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twilight~契約魔術師の彷徨~  作者: 巴月蜜柑
3/5

「―っ!!」

気が付くと。晴輝はいつもの部屋の玄関にいた。

「俺、いままでどうして…」

―あなた、大事なこと忘れているわよ

(そうだ、俺は魔物に襲われて…)

変なうちの高校の生徒と出会ったんだ…

そういえば。

(うちの家族…どうなったんだっけ)

父と母は小さい頃、事故で亡くなったと姉から聞いたことがある。

(あれ、姉…?)

晴輝には、2つ年の離れた姉がいた。

『神前詩』

(姉貴は…3年前、死んだ)

事故で死んだ、と周りからは聞かされていた。

でも実際は、不審死だった。

路地裏で血まみれで、倒れていたらしい。

(姉貴は事故で死んだんじゃない…殺されたんだ)

思い出した。

でもなぜか、今まで忘れていた。

(どうしてこんな事、今まで忘れてたんだ…?)

『それはあなたが無意識に目をそらしつづけていたから』

気が付くとあたりは真っ白だった。

「どこだ、ここ」

『驚いた?』

目の前には、見知った人物が立っていた。

『姉貴?』

彼女は首を横に振る。

『いいえ、この姿は仮初の姿。あなたの記憶から形作ったの』

「じゃあ君は誰」

私は魔物の一種よ、と目の前の人物は答えた。

「魔物…」

『そう。今あなたは私という魔物に憑かれている状態なの』

なんだそれ、と晴輝は唖然とする。今までそんな状態だったなんて。

いつからなの、と晴輝が尋ねると昨日の夜からよ、と彼女は言った。

『昨日、大きな流星群があったでしょう。あれと一緒に私は落ちてきた』

「そう、なんだ…」

晴輝はまだ話がよく呑み込めない。

『『トワイライト』』

「何?」

『昨日のような不定期の流星群は、実はそんなに珍しいものではないのよ』

時期こそ予測できないものの、年に数回起こるらしい。

しかし、場所は局所的だと姉の姿をした魔物が言った。

『大体はここからずっと南に行った  高原のあたりに一番星が降って来るの』

そしてときたま、街にも落ちてくるのだという。

そして星の降る夜は、夜とは思えないほど明るくなる―

そういう所以から、こうした不定期の流星群は『トワイライト』と呼ばれるようになったのだと、魔物は言った。

『そして、この『トワイライト』と呼ばれる現象には、もう一つの特徴がある』

流星群で降ってくる星はただのちりではなく、皆魔物の一種だという。

『巷では『星の子』なんて言う人もいるけど…まあ私みたいな魔物が降ってるのよ』

だから、特定の人にしか気づかれない。

「『特定の人』…?」

『そう。私たちは魔物だから、そういう魔力に通じた人には感じられやすい。でもいくら魔力が実在するといわれている社会でも、普通に生活している人はなかなか気づかない』

「じゃあ、なんで俺は見えたんだ…?」

『それはね、私があなたを選んだから』

あなた、無意識に私を求めたでしょう、と魔物は晴輝の目をじっとみる。

「いや、別に何も望んでいないし、求めてもいないよ」

『魔力、魔物…そういう“魔”がつく類の存在は人々の想いと共鳴しやすい…。あなたは何か強い想いを抱いていたから、私と…『星の子』と共鳴した』

「そんな…」

晴輝は困惑する。

『あなた、お姉さんを前に亡くしたわね』

「うん、そうだけど」

何故か、ついさっきまで忘れていた記憶。

『頭では忘れていても、心のどこかでは覚えている』

そう言って魔物は晴輝の胸を指で差す。

『そして無意識にあなたは真実を知りたいと思っていた』

姉、詩は殺された。

犯人を捜したい。

真実が知りたい。

(―その想いが、こいつを呼び寄せたっていうのか)

『そして私はあなたの元に来た』

契約しなさい―と、魔物は言う。

『私と契約し、“契約魔術師”になるの』

契約魔術師。

都市伝説でよく言われていた存在だ。この世界には魔物と契約し、魔力を自在に扱えるようになった者達がいると。

「契約魔術師って、都市伝説じゃなかったのか」

『そうよ。あなたも夕方出会ったでしょう、一人の契約魔術師の少女と』

あの、魔物を倒した女子高生か。

『私と契約すれば、あなたも自在に魔力を操れる』

そうすれば、真実により近づける―と魔物は囁く。

「…おれの姉貴は、魔物に殺されたのか」

晴輝ははっと気づいた。

魔物はふふふと笑う。

『勘がいいのね』

「だから、ついさっきまで姉が死んだことを忘れていた…」

『どう?私と契約すれば、あなたも真実を自らの手でつかみ取れる』

3日猶予をあげるわ、と魔物は言った。

『3日よく考えなさい。契約するなら、私が協力してあげる。契約しないなら、私はあなたの身体から出ていくわ』

でも、よく考えてね、と魔物は一言くぎを刺す。

『私と契約し、“契約魔術師”となった暁には、あなたはもうもとの生活にはもどれないわよ。それどころか、命の危険もあるのだから。あ、そうそう、私があなたの身体に憑いている間はあなたの身体自体魔物に狙われやすくなるから、気を付けてね。もしもうふんぎりがついたなら、とっとと契約しちゃっていいのよ』

そう言い残して、魔物は去っていった。


翌朝。首の痛みは相変わらずだった。

(あれ、夢じゃなかったのか)

街も昨日よりはましになったものの、まだぼんやりとわずかにかすんでいる。

(確か“瘴気”とか言ったっけ…)

昨日であった少女は、そう呼んでいた。彼女にまた会う日が来るのだろうか。

(まあ、同じ学校だしな)

特に気に留めず通学路を歩く。

「ねえ、君」

突然、後ろの方から声を掛けられた。

振り向くと、そこにはスーツを着た男が一人、立っている。

「何ですか」

「君、どうやら悪魔が取りついているみたいだね」

そういってにやりと笑う。

(もしかして、あの魔物のことを言っているのか?)

「あの…あなたは」

「ああ、僕はこの近くの教会の者でね…悪魔祓いも仕事なんだよ」

悪魔祓い。いわゆる「エクソシスト」と呼ばれる類か。

この“魔力”の存在が唄われる現世、昔は迷信とされていたエクソシストや占い師、まじない師の地位は向上している。そのため、彼等の言葉は冗談と一蹴するわけにはいかない。

「悪魔祓い…」

「そう。今なら無料で祓ってあげるよ、お客さん」

晴輝は何か嫌な予感がした。

「いえ、俺今学校行く途中なので、いいです」

断って歩き始める。しかし、足を一歩踏み出したところで、晴輝の意識はぷつりと途切れた。


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