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依頼後の暇潰し

 

 

「で、何から聞きたい?」

「え、えーっと……ギルドマスターの好きな食べ「却下だ」……ですよね、はい」


ぐぬぬ……場を和ませたかっただけなのに。


 今、俺は冒険者ギルドの会議室にてギルドマスターと二人っきりで居る。

 会議室と言っても、普段は冒険者パーティーが多い報酬を受け取ったときに山分けをするために使うらしいので、椅子や机は見栄えよりも実用性重視と言った感じだ。

 

 さて、何故二人っきりでこんな所に居るかという話だが、父さんは職場――王城に今回の独断行動の報告に、ヘリスとミューナは先に家に帰ってもらっているのだが、俺はギルドマスターに呼び出されて今現在ここに居るわけだ。

 ちなみに、冒険者達はまだ戦闘の後始末をしている。俺達だけ先に帰って来たのだ。


 そして、戦闘中にギルドマスターが気になる事を言っていたけれど「後で話す」と言ったので、今それを実行しているのだろう。


「それじゃあ、今回の緊急依頼に俺達を呼んだ理由を教えて下さい」

「そうだな……その質問に答える前にこれを見てもらおう」


 そう言って、ギルドマスターは自分の耳を見せてくる。


 いや、そんな物見せられても困るんだけど……。 

  

 と思って見てみると、ギルドマスターの耳に違和感を感じた。


「耳が……尖ってる?」


もしかて……この特徴は……!!


「そうだ。耳が尖っている種族は色々いるが、俺はその中のエルフと言う種族でな、まぁ、正確には母が人間だったからハーフエルフというのだが」


 エルフキタァァァァァァァ!!


 いや、獣人なんかは町で見るんだけどね?エルフはいなかったんだよ。やっぱり数が少ないとか、あまり集落から出ないとかなのかな?


「そのエルフの特徴として精霊を見る力があるんだが……聞いているのか?」

「……聞いてます」


 エルフが精霊を見れるなんていうテンプレをいただいたせいで少しトリップしかけていた……。


「それでお前を見たときに少し精霊の様子がおかしくてな、ルイスの息子ということもあって観察のために今回は連れてきた」

「精霊の様子……ですか?」


 もしかしてあれか?精霊に気に入られている的な主人公体質が俺にあるのか?

 俺の時代キタ!!


「そうだな……精霊の様子を一言で言うなら、『怯えていた』だろうか。

 本来、精霊は普通の人間にたいしては全然気にしないし、気に入った奴の所には集まってくるんだか、お前の周りの精霊は何故かお前の近くに集まるものの様子を見ると言うかなんと言うか……そう、『怯えながらも服従の意を表してた』と言うのがしっくりくるな」

「えぇ……」

 

 なんていうか、それ、完全に悪役ルートやん。はぁ……。


「お前は……何者なんだ?」


 これは何て言えば良いんだろうか。『実は俺、転生者でした~、てへっ☆』……無いな。ギルドマスターは信用は出来るだろうけれども、転生者って事自体あんまり言わない方が良いだろう。デメリットしかない。


「……分かりません」


 結局、本当の事は言わなかったけれど、誤魔化す事も出来なかった。


「まぁ、言いたく無いのか、本当に知らないのかはこのさいどうでも良い。現状では何も判断はできんしな。他に聞きたい事はあるか?」

「んー、父さんとの関係とか?」

「アイツとは冒険者時代にパーティーを組んでいた」 


 意外な事実だけど……簡潔過ぎない?


「もう少し詳しく!!」

「俺はアイツに拾われた身だ。その前の話は悪いが話したくない。ともあれ、冒険者時代の功績で俺はギルドマスター。アイツは名誉子爵になったわけだ」

「ちなみに今何歳ですか?」

「32だ」


 意外と若いな。ハーフと言ってもエルフだし、100は越えてるかと思った。


 そういえば父さんは36だったよな……結構二人とも早くに冒険者から退いたのか。


「他は……今の所無いですね」

「そうか、それじゃあついてこい」


 そう言ってギルドマスターは会議室から出ていったので、俺も後に続く。


 ついてこいって……何かあったっけ?


「何をするんですか?」

「ランクの昇進だ。後、今回の依頼で何体の魔物を狩ったかも見ないとな」


 そういえばランクの昇進の約束もしてたな。魔物の討伐数なんてどうやって確認するんだ?


「よし、ギルドカードを貸せ」

「あ、はい」


 つれてこられたのはギルドの受付だった。殆どはここで冒険者の相手を完結させるんだから当たり前ではあるんだけど。


「お前は今回の依頼の前からDランクだった。と言うことにしたいんだが……お前の素性を知っている冒険者はいるか?」

「えーっと、ビルドさん達ぐらいでしょうか」

「アイツらか……確か今回の依頼には参加していなかったな。ああ、そういえば前日に依頼を受けていたのか……。

 よし、俺がそいつらに言っておく事にする。アイツらは頭の固い奴等では無いし大丈夫だろう」


 Dランク……少しずつ上げるって言っていたのにいきなり上げすぎだろう‼


「後は今回の討伐数だが……ふむ、オーガ1体、ゴブリン14体か……3人パーティーで狩ったにしては少し少ないな。まあ、お前達もまだまだ子供だったと言うわけだ」


 すんません……俺が居眠りしてたせいです。


 ていうか、ギルドカードにそんな機能があったのは知らなかった……。


 でもまあ、おかげでギルドマスターも勘違いしてくれたのだし結果オーライだ!!


「今回の報酬に関しては、すでに確認されていたオーガとゴブリンには価格を決めてある。他はゴブリンキングだが……アイツの事だ。お前達にオリジナル魔法を自慢できたお礼にと報酬は断るだろう……変異種ゴブリン1体2千リグ、変異種オーガ1体4万リグ……合計6万8千リグだ」


 そう言って、ギルドマスターに硬貨の入った袋を渡される。ギルドマスターは信用できるし、後で確認すれば良いだろう。


「それでは、また明日からも頑張ってくれDランク冒険者。仲間の分も後日更新しておこう」


 ギルドマスターから手渡されたギルドカードには、しっかりと『D』の文字が記されていた。

 

 そういえば……。


「俺達、もうすぐ学園に通い始めるのであまり顔は出せなくなると思います」

「そうか、此方としても冒険者の質が上がるのは歓迎する事だ。来れない分、学園でしっかりと腕を磨いてこい。そうしたら俺からも少しくらい稽古をつけてやる」

「あ、ありがとうございます」


 怖い……ギルドマスターとの訓練とか、スパルタの未来しか見えない……っ!!

 でもあれ?ギルドマスターってヒーラーだよな?


「戦闘訓練ですか?回復魔法の訓練ですか?」

「両方だ。一応、ヒーラーがメインだが戦闘職も持っている。いわゆるダブルジョブだな。レベル150くらいで戦闘職にもついた」

「因みに、戦闘職のジョブは……?」

「アサシンだ」


 ああ、だからかゴブリンキング戦で父さんに『武器が無くても首刈れるでしょ?』なんて言われてたの。ギルドマスター程の実力でアサシンならそりゃ刈れるわ。


 回復魔法の練習……腕をいきなり切られて、出血死しないうちに自分で治せ!!とか?

 戦闘訓練なら色んな体術を駆使して俺を痛めつけてくるんだ。自分で体感して覚えろって……それからそれから……


「まてまて、そんな事はしない!!」

「うわっ!?」


 どうやら途中から声に出ていたらしい。

 心なし、ギルドマスターが凹んでいるように見える。


「その、すいませんでした……」

「やっぱり笑顔が足りないのか?そういえば部下にも言われたな……確か『ギルドマスターの無表情以外は全部怒っているようにしか見えないです』だったか?あの時、涙ながらに訴えられていた時に気づくべきだったな……。

 だがギルドマスターが普段からヘラヘラと笑っていても良いのか?ただでさえ若く見えるせいで嘗められると言うのに……しかし……」


 ヤバい……ギルドマスターが完全にトリップしてしまった。

 

 うん、これからはもう少し優しくしよう。


「あの……俺、そろそろ帰りますね?」


 未だにトリップしているギルドマスターをおいて俺は家に帰る事にした。








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「「「お帰りなさいませ。アルギウス様」」」

「ただいま~」 


 俺が帰ってくるなり、使用人さん達に迎えられた。


 こういう場面に会うと改めて貴族に生まれた事を実感する。そういえばグランバード家って名誉貴族らしいね。一代しか続かない家柄何だから、今思えば貴族らしい教育を受けた覚えが無い。

 

 当たり前といえば当たり前だ。父さんは家から飛び出して冒険者、貴族になったらしいし、そんな簡単に支配貴族になれるはずも無い。


 まぁ、俺としても貴族になって内政チートなんかしているよりも神レベルに対抗出来るように力をつけたいし、そもそも3男の俺が貴族になれるはずもないのに、スペアとして自由は無くなるだろう。

 それに、継承権の無い名誉貴族だから良いけど、支配貴族で兄弟どうしで疑心暗鬼なんて嫌だしなぁ。


「そういえばヘリスとミューナは?」

「お嬢様方は私室に居られると思います」

「ありがとう」


 俺の質問に素早く執事さんが答えてくれる。


 とりあえずヘリスとミューナに会いに行こうか。





「ただいま~」

「お帰りなさいませ。アル様」

「とぉーー!!」


 部屋に入るなりミューナが飛んできた。比喩ではなくそのままの意味で。


「うぐっ」


 咄嗟に原初魔法を今出せる最大火力で体に張り巡らせ、ミューナを受け止める。

 それでも結構キツい……!!


「アル、おかえりー!!」

「あ、ああ、ただいまミューナ……」


 昼間の父さんの件ですっかりこの突進にはまってしまったようだ。

 だが、これは一歩間違えれば父さんのような被害者がまた出てしまう!!ここは心を鬼にして止めなければ。


「ミューナ、あのな……」

「なにー?」

「ぐっ!」


 くっ……やっぱりこの無垢な笑顔の前には如何なる怒りも膝を折るしか無いのか……!!

 いや、さっき使用人さん達は何て言っていた?ミューナの事をお嬢様と……。そうだ!!俺には保護者としてミューナを立派な淑女にするという義務がある!!


「そのー……無闇に人に突進するのは悪い事だから、止めような?」

「んー……分かった!!ミューナ、良い子になる!!」

「良かった……嫌われなくて本当に良かった……!!」

「頑張りましたね……!!アル様!!」

 

 今この部屋は、何故かヘリスは感激していて、ミューナは良い子宣言をして、俺は俺で試合終了後のボクサーのように燃え尽きているという、不思議な光景になっていた。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「今日の凱旋を見に行くか」

「賛成です。やはり私達も参加した作戦ですし、最後まで見たいですね」

「にゃー!!」


 今日はもう暇だし、暇潰しに今回の作戦を最後まで見届けるのも良いだろう。


「よし、行くか!」


 必要な物は全部アイテムボックスの中だし、服は俺の場合私服にコートと、戦闘でも普段着でもどちらでもいける服なので問題無い。ヘリスとミューナは俺が帰ってくる前に着替えたようだ。


 早速家を出た俺達は、とりあえず街の大通りに出て見る。貴族街は街の中心の方にあるのでそこまで行くのもしんどい。幸いグランバード家は名誉貴族だからか、貴族街の西の端の方なので方角的にも凱旋のある大通りまでは3、40分程度で着いた。


「まだっぽいな……」


 それもそうだ。ゴブリンキングが死んだあと残りの冒険者パーティーが帰ってきて、そこから冒険者は後片付け、俺達は帰投。今に至るまで実に3時間だ。

 今は夕方から夜になるあたりの時間だが、多分夜遅くにでも始めるのだろう。なんとなくカーニバルを想像してしまう。


 実際は前世ほどの物は期待できないだろうが、作戦成功の知らせを聞いた街では屋台等も準備し始めているため、かなり楽しめそうだ。


「そうだな……ゴルバドさんの所に行くか!」

「そうですね。今回、ゴルバドさんに造っていただいたナイフには随分助けられましたし」

「あのお髭のおじちゃんー?」


 実際、ゴルバドさん謹製のナイフのおかげでめんどくさい解体の仕事が簡単に終わったのだ。あの時は値段が高いと思ったが、この性能を知ってしまうともっと高くても、多少無理をしてでも買いたくなりそうだ。


 そうしていろんな路地裏を通り抜け、20分ほどでゴルバドさんの店に到着した。

 

「すいませーん。アルギウスでーす」

「おぉー、今行くから待ってろー」


 店のカウンターからゴルバドさんを呼ぶと、奥の工房から声が聞こえてきた。

 何かの作業中だったのだろうか?


「おう、坊主と嬢ちゃん達か、明日には防具が出来るから楽しみに待ってな。……で、今日は何のようだ?」


 ……そういえば防具も造ってもらっているのを忘れてた。


「いえ、今日の依頼でゴルバドさんに造ってもらったナイフがとても役にたったのでお礼にと……」

「ガハハハハ!!その為にわざわざ来たってか!ありがたいねぇ!!これからも坊主が金や材料を持って来れば色々造ってやる‼

 こう見えても俺ぁ時間と設備と材料さえ揃っていれば下位だが魔剣や聖剣を造れるんだ‼

 早く坊主もそんくらいの物を俺に造らせるような男になれよ‼」


 確か魔剣と聖剣って勇者や魔王が使うような物だよな?……マジでこのおじさん一体何者なんだよ……。


「私からも、ありがとうございました」


 ヘリスもゴルバドさんが話終えた頃を見計らって感謝の言葉を言う。

 元はといえばヘリスが感謝しようとしてたんだよな。


「おう、こんな別嬪さんに感謝されるたぁ嬉しいなぁ!!」

「ありがとなー!!」

「チビスケも、もっと俺に良い武器造らせれるように頑張れよ‼」


 ミューナも感謝の言葉を言うが、少し馴れ馴れし過ぎる気がする。まぁ、ゴルバドさんが良いなら良いけれど……。


 俺達が暫く雑談していると……


「……アルギウスと……誰?」


 突然後ろから声が聞こえたので振り替えると……店の入り口にリオが居た。

 

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