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中二病  作者: 虹燕
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中二病

夏休みと言えば何を想像するだろうか。

強い日差し・友達と行った海・あの娘とみた花火大会……もちろん部屋でダラダラするのもれっきとした正しい夏休みの姿と言える。


そんなプラスの面が目立つ夏休みだが、もちろんマイナスな面もある。

暑さはやる気を減退させ、非リアはリア充を(ねた)み、夏休み終盤には無為(むい)に過ごした日々に虚無感を覚える。


そんな数々の苦難の中でも最も大きなものが橋爪高校2年生 津々見蒼介を悩ませていた。


「だぁぁぁ!!やってられるかこんな宿題!!」


握っていたシャープペンシルをほおり投げて蒼介は大きく伸びをする。

そう、最大の苦難とは夏休みの宿題であった。


その休みの長さにあぐらをかき、ダラダラと過ごしてきたツケが回って来ていた。


蒼介(そうすけ)終わったの!?答え映させて〜」


「終わってねえよ!ってか自分でやれ!」


「ちぇ〜……」


蒼介の幼なじみ、佐々木咲希(ささきさき)も同じ苦しみを味わっていた。

毎年夏休み終盤といえばどちらかの部屋でこうしているのが2人の定番だった。


そんなに苦しむのならば早めにやればいいのだが、お互いが「あいつもやってないし……」という悪い信頼を置いているのでなかなか改善できないのである。


「蒼介さ〜中2のときに『俺が全世界の学校……いや、悪の根幹をなすこの機関を消し去ってくれるわ!!』って言ってたじゃん。今消し去ってよ」


「やめろ、黒歴史を掘り返すな」


「えー……男なら1回言ったことは守ってよね……」


仰向けになってブツブツと文句を言う咲希。

課題は一旦お預けのようだ。

よく聞くと「幼稚園の時私と結婚するって言ったのに……」とか「大人になったらちゅーする約束したのに……」とか聞き取れるのだが、蒼介の耳には入らない。


蒼介は自分の過去を振り返っていた。


いわゆる中二病(・・・)だった蒼介は学校で[イタイ奴] として認識されていた。

墨汁で染めた眼帯やお年玉をぶち込んだ皮の穴あきグローブ、そして緩く両腕に巻かれた包帯が外に出る時の必須アイテムだった。


生徒指導室に呼ばれて服装を正すよう言われた時に『我が力に気づかぬ凡人が……』と言ってブチ切れさせたこともある。


家に帰っては何か必殺技を編み出さないか考え、授業時間はオリジナルの魔法陣を考案していた。


秘密の特訓をしたこともあるし、魔法陣は気に入ったデザインのものを何度も何度も書いた記憶がある。


今の蒼介はあの頃の自分が間違っていた事がわかる。

しかし、自分の人生で一番楽しかったのもあの時期だともわかっていた。


夢も目標もない今の生活より、有り得なくても本当に何かを召喚したり、出したり出来ると信じていたあの頃が。



筆箱から新たなシャープペンシルを取り出すと、蒼介は魔法陣を書き始めた。

頭で思い出そうとしなくても、指が勝手に動く。

何千、何万と繰り返したことでその形は体に染み付いていた。


五芒星をまるで囲み、その丸から聖と堕天を意味するため、上下逆さに羽をはやす。


蒼介がこの魔法陣を数年ぶりに書いたのはなんとなく書いただけで、何かが起きるとは当然思っていなかった。

しかし、この行動が彼の運命をかえる。


ジャリィィィィンンッ

ブォォォォォン


書き終えた瞬間、突然部屋に音が響いた。

その音の大きさに寝転がっていた咲希も慌てて身をおこす。


「な、なに!?今の音!!……って蒼介、その横の人たち誰?」


「さ、さぁ。……横の人?」


蒼介が左右を確認すると、同じくらいの歳の少女が両側に一人ずついた。


2人はお互いの姿をみると、話し出した。

「……何であなたがここにいるんですか」


「それは(わらわ)のセリフじゃ、うせろクソ天使め」


「それは出来ませんね、あなたこそ消えてください。意地汚い悪魔さん」


犬猿の仲であることを容易に想像させる会話をし、しばらく睨み合ったあと2人は同時にこう蒼介に話しかけた。


「私を助けてくれませんか?」

(わらわ)と手を組まんか?」


to be continue

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