第三十話 俺、セクシーでもキュートでも、なんならパッションでもいける。
騎士スミスたちに連行され、数日が経っていた。
俺は王都へと到着し、そして王城にてあてがわれた部屋で体を休めていた。
そこまではよかった。旅の道中も特に大きな問題はなかった。王都に着き、王城へと招待された所も良かった。
問題は、通された部屋だった。……いや、部屋っていうかさ。
「ここ、牢屋じゃね?」
俺は目前に見える牢を見据える。
格子状の鋼鉄で壁が出来ている。
映画なんかでよく見た、ファンタジー世界の牢屋、そのままだった。
何故俺が牢屋に入っている? そして何故俺は何の抵抗もせずに牢屋に入ってしまったのか? ……いや、そりゃなんかノリで入ったところはあるよ。今はもう反省してるし正気に戻っているからノーカンっ!
このままここでジッとするのもつまらん。
……多分俺の力なら無理やりにでもここから出ることはできる。何だったらこの城ごとぶっ壊すことも可能だ。
ただ、流石にそこまで強硬策を講じようとは思わないが。
俺のこの状況を見ると、この国の偉い人に快く思われていないのだろう。
それをさらに悪化させるようなことは、何も分からない状態の今、そんなことをする勇気というか度胸というか……無謀はできない。
「あー、何すりゃいいってんだよ」
俺は1人ぼやいた。
しばらくボーっと、天井を仰ぎ見る。
ツチノコのシルエットみたいな形の染みを発見し、食い入るようにそれを見つめていたのだが、不意に素晴らしい暇つぶしの方法を思いついた。
俺は正座し、深呼吸をした。
そして、自らの胸を揉みしだいた。
「……」
自分の胸をこうして揉むのは、初めてこの世界に来た時いらいしていなかった。
俺は微かに、だが確かに感じる胸の柔らかさに意識を集中していた。
自分のものとはいえ、女体の乳を揉むことなど、生前の俺にはできなかったことだ。それをいまや、俺はいつでもどこでも好きなだけ女のおっぱいを揉めるようになったのだ。
そんな天国のような環境ではあるのだが……ただ、一つ問題があった。
「足りねぇ……圧倒的に! 足りねぇっ!」
ボリュームが! 足りないっ!
そう、俺の知っているお胸さまは、肩空宗男(165センチ98キロ推定Fカップ)君を初めとした、巨乳さんばかりだ。……シーナとフィノは違うけど。
俺は彼ら彼女らのような巨乳には恵まれなかった。
おっぱいが駄目なら……っ! 俺にはまだ、お尻がある!
がしっ、と。俺は自分のヒップを撫でさする。
時に激しく、時に繊細に。
うむ、小振りだがきゅっと引き締まった、我ながら良いお尻だ。
だけど、肉眼で上手いこと見られないのが残念だな……。
ならば、今度は太ももだーっ!
俺は前屈の要領で体を倒し、そして自らの顔を太ももに挟んだ。
細く華奢だが、女の子らしい曲線の俺の太ももは、なかなかの挟まれ心地だった。
……ていうか、なんかいい匂いする! 俺、めっちゃ良い匂いする。
やっべー興奮してきた。
このシチュエーションも興奮する。
超絶美少女が理由不明のまま牢屋に閉じ込められている、という客観的に見たら囚われの姫じゃないか! その姫の実態は、変態なのだけどね!
俺の心のちんぽは天高くを仰ぎ見ている。
存分に自分の内腿を堪能してから、俺が思いついたのは「エッチなポーズ」の練習だった。
よく現代日本の雑誌でみかけた、グラビアアイドルのセクシーポーズを自ら行うというやつだ。
やばい、今日の俺は冴えに冴えている。冴え渡っている。
俺はその場で立ち上がり、記憶を思い返しつつ、とびきり扇情的なポーズを取っていく。
よーし、今日は祭りだぜー! ヒャッハー!
俺のテンションは、まさに最高潮だった。
そんな時だった。
「ミコ、無事か? ……な、なにをしている?」
セクシーな女豹のポーズを華麗に決める俺に、いつの間にか現れていた金髪の女騎士、ロゼが声を掛けてきた。
なんで、ロゼがここにいる? そして俺は今何をやっている? 何故女豹のポーズを取っている? ……ノリでやっているんだった!
あわわ、と、俺は不測の事態に対応できずに戸惑う。
そんな風に何も答えられないままの俺を見たロゼは、顔を俯かせて囁いた。
「全く貴女という人は……で、でも。そういうところも、嫌いじゃないぞ」
ポッ、と顔を赤くしたロゼが、そんなことを思考が空回りする俺に言ってきた。
咄嗟の事態に対応できず、俺の思考はますます空虚に回転する。
そして……。
「あ、はい」
と、真顔で一言返事をするのが精一杯なのでした!
 




