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第十一話 俺、猫耳美少女に会う。

 夕暮れに沈む、森の中。

 ベースキャンプの一角、そこに設営されたテントの中には、俺を含めて目麗しい美少女が車座になって座っていた。


「か、帰って来ちゃった……。てへっ!」

 俺は頭を指先で掻きながら、眼前にいる二人の少女に満面の笑みを浮かべた。

 ちょっと気まずくって、額に冷汗が流れる。


 その二人の少女――シーナとディアナは、俺を見て目を丸くして驚いている。

 そりゃ、そうだろう。何だかいい感じに別れの挨拶をした半日後に、またしても顔を突き合わせることになっているのだから。


 きっと、「こんな時、どんな表情をすればよいか分からない」なんて、思っていることだろう。それは、俺も同じだ。

 笑えばいいのかな?

 ……だから俺は、笑ってごまかすことにしたのだ。


 可愛いは正義! つまるところ超絶キュートな俺ことミコちゃんの笑顔の前では、全てが許されるのだ!

 プリチースマイルを浮かべる俺に、二人が飛びついてきた。


「お帰りなさーい、ミコちゃん!」

「……今夜は、寝かさない」

 華奢な俺の体をきつく抱きしめてくる二人。やはり可愛いは正義であった。二人とも、全く気にしていなさそうで安心である。

 ……シーナが俺の耳元で性的な言葉を囁いていることは、安心できないが。


「……二人とも、自重しろ。ミコが困っている。それに、昨晩とは違い、同じテントで一晩を過ごすわけには行かないのだ」

「え? そうなの?」

 俺の右隣に座るロゼの言葉に、ディアナが疑問を口にする。


「そうなんだ。俺、ギルドで冒険者登録をして、クエストを受けているんだ。そのためにこの森の中に戻ってきたんだ。これからクエストを遂行するために、また森を移動しなければならない。ここのキャンプには、森に戻ってきた挨拶をしに来ただけなんだ」


 俺の説明を聞いていたシーナは、

「……別に夜はここで休めばいいんじゃない? 森の中は、何処にいたって、危険。……私たちと一緒が、一番安全。……貞操の安全は、保障できない、けど」

 と提案した。


 最後の一言は聞かなかったことにして、俺は答える。


「気持ちはありがたいんだけど、俺は騎士団でも、雇われてここにいる冒険者でもないから、快く思わない人間もいるだろう? それに、この森は広いからな。いろんなところを見ていけるように動きたいんだ」

 俺の言葉に、シーナは不満そうに頬を膨らませた。


 そんなに俺と熱い夜を過ごしたかったのかな? ……でも、俺の記憶が正しければ、シーナほど寝つきの良いやつはいなかったのだが。

「そういうわけだ。……ただ、同じ森なのだ。ちょくちょく顔を見せに来てくれたら、嬉しい」

「そうね、ミコちゃんなら大歓迎よ。困ったことが有れば、いつでもきてね」

「……困っていなくても、来て」

 三人共が、気持ちの良い笑顔を浮かべていた。


「ああ。また来るさ。ところで……」

 そう言ってから、俺は昨晩からの疑問を口にする。

「この森って、獣人がいるんだよな?」

 俺の言葉を聞いた三人は、渋い表情になった。


「ああ。ウラミナ国の獣人がいる。奴等は獰猛でとても危険だ」

 そして、ロゼが俺の問い掛けに答えた。


 予想していたことではあるが、口ぶりから察するに、獣人と人間はあまり友好的な関係を築けていないようだ。

「敵対関係にあるのか、知らなかったなぁ……。それで、獣人ってどんな姿をしているんだ?」

「基本的には、人と同じよ。だけど、決定的に違うのは獣の耳と、尻尾ね」

「……身体能力は、人というよりも獣の方が、近い」


「言葉は通じるのか?」

 俺はさらに疑問をぶつける。

「ええ。多くの獣人は、私たち人の言葉も理解しているわ。ただ、彼らは同種の間では違う言葉も使っているの」

「私たちの中にも、彼らの言葉を理解できるものはいる。シーナもそうだな」


 ロゼに名指しされたシーナは、眠たげな瞳を閉じてから、大きく頷いた。

「精霊の中には、獣人と同じ言葉をつかえる子がいるから、教えてもらった。……森の中で獣人に遭ったら、気を付けて。中には、問答無用で、攻撃する奴もいるから」

「ずいぶんと、緊張状態にあるみたいだな」

 俺は答えてから、思案する。


 きっと、人間と獣人の関係は俺が考えているよりもよっぽど質が悪いのだろう。


 現代でも、肌や瞳の色、そして信じる神様が違うというだけで大きな諍いが生じていた。生きる世界が違うとはいえ、同じ人間。耳や尻尾が生えている獣人と、仲良しこよしで過ごしてこられたとは、考えにくい。


 それに、聞いていると身体能力にも大きな差があるようだ。か弱い人間が怯えて、敵対行動をとったとしても不思議ではないと思える。


「気を付けるよ、ありがとうな」

 そう言って、俺は立ち上がる。


 獣人と人間。

 二つの種族が友好的な関係を結べていないという事実は、ちゃんと頭に入れておいた方がいいだろう。


「いいえ。このくらいお安い御用だ」

 ロゼが答えて立ち上がると、シーナとディアナも共に立ち上がった。

 三人に目をくばせてから、俺はテントから出る。


「また近い内に来るわ。そんじゃ、また」

 俺はひらりと手を振る。


 三人は満足そうな表情を浮かべてから、手を振り返した。



 ☆



 森の中を歩く俺は、ギルドカードに表示された情報を確認しながら、思案していた。


 一つは、自分のスキルについてだ。

 ざっと数えてみたのだが、一万を優に超える数のスキルを俺は所持していた。これは間違いなく偶像のスキルの影響だ。

 神の如く振舞えるのだから、この世に存在するスキルのほとんどを行使できるのは、特に不思議でもないだろう。

 だが、困ったことにそのうちの70%位は俺にとって必要のない物だった。


 と、いうのもいくつか理由がある。

 例えば、HPやMPが総量の1%未満になること、等の《危機的状況に陥いること》が発動条件のスキル。


 これについては、この世界でもトップの実力者であるバルバロスが俺のHPを削れなかったこともあり、事実上発動不可能であることが分かった。


 もう一つ、〈偶像〉と〈神語り〉の関係のように、完全下位互換のスキルとかも、結構あるのだ。


 分かりやすいのが、物質創造だ。

 これは俺のイメージした物質ならば何でも創りだすことのできる汎用性の高いスキルなのだが、中には刀剣限定の刀剣創造というスキルもある。


 刀剣創造は、汎用性では物質創造には敵わず、また完成度でも神器召喚に勝ることは決してない、死にスキルなのだ。


 とりあえず、そういう事で残りの30%程度のスキルがどの程度使える者なのか、実験をしていかなくては。


 次に気になるのは、ドラゴンの生態調査のクエストについてだ。


 魔力反応を一度確認できれば、俺のスキルで追跡することができるようになる。しかし、残念なことに魔力を感知しないままに探し出すことはできない。


 大人しく、一度は足で稼ぐしかないのだ。

 まぁ、一度会うことが有れば、逃げる暇もなくぼッコボコに出来る自信はあるのだが。


 そして、最後に獣人だ。

 人間と獣人の間に、あまり良い感情がないのは分かったが。それでも俺は自らの好奇心に抗えそうにない。


 俺はドラゴンを探すよりも、まずは獣人と出会ってみたい、と。そう思っていた。


 なぜか? 決まっている。


「獣耳少女に会いたいからだっ!」


 思わず、俺の口から言葉が出ていた。


 まぁ、仕方ない。この溢れ出すパッションを抑えることなど、俺にはできない。


 とりあえず、獣耳美少女を探して、モフモフしなければ……。

 そう思っている俺の目の前に何者かが空から落ちてきた。


「……あ」


 目の前の少女の口から、鈴の音のような軽やかな声が零れた。


 その空から落ちてきた少女は気まずそうな表情をした後に、覚悟を決めたかのように口を開いた。


「そこのお前、とまれ。……にゃにものだ? にゃぜここにいるのか、説明しろ。さもにゃくば……ぶち殺すにゃ」



 俺を睨む少女の言葉を聞いて、歓喜し、心のちんぽが固く屹立するのを感じた。



 待望の猫耳美少女が、そこにいたからだ。





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