~第二章~悲しみのバラード、明日への喜び
「海だ~~~!!」
達彦が叫んだように、夏休みを利用して海に来た。達彦が提案をし、匠に双子を誘うように言ったのだ。
匠も達彦の迫力に負けて、「かったり~。」などと言いながらも達彦が代金を全部もつというので双子を誘ったのだった。
着替え終わった双子が出て来た。匠も達彦も目を奪われた。美咲はノースリーブの水着で、真弓はビキニだったのだ。
また、双子の反応は、美咲は「あ~、エロい目してる~。」とケラケラ笑い、真弓は「・・・・・・あんまり、見ないで下さ~い。」と心底恥ずかしそうだった。
そうこうして、海を満喫し、夜になった。
真弓が外に立っていた。暗闇の中、月明かりの下、真弓はその長い髪を風にたなびかせていた。
「・・・・・・何か用か?真弓。」
匠が最初に口を開いた。
「置手紙、見たぞ。」
だが、真弓は口を聞かなかった。
「・・・・・・何か言ったらどうだ?」
そう言って匠が真弓のすぐ近くまで来た時、ことは急に起きた。
匠は目を見開いた。あまりの出来事に、何もできず、ただなすがままになった。
なってしまった、ならざるをえなかった。
匠は我に返ると、真弓を引き離した。
「・・・・・・何のつもりだ、真弓!?」
だが、真弓は答えるどころか泣いていた。
「苦しいの・・・・・・。」
真弓はポツリともらした。
「え?」
匠はそう言い返した。
「なんで、なんで気付いてくれないの!?、こんなにも苦しいのに、辛いのに・・・・・・、
最初は側にいてくれるだけでいいと思ってた。でも、違かったの・・・・・・。
こんなにも近くにいるのに遠くに感じるなんて思わなかったから。
もう、駄目なの、切ないの、心が壊れそうなの。だから、さようなら。」
真弓は走り去っていった。匠には引きとめることができなかったのだ。
そして、その愛故に苦しんだ真弓の思いを表すかのように、雨が降り出していた。
そんな匠と真弓のやりとりを達彦と美咲は見ていた。
「・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・。」
美咲はただ、ぼやくだけだった。
しかし、達彦は匠の方へ歩いて行き、匠をぶん殴った。
「・・・・・・匠、お前このままでいいのか?違うだろ!?今、お前は何をするべきなんだ!?
真弓さんを追いかけるべきなんじゃないのか!?
今、彼女の心がつぶれそうなら、お前が支えてあげるべきなんじゃないのか!?どうなんだよ、匠!?」
達彦は匠に言い放った。
「・・・・・・そうだな、そうだよな、こうしてる場合じゃなかった!ありがとな達彦!」
そう言って匠は走り出した。
「やれやれ、仕方ない奴だ、でも振られちまったなぁ~。」
達彦は言う。それが自分に対してか、それとも美咲にかはわからない。
美咲も「・・・・・・うん・・・・・・。」と言うだけだった。
匠は走る、真弓を探して、土砂降りの中を。
真弓がいた。
そして、匠は真弓を後ろから抱き締めた。
「・・・・・・真弓・・・・・・、よかったぁ~。」
「え、どっどうして!?」
「どうして私なんか追いかけて来たの!?」
匠は肩で息をしながら、でもしっかりと真弓を抱き締めて言った。
「俺、やっと気付いたんだ、自分の本当の気持ちに。真弓のことが好きなんだ!幼馴染としてじゃない。一人の女として!」
「うっ嘘・・・・・・。」
真弓はとまどいを隠せない。
「嘘じゃない!君がいなくなってから、わかったんだ。君が俺にとってどんなに大切な存在だったか・・・・・・。
返事を聞かせてくれないか?」
「・・・・・・はい、たっくん。」
そう言って真弓は匠に抱きついた。その顔は涙を浮かべながらも真夏の太陽のように笑っていた。
「幸せにして下さい、たっくん!」
「ああ、いつまでもな。」
雨雲から光が差し込む中、二人は誓いのキスをした。