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第二十五話 俺、やれやれだぜ。

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくおねがいします!

 顔を赤くしながら俯くメアリさんから視線を逸らし、俺はギルドカード(ラブレター仕様)をポケットの中に突っ込んだ。


 その後にメアリさんを見ると、まだ「はわわー」としている。多分もうしばらくはこのままなのだろう。


 俺はその可憐な姿を十分に目に焼き付けてから、


「ところで、メアリさん」

 と、話を切り出した。


 メアリさんは俺の言葉に反応し、顔を上げた。

 未だ頬には朱が差してあり、はにかんだ微笑みまで浮かべていた。

 ……可愛い人だなぁ、と呑気に思った。


「俺が〈S級〉冒険者になったっていうことは、高難易度のクエストも行えるってことなんだよね?」

「はい、そのとおりでございます」

 メアリさんは頷き、返答した。


 俺は別に冒険者として名を挙げたいわけではないが、折角〈S級〉になれたのだからしばらくは冒険者生活をして顔を広めたり、情報


収集に力を入れたりしようかな、と思っているのだ。

 


「そしたらさ、できるだけ難易度が高いクエストはないかな?」

 難易度の高いクエストをこなせば、俺の名前も売れるだろう。

 そうしてから、満をじしてアイカツスタート!


 ……この世界でアイドル活動ができるイメージがわかなくて困る!


「かしこまりました。……と、言いましても、7メータル級ドラゴンの討伐をされたご主人様に相応しい難易度のクエストなど、今現在はございません。割の良い仕事ならありますが」


 メアリさんの言葉に、俺は思案する。


 現在、クエストの成功報酬とドラゴンの素材集めのおかげで、金には余裕が有る。稼ぎに行かずとも、しばらくは過ごせる。

 ならば、情報収集のほうが優先順位が高いか……?

 特に、獣人と、人間との争いが、現在は戦いと和解のどちらへ向かって話が進んでいるのか気になる。


「……そっか。そしたら、今はまだ良いかな。しばらくは町をぶらぶらしてみようかな」

 俺は軽く思いついたことを口にした。

「そうですか、かしこまりました。仕事の後にでもよろしければ、ご主人様に町の案内をさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 メアリさんは、とても魅力的な案を提示してくれた。しかし……。

「いや、そんなの悪いよ。メアリさんに迷惑だろ、そんなの」

「私は、ご主人様とはギルド内でしかお会いできていないので、たまには外でお話がしたい……のです」

 そう言って、メアリさんは潤んだ瞳で俺を見てくる。


 その瞳を見て、改めて思案した。

 俺はこの町のことをほとんどよくわかっていない。メアリさんに頼りきりというのは申し訳なくもあるが……折角こんなふうに言ってくれているのだ。

 

 よし、そうと決まれば案内をお願いしよう! と思い俺は口を開こうとしたところ。


 バンっ! と勢いよくギルドの両開きの扉が開かれた。


 俺は口を閉じたまま、何事かと思い振り返った。

 そこにいたのは、腰に武器を提げた三名の男だった。


 他の冒険者のような荒くれ者、といった雰囲気は薄いが、彼らもまた戦いを生業とする者の空気感を身に纏っていた。

 ……それにしても、あの服装、どこかで見覚えがあるなぁ。


 彼らは入口の前で立ったままにギルドの中を見渡し、そして大声で言った。


「我は王国騎士団所属のジョン・スミスだ。我が王の命により、〈神語り〉の少女、ミコを探している。この中に、彼女がどこにいるか知っている者はいないか!?」



 その声に、ギルドの中にいた連中の視線が俺へと一斉に注がれた。見覚えのある服装だと思っていたが、あれは王国騎士団の男性用の団服か。

 確かに、ロゼとシーナとディアナの着ていた団服と基本的なデザインが似ていた。


 ……って、おい! なんだよ、勘弁してくれ。


 内心で毒吐く俺のことなど気にする素振りを彼らは一切しない。

 視線の先にいる俺に、ジョン・スミス氏が気づいて歩み寄ってきたのだ。

 そして数秒後、正面に立って口を開いた。


「黒髪黒目の小柄な少女……。うむ、報告と相違ない。お前が〈根源の巨竜〉を退けた〈神語り〉の少女だな?」

 高圧的な声音に、少しばかりイラッとしたが、それで騒ぎ立てるほど心に余裕がないわけではない。


「だったら、どうだって言うんだよ?」

 俺は首肯してからジョン・スミスに尋ねた。

 彼は不敵に笑ってから答える。


「我らについて来い。我らが王が、貴様に会いたいとのことだ」


 彼の言葉を聞いて、俺は頭を抱えた。


 

 早速、面倒なことになりそうだな、と深く溜息を吐いた。


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