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爆天砕地ダテカイザー  作者: 相羽マオ
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第11話 平和のために?

 ダテカイザーは正義のロボットである。レーザーっぽい針で頑張って戦うのだ。




 15代()()がのたまった。

「悪辣で卑劣な敵、イエスト・イエスターを率いるMD連邦を粛清する為の部隊、その名も」

皇帝の麾下(インペライル)


(それが、私たちだというのか?)

何か―――不味い予感がした。その正体は、分からない。

 突然、アサストルの背面にモニターが現れた。外の景色が映されている。ここ、王都近くの郊外だ。空を飛ぶ1つの機影。

「さて、初披露といこうか」

徐々に輪郭がはっきりしてきた。灰色に、巨大な右腕。イエスト・イエスターだ。すると、画面の左端に黒い影が現れ、飛び立った。跳躍ではなく、飛行だ。それに続き、3つの影も飛んだ。全部で4つ。影の形はそれぞれ違ったが、同じ形の()()を背負っていた。

「あれは…羽」

ニーアは瞬時に理解した。イエスト・イエスターを殺すことで華々しいデビューを飾ろうということか。




「なんだ、ありゃ」

レレドに搭乗していたムーアは、困惑した。待ち伏せが4機。それも空を飛んでいる。とうとうアサキメスも空を飛ぶ二足歩行の兵器を開発したということか。報告の為に通信を繋ぐ。

「こちらレレド、待ち伏せを喰らった。それも羽付きのな」

「…奴らが()()を手に入れたのか…」

あれ、というのはリリドを始めとするイエスト・イエスターのロボットの機構のことだ。詳しくは知らないが、何やら革新的な技術が使われていると聞いた。

 少しの間が空き、男が言った。

「作戦目的は変わらない。ドームを狙え」

遥か前方に西洋風の四角いドームが見えた。カメラを拡大した。吹き抜けになっていて、中の人間が見える。

「あんなに多くの人が…」


 左の太股に装着されている弾丸を取り外す。巨大な右腕の肘を曲げ、装填口が現れた。腕を伸ばすと、装填が完了する。

超硬度質量弾長距離砲(リリ・ダッド)、座標指定完了…」

スイッチに親指を乗せた。押せば、あの人間達は死ぬ。イエストを欺くためとはいえ、これ以上の殺戮は…。

 だが、時期尚早だ。今、掌を返してしまえば、家族の無念を晴らすことはできない。

(父さん母さん、アイニー…俺は…!)


 

 

 すまない、許してくれ。



 

「発射…!」


 

 弾丸は、地面へと墜落した。

「何が、起きたんだ?」

予定コースの途中で突然失速し、墜ちたのか。いや、違う。

「あの1つ目が叩き落としたのか…!」

刀を振り下ろしている1つ目―――狐月が、レレドに向かって飛翔した。

「…皇帝のオーダーは技術の披露だったな、ならば」

「使わせてもらう…!」

狐月の背負っている()()から、展開されたのは、腕だ。腕の数は、左右3本ずつの計6本になった。全ての腕が刀を装備している。

 狐月がレレドに斬りかかった。躱そうとしたが、狐月のサブアームに握られている刃の切っ先が装甲に引っ掛かった。

「こいつ、リーチが長すぎる…!」

「…狐月・宵(こづき よい)ならば…」

ひっくり返された。そして、1つ1つの腕が異なる動きで攻撃を繰り出し、レレドは文字通り手玉にとられてしまった。反撃の隙がない。

徐々に装甲が剥がされていった。レレドが解体されていく。



「僕たちの出番はなさそうだねぇ」

狐月の後方で、3機のロボットが待機している。

「上位ナンバーが有能だと助かるぜ」

「リークスみたいな末端の仕事を任されるのは御免だがな」

「故人をいじっちゃダメでしょ」




 ニーアの中で、何かが揺れていた。これは違う。私の愛した国でなくなる気がした。明確な理由は分からなかった。先ほどの不味い予感は、どんどん強まるばかりだ。いや。私の知らない一面が顔を出そうとしているのではないか。完全にこの国について理解していただろうか?そうではないだろう。アランクスとずっと一緒だったのだ。見えない部分の方が多かった。

「そういえば」

彼は私が戦場に出ることに積極的ではなかった。先日のダテカイザーが初めて現れた戦闘でも、街の侵攻には参加させなかった。

 私は、アサキメスの侵略行為に目を瞑っていたのではないか?実際に見ないまま、問題はないと判断したのではないか?

 

 アサキメスに対する信頼が、揺らいだように思えた。

 

 

 皇帝が口を開く。

(ダメだ、それ以上は)

「インペライルを設立すれば、防御が手薄になる。そこで、」

(ダメだ!)

心臓の鼓動が聞こえる。額に汗が浮かんだ。



「―――徴兵を、行う」



皇帝の陳腐な言葉に、衝撃が走るのを感じた。自分だけではない。きっとみんな――。

「なるほど、考えたなぁ」シュバールツが一言。

「合理的だ」後ろの席の男。

「我々は戦争をしている。呆けた民も実感すべきだ」

その男の隣の男。

 …落胆した。失望した。こいつらは、何も考えていない。戦争に晒される民の気持ちが理解できないのか。愚かだ。自分は命を懸けているから、他人も懸けて当然だというのか?馬鹿馬鹿しい。少しでも民の安寧を守ろうというのが軍人ではないのか。そうでないならば、一体何のために。

(…名誉、か)

王政国家のアサキメスは、名誉を重んじる傾向があるのだとアランクスに聞いたことがある。


『…名誉のために戦うのは馬鹿だ。本来はそんなことに命を懸けるべきじゃない』

『では、何に懸けるのですか』

『市民の命を守るために。軍人とはそういうものさ』

あの時の言葉を、今も記憶している。


アランクスはあんなにも聡明であるのに、どうしてこいつ達は。

「…気分が悪くなったので、失礼」

「ニーア殿、大丈夫ですか!何なら俺が…」

「結構」

横の非常口へ入っていく。しばらく歩くと、外に出た。

 空は、青さを忘れてしまったようで、灰色の雲に覆われていた。




 レレドのほとんどが解体されてしまった。上半身を残すのみとなり、抵抗する術を失った。

「こりゃあ大目玉だな…だが!」

「まだ死ぬわけには行かねえんでなあ!」

天井にある大きく重いレバーを倒し、脱出システムを作動させる。コックピットのブロックだけでも、10分程度の航行が可能なのだ。レレドから後方に球体が射出される。その球体がレレドのコックピットブロックだ。

「脱出か…逃がさん!」

狐月の6つの刀のうちの1つが投擲された。カタセの正確な狙いによって、球体目掛けて一直線に飛んだ。

「直撃コースかよ!」

慌てて右へ避けようとするが、刃が後ろの噴射口(ブースター)を掠めた。黒煙が立ち上る。球体の中では、警告のランプが赤く点滅していた。

「不時着するしかねぇか…」

球体はふらふらしながら町の外れへ墜ちた。



「彼らが君たちインペライルの指揮を行う、ナンバーだ」

「ここまで来るのには多くの犠牲があった。リークス・ダントを始めとした勇敢な軍人達。イエストに蹂躙された我が国の民や、連邦に強制加入させられた国々の民、そしてそれに逆らい、なぶり殺された民…」

「全ては平和を騙るイエストの所為である。我々は世界を解放するために戦ってきた。しかし、奴らは卑劣な手段によって勢力を増した」

「だが、もうそれは終わりだ。我々聖アサキメス()()の手によって、紛争は終わりを告げるのだ」

「そこで臣民の諸君、協力をして欲しい。敵は強大だ。私や、勇敢なる軍人の彼らに、力を分け与えてくれ」


 ニーアは外に出ていた。会場からしばらく歩いた。街頭に巨大な液晶ディスプレイがあり、皇帝の演説は中継されていることを知った。いくら敬虔な民といえど、徴兵にはかなり面食らったようで、あちこちが騒がしい。また気分が悪くなった。人が少ないところへ行こう。

 アサストルの言葉を反芻する。どうして彼は皇帝になることに拘るのだろうか。王から帝。一体何の意味があるのだ。

 路地の裏を通っていった。汚いが、奥へ奥へと行くと、気分が休まった。

 どれだけ歩いただろうか。

 海辺に出た。開けた景色は、空は曇ってさえいたが、路地裏よりは明るく、目を細めた。

(あれ)

目の前に、巨大な球体。四角い窓があり、中に人が倒れているのが見えた。男だ。自分と同じ白髪。どうしていいか分からず、しばらく立ち尽くしていると、男が意識を取り戻した。


「ん…、軍人が居やがるな」

ホルスターの銃に手をかける。足を撃とう。殺すことはない。

「貴方は何者ですか」

ニーアが抑揚のない声で訊いた。

「…?」

(俺がレレドのパイロットだって気付いてないのか?なら…)

ドアが開く。

「お嬢ちゃん、すまなねえが…」

ニーアの足へ銃口を向けた。次の瞬間には、自分の顔が地面にぶつかった。

「所属を言え」

腕を締め上げられている。逃げ出すのは無理そうだ。

「乱暴な女だ…」

心なしか拘束がきつくなった気がする。

「イエスト・イエスター所属。ムーア・クルーズだ。命だけは勘弁願うぜ」

「イエスト・イエスター…」

「あんたの名前は?」

「…ニーア」

「名字は?」

「もう、必要なくなった」

お嬢ちゃん、あんたこそ何者なんだ?



 

 カイはツィス団のメンバーと食事をしていた。船の中には広い食堂があり、そこでまた机を囲んだ。

「ちゃんとした食い物が出るもんなんだな」

夕食のメニューはカレーだった。

「いやぁ、機械に作らせて一番失敗しないのはカレーなんだよ」

「そうかよ…」

「そういえば、まだグレイちゃんは部屋?」

ローラーンが訊いた。

「そうみたいだねぇ」

「悩める内に悩んだ方がいいさ」

「ソリル、大人の余裕?」デイトンが口を開く。

「さぁな…」

「ソリルさんって、なんかチャラい…?」

ローラーンがニヤニヤしている。

「な、なんでだよ」 

「だってぇ、水色のシャツなんか着ててさぁ」

「それ私も思った!」デイトンが同調する。

「お前らなあ…」

ソリルが苦笑した。



「お前は話さないのか?」

カイがミリアに声をかけた。

「…いいんです」

「そうか」

「あいつ…グレイって姉ちゃん、どうしたら立ち直れると思う?」

「…分かりません」

「ちょっと、カイ?」

ローラーンが言う。

「私の妹ナンパしないでよね!」

「してねえよ!」

「…みんな、戦闘が起きたよ」

アストルがそう言うと、全員の表情が引き締まった。

ご拝読ありがとうございます。

ダテカイザーが2話続けて出ませんでした。

ノリでどんどん書いていきたいと思います。

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