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爆天砕地ダテカイザー  作者: 相羽マオ
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第2話 攻防!エラント支部の戦い!

第2話 攻防!エラント支部の戦い!

 ダテカイザーは、ロボットである。小国ダレストアが秘密裏に開発した。

 パイロットは、調整手術とトレーニングを重ねた人間以外は務まらない。高さ約5m弱、主武装は150mm口径の銃、そして両腕の装甲をスライド、変形させることによって出来上がるトンファー。

 しかし、ダテカイザーには、隠された機能があるのだ。カイも、デイトンも、まだ知らない…。

 


 戦いの後、ダテカイザーはしばらく突っ立ったままだった。2人で次の行き先について案じていたからだ。

「正義っていったって…どうするの?」

「今の見てて分かったろ。まずは高貴ロイヤル野郎をぶっ潰す!」

高貴というのは聖アサキメス王国を揶揄した言い方である。先程教えてもらった言葉を早速使うカイだった。

「でもそしたら逆サイドからMDの国がおこぼれ貰いに来るんじゃないの?」

「まずは目立つ悪いやつから倒していくんだよ!」

「はぁ…」

デイトンは人工知能、つまりAIである。実体がなく、映像が話している状態だ。本体のコンピュータはダテカイザーに直接埋め込まれている。

「じゃあ、ここから一番近い支部を潰すってことで…」

「あくまでもコックピットは狙わない方向で」

「はいはい」


 勢いよく啖呵を切ったカイも、移動の時間は退屈だ。ダテカイザーで歩き始めて30分程経ったら、レバーを握る両手が疲れてしまった。

「オート操縦とかないのか…」

「長距離移動なんて視野に入れてないからないわよ…」

せめて空でも飛べたら。住宅の間を縫うように歩いているのだ。

「正義のスーパーなロボットが空も飛べないなんてな…宇宙人が来たらどうすんだよ」

空が飛べるくらいでは宇宙人には勝てないだろう、とデイトンは思う。

 この世界では、宇宙開発に着手している国家は少ない。軌道上にリングを造る『木星計画』と言うものもあったが、結局巨大超国家2国の争いが始まる頃には止めてしまっていて、今も建設中のリング柱がほったらかしのままだ。

 それにしても暇だ。やることがない。こうなると、せっかく目の前にいる話し相手に話す気力さえなくなる。

「あああ…」

声にならない意味不明な鳴き声を上げながら、カイは両手の継続的に蓄積する痛みに耐えた。


 ―聖アサキメス王国 エラント支部―

 エラント支部はアサキメスの戦線の中でも最前線である。そんなところにいてはいけないような人間が、いた。第二皇子のアランクス・アサキメスだ。別段素行が悪いとかそういう訳ではないのだが、なぜかいた。そう、自分で志願したのである。金髪金眼のスラッとした長身。顔は西洋陶器のような白さだ。先程のダテカイザーの戦いを観覧しており、前線には出ずここエラント支部から指示をしていた。


「…やはりこちらに向かってくるね」

「そのようですね」


 彼の側にいて談話しているのはニーア。貴族ではない下級の民の生まれである。彼女は真っ白なボブカットの髪をしており、兵士の中でも一際目立つ。アクセントに赤い髪留めを着けている。目の色素が薄く、水色にも見えるような目だ。その為か、よく「何を考えているか分からない」と言われる。お陰で支部の隊の中では不思議ちゃんとして扱われているものの、当人にその気は全くなく、風評被害である。

「君はどう見るかな、この『ダテカイザー』を」

「バカですね」

「…面白いことを言うね」

顔の表情1つ変えずそう言うものであるから、アランクスは破顔して笑みを浮かべそうになるが、そこは大人の余裕というものだ。我慢する。

「機影見えました。識別番号3。人型兵器です」

「さて、彼ら―――ダテカイザーの本気、見せてもらおうか」


 先に声を上げたのはデイトンだ。

「見えた、支部だ!」

眠りこけそうになっていたカイも思わず飛び上がる。

「し、支部のくせにでけぇ…」

第2皇子が配属されたのはわずか3ヶ月前のことであるのに、エラント支部は以前と大きく形を変えていた。城。中世の時代に存在していそうな容貌をしている。こんな見た目の城は中世に存在したとしても猛威を振るっていたに違いない。

 …現にMD連邦の国家群を攻撃するのに、エラント支部は大きな拠点となっていた。ここからはダレストアを含めた8もの国を攻めるのに優位な立地なのだ。14年前の開戦の頃から多くの国を苦しめている。



「まずは斥候ということで…シュバールツ隊、発進を許可」

すかさずオペレーターが取り次ぐ。

「シュバールツ隊、発進してください」

「アサキメスの名の下に…!」

シュバールツ隊の機体が続々とゲートから射出される。最高速度は140㎞にもなり、この勢いで敵を聖なる祖国の名の下に切り刻むのだ。

「カイ、来るよ!」

「任せとけ!」

まず一体がダテカイザーに食らい付く。大きく剣を振りかぶった。

「っ!!」

すかさず展開した右腕のトンファーで受け止める。高い金属音が辺りに響き渡る。

「こいつ、剣を通さない!」

「おらぁ!」

そのまま剣にトンファーの腹を沿わせて下へ下へと下げていく。そして流れるように機体の股関節を殴打した。左足が断裂される。

「後追いしてこないように右足も壊して!」デイトンが叫ぶ。

「おうよ!」即座に足で右足を蹴り飛ばす。グシャッと潰れる。断裂はしなかったもののもう機能しなさそうだ。

「行かせるか!シュバールツ・袈裟斬りだ!」

 どうやらあの頭だけ赤い機体がシュバールツ隊長らしい。反撃しようとするがすでに剣が目の先鼻の先だ。

「真っ向タケノコ割りーっ!」

「どれが正式名称なんだよ!」

のけ反ってギリギリ避けられた。真っ向とか言ってるくせして横に切ってきたからだ。裏をかこうとしたのだろうか。


「このままじゃいずれやられるっての!」カイが叫ぶ。

「じゃあビームトンファーよ!」

「ビームトンファー?」

「右のレバーの4つ目のボタン!」

「これか!」


やたら多いボタンの中で1つ押す。

すると、トンファーの先から赤く振動する尖った針のようなものが飛び出した。

「ビーム…」

「正式名称はバイブレーションニードル。1秒間に10万回振動してまるでビームのように見えるの」

「じゃあなんでビームっていったんだ?」

「それは…」

カイはこういうのが好きだと思ったのだが。…ちょっとがっかりした。恥をかいた。妙なところで現実的なやつね。ビームなんてラジカルな武装、まだ開発されていない。こちらをじろじろと見つめてくるカイから目を逸らす。

「なんで赤くなってんだ?」

「なってないわよ!」

「いや、そのなんとかニードルが」

「楽しんでるとこ悪いが、貰ったぁー!!」シュバールツがまた仕掛けてくる。どうやら気付かぬ間に助走をつけていたようだ。

「真っ向!」

「ダテブレーイドッ!!」振り上げていたシュバールツの機体の右肩にビームトンファーが突き刺さる。

「このまま三枚おろしだ!」

2秒も経たぬうちにバラバラにされてしまう。

「う、嘘だろぉ!!」

「シュバールツ隊長の仇だ!」

「死んでねえっ!」

他の機体が両側から同時に切りかかってくる。右側は横に、左側は縦に切り上げようとしてくる。だが、忽然とダテカイザーの姿が消えた。



「どこへ行った!」

その時、メインカメラが陰った。

「こんなかんかん照りの日に、雲なんか―――――」

もちろんその陰はダテカイザーである。ビームトンファーを支点に大きく飛び上がっていたのだ。

「曲芸師と見間違いそうだよ、ダテカイザー」

これは大きな悩みの種になりそうだ、とアランクスは少し困った顔をした。ニーアはアランクスの声にも表情にも興味がないようで、ただただモニターを透明な瞳で睨み付けているだけだった。

「くらえ、ダテ回転切り!」

そのままの勢いで着地したダテカイザーは、ビームの出力―――振動数だが―――を上げ、一気に両側の機体の足を切り落とした。

「すごい…」ニーアが感嘆した。

 異常な状況に指令室は凍り付いたままで、アランクスだけが平常に物事を考えていられた。もっとも、予測していた通りになったから、体して驚きもしなかった。ニーアの感嘆は少々驚いたが…。


「さて、どうしたものか…」

次の部隊を発進させるか。しかし、先程の戦いを見るに、今対等に戦えるのはニーアだけではないのか。質量作戦をしようにも、あのように軽々と動けるならば、無駄に機体を損壊させているだけにはならないか。

「アランクス様」ニーアが口を開いた。

「私に、お任せください」

「…止めても聞かないような気がしてきたよ。そんなこと1度もなかったのにね」

アランクスには分かっていた。あの機体にはニーアを刺激する何かがあるのだ。彼女の薄い色の瞳が急に色素を持ち始めたように見えた。まるで我が子の旅立ちを見送るようだ。しかし自分と彼女は親子というには年齢が近すぎるとも同時に思った。

「がんばって」

「了解しました」


 とうとう支部こと巨大な城の前に来てしまった。あとはここにある武器や高貴ロイヤルやらを解体するだけだ。その時だった。ダテカイザーが謎の機影に物凄いスピードで飛び蹴りを喰らわされた。


「ぐあっ!」「きゃぁっ!」


バランスを失ったダテカイザーはよろけて仰向けに倒れ込んでしまう。カイは揺れた脳内を整理しながらその機影の方を見る。それは確かにあの燕尾服ではあった。だが縁取りは紫色で、頭部にはU字の角が張り付いている。細くスマートな機体に角の下から覗く鋭い緑の眼光。

 明らかなワンオフ機だ。


「アランクス様に造っていただいたこの騎士パラディン・アサキメスで…やらせてもらうぞ、ダテカイザーとやら!!」


ニーアは久々に燃えたぎっていた。こんな相手と戦えるなんて。


「すばらしい僥倖だ…立て、ダテカイザー!」

「騎士様は正々堂々とした戦いがお望みらしいわ」

「そうこなくっちゃな…やぁってやるぜぇ!」


対峙する2体のロボット。邪魔をするものは、もう既になかった。


深夜のテンションで書きましたご容赦ください。

暇なのがバレますね。

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