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ヒルダネットワーク1‐ある日の観測者達の日常話

 

 

 今日も暑い、暑すぎて余裕で死ねる。

 たぶん今日だけで熱中症とかで百人くらい死んでる、確信できるね。

 だってこんなに暑い事があるか?

 俺は無いと断言できる。

 これは働きたくない的レベルで、全人類に共感いただけるレベルの事象だぜぇ。


 俺は今日、奴に呼ばれた、奴は奴だ、屑、人間のな。


 行きたくも無い近場の駅から三つ、行きたくも無い田舎過ぎて特に何も無い町、駅前が田園なのだ、ゴミ過ぎて笑えるだろぉ?

 そこから更に歩く。

 すこしだけ標高が周りより高くなった地、洒落た家が立ち並ぶ異様な高級住宅が密集する所。

 そこの中でも目立つ、豪華絢爛な佇まいで、広大な洒落た庭的な場所もある、鼻につく感じの高層マンションの最上階。

 最上階はそれ以外と違い、一人の人物に所有されている。

 建築時にそういう作りにしたと言っていた、つまりはそいつがオーナー的人物だ。


「やあやあ、待っていたよレイジ」


「嬉しいね、待ち遠しかっただろ、ハルカ。

 それより双子の姉のヒルダはどうした? あいつに呼ばれた気がするんだが?」


「ああ御姉ちゃんは用事があって居ないよ、まあ私もお姉ちゃんみたいな物だし、いいよねっってことで」


「呼び出しておいて、この対応かよ、ふざけてやがるな」


「まあまあ、私が持て成すのだから、いいじゃないの」


 そう言って、申し訳程度に飲み物を差し出してくる。

 暑かったからか、それはなかなかの飲み応えで美味しかった。


「そういえば、朝は雪乃ちゃんとイチャコラしていたよね?」


「なぜ知っている?」


「けらけら、分かりきったことを聞かないでよ、レイジの事くらいは常時観測対象だから」


「ざけんな、プライベートの心外だ、今すぐやめてくれ」


「なぜ? 見られてる方が興奮する、調子が良くなるタイプでしょう?」


「知らん、もういい勝手にしていろ」


「あふあふっ、それは暗にオーケーという意味で受け取っておくよ」


 相手が面倒になっただけだ、嫌と言ってもやめないなら放置に限る。


「ねえねえ、雪乃ちゃん生放送しているよ、レイジも見よう」


「まじかっ、おい見せろ」


 高性能高級な椅子に座る生意気なハルカ、その前にあるディスプレイをのぞき見る。

 そこではウハウハ生放送で雑談放送をしているユキナちゃんが居た。

 方耳イヤホンで聞いていたハルカの、パソコンに繋がっている端子を引っこ抜こうと思ったが、もう片方が空いていたのでそれを付ける。


「コメントを書くから、ちょっとパソコン借りるな」


「いいよ、わたしはUSBでキーボード使うからねぇ」


 そのままモクモクと生放送を眺めて、二人でコメントをノンストップで書く。


「おいこらハルカ、お前はセクハラコメントを自重しろよ」


「いやいや、なんかこの枠ではそういうコメントが少なかったからさ、ないなら無いで寂しいでしょう?」


「馬鹿、そんなモノは無くていいんだよぉ!」


 そんな風にあーだこーだ言い合いながらも、三十分をコメント沢山書きながら過ごした。


「あー楽しかったねレイジ、ユキナちゃんはぐう可愛いね」


「あーそうだな、可愛い上に話し上手だし小説も書く、最高の生主だな」


 俺はついでなので、ユキナちゃんの投稿サイトのユーザーページに飛んでみた。


「おーおー、それは某ネット小説投稿サイトですね」


「ああそうだ、そういえば、お前はやってないのか?」


「やってるやってる、ハルカで検索かけてみぃ?」


「はあ? ハルカなんてユーザーネーム腐るほどいるだろ?」


 とか思って検索してみると、明らかにコイツっぽいユーザーネームを見つけたので飛んでみる。


「本当にやってるし、俺がやってるの知ってるんだから、教えておけよ馬鹿」


「いやいや、レイジは、うーん、なんていうの? そういうの教えるタイプじゃないというか、ねえぇ?」


「それはもしかして喧嘩でも売ってるのか? それなら俺は買うぞ?」


 いいながらお気に入りユーザーなどを漁ってみる。

 ふむふむ、押さえどころは抑えてあるんだな、という印象だ。

 観測者長にして、某諜報機関長、四夜家の党首にして他にも色々とある感じの佳代さん。

 とある貴族令嬢っぽい外国人かぶれした語り口調がムカつく、カリスマで構成されて本気になれば世界が揺らぐ黄金の、シャルロット。

 某ヴィジュアルノベルゲーの複合会社CEO、が俺の中では目立つ、副観測者長のイリスリリス。

 スーパーエースパイロットで世界的なアイドル、エミリリリ。

 後はマフィアのボスなレイアさんや、姉のヒルダとか、その界隈は残らずやっているようだ。


「それにしても、お前もゴミ小説を書いてるんだな、まったく面白くない」


「それはしょうがないでしょ、私達のような上位存在が本気で小説を書いたら、世界がひっくり返って修復不可能になるんだからね。

 そこにあるのは手を抜いた感じの気ままな内容さ、わたしの人格を構成する氷山の一角程度だから、全てを知った気にならないように。」


「そうかい、お前はミステリアスな女って見た目だから、いいよな、そういうの」


「そういう読者と密接な感じの投稿サイトでは、作者自身のキャラクター作りも大事なのだ、小説のあとがきみたいなモノさ」


「いや、お前は見た目を晒してないから、全然効果ないだろソレ」


「晒してるよ、ウハウハ動画でハルカで検索してみれば?」


「あーなるほど、あれはお前だったのか」


「なになに? どっかでわたしって有名だった?」


「いや、俺の着目してるウハウハ生放送のチャンピオンの放送で、お前の名前がやたら出ていたのさ。

 言うに、超絶に調子に乗っている歌い手で踊り手で実況動画とか作ってる奴がいるって聞いたぞ」


「あー、それはお姉ちゃんだね、私は萌え声生放送してるから、それは違うよ」


「はあ? なんでお前の姉はお前の名前を使ってるんだよ」


「知らないよ、お姉ちゃんに聞いて」


「なるほど萌え声か、だからお前のユーザーページには意味のない書き込みが溢れてるのか」


「なにそれ、どれどれ、うひゃあ、なにこれキモ」


「お前の視聴者だろうが、ちゃんと管理しておけよ」


「むりむり、この人たち既にスペーシャトルの衛星軌道とかに入って自走・自立してるから。

 それ見てみてよ、話してるのぜんぜん私の事じゃなくなってるし」


「そうだな、なんか朝のご飯の話を内輪で話してるよな」


「二チャンネルっぽいノリだね、わたしは好きだよ、そうだ私も参加しておこうか」


「勝手にやってろ、てか萌え声やってるくせに晒すな」


「えーいやだってね、ぜんぜん人が集まらないものですから、寂しくなってしまってね」


「完全にキモイ奴らに、お前粘着されてるじゃねーか」


「これはこれで癖になるというか、成ってみればいい物だよ」


「そうか、本人が幸せなら、俺からは何も言うことは無いぜ」


 ハルカは気安く気軽に話せる友達みたいな奴だと思った、女っぽくないのだ俺の中で。


「そうだ、本日の本題があるんだけど、その前にBGOやろう」


「はあ? BGOは二年前にサービスが終了しただろうが」


「大丈夫大丈夫、情報だけなら運命力をたいして消費せずに転送できるから」


「そこまでしてやる事かね」


「馬鹿だね、そこまでしてやるから楽しいってのがあるのさ。

 さあさあ、わたしが運命力を消費するから、一緒に遊ぼう」


「まあいいけどな」


 とうに全盛期を過ぎて、俺の中でも廃れたゲームを今だにやっているこいつ。

 なんだかノスタルジックで退廃的、ミステリアスが極まり翻って魅力的に見えてきた。


「対戦オンラインをしようかにゃーぁー」


「おい待て、このパーティーはアレじゃないか糞、お前って奴はっ!糞死ね」


 俺の中で全盛期だった頃に、憧れて止まなかった某伝説のパーティーの一人だったのだこいつ。


「てかよく見ると、コイツはシャルロットじゃないか、どういう事だ?」


「うんうん、最近はわたしが誘ってシャルちゃんもコレをやっているんだよね、ああ、そういえばイリスちゃんも偶にやっていてくれてるね。


「まじかよ、伝説が超越して大伝説になるレベルの糞組み合わせじゃないか糞」


「いやいやそれほどでも、あと一応付け加えるとイリスちゃんは当時のライバルパーティに入って、邪魔してくる方ね」


 なるほどな、そこで俺は閃いた。


「俺はそのライバルパーティーに入ることにするわ」


「はえ? うーん、、、おお! それはいいね! そっちの方が面白そう」


 そうだろう、伝説に合流するよりも、伝説に相対するダークヒーロ的な立ち居地が俺好みなのだ。


「そういえば、俺の記憶はどうなる?」


「知らないよ、どうなるんだろうね? 

 まあこのままでは、そのままだろうさね。

 だからタイムパラドックス。

 ああでも黄金の法則が働くから、それだけ例外だね。

 この頃はシャルちゃんがゲームの世界に居たのだーって事になってるはず」


「どういう事だよ、てか黄金の法則ってっ。

 まあ俺は時間操作の影響を受けないから、そこら辺が逆に情報無いんだが、これは設定を改めるべきか?」


「知らないよ、面倒だったら、優秀な誰かと設定を共有すればいい」


「馬鹿だな、そこら辺を人任せに出来るか、自分で全部設定するべきだろ」


 そしてBGOで一通り遊んだ、しまった、久々にやってはまってしまった、もしかすると俺も家でやるかもしれんな。


「さて、ここから本題ね」


「あったのか本題、俺はもう帰りたいのだが」


「だめだめ、お姉ちゃんにも頼まれたのだ。

 まずは端末に送った新規世界を見てくれ」


 そこにはふざけた世界名称が出ていた。


「お前らがまた下らない世界を作ったのか」


「いや優秀なバランスの取れた世界だよ。

 専属で観測者を数人置くレベルの、成功された観測値をたたき出してるから」


「ほお、すこし興味深いな、どれ見せてみろ」


 世界の詳細データを呼び出す、速読でだがザッと見たところ。

 未確認の地球外知的生命体が、突如として世界全土に襲い掛かる。

 人類は地底に潜り、複雑で広大な拡散構造の通路を数多に巡らせる事により、これを回避する。

 そして地底で開発を重ねた、重兵装高機動強化外骨格で反旗を翻す。

 それにより人類は地表に聖地を幾ばくか開拓するのだった。


「どれだけの科学制限を設けてるんだ? 

 地底と言っても、それなりの開発ができるはずだしな」


「そこはほら、開発された瞬間に抹消する方向で、だね、それほど広大じゃないし、重要なのは世界のシチュエーションだしね。」


「電力は? 地熱か?」


「だいたい地熱だね、それも高性能な。

 でもそれだけだと外聞が悪いんだよね、世界的に不自然さがつきまとう。

 住む人間もそう思うし、外側から観測された時だって見栄えが悪い。

 だからあそこ、ペンタゴンのあるアメリカのあそこだけ、地表から聖地が生まれる前から人類に確保されてるの、超軍事力でね。

 この微妙な形のアレコレ、アメリカ由来の物量を背景に据えた戦い方、その他の場所での軍事の在り方の差異、

 地底と地表におけるドクトリン、戦略戦術も見るなら着目して欲しいね、そこでいがみ合ってる人間たちも含めて」


「おお、それとこの、バランサーの観測者の裁量で、この地球外生命体は動いてるのか?」


 リアルタイムで動き続けるそれら大群。

 俺はそれらの歴史的な動作パターンから、一定の法則性を見極められないかやっているのだが、一向にできない。


「いや、それだと感情が交じるから駄目だよね。

 だからそいつらは絶無の存在たちを流用して、無感情に攻撃してもらってる」


「だったら人類を完全に滅ぼしてしまうリスクがあるじゃないか?」


「それは大丈夫、シミュレーションをして、

 事前に完全敗北が予測された時に限って、仕切り直しが行われるから」


「なるほど、世界のリセットか、でも、それはいい考えなのか?

 同じような世界に住む、同じような展開の、同じような人間たちの生命に、果たして価値があるのか?」


「それも考えてあってね、人類側には敗北した時の記憶が植えつけられるのさ」


「膨大な情報が爆発的に連鎖してインフレ現象が起きたら?」


「その時は人類側を戦死させる、人口が減れば必然的に連鎖反応を抑えられるからね」


「問答無用だな、なかなかに考えられた世界ってわけだ」


「どう?、気になるならレイジも行ってみよう! プレイヤーは常時募集中だよね」


「行かないね、知り合いの作ったゲームに参加するのはしない事にしてる」


「そうだねぇー、大抵は碌なことじゃない、弄ばれるからさぁ」


「暗い顔するな、お前の周りが禄でもないゴミばっかだからなだけだ、世界は案外すばらしい奴らに溢れている」


「それってさぁ、救いになるのかなぁ?」


「なるさ、目に見える世界が、全てではない、それだけで目に見える世界が変わる事もあるのさ」


「はふぅー、ぜんぜん変わらないよぉー、見えるものが全てだよぉー」


「ぶーぶー言うな、生きることに励め、世界は開拓しようと思わなければ開拓されないんだぜ」


「知ってるよ、だからこう、魅力的な要素を素材を、たくさん集めてるんだから」


 そこでピポーンとインターホンして、玄関のドアを開く。


「やはやは! わたしが、ヒルダ様が帰ってきたぞぉ!」


「おいどこ行ってたんだぞ糞、ふざけるな炎上しろ」


「おかえりなさいお姉ちゃん様」


 なにか紙袋を抱えている、がちゃぴんみたいな服装で吹きそうになった。


「エクスラに行って、例の糞共と戯れていたんだぜぇい!」


「世界最高異相位か、あそこにはそうだな、爆弾を跳躍させてくれ」


「無理無理さっ」


「そうだね、あそこには爆弾じゃなくて、敵を送るべきだね。

 矛盾を抱えるって事は、敵を排斥できない、つまりお姉ちゃんが行く事が最大の負担だね」


「毎日行ってろ」


「それも無理無理さ、幾らなんでも毎日行ってたら、精神の方がもたないね」


「肉体が持つからいいだろ、精神くらい精神力でなんとかしろ」


「レイジは臭い! 精神論って、わたしは大嫌いなのだぁああ!!!」


「糞が、怠けたいからだろ、精神論ってのは潔癖な上位者しか使えないからな」


「なにそれなに? てかさっきから何? なんなのさ? 喧嘩売ってるの? 買うよ?」


「お姉ちゃん様の味方につくから、二対一だね」


「ばかが、いい大人は喧嘩しないのさ、ハルカだけなら喧嘩するが、お前とはせんよ」


「だっさ、弱いもの虐めしか出来ないゴミ屑だったかレイジ」


「そうだ、何もかも悪くて、何が悪い? 俺は生粋の極悪人だからな」


「えへぇー、殺してやるぅ」


「ユキナちゃんの前でも、同じことが言えるのかなぁ?」


「天使の前では良い子ぶる、そして聖地から一歩離れれば何でもする、それが俺の心情だ」


「でもさ、レイジにとっては、世界が聖地なんだから、外側ってどこの事よ?」


「お前らみたいな、外道鬼畜だな」


「私達も世界の一部だー」


「いや、お前たちは世界の外側に位置する、そういう例外的な存在だから、たとえ殺しても許される」


「ふんだ、いざとなったら、優しくするんだから、知っているのさ」


「いや、俺は俺のプラスになり、マイナスが亡くなるのなら、躊躇いも無くお前らは殺すぜ」


「まあハルカはそうだけど、わたしは違うでしょ?」


「そうだね、ヒルダ姉ちゃんは殺さなくてもいいと思うよレイジ」


「いやだね、ヒルダも殺すし、もちろんお前も、ハルカも殺す、これは確定事項だ」


「しょうがないよねぇえ、だって私達って外道で鬼畜だモノ」


「そうだ、お前らは観賞価値があるだけで、存在価値があると錯覚するんじゃない、ムカつくからな」


「そうかもね、レイジの世界観では、そうなんだろうね」


 微妙な空気になった、でも後悔はない、こいつらは無限に後悔し贖罪するべき罪深い奴らだ。


「まあ、俺もそうなんだがな」


 最後に自虐的に笑うことによって、その場は和んだ、所詮は悪人ばかりが勢ぞろいって訳だ。


「人を殺すって、楽しいよねぇ?」


 いいながら紙袋の中身を取り出す。

 そこにはパックされた生首、それも若い女のモノが、沢山ごろごろテーブルに広がる。


「お、わたしはこれで、一番絶望されてる感じがいいよね」


「それじゃ私はこれぇ! 一番レイプ目が際立ってる感じがする」


「そうか、なら俺はこの、一番安らかな見目の、初めから生きる意味なんて感じてなかったような、ゴミ屑がいいな」


「昼時だし、これを昼ごはんにしよう!」


「わーい!」


 俺たちは、牛のメスの生首を、その脳漿を食べる。

 俺たちはこの牛が、猿レベルの知能を持っているのを、知っている。

 あるいは更に発展して、知的生命他かも、しれないと知っている。

 だから罪悪感はあるが、それは一定のラインで保たれ。


「俺たちは偽善者だな」


「そうだね、生粋の極悪人は、背徳と罪悪感を楽しむ為に、適度に善をなす。

 でもこれって、どう考えても人間にとって至極当たり前のアレだよね」


「凡人は全員人間だ、全員救いようがない屑だ。

 そして超人も、決して人間では無く、どう考えても生きる意味が無くなり、世界において役立たずだ。

 だから人間としての天才が必要だ。

 人生を達観し死んだようなモノなのに、天才として役に立つのだからな。

 つまりは善良をひたすらに生み出す機能が必須だ。

 この世界において、善良さという目に見えないモノが溢れれば良い。

 確実に屑や病理といえる人間性を駆逐し、此の世から人間が居なくなれば、果てしなく最高だ」


「駄目だね、それでも人間は人間を求める。

 意味や価値を積み重ねても、その果てしない最高という状態を維持するには、人間という必要悪が必須なのだからね」


「だろうな、だから人間という脆弱種は、どれだけ世界が永続的であろうと、無限の完成系を目指し続けることが可能となった」


「お姉ちゃんたち、人間っていうのは、それは幻想だよ。

 私達が無限に人間が、無上に完成系を目指し続ける超上存在だと、勝手に夢見てるだけ。

 それは人間が人間を見るのと変わらないのだけども、ただスケールが無限なのだけど。

 つまりは観測、観測こそが特異点を生み出し、無上に全自動的に広がり続けるような波動と熱量を生み出すんだよね」


「そうか? 人間は上手い仕組みで、この世界を超越する為の必須ピースだから、一見そう見える。

 だがどれだけ人間が発展しても、世界を支配することは無理だ。

 完全に制御された幻想だからな、きっと今に完全解明されて、上位種に全滅させられそうだけどな」


「駄目駄目で、ぜんぜん分かってない、人間と世界の関係製図を読み取れてないね。

 人間が最上位の世界適合体であり、その他はそれを観測するのが至上命題に帰結するのをいい加減認めるべきだね。」


「人間趣味に過ぎるな、俺はそうは思わない」


「長く観測してれば、いずれそうなると思うよ、レイジ、貴方を人間種に降格させようかしら?」


「いいえいいえ、お姉ちゃん、趣味は押し付けずに、それとなく浸透させるべきですよ」


「そんな事をしてみろ、自殺してやる」


「ほら、貴方は人間を、絶対の強度で拒絶する。

 そうなってしまえば、人生が終わるレベルであり、憎悪と愛情が臨界を超えている証左」


「だからどうした、人間なんかになるくらいなら、俺は死ぬぜ」


「人間もいいと思うけど、思考停止して、永遠に楽しみ続ける生命体よりは、ロマンがある」


「思考なんて停止しても、しなくても、同じだ。

 所詮は変わらない生命だ。

 それでも自分で自由に選択できない人生は駄目だ、詰まらないからな。

 ああそうだ、人間の人生は観測には適するが、個々人の人生なぞ下らなくて、酷くしょうもないからな。

 だから俺は自殺するんだろうな」


 俺は人間に劣等感を抱きながらも、ゆうえつかんを抱く。

 無知でしょうがなく、広大無辺な世界を生きながらも、惨めな人生を死なずに生きている。

 これほど無駄で不幸な生命体は、他には存在しないだろう。

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