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美しき怒り

作者: 詠春

凄まじいまでの咆哮。感じた事のない空気。騒がしかった動物達も立ち尽くす。廃屋からサッカーボールの如く蹴り出された。ピンポン球の如く投げ捨てられた。僕達は兎に角急いだ。何処の軍隊にもいる、ある一定数の匪徒。


コングの怒りは大地を震わせた。匪徒は人形の如く壊されて行く。隊長は廃屋を覗き僕達に救出を命じた。僕はミッシェルと駆けた。ミッシェルは隊長の動きを目で追い僕に2人を良く見るように命じた。


まだ日の浅い僕は言われるが侭に2人を追った。咆哮は鼓膜を震わせ怒りは僕を貫く。取り囲む動物達は身動ぎもせず眺めていたのか。岩の上に踏ん張るライオンの鬣が乾いた風に揺れていた。


コングと隊長。例えるなら2人のラオウか。訳もなく身体が震え止まらない。阿鼻叫喚の地獄画図。凄惨さの欠片も無かった。美しき怒り。力強き哀しみ。複雑に絡み合い溶け合って行った。


匪徒は抗う術も無く無慚に打ち砕かれ大地を汚した。老兵と揶揄されていたコング。チキンと嘲笑われた隊長。2人を兄と思い父と思い慕う僕も嘲笑された。不意にミッシェルが背中を押した。


溢れ出る感情を抑え切れずコングの背を駆け上がる。空に飛び出した。長船と槍を手に駆け巡る。舞う血飛沫に染まる陽は穏やかに照らす。無我夢中に駆けた。月が照らす頃、殲滅は終わった。


煙草に火を灯し口に押し込まれ我に返った。優しき笑顔の3人が僕の固まった指を開き長船と槍から解放してくれた。肩を組み月を浴びながら歩き始めた。動物達は行く手を開けた。



静寂に包まれる頃、力強い雄叫びが2度、3度。月に照らされたライオンは蒼き龍を身に纏いサバンナに消えた。


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