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余鶴おりて鬼現る

悪鬼千里を走る。余鶴という家に生まれた康嗣は、代々受け継がれた宝刀黒炎を携え今宵も街へと歩き出す。

  満月が夜に浮かぶ時、宝刀黒炎は高音を発し獲物を求める。

 それは代々受け継がれてきた、余鶴に流れる狩人の血による役目が始まる音。

 木々さえ息をひそめる丑三つ時。

 今宵も僕は街を歩く。

 

 「やあこんばんわ」

  まるで友人に声を掛けるように僕は”それ”に話かけた。

 コルルルルルッと喉を鳴らしながら振り向いた”それ”は二本の鋭い犬歯に二本の長い角、

 人のように2本の足で立っている。”それ”は以前人だったもの。

 欲に溺れ何かの拍子に闇を覗き、魅入られ染まった元人間。

 それを余鶴では”鬼”と呼ぶ。もっとも、最近の鬼は鬼と姿形が似ているからそう呼んでいるだけで

 昔の鬼とは少し違う。

 「ケキャァァアアアッ!」

 満月を背負うように鬼は空へ飛び上がる。僕はそれを一瞥して鬼の居た所を見る。

 無残な姿の野良犬がそこにはあった。

 宝刀黒炎の柄を右手で強く握りながら、左手を顔の前に上げて冥福を祈り、目を瞑る。

 「アアアアアッ」

 落ちながら襲い掛かってくる鬼を眼前にして、僕は宝刀黒炎で一薙ぎする。夜に解けるほど黒い炎の揺らめきは鬼を真っ二つに分断し、断末魔と共に消えて行く。鬼になれば人に戻る術はない。余鶴に伝わる教えに従い、僕はもう一度宝刀黒炎で夜を薙ぐと刀は手からすうっと消えて行った。

 こうして夜も更けて明けて行く。そして今日も一日が終わり始まる。

 

悪鬼は夜のみにあらず。昼の悪鬼はどんな顔をしているのだろうか。

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