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side 希望

 強大な力を前にして、絶望に身を委ねる者達の中に、未だ心挫けぬものがいた。


「これでお終いか……だが、ただで死ぬわけにはいかない!」

 瞳に闘志を滾らせた少女、ロゼは決意を呟き聖槍を持つ手に力を込めた。


「僕をわすれるにゃよ、人間」

 そして、その隣にも闘志を秘めた少女がいた。

 低く唸り、巨竜を睨みつけるフィノは、ロゼに対して呟いていた。


 ロゼは隣に立つ獣人の少女に頷いてから、一つのことを考える。

根源の巨竜オリジンドラゴン〉が現れたという現状を、国に戻って報告する必要があるだろう。

 

 先程の一撃の被害を受けなかったシーナとディアナを一瞥した。

 彼女たちは、最初の〈火球〉を防いだために魔力の消耗が激しく、戦力としてはいささか不安だ。しかし、行動すること自体に問題は無い。

 ならば、彼女たちには国に戻ってもらい、この事態を伝えてもらうのが一番だろう。


(……無事に戻るまでの時間は、何とか稼がなければ。)

 ロゼは心中で覚悟を固める。

 死に対するものではない。巨大な敵と戦う覚悟を固めたのだ。

 

「シーナ、ディアナ。国に戻り、報告をしてくれ!」

 

 ロゼは二人の少女に対して告げる

 その言葉に二人は逡巡し、そして……。


「ごめんなさい、その言葉は聞けないわ」

 ディアナは首を静かに振ってから、確かな口調で答えた。


「……超同意。……報告は、妖精に任せる。私は……一緒に戦う」

 シーナは真剣な眼差しで答えてから、呪文を呟き一体の妖精を召喚。

 その小さな妖精、ピクシーに一言呟く。

 ピクシーは、寂しそうな表情をした後に、頷いてから飛び去っていった。


 シーナとディアナは、真剣な表情でロゼを見つめていた。


(――長い付き合いだ。言葉がなくても、何を考えているのかはわかる)


 ロゼは二人の表情を見て、柔らかく笑った。

 二人は命をかけて、巨竜の足止めをすることの手伝いをしてくれるのだ。

 


「馬鹿だ、貴方たちは……。でも、ありがとう」

 ロゼが呟くと、隣まで歩み寄ってきていたシーナとディアナが答えた。

「補助魔法なら、今の私でも使えるわ」

「……最後の力で、私の最高の友達に、来てもらう」

 三人は目を合わせ、微笑んだ。



 死の際に、共にいてくれる戦友。

 それは、何よりも心強かった。



「お前ら、仲良しこよしは良いけど、そろそろ目の前を見ないと、殺されるにゃ」

 フィノの冷静な言葉に、巨竜を振り返る三人。


 そこには、こちらを見下ろす巨竜がいた。


『未だ戦意を失わぬか。……よい、ならば吾輩も敬意を払い、最大級の攻撃をお見せしよう』


 その言葉の後に、巨竜は大きく空気を吸い込んだ。

 大気が震える。森がさざめく。これから起こることを、四人は本能で恐れていた。


 巨竜の身体に、途方もなく莫大な魔力が満ちていくのを感じた。

 

 竜種にとっての最大級の攻撃――それはすなわち、スキル〈竜の息吹ドラゴンブレス〉のことだ。




 その圧倒的な力の片鱗を全身で、魂の奥底で感じ――四人の少女は、早くも立ち上がった闘志が急速にしぼんでいくことを理解していた。


 戦意をなくして立ち尽くす四人の双眸に映るのは、体現された〈破壊〉と〈暴力〉だった。



 最初から戦いになどなるはずがなかったのだと、事ここにいたり思い知らされたのだった。


(戦う事すらできず、私たちは死んでしまうのか?)

 ロゼは、自らの弱さに打ちのめされていた。


(何も出来ずに、死を待つだけ? そんにゃの、いやにゃ……)

 フィノは、その場から動くことすらままならず、ただ巨竜の動きを見ていた。



『これで、終いだ』


 ドラゴンの言葉が届く。

 放たれようとする圧倒的なエネルギーの片鱗を感じ、その場にいた者は、痛みに呻くことも、武器を手にして抗うことも、死を悲観することも忘れて、ただ脱力していた。


 目の前に存在する破壊の化身の前では、何者も抗うことはできないのだと、理解していた。



 ――そう、何者も抗えない。そのはずだった。



「させるかよぉぉぉぉおお!」


 巨竜の足元から、何かが――いや、何者かが絶叫を伴って、勢いよく放たれた。

 それにつられて巨竜を見てみれば、下あごを殴られたかのように、不自然な形で天を仰いでいた。

 咢を開き今まさに破壊の渦を大地へと放とうとしていたが、顔の向きが強制的に変えられた。

 

 莫大なエネルギーが、空に向かって放たれた。


〈竜の息吹〉は、雲を切り裂く一筋の光の渦となっていた。

 衝撃の余波が大地を伝う。その衝撃が、全身を貫く。

 あれがもしも自らの身に降りかかっていたら……ロゼは最悪の想像をして、身震いをした。



『今さら、何の用だという? 弱き少女よ』


〈竜の息吹〉を放ち終えた巨竜が、苛立ちの感情を込めた言葉を口にした。

 その対象は、呆然と立ち尽くすのみであるロゼでも、シーナでも、ディアナでも、フィノでもなかった。


 話しかけられた少女――ミコは、空を飛んで腕を組んでいた。


(なぜ、ミコがここに!?)


 ロゼの疑問に答えるものはいない。

 

「折角力を持って生まれ変わったんだ。だから、イメチェン、してみようと思ってな」



 可憐な少女の姿をした小さな希望は、絶望を前にしてなお。


 不遜な笑みを浮かべていたのだった。 

 次話は、〈根源の巨竜オリジンドラゴン〉とミコのバトル回です!

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