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破滅

 冬はどうしてこう、人をダメにする物ばかりなんだろう……。コタツとかさ……、少し執筆に詰まると抜けられないんだよね。



 いや、本当にごめんなさい。これからも生温かい目で見守って下さいw

「―――演出かぁ……あれ?」


 光りが収まったので目を開けて見ると、さっきとは違う所にいた。


「ここは……図書館?」


 周囲を見てみると、5メートル以上はある本棚が規則正しく並んでいる。規則正しく並んでいるので、当然道ができているのだが……


「広っ!!東京ドーム1個か2個は入るよな……」


 何故、才能開花キャンペーンを取得したと同時にこんな所に飛ばされたのかは分からないが、何か意味があるんじゃないかと思う……多分。


 それにしても汚い。埃とかゴミが落ちてあるわけじゃないんだが、本棚に戻されていない本があちこちに積み重ねられている。


「この本は……『終末大戦』?へぇ、やっぱり詳しく書いてある本があるのか……ってあれ?開かない?」


 なんてこった、本を開けないぜ……。

 暫く開けようと「ぐぬぬ!」や「うぎきっ!」と変な声を出しながらも懸命に開けようとするが、結局開かなかった。どうなってるんだこれ?


「う~ん、とりあえず歩いてみるか」 


 もしかしたらどこかに外に通じる扉があるかもしれない。無かったら無かったで、ヘリス謹製の刀で壁をくり貫いてみよう。

 今のところ、俺の魔力を全て注ぎ込めばあの刀に斬れない物は無いと思っている、常識的な相手なら……。神相手だとまだ無理かもしれない。というか、神の強さがどれくらいなのかとか基準が分からないしな。



 壁伝いに歩く事1時間……


「扉見っけ!!……って、ここの広さヤバいな」


 この図書館は四角い形なので2辺分、つまり壁全体の半分程歩いた所で漸く扉を見つけた。


 「隠し扉があるかもっ!!」という可能性にも賭けて慎重に歩いていたのだが、普通に扉があった。壁を見ながら歩いていなければ遠くからでも扉を見つけられたのだろうが……。

 それにしても、やけに豪華な扉だな。


「この扉を持って帰ればいくらになるんだろうか……って、流石にそれはダメだよな」


 中に何がいるか分からないが、とりあえず入るしかないだろう。

 6歳児が開けるには大き過ぎる扉を押してみる。


 ギギィ……


「開いたか……って何だここ!?」


 扉を開けるとそこには……庭園があった。

 

 庭園というのか?分からないが、部屋の構造としては周りに植物があり、部屋の真ん中には噴水がある。噴水の横に机があって、大量の本が机の上や周りに積み重ねられている。

 植物に関しては見たことの無いものばかりだけど、大分遠くに飛ばされてしまったのだろうか?


「というかどういう部屋なんだ?壁がガラス張りで外が見えてるせいで光が射してるし、本に紫外線は禁物だから普通は図書館と一緒にあって良い部屋じゃないはずなんだが……」


「説明しようっ!!」

「うわぁっ!?」


 いきなり机の方から声が聞こえたっ!!と振り向いて見ると、本の山の中から人が出てきた。


「誰ですか……?」


 登場シーンからしてまともな人には見えないが、まずはコミュニケーションだろう、そこは地球と一緒だ。

 ただ少し、変な事しはじめたら即逃げる。


「ボクの名前は…………あれ?今は何の名前だっけ?あ、そういえば丁度2000年前に会った子に名付けてもらったのが最後だっけ……?」


 んん?目の前の人……少女なんだが、名前を名付けてもらっただの、少なくとも2000年前から生きてる発言等、いきなり見過ごせない事を言い始めたぞ?


「名前はいいんで、貴方自身が"何者"かを教えて欲しいんです」


俺がそう言うと、少女はいきなり澄ました表情になり顎を少しあげて、上から目線で俺を見つめてくる。

 簡単に言うと、どや顔で此方を見下している体勢だ。正直うざい。


「おいおい、名前とは相手を判別する情報の中でも特に大切な物なんだよアルギウス君。

 君は例えばゴブリンを見たと相手に伝える時にわざわざ、『体が全身緑色で耳が尖っていて身長は僕より少し小さいくらい、そして顔が醜悪な生き物をさっき見たんだ!!』なんて……言わないだろう?

 流石にここまで詳しく言わなくてもゴブリンだとわかるだろうけどさ、相手が見たことも無い生物を伝えるのならこれでも少ないと思うんだよね」


 

 と、ほざき始めた。さっきまで自分の名前を忘れていた奴がどの口で言うんだ!!と突っ込みたかったが、こいつにそれをすると余計に話がややこしくなるのは確実なので止めておこう。


 ボクっ娘キターー!!と感動した俺の気持ちを返して欲しいぞ切実に。


「えーと……じゃああんたの名前は?」

「いきなり敬語が無くなったねぇ……まあいいか、ボクの名前はルインって言うんだ。確か君達の世界にある"えーご"っていう言語からとったらしいんだ。あ、その子も一応ちきゅー人だったらしいよ」


 ルイン、ルイン……ダメだ、そんな英語習った覚えが無い。


「意味は何て言うんだ?」

「えっとねー、意味は『破滅』らしいよ?まさにボクを表した言葉だよねっ!!」

「いや、知らねーよ!!」


 ていうか、破滅ってなんだよ破滅って……。仮にこいつの言う事を信じるとしたら、こいつは破滅に少なくない関係があるって事か……一緒に居たくね~。

 後、もう地球に戻る事は無いだろうから覚えなくていいだろうけど、ルインは破滅って意味なのか……。

 そう言えば魔法も英語が多いし、一応覚えておいて損はないだろう。そんな魔法は断固としてお断りだが。


「じゃあ次は俺の番だな……俺の名前はアルギウスって言うんだ。何故かあんたは俺の事を知っているらしいが、あんたは敵か?味方か?」 

「流石だねアルギウス君。まさか自己紹介中に質問を入れて来るなんて図々しさは天下一品のようだ。因みにボクは君の味方だよ。

 ……まあいいや、これじゃあ話が進まないし、そろそろ話を進めようか。それに、あまり長い時間君はここにいれないしね」


 そこで一旦区切り、さっきまでケタケタと笑っていた時とは違う、真剣な顔つきに変わる。

  少女にただならぬ雰囲気を感じたので、俺も気を引き締めて聞こう。


「んー、先ずは君がここに来た原因だね。ぶっちゃけた話、それボクのせいなんだよね。方法は簡単、君が転生してすぐ、君の身体の中にある物を仕込んだ。

 簡単に説明すると、ここに来るための切符みたいな物だね。本当はもっと後に来てもらうようにしてたんだけど……どうやら君のスキルがボクの埋め込んだ物を君自身の才能と一緒に開花させちゃったらしいね。ここまでで質問は?」

「ちょっと整理させてくれ……」


 もう頭がパンクしそうだ。俺の身体に仕込んだってなんだよ……まさか才能開花だけのせいじゃ無かったなんて。じゃあ、今の今まで俺の身体にはそんな得体の知れない物がずっといたって事かよ……。

 しかも俺が転生した時から既にこいつにはバレてたって事だよな。


「あー……お前が俺について、殆ど知っているって事は分かった。質問は……今の所はまだいい」

「了解。じゃあ話を続けよう。君の身体に"それ"を埋め込んだ理由だけどまあ、今の状況を作るため、というか君と話をするためにね。

 まず、この空間だけど、シスヒィアの外にボクが創った空間なんだ。今ボクはとある事情でシスヒィアに行けなくてね、行けるようになるまでここで寛いでるってわけ。

 因みに本や光源なんかもボクが創った物だから、紫外線とか小難しい法則はボクの都合良く適当に改変してるよ!!」


 と言って、一度口を閉ざす。俺に考える時間をくれたようだ。


 コイツの言っている事……、宇宙なんかにこの空間を創ったって事か?……常識はずれの事ばかりで、話についていくのがしんどいな。


「そう言えばとある事情って何だ?」


俺がそう質問するとルインは頬を膨らませて睨んでくる。こいつ、黙っていれば可愛いんだけどなぁ……。


「もぉー!!わざと濁して言ってるんだからそこは追及しない!!」

「分かった」


 話を聞けば聞くほど謎が深まっていくんだが……。


「えっと……そうそう、あまりここに長居し過ぎると君がまずい事になっちゃうし手短に話そうか。一番話さないといけなかった事なんだけど……これ言っちゃうとなー、どうせ君が疑ってくるしなー」

「はやく言えよっ!!」


 なんか知らんけどここに居続けるのはまずいらしい。なのに何故言い出した本人が呑気な事を言ってるんだ‼


「そうだね、本格的にヤバイからさっさと言ってしまおうか、君もだんだん消えてきてるし。安心してね、元の場所に戻るだけだから」


 手を見てみると、俺の手がだんだん透けてきていた。後、視覚や聴覚なんかもだんだん機能しなくなっていく。


「君がシスヒィアで神を倒そうとしているらしいけどね、実は―――――――――んだよ」

「は……?嘘……だろ?」

「ほん――さ。嘘――思う――、探し――ば良い――」


 だんだん聞き取れなくなっていく少女の声、意識を手放す中俺はさっきの言葉を頭の中で考える。あれは本当だったのだろうか?

 確かに聞こえた言葉、


『本当の敵は神では無いんだよ』


 いきなり呼ばれて殆どアイツのペースで喋られて、いきなり時間が来たとか言って送り返されて……嵐のような少女だったが、あの言葉は何故か妙に信憑性を感じた。












「敵……か……」


 眼を開けてすぐ、あの空間に飛ばされる前と同じ所に居たかを確認し、辺りに敵がいないかを確認する。

 敵の影が見えない事を確認した所でほっと一息、考え事に集中する。


「ヘリスが嘘をつくことは無いし、ヘリスが神に封印されたのは本当だろう。でも敵は神じゃない……よく分からないな」 


 そもそもどちらかが嘘を言っていないと条件が合わないのだ。そうなると必然的にあのルインって言う少女が嘘をついている事になるんだが……念のためルインの言うことも確認はしておいた方がなんとなく良いと思う。

 後、ルイン自身も。あいつが本当に俺の味方かも分からないし。


「結論、保留と言う事で」


 今ここで考えても意味が無いだろう。何のヒントも無いこの状況で迂闊に結論を出した所で、その答えが合っている確率なんてたかが知れているだろうし。 


「後少しスキルを確認したら帰るか」


 気を取り直して、さっさとあの空間に飛ばされる前の目的を達成させよう。あんな事を言われたせいで少し気が乗らないが、いざというときにスキルが使えなかったら笑えない。

 笑う前に死ぬ、そういう世界だしな。


 とりあえず才能開花で得た能力。元々最初に試す予定で使ったんだからな。


「えーっと……そういう事か」

  

 期待外れというかなんというか……どうやら新しいスキルは覚えられなかったらしい。


 だが!!代わりに幾つかのスキルが強化されていたのだ!!勿論、万物之贄(サクリファイス)以外のだが。

 この世界ではゲームみたいに簡単にレベルが上がるものでは無いから、素直にこれはありがたい。

 

「って……もしかしてこれってもっと後で使った方が良かったのか!?」


 スキルが多ければ、その分レベルが上昇するスキルも増えるわけだし……。


「性格悪過ぎだろ……そりゃ初回限定だよなぁ」

 

 とにかく、次に進もう。後、眷属化も強化されたようだが詳細は載っていなかった。コイツもまだまだ謎なんだよなぁ。

 ミューナもコイツで創造したわけだし、これもいつか真剣に調べたいな。


 そして、最後にジョブだ。

 

 なんと、ジョブまで強化されていた!!強化というか、名前が変わったので進化だろうか?


……一度も登場していないくせに何をしてるんだコイツは。

  

 今は戦力強化を優先的にしていきたい所なので、勿論ジョブの進化でも嬉しいのだが……俺が選んだジョブに関して言えば、正直進化して欲しく無かった。


 そのジョブとは……


理無之神(異端なる原初の神)


「お願いします退化して下さーーいっ!!」


 空に俺の声が響き渡った。




 ……誰も聞いてないよね?

 ただでさえ、今あるスキルも使いこなせてないアルギウスが、これ以上変な(そして強い)スキルを覚えたらどうなるのか……。

     (*一応仕様です!!)

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