表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆天砕地ダテカイザー  作者: 相羽マオ
13/32

第12話 再戦のサムライ貴族

 ダテカイザーは正義のロボットである。強大な敵を相手に、勇猛果敢に立ち向かうのだ。



格納庫、コックピットに搭乗する前にアストルが声をかけてきた。

「君の機体の両腕、ボディカラーに合わせといたからね」

「ああ、あのサムライの人のやつだったもんな…」

カタセが狐月(こづき)の両腕をくれたのを思い出した。敵対しているはずなのにおかしな奴だったなぁと思う。

「それにしても…この機体はほんと謎だらけだ」

「寝ている間に調べたの…!?」

デイトンが過剰に反応した。彼女にとっては体の一部のようなものであるからだろう。

「ナノマシン…って、おかしいよね。やっぱり。ナノマシンはナノマシンでも、細かすぎて粒子状になってるんじゃないかなって思うんだ。生憎それを調べることはまだ出来ないんだけどさ、それで」

「…ハッチ閉めまーす」

バタン、とハッチが閉まった。



「ダテカイザー、発進!」

今回の作戦は敵の新しい戦力を見定めて、あわよくば破壊すること。4機の機影が確認された。まずダテカイザーで乱入し、マズくなったら退却、行けそうだったら増援という、非常に都合の良いようにできた作戦だ。

 今日は空が曇っている。デイトンはちょっとがっかりしているようだ。

「曇りだし、カレーも食べられないし、はぁー…」

「電気に味ってあるのか?」

電気、というのはデイトンの充電のことで、デイトンにとっての食事は充電だからだ。

「ない、というか、分からない。私には味覚とかないからね」

「へー」

「…なんかムカつく」

地上が見えてきた。今回はアサキメス本国での作戦だ。大きな広野があり、小さな家が点在している。王都とは少し離れているらしい。

「カイくん。見えたかい?」

アストルが通信をしてきた。

「見えたぜ」

ちょっと浮いている。…ん?

「浮いてるぅ!?」

「どうやらあちらさんも開発してしまったようだ…というよりは、秘蔵っ子と言うべきかなぁ」

「経緯はどうでもいい!!勝てそうなのか?」

「それを確かめに行くんじゃないか」

「へいへい…」

噴射口(ブースター)の出力を上げて、ドーム目掛けて飛翔する。ロボットの外装がはっきり見え始めた。先頭に居るのは、先日戦った狐月だ。前と外見に差異がある。背面の翼の様なものから、腕が生えている。レレドを苦しめたサブアームだ。

 報告では4機だったはずだが、狐月の1機しか見当たらない。レーダーにも引っ掛からない。

「うわ、またあの人と一対一なのね…」

「俺たちは強くなった!空も飛べるし、いけるぜ!」

「あっちは飛べるようになった上に新装備まであるんだけど…」

「先手必勝!」

「もうツッコむのも面倒くさい…」

腰のホルスターから150mm口径の銃を取り出し、連射する。この銃は普遍的なロボット用の銃よりは口径が大きく、1つ1つの弾丸が重い。基本、牽制や精密機械(モニターやカメラなど)の破壊などにしか用いられないのだが、この銃は当たる部位によっては敵に大きなダメージを与えることも可能だ。しかし、カイの性格上使うことはあまりない。狙いを定めるのが面倒なのだ。

「あっ、弾切れた」

「1つも当たってないわよ!?」

狐月が一歩も動いていないにも関わらず、弾丸は全て外れた。建物が周りになかったのが幸いであった。

「ダテカイザー…相変わらずバカだな」

カタセがはは、と笑った。


「声聞こえないけどバカにされた気がする!」

「そのバカと一緒に乗ってる私のことも考えてよね…」

「次は格闘だ!」

着地する。地面が揺れた。

「もっとゆっくり着地しなさいよ!」

「スーパーなロボットはドシンと着地するんだよ!」

などと口論しているうちに、通信が来た。アストルからではなく、カタセの狐月からだ。

「3日振りだな、ダテカイザー」

「カタセ…カタセ・ミーデス」

「早い再会だったな」

「何か用かよ?」

「…この戦いは君に勝ち目はない」

断言した。

「やってみなきゃわからねぇだろ!」

「分かる」

「だから、退却しろって?」

「そうではない。ガロント支部を攻撃したのは、君の仲間だろう?彼らと君を一度に相手にしよう。無論、私はこの1機だ」

「なめてんのか…!?」

「私は―――この狐月・宵でどこまでやれるか試したいのだ」

「…いいぜ」

「ちょっとカイ!」

カタセが約束を守るとは限らない。デイトンは疑ってかかったものの、どこかでカタセは信用できると思っていた。

(これは、私の心…?)

「呼んできてやるよ、ツィス団メンバーをな!」




 アストルは承認した。

「もうツッコむのも面倒くせぇ…」

「だけど、今回はエーリの左右(エルとアール)だけだよ」

「サイエビットはまだ修理中だってよ」

ソリルは騎士(パラディン)を思い出したのか、軽く溜め息を吐いた。

「僕と修理ロボットじゃあ限界があるんだよ」

「グレイくんは…まぁ難しいよねぇ」

「じゃあ私とミリア、行ってくるね」

「頑張ってねぇー」

アストルが手をひらひらと振った。



「さてと」

「?」アストルが首をかしげた。

「お前の素性について話してもらおうか」

「…もう疑われてるなんてね」

「会ってもう10日は経つが、お前はどうにもおかしいからな」

「君は…そうだったね」

「ああ。もうこれは俺の性だから仕方ない」

ソリルが銃を向けた。

「話すよ。話す」

アストルは神妙な面持ちになり、白衣の腰ポケットから長方形のデバイスを取り出した。画面をソリルへ向ける。

「僕は―――――」




 エーリには噴射口がない。そのため、アストル号が地上ギリギリまで下降しなければならない。海へ着水する。

「エーリR、ローラーン・カナン、行くよ!」

「…エーリL、ミリア・カナン、行きます…」

アストル号前面の射出口からR、Lの順に飛び出した。膝の辺りまで水に浸かる。

「うひゃあ、また水場?」

「…早く噴射口付けてくれないかな」

陸地はすぐ近くで、あと数メートルほどだ。歩く。

「ミリア?」

「…なに?」

「アストルさんってこのロボットどっから持ってきたのかな?」

「…闇ルート、とか」

突然の物騒なワードに、ローラーンは驚いて、それから笑った。

「ミリアが冗談言うの久しぶりだねっ!」

「…そう、かな」

昔のミリアに戻ってきているということだろうか。久しぶりに私以外の他人と会話したからかもしれない、と思う。

 

陸に着いた。変な()()が浜辺に鎮座している。巨大な球体だ。

「脱出ポッド?でも生体反応はないね」

気にせずに行くことにした。




「おー、きたきた!」

「うわ、あのロボット腕6本もあるじゃん…」

「他の2機は?」

カタセが尋ねた。

「片方はあんたらのとこの騎士にやられて修理中。もう片方は精神ダメージが大きくてな」

「多足とあの忽然と消えたという機体か。手合わせ願いたかったが…」

忽然と消えたというのはグレイのクルツ5だ。カイもどういう機能なのか知らない。

「とにかく…やるならやろうぜ!」

「よし、宜しく頼む」


「ねぇねぇ、カイってあのロボットのパイロットとお友達?」

「そんなんじゃねぇけど、なんつーかなぁ…」

「人生指南してくれた人みたいな?」

デイトンが代弁する。

「あと、両腕くれた人だな」

「?」




「5秒カウントの後に開始する」

「よぉし!」

カウントされると緊張する。カイは汗をかいた。


「5」

「空調の温度下げよっか?」

「いや、いい」


「4」

「暑いと体に悪いかもよ?」

ローラーンが口を挟んできた。


「3」

「いいって言ってるだろ…」

「またまたぁ」


「2」

「む、黒髪の次は茶髪狙いなの!?」

「次から次になんだよ!」


「1」

「大体茶髪だったら私だって…」

「今話すことかそれはよ!」


「0」

「いちいち話しかけてくる奴を狙ってる前提にすんな!」

「バカなのにツッコミに回るの珍しいわね」

「うるせーよ!」


「いざ、勝負…!」


 それぞれが自分の役割を瞬時に理解し、陣形を作る。近接戦闘にエーリRとダテカイザー、後方での射撃にエーリL。ダテカイザーとエーリRのバイブレーションニードルが起動する。振動で足元の草が揺れた。

 最初に仕掛けたのはダテカイザーだ。右腕、左腕の順にトンファーを突き出す。狐月はサブアームを使うまでもなく右腕の刀で受け止めた。そこへエーリRが滑り込み、狐月の足を払う。エーリRのバイブレーションニードルは足に装着されていて、足技を主体とした攻撃が得意なのだ。狐月はトンファーを押さえつつ、飛び上がりエーリRの足を躱した。ワイヤーで吊られているかのようだ。

そこへ弾丸が飛来する。エーリLの巨大口径の長距離ライフルだ。

「こんな至近距離で撃ってくるとは…!」

本来はもっと長距離を狙撃する際に使用するライフルだ。だが、距離が近い分、当然到達速度が速い。回避に気をとられている内に、当てる。という魂胆なのだ。

「その程度、見抜けないと思うか!」

「知ってたぜ!」

ダテカイザーはトンファーを刀から離し、()()を投げた。先ほど撃ち終わった150㎜口径の銃だ。

「目潰しか…そうは行かん!」

狐月がサブアームの刀で切り捨てる。銃は斜めに二分された。

「やっぱ簡単には行かねぇか!」

続いて、ライフルの弾丸も叩き落とされた。

「凄い…少しでもズレたら刀が折れちゃうわよ」

「さっすが、サムライだな…よおし!」

噴射口から光が放たれ、ダテカイザーが宙に浮く。

「カイ!今飛んでもダメよ!」

狐月がダテカイザーを見上げている。そして飛んだ。

「空中戦か…いいだろう!」

「ちょっと!私たちは飛べないんだけど!」

「そこで見てろよ!」

「はぁー…」

「…お姉ちゃん、元気だして」


「勝てる秘策でもあるの、カイ?」

「…今回は、正直ある!」

「め、珍しい…」

デイトンが本当に驚いた様子で、カイはちょっとだけ腹が立った。

「とにかく…あるもんはある!」



カタセは興奮していた。彼らこそが、自分の血を沸騰させてくれる。指の血管の先まで煮えるような感覚がする。

 どうして彼らなのか。出会ってから数日、考えた。しかし、理由は見当たらない。それに、この気持ちを前にして、理由など意味をなさない。

「さぁ、かかってこい、ダテカイザー!!」



ご拝読ありがとうございます。

最近プラモデルに手を出しました。

ランナーからの手もぎはやめた方が無難です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ