛けてきたソリルは、この船のロボット軍団のリーダーらしい。

「男1人対生娘3人だよ。羨ましいよねぇ」

「それセクハラだぜ?しかもアストル、お前も男だろうが」

「このおっさん、船の名前が自分の名前なのか…」

そう言われると白衣の男は、

「自分でつけた訳じゃないんだ!」と弁明した。

「ソリルくんは南イエストの出身だよ」

「会ってまだ1週間だってのに…こいつには詮索されまくりだぜ」

「はは…」


デイトンは気圧されていた。個性的なメンツだ。しかもこれだけ大人数を1度に。12年間必死に習得したコミュニケーションが役に立つだろうか。実戦はシミュレーションとは違うというデータもあるし―――

「で、君たちは僕らに協力してくれるのかな?」

「お前たちの考えはよーく分かった。でも、正直な話、まだよく分からん」

するとアストルは得意げに、

「なら、これから始まる実戦を見ててよ」

と言った。

「でも、これが初の戦いだぜ?」

とソリルが付け足した。

「な、なんじゃそりゃ…」

まだ戦ったことすらないのかよ。


 

 今回の作戦はこうらしい。

 まず、現在地はアサキメスの最西、元ミーデスをはじめとした諸国と、ダレストアの間のバーゴート海である。

 エラント支部はミーデスの対岸、つまりダレストアの近くに位置している。しかしそこが潰れたことにより、本国からの補給は一気にバーゴート海の北部、優先度第2位の最前線支部、ガロント支部に集中する。

 ガロント支部はダテカイザーのエラント支部襲撃を受けて、本国から警備の増強の為高貴(ロイヤル)を多数搬出しており、第2皇子アランクスや騎士(パラディン)、さらに取り巻きのナンバー5がいるらしい。

 そこで、2部隊に分隊し、まずは海から補給部隊を強襲する。次に、動揺し、後方の警備に人員を割いたガロント支部を真正面から突破する。

「…どうやってこんな情報を?」

「僕らに賛同する人間はいるのさ」アストルは誇らしげに語る。

「決行は3時間後の13時から。それまではみんな待機だよ~」


 

 格納庫。日の光が射し込む為の窓が少ないため、日中でも暗い。大きな会館のホール1つ分くらいの大きさで、床には無数のケーブルや整備中のまま無造作に置かれた機材の群。それでも格納庫は広く、足の踏み場くらいは十分にある。

 2人の少女が横並びになっている自分たちの機体を見上げている。エーリRとエーリLだ。

 エーリRは機動性に優れたロボットである。細い両足が特徴的であり、足技を得意とする。また、爪先と脛をつなぐように、ダテカイザーと同じバイブレーションニードルの片刃仕様が存在しており、キックと同時に敵の装甲を切り刻む。

 エーリLは厚い装甲が特徴的だ。厚手のコートを羽織っているように見える。このコートは戦闘中にパージすることができ、姉のエーリLと同じ外見になる。しかし、コートに干渉する為バイブレーションニードルは装備されておらず、パージするのは逃亡時くらいだけしか使えない。主力装備は大きい口径の長距離ライフルだ。


「ミリア、本当に付いてきて大丈夫なの?」

「私は…お姉ちゃんと一緒じゃないと、死んじゃうから」

「…ほんとに変わったね」 


 あの時を思い出す。2人が、まだ水車の家に暮らしていた、あの頃。花畑の中にぽつんとあるレンガの家。俗世とは隔絶していたあの町。

幸せだった。将来は2人で花屋をやるのだと決めていた。お母さんもお父さんもそれに賛成してくれた。みんなで、ずっと仲良く暮らすんだ。

 限りなく続く地平から、鉄の巨人たちがやってきた。今となっては旧型となったイエスター。そんなことも知らない2人は、鉄の巨人の出現に恐怖した。焼かれる家、人、そして花畑。武力による介入だというが、そんなのは建前だ。アサキメスの侵攻なんてなかった。

 無関係を貫くこの国に、イエストが痺れを切らしたんだ。

 

 …鉄の巨人を両断する、黒い1つ目。彼が逃がしてくれなければ、私たちの命は、きっとなかった。

 あんなにお喋りだったミリアも、今は内気な性格になってしまった。私がなんとかしないと。世界で…もうたった1人の、家族だから。


「あんまり悩むなよ」

そう声をかけたのはソリルだ。

「悪い事に少しでも付加価値をつけると精神的にいいらしいぜ」

「…こうして戦えること、かな」

それは違った。あの時の侵攻がなければ、私たちはまだあの町で暮らせたんだ。あいつらさえ来なければ――――


「ローラーン」

ミリアがはっきりとした口調で、そう言った。


「あんた、まだ…」

「私のことは気にしないで」

ミリアがローラーンを真っ直ぐ見つめている。息苦しい。


「あなたの妹は、そう簡単には死なない」

確証があるような言い方だ。

「そうね」

ミリアも、自分の見ていないところで成長している。そんな事実も、受け止めなければ。

「もう、14だもんね」

いつだって、こうだ。重要なことだけはミリアが知っていて、自分が脱線すると修正してくれる。でも、普段は本当に頼りなく、情けないのが私の妹だ。どうして、大切なことだけを知っているの?それを私にも教えてほしい。迷いを捨てたい。


 補給部隊に強襲をかけたのは、カナン姉妹だ。

 船から降下するエーリR・L。

「アストル、行けるわ」

船長室とマジックで扉に書き込んであるモニタールームで、アストルはディスプレイとにらめっこしている。その横にいるのはカイと、野外外出仕様のデイトン(例のコースターをデバイスとするのだ)だ。

「ヤバくなったら俺もいくぞ」カイが言う。

「その必要はあるかなぁ?2人とも、よろしく頼むよ」


「了解」「…了解」


 飛行船から射出される2機。エーリ両機には噴射口はない為、海面にギリギリまで近付いての射出になる。


「降下まで3秒」


コックピットの中、ローラーンが口を開いた。

「私があんたを守るから」

ミリアが大事なところで私を守ってくれるなら、私は残りの大部分を守ってあげないと。まったく、世話が焼ける。

「うん…」

ミリアは小さく呟くように言葉を返した。さっきの確証があるようだったのはなんだったの?まぁ、いいんだけどね。

(私を、励ましてくれてありがとう、ミリア)



「さて…」

アストルは上目をつかってモニターを気にかけている。

「おい、補給船たちにはたくさん人が乗ってるぞ」

「分かってるよ。僕も人は殺したくない」

「だったらどうすんだ?」

「これを使うんだよ」

アストルが掌を広げて見せたのは、鍵だ。

「通信に介入しちゃうよ」



 ナンバー5、リークス・ダントはガロント支部に駐在していた。わざわざ部屋まで用意してもらっていて、ソファーでつい寛いでしまう。

 エラント支部が壊滅、次に侵略の要となるここを守らなければならない。それにしても、とリークスは思う。

「カタセが敗北するとは…」

違和感を感じていた。カタセが敗走したことなどない。王の気まぐれで、奴を逃がすようにしたことをカタセの失敗としているのか。純粋に敗北したなどという考えには一切至らなかった。カタセが負けるはずがない。その通りであるのだが、カタセはバーゴード海を渡ってアサキメス側に戻り、王都に向かっている最中である為、実際を知る者はいない。

「さて、またデータを採らなければ…」

(彼に追い付くために)


「2日続きで彼が来ないことを祈るよ」

そう言うのはアランクス・アサキメス第二皇子。ニーアと共にガロント支部に滞在している。

「…」

ニーアは返事をしなかった。奴、ダテカイザーとの再戦を望んでいるからだ。負けたままでは終われない。何より、奴は自分を柄にもなく熱くさせるのだ。

 透明な瞳が、またギラギラと燃え始めた。それをアランクスは見逃さない。

「やれやれ…かな」




 連邦中枢国家イエストの、ワリン国際空港。いまや訪れることが出来なくなったアサキメスを除き、MD連邦内ならばほとんどにラインが繋がっている。戦闘が激化しているダレストアなどは現在復航のめどが立っていないが、それでも毎日多くの航空機が出入りを繰り返している。

 空港職員の男が、端末で連絡を受けていた。藍色のキャップを被っても目立つ長い白髪で、少しウェーブがかかっている。


「分かりました…。マークたちにも声を掛けておきます」

「急げ。1時間後には介入開始だ」

「了解」


ため息を吐いて、キャップを被りなおす。表情が硬くなった。

「さて、人殺しのお仕事だ」


 


 こうして、カイらツィス団、アサキメス、イエスト・イエスターが一同に介しようとしていた…。それぞれの思惑を抱えて、戦場へと赴く。

 

閲覧していただきありがとうございます。

馬鹿でかいマニュピレーターが好きです。

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