表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/62

第八話 俺、TUEEEE!

 報告が遅くなりましたが、先日改稿をしました。

 ですが、誤字・脱字の直しだけですので、改めて読み直す必要はないと思います。

 今後、話に関わる改稿をした時は、最新話の前書きでお知らせするようにしますので、よろしくお願いします。

 ギルドの中から、外に俺達は移動する。


 ついでに、通行人や元々騒動を見守っていた野次馬たちが周囲を囲むように群れていた。


 俺の両隣にはロゼとメアリさんが立っている。


「……ミコ、貴女のことを私は誤解していた。存外勇敢なのだな。正直、止めたい気持ちが大きいのだが、それでも……。意見を尊重しよう。だが、無茶はしてくれるなよ」

「ミコ様。先程の提案、受けましょう。無茶をしてはいけませんが、モチベーションは上がりますよね?」

「ああ。二人とも、ありがとう」

 俺は答えて、目前の大男を睨む。


「おい、ちび。いつでも良いぜ」

 余裕ぶって手招きをするバルバロス。

「いや、先手は譲ってやる。いつでもきやがれ」

 だが俺は、あえて手を出さない。確認したいスキルは、たくさんある。最初の一撃で倒してしまうのは、避けたかった。


 バルバロスは、無言のまま俺に歩み寄り、そして……

「……舐めやがって。良いぜ、んじゃあ、これで」

 終わりだ!

 そう言って、バルバロスが固めた拳を振るった。



 現代では喧嘩なんて何年もしていなかったはずの俺の目は、敵の拳の動きを正確に追っていた。


 遅い、とさえ感じた。避けることは容易だろうが、それでは目的を達成することはできない。


 俺は即座に、あるスキルを発動させた。

 そして、体を大きな衝撃が襲い掛かり、俺の華奢な体はぶっ飛んだ。

 数度、体を地面にぶつけて転げまわった。


「ミコっ!」

 ロゼの叫びが聞こえる。


「おいおい、口ほどにもねぇぞ、まさかこれで終わりか? ……いや、本当にこれで終わりか……大丈夫かおい?」

 敵であるはずのバルバロスも俺に声を掛ける。


「……んなわけねーだろ、たこ!」

 俺は数メートル離れた場所で立ち上がり、バルバロス相手に叫ぶ。

 どうやら、スキル〈痛覚遮断〉の発動は成功したらしい。

 あれだけのダメージを喰らっても、痛くもかゆくもない。それに、服がボロボロになっても、体には傷一つない。


 さっと、ギルドカードをとりだしてステータスを確認しても、俺のHPは1たりとも減少していない。

 常時発動型のスキル、〈自動回復〉が機能している証拠だ。


 ……まだ、確信は出来ないものの、結構俺強いんじゃねぇかな?


 驚いた表情で俺を見るバルバロスの前で、イメージした物を創造できる〈物質創造〉のスキルを使って、旅衣装の破れた個所と穴とを繕う。

 うん、結構便利な能力だわこれ。


「なぁ、スキルを使ってくれよ。じゃねぇとお前如きじゃ相手にならねぇぞ?」

 俺の言葉に、周囲の野次馬がざわつく。


「……面白いぞ、ちびすけぇ!」

 バルバロスが好戦的な笑みを浮かべ、そして叫ぶ。


「スキル発動〈超越〉!」


 その瞬間、大きなエネルギーがバルバロスの周囲に満ちたのを感じた。


 生き物として、存在が一段階引き上げられたような感覚……。これを感じられるのも、スキル〈第六感〉のおかげかもしれないな。

〈解析〉のスキルによると、〈超越〉の能力は知力以外のステータス1・3倍に引き上げる、というもののようだ。


 スキルを発動させたバルバロスが、深く息を吸う。

「おい、どこを見ている?」

 瞬きの後、俺の背後から声が聞こえる。


 振り返ると、そこにはバルバロスの姿が有り、丸太のように太い足が俺を蹴り上げようとしていて……。


「ん、なぁ!?」


 それを俺は軽く躱すと、バルバロスは驚きの声を上げた。

 うん、瞬きさえしていなければ、見逃すこともなかっただろうな。


 俺は、片足立ちの状態のバルバロスの足を軽く払う。

 大きく体勢を崩したが、人間離れした動きを見せて即座に体勢を整えた。


 だがしかし、俺からしてみればその行動は、隙だらけだった。

 俺はすかさずに距離を詰めて、バルバロス相手に右手の手刀を振り下ろす。


「もうちょっと遊んでもらいたいんだけど、大丈夫か?」

 手刀をバルバロスの眼前で止めて、俺はからかうように言った。


「……っ勿論だ! 強敵との戦い程心躍るものはない!」

 おちょくられたことを怒るかと思いきや、楽しそうに口角を上げて犬歯をむき出しにし、俺に向かってくるバルバロス。うん、助かる。


 バルバロスは、今度こそ本気を出したようだ。

 目にも留まらぬ(常人の目に限るのだが)速度で繰り出される拳と蹴りの嵐を、俺は軽く躱す。


 根本的なステータスが違うからだろう。

 どれだけ攻撃を繰り出しても、バルバロスが俺を傷つけることはできない。それを理解できているのは、この場ではきっと、バルバロスとロゼだけだろう。


 野次馬は固唾を呑んで俺達の攻防を見つめている。次元が違いすぎて、脳で処理が出来ていないのだろう。

 だが、実際は俺が片手間でバルバロスの攻撃を受け流しているだけだ。


 ……俺の目的は、おおむね達成できた。

 俺はこの世界でも上位の実力を持っていることが判明した。


 後は、俺もあのスキルを発動してみようか。


「考え事か、余裕だなぁっ!」

 俺の思考を読んだわけではないだろうが、思案をしていたところにひときわ鋭い手刀が襲い掛かってきた。しかし、慌てることは無い。


 俺は、ただゆっくりとバルバロスを指さし、そして不可視のバリアをイメージした。

「こ、これは魔法障壁!? 魔術媒介もなしに、何故これ程の魔法を発動でき……!?」


 手刀は、空中で不自然に止まった。まるで、見えない何かに阻まれるように。

 俺が今発動したのは、〈自己魔術媒介〉のスキルを使って発動させた、魔法だ。


 どうやら、魔法を発動させるにはバルバロスが口にした〈魔術媒介〉と呼ばれるものが必要らしいのだが、俺はこのスキルによって、何でも好きな魔法をイメージして魔力を消費することで発動することができるようになっている。


 イメージ的には魔法というより、超能力の方が近いのかもしれない。


「くそったれ!」

 叫ぶバルバロスは、大きくバックステップをして、距離を取ろうとした。

 しかし、この機会を逃すつもりはなかった。


「薙ぎ払え!」

 俺の呼びかけに、発動する〈神器召喚〉のスキル。そして現れたのは、魔力を秘めた妖しく輝く日本刀、だった。


 バックステップから体勢を整えた直後のバルバロス。俺は奴との間合いを即座に詰めて、上段から刀を振り下ろす。


 鮮血が舞う。だが、致命傷ではない。薄皮一枚斬っただけで、大したダメージではない。

「なんだ、それは。……剣、か?」


 しかし、敵の動揺は大きい。

〈神語り〉だと思っていた俺が、神器を召喚したのだから、仕方のないことかもしれない。


「いや、これは【刀】だ」

「【クァティナ】?」

 刀、の部分だけ日本語で発音したのだが、やはりうまく通じない。


「ま、剣の一種だから、あながち間違いではないと言っておく。さて、遊びも終わりだ」

 混乱した表情のバルバロスに、刀の切っ先を向けて、宣言する。

「スキル発動。〈超越〉」


 俺は呟く。体中が大きな力で満たされていくのを感じる。

 そして、驚いた表情のバルバロスを視界に入れ……誰の目にも留まらぬ速さで相手の背後を取った。


「〈神器召喚〉に、〈超越〉……。一体お前は……」

 驚愕の色がにじむ、バルバロスの呟き。

 俺は、振り返る間さえ与えない。


 イメージをする。今度は、握る日本刀の刀身を包む、保護膜。

 俺は精神を集中させて構えなおして――一閃。刀を横薙ぎに振るった。


 瞬間、言葉の続きを口にしようとしていたバルバロスの体が折れ曲がり、高く舞った後に地面に叩きつけられた。


 ダメージは大きい。しかし、斬撃によって生じるはずの切傷はバルバロスにはなかった。

 保護膜のイメージのおかげで、バルバロスを殺さずに済んだ。流石に、死なれては目覚めが悪くなる。


「何者……だ?」


 倒れ伏せる大男は、俺を見上げながらそう問いかける。


「何者って、言われても……。ただの、通りすがりの【アイドル】ですが、何か?」


「ウ、【ウィィドゥー】……? 一体、それ、は……」


 バルバロスは、俺の言葉を聞いてすぐに意識を失ったようだった。

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ