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第四十三話 俺、ワクワクすっぞ!

 小鳥のさえずりが耳に届く。

 窓からは朝陽が射している。

 微睡みから覚醒し、まず目に入ったのは猫耳がトレードマークの美少女だった。 


「お、やっと起きたにゃ。ちびっこはもうとっくに起きて、顔を洗っているにゃ。お前も、さっさと起きるにゃ」

 

 その猫耳美少女であるフィノは、明るく溌溂とした表情で告げた。

 ……ロゼたちに続く朝チュン。

 別に昨日の夜は性的にお楽しみだったわけでもないのだが、俺の心のちんぽは朝勃ち不可避でございました。


「……んにゃ? どうしたのにゃ? まさか、二日酔い、ってわけでもにゃいよにゃ?」

「うん、違う。大丈夫、ちょっと寝ぼけていただけさ」

 俺が答えると、フィノは呆れたように肩を竦めてプレハブの出入口から出て行った。

 俺もベッドから起き上がり、彼女の後に続いた。


 ☆☆☆


 顔を洗って身支度を整え、フィノが用意してくれた朝ご飯をプレハブ小屋でヨージョと三人で食べた後。

「……で、どうするつもりなのだ?」

 ヨージョが不機嫌そうな表情で、俺に尋ねた。


「? どうするつもりだ、って……どういうことだ?」

 俺の言葉に、フィノも同じように疑問符を浮かべた表情を見せる。

「いやいや、わらわをつれてきたのにも、りゆうがあったのだろう? それにつきあってやる、といっているのだ!」


 ヨージョが言っているのは、どうやら今後の行動指針についてのようだった。

 そう、俺がこの場にヨージョを連れてきたのは獣人と人間の相互理解のため……といったら大袈裟か。

 ま、そんな感じでお互いを知れたら良いな、という感じです。


「おお、やる気満々じゃないか! 俺は嬉しいぞ!」

 俺はヨージョにプリティーウィンク(とっても可愛いのに、実は普通のウィンクなんです)を決めた。

「……いや、おまえのきのすむようにさせるのがかいほうされるのもいちばんはやいだろうとかんがえただけだ。かんちがいするなよ」


 ……で、で、でたー! ナチュラルボーンツンデレだー! 

 なんて一瞬思ってしまったが、ヨージョが真顔で言っているのを見て、別にツンデレでもなんでもねぇな、と思い直した。


「んー、そうか。と、いっても、特に何かをしようと思っているわけじゃないんだ」

「……なんだ、それは? では、きょうはなにをするというんだ?」

 ヨージョの問い掛けに、俺は考える。

 考える……のだが、やはり特にこれといったものはない。


「フィノたちは、普段何をしているんだ?」

 だから、俺はフィノに話を振った。


「僕たち、かにゃ? 国境沿いの警備に、獣を狩りに行くか、木の実でも集めるか……まぁ、大体そんにゃ感じかにゃ。それが終われば、のほほんと過ごしているだけにゃ」

 うーむ、と唸りながらフィノがいう。


「……ずいぶんとのんきなものだな、じゅうじんというものは」

 険しい表情で、ヨージョは言う。

「僕たちは、お前ら人間よりも寿命がにゃがいから、時間に追われるようにゃ過ごし方をしにゃいだけにゃ」

 皮肉気に唇を歪めながら、フィノが言った。


 互いに見つめ合う(にらみ合うとも言うかもしれない)2人。

「……ちなみに、俺とヨージョも狩りのお手伝いをしてもいいかな?」

 俺は二人だけの世界に、割って入って言った。

 ヨージョの横顔を一瞥してから、フィノは言う。


「足手まといはごめんだにゃー!」

 満面の笑顔だった。


「ちょいちょい! 待っていただけます!? ほら、俺たち何のためにここにきちゃったか、このままでは分からなくなっちゃうでしょ? だからお前らのお手伝いをして、ちょっとでも知りたいなと思ってね。分かるよね? ね?」

「いや、分かるけどにゃぁ……、一応、狩りも遊びではにゃいし、森は魔獣がでて危険だってある。お前の方は心配いらにゃいけど、そっちのちびっこは……」

 そう言って、フィノはヨージョを見る。


 足手まといどうこう言っていたが、まぁ、心配というのもあるのだろう。なんていっても、フィノは良い奴だから!

「ふん、わらわのことをあなどるな! まじゅうあいてでも、ひけはとらない!」

「嘘だな」

「ああ、嘘だにゃ」

「なぜそうなる!?」

 ノータイムで返答した俺とフィノに、ヨージョが狼狽える。


「だって、そんな力があったら、すぐにここから逃げようとするだろ、お前?」

 俺のまっとうな疑問に、ヨージョが返答する。

「さすがにわらわでもわかる。おまえのようなばけものからはにげられないことくらい。それに、おまえがねむっているよなかに、もりをひとりであるきまわることも、むぼうといえるだろう?」

「……そうですね、その通りだと俺も思います」

 俺は幼女に説き伏せられていた。


「ふーん、そうにゃのか。……にゃら、おてにゃみ拝見といくかにゃ」

 フィノは好戦的な笑みを浮かべていた。


 ふぇぇ、私たち、一体これからどうなっちゃうのぉ!?


 ☆☆☆


 結果から言うと、ヨージョが自信喪失して凹むことになっちゃいました。

 

 狩りの様子を短く、分かりやすく振り返ると、


 意気込んだものの、単純な身体能力が足りずに移動速度についていけないヨージョを背負う俺。

 獲物を見つけると、汚名返上とばかりに気合を入れなおすヨージョ。自らの言葉を対象にある程度強制させられる〈絶対命令〉のスキルを発動する。

 しかし、その効果でる前に、獣人たちはその得物を狩っていた……。

 そして俺に背負われたまま、ヨージョは悔しさに歯噛みするのであった。


 先程までは狩りのため、森の中を動き回っていたが、今はまた居住区へと戻ってきていた。

 本日の収穫は、昨日の宴のあった広場に一度持っていき、そこで料理を担当する女性の獣人に手渡していた。

 

 周囲に獣人たちがいるまま、俺とフィノとヨージョは、今日の狩りのことについて話をしていた。


「にゃははは! あれだけ偉そうにしていたくせに、にゃんにもできにゃかったにゃ、ちびっこ?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら、フィノはヨージョに告げていた。

 それに対するヨージョの反応は、無言である。

 お手本のように「ぐぬぬ」って表情を見せているけど、何も口には出さないでいる。……悔しいのだろう。

 俺は、その様子をみると流石に可哀想になってきて、フィノに声を掛ける。


「ちょ、フィノ! 流石に言いすぎじゃ……」

 俺がそう語り掛けた時だった。


「んにゃ!?」

 フィノの頭頂部に、げんこつがお見舞いされていた。

 何事か、と思っていると、


「はじめての狩りだ。上手くいかないのは仕方ない。あまり、からかってやるな」

「フィノ、おめぇもちょっと前まで何の役にも立たねぇちび助だったじゃねぇか!」

「ちょっと狩りが上手くなったからって、いい気になってちゃいけねぇぞ」

 がはははは、と笑うのは、周囲にいた屈強な獣人の男たちだった。


「そ、そんにゃのにゃん年も前のはにゃしにゃ! 今さら引き合いに出すのはにゃんか違うにゃ!」

 髪の毛をガシガシと撫でられるフィノは、顔を真っ赤にして抗議していた。

 だが、他の連中はそんな抗議の声を真面目に取り合ったりしない。


 フィノをからかう声が、あちこちから上がってきた。

「う、うう……、お、おまえらにゃ~!」

 フィノは大声を上げつつ、自らにちょっかいをかけてきた者たちへと向かって、駆けだしていた。


 俺とヨージョは、2人残される。

 割と本気でフィノは暴れているようで、獣人たちに乱暴を働いている。

 体を折って苦しみの声を上げる者、膝をついて苦悶の表情を浮かべる者など、様々だ。


 ……ったく、フィノってやつはこの期に及んで暴力ヒロインのキャラ付けまでしちまうとは、恐れ入ったぜ。

 

 とりあえず、そんな風に賑やかな獣人さんたちは放置しておき、俺はさっきのフィノの言葉のフォローをしておこうか、と思っていた時だ。 


「……どういったら、よいのだろうな」

 意外にも、ヨージョの方から俺に話しかけてきた。

「ん? なんのことだ?」

 その言葉の意味が良く分からなかったため、問いかける。


「わらわは、ずっと。はれものにふれるかのように、みなからあつかわれていた。……でも、ここではちがう。わらわは、ただのよーじょ。それいじょうでも、いかでもない」

「……そうだったのか?」

「ああ、そうだったのだ。なにせ、おさないとはいえ、いっこくのじょうおうなのだからな、あつかいにもこまるのかもしれない。……しかし、ここにいるものは、あほばかりだ。らんぼうでちのけがおおい、やばんじんばかりだ。たちばなどかんがえることなどないのだろう」

 ヨージョの言葉には、少しきつめの棘があるように感じられた。

 先程のやり取りが悔しくて怒っているのだろうか? 


「お、おい。そんな言い方はないだろう……」

「だが、あかるく、きもちのよいものしかいない。……ああ、おまえのおきにいりのおんなは、ちょっといじわるなやつだったな」

 他の獣人に囲まれている、というよりも取り押さえられているフィノを、ヨージョはジトッとした目で見ていた。


「そのあほさかげんがいいのか、わるいのか。じゅうじんとひとのどちらがいいのか、わるいのか。……わからぬ、わらわにははんだんができぬ」

 ヨージョは、未だ獣人たちに心を許してはいない。たったの一日で心変わりするわけがないのは、当然だろう。


 だけど、それでも。

 これまで自分の中にあった、〈獣人は悪〉という常識は、そのたった一日で揺らいでしまったのを自覚しているのだろう。

 彼女の表情は、決して明るいものでは無かった。


 しかし、その変化は俺にとって悪いものでは無い。

 

「べつに、答えを急ぐ必要はないだろう」

 俺は、ヨージョの頭を、ポンと軽く撫でた。

 彼女は、気持ちよさそうに目を閉じていたが、すぐに頭を振って俺の手を払いのける。

 すこしだけ照れた表情を見せてから、先程の俺の言葉に対する言葉を呟いた。


「…やっぱり、わらわにはよくわからぬな」

 その時、俺の目にはヨージョの横顔が、どこか寂しそうにも見えたのだった。


気付いてしまったのですが、ヨージョちゃんのセリフが全てひらがなというのはとても読みにくいですね!

今後、改善して読みやすくしていきたいと思っています。

そこで、「したったらずな幼い女の子」のセリフを表現できそうな書き方がありましたら、感想やコメントで教えてくださると嬉しいです!

「そんなこと良いから。普通に書けよ……」とかいう感想でも全く構いませんので!



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