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爆天砕地ダテカイザー  作者: 相羽マオ
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第4話 決着!そして新しい戦い!

 ダテカイザーは正義のロボットである。今日も大見得を切って自分自身の正義の為に戦うのだ。


 進退窮まれり。両腕を綺麗に切り落とされ、しかも敵は王国の中枢も中枢も中枢の強者である。腹心で用心棒。こんなの勝てる訳がない。

「名を名乗っていなかったな」

1つ目玉が怪しく光る。

「私はサムライ・カタセ。カタセ・ミーデスだ」

「サムライ…」

いつぞや聞いたその言葉を、カイは反芻する。

「ミーデス…、10年前のサムライ戦争で滅んだ国…」

「だが祖国の魂は未だ潰えず。私と共にあるのだ」

強く、言った。重く、力強い。

「じゃあ、なんで…」

「私は決して屈している訳ではない」

そう言うと、この会話は終わりだと言わんばかりにカイの言葉を遮ってこう言った。

「降りてきて貰えるか。顔を合わせておきたい」

…サムライとは、バカなのか?

 デイトンは本気でそう思った。心からの気持ちである。



 デイトンはもちろん反対したのだ。先程不意を突かれたようにこれも罠ではないのかと思った。しかし、カイが「だったらどうする?」と聞いてきたので何も言えなかった。

 デイトンはコースター型のデバイスから立体映像として登場する。だから、外に出る際はコースターを持ち運ぶ。

「ARってやつか?」

「私はモニター通さなくても見えるわよ」

「ふーん…」よくわからなかった。

コースターを取り外し、外に出る準備をする。



 降着する狐月。それに合わせてダテカイザーも膝を折る。

…動く気配はない。どうやら本気のようだ。コックピット下が開く。ロープが降りてくる。電動ロープだ。人影が見える。それに合わせて、カイも電動ロープで降りる。

 細い体躯だが、貧相さを感じさせない。高い背丈。肩幅は広く、顔は鋭い印象だ。細く吊りぎみな目。オールバックの頭髪が、大人の雰囲気を漂わせる。少年の時代を遥か遠くに捨て去り、多難を越え、人間としての完成を間近としている。いや、既に完成しているのではないか。そうデイトンが無意識に持ち上げてしまうほどには、厳格な面構えだったということだ。


「君がこのロボットのパイロットか。…若いな」

笑った。労うような笑顔だ。

「…何の為にこんな?」

「君の顔を見て見極めたかった。先程の意志が本当かをな」

「嘘はつかない」ギラギラとした瞳だ。力強い。

「どうやら本当のようだ。…今となって正々堂々と戦いたくなるとはな」

「あんたのおかげで」

ダテカイザーに向けて指を指す。正座しているダテカイザーは落ち込んでいるようにも見えた。

「悪かった。狐月の両腕を置いていこう」

「は…?」

「無論我が愛刀は譲るわけにはいかないがな」

「そんなことしてあんたの何になるんだ」

純粋に疑問だった。この男は何を言っているのか。カイとデイトンは仮にも反乱分子である。処罰だって下るかもしれない。

「国王はそんな人間ではない。君の存在の報告だけで十分喜んでもらえるだろう」

「はぁ…」

「…俺ってそんな価値あんの?」

「自惚れんな!」

デイトンは怒った。ツッコミというべきか。

「とにかく、私はもう行く。また逢えると思うと楽しみだ」


最後に一言、

「いずれ、私と君は戦うだろう。互いの心命を賭して」

と言った。そして両腕のない1つ目は、踵の裏のローラーを使い走り去っていった。

「…行っちゃったね」

「じゃあ遠慮なく」

残った足だけで壁を蹴り始めた。

 そうだった。支部を壊すんだった。デイトンははっとした。


 ダテカイザーは両手を取り戻してご機嫌なようで、決めポーズを模索していた。

 今いるのはエラント支部から少し北へ行った森林だ。人間もおらず、大きな木々の影でちょっと一服していた。カイは非常用のビスケットを食べている。水が欲しい。それにしても今日1日で、沢山のことが起きた。ダテカイザーを奪取し、行き先すら決めていなかった朝。その考えを改めさせられ、もう一度決意した昼。そして支部を破壊した。なんだか嘘みたいだ。

 どうして自分はこのタイミングで行動を起こしたのだろう。カイは考える。なぜ、今まで起こさなかったのか。―――柄でもない。ただ今日がそういう気分だっただけだ。

 


 森林では電磁波が少ない為微量のエネルギーしか蓄えられなかったが、それでも十分動けるだろう。空は飛べないだろうが。

「それにしても、まさかナノマシンがあそこまで有用だとは…」


3時間前のこと、腕をもらった後。

「どうやってつけるんだ?」

「あの男の人…カタセさんだっけ、このこと絶対考えてなかったよね」陰口を言った。

「横においときゃつくさ!」

「バーカ」バーカ、である。


とかなんだか言っていたが、その通りくっついてしまったのだった。

 デイトンは不審に思っていた。噴射口やナノマシンの性能など、ナビゲート兼メインコンピュータの自分に、こう幾つも知らされていない機能があるというは、おかしいんじゃないか。というか、自分は必要あるのだろうか?

 また問答を繰り返しそうだったので、やめた。そんなものは今までいくらでもやってきた。飽きるほど。…もう独りは、いやだ。すこし思い出してしまった。


「どうした?」知らない内にカイの顔が近づいていた。

「な、な、な、なんでもないわよ!」びっくりした。

「早く移動しましょう!追っ手がくるかもしれないわ」

「それなんだけどさ」

「うん、分かってた」

燕尾服がワルツを踊っていた。

 

 ワルツって踊るものなのだろうか、とデイトンは思った。円舞だから踊ってるでしょ、と、反復問答記録を更新してしまった。この無駄な思考、どうにかならないかな。


 


 敵の数は多かった。エラント支部を中心に小支部がたくさんあったものだから、それが集結してしまっているらしい。30はいるであろう。それにしても迅速だ。さすが大国。


「投降しろ!そこの反逆者よ!」

「人殺しの言うことなんか聞くかよ!」

すぅーっと息を吸い込んで、

「聞け!俺たちは爆天砕地ダテカイザー!俺の正義を…」


―――エンジンの音。回転しているらしい。でも、まだ遠くだ。


「見せてやる!」

「そこは『俺』だけなのね…」


―――まだ、遠い。


「この両腕、さっきより長いな!」

「リーチがある分チャンスよ!」


―――ようやく、肉眼で見えた。


「おらぁっ!一機撃破!」



「…攻撃開始」

「奴さん、落ちてもらうぜ」

「僕の仕事だ…」


 見えた。戦闘機と見まごうそのスピード。空を飛んでいる。丁度、3角形の形になっていた。先頭が青、後続の2機が緑色と灰色だ。

 先頭の青い機体が右手に巨大な銃を装着している。…いや、違う。()()()()なのだ。銃口を前へ向ける。その先はもちろん、燕尾服とダテカイザーの円舞曲。


超硬度質量弾長距離砲(リリ・ダッド)、座標指定完了」


「ド派手にやってやれ!」

「…」


「発射」


銃口から放たれたのは、黒い円柱形の鉛だ。だが、あまりのスピードでそれは、まるで太いレーザー光線のようだった。



 濁った黒色のレーザーが、燕尾服と木々を削り取った。ぽっかり穴が空いた。自重を支えきれなくなった木が倒れた。何体かの燕尾服は、無惨にもコックピットの部分を削り取られている。

 また死んだのか、人が?朝に見た虐殺と同じだ。確かに、戦争は行われている。

 ダテカイザーは運良く無傷だったが、次弾を警戒して、動けない。


「どこから撃ってきた!?」

「これは…北の斜め上空から!でも戦闘機じゃない!」


そんな。飛行できる人型兵器は、まだ存在していないはずだ。…いや、このTS-5のように極秘で開発していたのだ。機体の存在を確認しようと、メインカメラをズームする。解像度は低いが見えた。3機いる。燕尾服を攻撃した所を見るに、イエストのイエスターであろう。3機のイエスター。武力での介入。間違いない。今対峙しているのは、イエスト・イエスターだ。イエストの精鋭部隊。一騎当千のロボット。平和主義を掲げた筈だった国家の、裏切りの象徴。


「ど、どうしよう…」

「そんなの決まってる!引きずり降ろして説教してやる!」

「待って!空を飛べるようになるまであと30分。それまで逃げて」

「30分逃げて3秒の内に決着か…いいぜ!」


早速逃げ始めた。イエスターズとは完全に逆方向だ。

「当たらないようにジグザグに走って!」

「ローラーも噴射口(ブースター)も使えない正義のロボットは、走るしかねぇぇ!!」

ドタドタと地面を揺らしながら走る。


「…」

「何をやってる?目標が逃げちまうぞ?」

「分かっている。3方向から押し込んで鹵獲する」

「僕も異論はないです」

「俺もだ」

「行動開始」


3機は散開し、ダテカイザーを中心にトライアングルを作った。


「うぉぉぉ!」

走る。執拗にも残りの燕尾服はまだダテカイザーを追いかけてくる。「お前らも危ないから逃げろ!」

「とかいって!うまく誤魔化しても!」

細く黒いレーザー光線。緑のイエスターが放ったそれは、燕尾服の顔面に直撃した。


「あれは死んでないな…」

「…イエスターの目的はこの機体ね」

今の射撃で分かった。誘い込もうとしている。

「この場合は…」

カイはレーダーを見る。

「緑の奴が一番近いみたいだぜ!」

「な、何する気!?」

ダテカイザーはしゃがみ、横に倒れた燕尾服の腕をもぎ取った。

「上品な俺の機体に何をする!」

聞き覚えがあると思ったら、シュバールツだ。名前は知らないが、さっき戦った人だとデイトンは気付いた。カイは気付いていないみたいだが。

「一腕入魂!」

「あ、投げるんだ…」

腕が回転しながら飛んでいった。目標のすこし右側に行ってしまったようだ。

「なんだこれ」

緑のイエスターは左横に飛んで避けた。


「今だ!」

助走して飛んだ後、なんとカイが噴射口を使用してしまった。まだ1秒しか飛べない。


「届け!」


緑のイエスターとの距離は、100メートルある。しかし、先程左に避けてくれたおかげで、今は直線上だ。呆気に取られている緑のイエスターの横顔に―――

「ダテ・ブーゥゥストパァンチ!!!」ダテカイザーの拳がめり込んだ。

「な、な、何が…」

ふらふらと滑空するイエスター。そこにすかさず踵落としを決めるダテカイザー。上腕部に打撃を喰らい、イエスターは地面に叩きつけられる。

「ビーム!トンファーぁ!」

掴みかかり、肩と胴との接合部分にトンファーを突き刺す。なかなか肩が外れない。

「こんなところで!」

イエスターは拘束を解こうと足を振り上げたが、空を切った。ダテカイザーは、足を敵の胴の裏へと滑り込ませていたのだった。これも擬似的な意識の共有が成せる術だ。

「さぁ、聞かせてもらうぜ!あんた達の目的をな!」

「そ、それは…」

その時、青い機体がダテカイザーを蹴り飛ばした。

「うわぁっ!」

大きく揺れる。回転して倒れ込んでしまった。

「捕捉できないなんて…すごいスピード」


「…お前を鹵獲する」

青い機体がスピーカーのスイッチを入れた。

「ろ、ろかく?って、何だ…?」

「生け捕りよ!」

「ええっー!」


「…やらせてもらう!」

機体のコバルトブルーが日に当たり輝く。小さい頭に、長い足。それよりも目を引くのは、背面の巨大な翼と、右腕だ。どうやらブースターは翼に付いているらしい。

 右腕は、手首から先がなく、大きな銃口になっているのだ。弾は肘を曲げて露出する装填口から装填するようだ。その弾は右足の太股に1つ。さっき片方は使ったのかもしれない。

 少ししてダテカイザーは立ち上がった。


「おう、やってやろうじゃねぇか!」

「…勝てるのかなぁ?」

「勝つんだよ!」


 青い2体が、対峙する。静寂が場を支配した。

 一瞬でも気を抜いたら―――

 気を抜いていたようだ。

 ガシャーン!!

 

お久しぶりです。

よろしくお願い致します。

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