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独りが好きな回復職  作者: 昼熊
本編
63/145

特別な贈り物

『上半身強化』『下半身強化』


 もはや、お馴染みとなった強化魔法で身体能力が格段に上昇したライトが、ミリオンへ向かい突き進んでいく。

 イリアンヌは半円を描くようなルートでミリオンの側面へと回り込む。

 ロッディゲルスは両手から発生させた二本の極太な鎖を操り、イリアンヌと逆方向の側面から攻撃を仕掛ける。

 ファイリはライト以外に支援魔法を掛けると、今は待機状態で臨機応変に対応できるよう、戦況を見守っている。


「さーて、どれだけ楽しませてくれるのかしらね」


 余裕の笑みを浮かべ、構えもせず無防備な状態で待ち構えているミリオンへ、真っ先に到達したのはイリアンヌだった。

 両手に一本ずつ持った短剣は今まで使っていた物とは違い、闇のように黒い刃をしている。短剣だけではなく、イリアンヌは服装まで様変わりしている。

 露出度的には以前とさほど変わりはないのだが、守るべきところはしっかりと守れている。胸元、手首足首の素材は硬度の高いものが使われているが、動きの妨げになりそうな箇所は柔らかい素材が使われている。

 ライトの法衣に合わせたかのような黒で統一された新しい服装は、キャサリンが無理にでも着せようとしていた戦闘服である。


「最後の望みぐらいは叶えてあげないとねっ!」


 その服装とセットになっていた短剣がミリオンの数歩手前の空間を薙ぐ。

 甲高い音が鳴り、何もないはずの空間に火花が散る。


「やっぱり、障壁が厄介すぎるわね! っと、危ない」


 何度も障壁に切りつけるが破壊できる気配もないので、別の方向に回り込もうかと考えていたイリアンヌが、突然、横へ転がるように飛び退く。

 イリアンヌが避ける前にいた地面に大きな穴が空いている。


「見えないはずの、攻撃を避けるなんて大したものね。勘が優れているのかしら」


 立ち上がったイリアンヌが全速力で直線的ではない移動を始める。突如止まったかと思えば、急に曲がり再び走り出す。大きく前に頭から飛び込み、前回りの状態で地面を転がると立ち上がると同時に、大きく跳ぶ。

 外から見ればイリアンヌが一人で変な動きをしているようにしか見えないのだが、実際はその変則的な動きで、ミリオンの見えない攻撃を見事に避けているのだ。

 その証拠に、イリアンヌが走った後には地面への大穴が幾つも空いている。


「確かに動きは早いけど、捉えられない速さではないはずよ。なのに何故、私の攻撃が全てかわされているの」


 実際、イリアンヌはまだ神速を発動させていない。それでも常人を遥かに上回る身体速度なのだが、ミリオンにとっては問題のない速さのはずであった。それをイリアンヌは攻撃が来るのがわかっているかのように、事前に察知し避けているようにしか見えない。

 ミリオンが思考状態に入ったその時、陶器が割れたような音が鳴り、ミリオンは意識を引き戻される。


「おや、考え事の最中でしたか」


 目の前に、ライトがいた。

 割れた障壁の間を通り抜け、ライトはメイスが届く範囲まで間合いを詰めている。

 変身前の障壁ですら割るまでにあれ程苦戦していたライトたちには、魔力が増大した今なら、神力を使われない限り絶対に破壊されないとミリオンは高を括っていた。

 それが実際は神力を発動していないライトにあっさりと破壊され、巨大な鉄塊が頭に振り下ろされようとしている。

 イリアンヌの不可解な回避能力に、ライトによる障壁の破壊。混乱した状態でも体は咄嗟に反応し、鈍く黒光りするメイスを、闇を纏った右腕で受け止めようとする。

 右腕に重い衝撃が伝わるが鉄塊を振り払うように、強引に腕を横に払う。だが、その手応えに、ライトの一撃にしては軽いとミリオンは訝しむ。

 そして、その感覚が間違ってないことを確信したのは、巨大なメイスが闇の粒子となり目の前で消え去ったのを目撃してしまったからだ。

 メイスが黒い霧となって消えた実感がわく暇も与えず、同じ箇所にまたも巨大な鉄塊が振り下ろされる。右腕を引き戻して防御するには間に合わないと、残った左腕を上げようとしたのだが、その左腕に黒い鎖が巻きついてきた。


「そうかっ!」


 闇の鎖を見て、先ほどのメイスは闇魔法で造られた模造品のメイスだったのだと、瞬時に状況を理解したミリオンは、左腕を束縛する鎖を容易く引き千切るが、その少しの遅れが致命的だった。


『神力開放』


 ここで温存していた特別な贈り物スペシャルギフトを発動させたライトは、白銀の光を放ち、神の力を借りた鉄槌を一閃する。

 ミリオンの頭頂部から股下まで縦に白い閃光が通り過ぎると、体が真っ二つに裂ける。


「「ぎああああああああああああああっ!」」


 左右に分断された体が別々に悲鳴を上げる。

 ライトはメイスを振り下ろした体勢から、視線を少し上げ断末魔の悲鳴を上げているミリオンを覗き見る。

 大きく目を見開いた左右の目がライトを見下ろしている。その目を見た瞬間、ライトの背筋に戦慄が走った。言葉では説明できない何かを感じたライトは、素早く後方に飛び一気に距離を取る。


「どうした、ライト? 完全に殺っただろあれは」


「ああ、見事な一撃だった」


「私が相手の注意を逸らしてあげたから、なんだけどね!」


 近くまで駆け寄ってきた仲間に顔を向けることもなく、白銀の光を放ったまま、ライトは前方を睨みつけている。


「いえ、今のは手応えが殆どありませんでした。倒せていないはずです……といいますか、冷静に考えてください。常識的に考えて不自然ですよね。このメイスで叩きつけられて、何で綺麗に分断されているのですか。押しつぶされて手足だけが残っているならまだしも」


 巨大なメイスの先端にある鉄塊は、子供が膝を抱えたぐらいの大きさをしている。そんな獲物で上から殴られ貫通したのであれば、対象は圧縮され原型など微塵も留めていないはずだ。

 それが鋭利な刃物で切られたかのように、真っ二つに裂けるなんてことは有り得ない。

 予定通りに事が進み、浮かれていた一同はハッとした表情でミリオンを見る。そこには、分断されながらも倒れることなく立ち続けている姿があった。

 全員の視線が自分に向いていることを確認したミリオンは、口の両端を釣り上げ嬉しそうに笑い始める。


「あははははははっ! ねえねえ、期待しちゃった? 百万年もの間、人間を騙し陥れてきた私が、たった数十年生きた程度の人間が考えた浅知恵に騙されるとでも思ったの? くすくすくす。残念でしたー。私の目的は初めから、ライトさんに神力を使わせること。私を唯一滅ぼせる可能性がある神力さえ使わせれば、勝ったも同然だもの。単発の奥義なんて喰らわなければいいだけの話だもんねー。割られる前に、自分から別れちゃえば当たらずに済むしぃ」


 二つに分かれた体の切断面から闇の糸のようなものが何百本も伸びていき、中心部でその糸が絡み合うと、二つの体が引き寄せられ切断面が綺麗に合わさる。

 切れ目は初めから存在していなかったかのように消えてなくなると、元の姿を取り戻したミリオンが口元を抑え、笑いを堪えている。


「ライト、体の方はどうだ。神力の影響は」


「体の至るところが悲鳴を上げていますが、まだ動けますよ。攻撃が当たらなかったので、反動も少ないようです」


 関節や筋肉が軋み、体が無事ではないことは理解しているのだが、今はそんなことを言っている場合ではない。それに、ライトはいつもより副作用が楽な気がしていた。

 神力を発動すると全身から何かが抜けていく感覚に襲われ、力を使い切った後に動けなくなるのだが、今は神力が妙に体に馴染んでいる。


「でも、障壁が壊されたのは何でなのかな。あの時は神力使ってなかったでしょ。貴方たちの力で壊されるとは思えないのだけど」


「そのネタばらしをすると思いますか?」


「まあ、そうよね。じゃあ、もう一回やってもらおうかしら。今度はちゃんと見てるから」


 ミリオンが腕を軽く振り下ろすと、ライトには目視できない力の塊が上空から降ってくる。

 それを、いち早く察知したイリアンヌは神速を使い、既にその場から逃げ出している。

 ファイリは白銀に輝く瞳で空を見据えると『真・聖域』を発動させる。今度は頭上に六枚の光る壁が現れるが、壁は二枚を山形の屋根のように繋げ、それが三枚並んだ状態で発現され、尖った部分で見えない力を受け止める。

 鋭く尖った先端が相手の攻撃を受け止めつつ切り裂き、左右に逸らすことにより高威力の攻撃を防ぐことに成功する。


「また、防がれちゃった。厄介な防御魔法ね。って、ん? その目は……何。それに、微かだけどこれって、神気じゃ」


 自分の攻撃を完全に受けきったファイリを訝しげに見つめていたミリオンは、違和感の正体に気づき声が漏れる。

 神眼を発動したファイリの両目が今までのように金色ではなく、白銀に輝いている。


「へっ、やっと気づきやがったか。これが神眼本来の姿だぜっ! この眼は空気や魔力の流れさえも見通す! 障壁の綻びも全てなっ」


 ファイリが突き出した手から、爪程の大きさしかない小さな光の弾が三つ飛び出す。それは威力を最低限にまで抑え、攻撃速度だけを上昇させた『聖滅弾』

 その聖滅弾が二発、障壁に着弾した地点をイリアンヌは、聖属性が付与された短剣で寸分のズレもない正確な突きを入れる。

 聖属性が付与されているとはいえ、その程度の威力では揺るぐことのない障壁にひびが入る。


「え、そんな非力な攻撃で障壁に傷がつくわけが! どうしてっ、有り得ない!」


 目の前で行われている理解不能な状況に頭を抱え、髪を振り乱すと、イリアンヌ目掛け同時に十もの力の塊を放つ。

 それは目で捉えることのできない攻撃のはずなのだが、イリアンヌは神速を発動させ全て余裕を持って避けてみせる。


「何で、何で、イリアンヌがこの攻撃を避けられるのよ! これは肉眼で見ることができないはずよ!」


「見えないなら、見ずに聞けばいいじゃないの」


 ミリオンの疑問にそう答えたイリアンヌは、両目を固く閉じている。

 イリアンヌは不可視の攻撃を全て耳で察知し、目に頼らず回避してみせた。


「そんなの、人間業じゃないでしょ! どれだけ優れた聴覚しているのよ。神じゃあるまい――まさかっ」


 何かを思いついたミリオンがそれを口にするより早く、障壁の一部が破壊され、その穴から巨大な球に無数の刺が飛び出している、凶悪な形をした闇玉が飛び込んでくる。

 闇を纏い巨大化した左腕でその球を受け止め、ミリオンは周囲を警戒する。これまでの戦いの流れから、この攻撃は自分の目を欺く目的で放たれたと判断。

 ならば、本命のライトは注意がこの攻撃に向いている隙に、一気に攻めてくるはずだ。ミリオンは必死に頭を働かす。右か左かそれとも、上か。

 闇玉周辺に意識を集中し、何処からライトが現れても迎撃する準備は万全だった。

 そんなミリオンを嘲笑うかのように、左手で掴んでいた闇玉が脈動すると、割れた風船のように大きく弾ける。

 と同時に激痛が左手を襲い、ミリオンが視線を向けると、吹き飛ばされ消滅した左手の位置に、強大なメイスを振り切り、笑みを浮かべるライトがいた。


「聖職者の方が騙す能力に長けていたようですねっ!」


 ライトは弾けた闇玉を足場にミリオンの元へ一気に飛び込むと、ミリオンの頭上へ渾身の一撃を叩き込む。

 周辺の障壁を全て解除し、ライトの一撃へ魔力を集中させ、強固な障壁を発動させようとするが、そのひと振りはミリオンの対応能力を超える攻撃速度だった。

 不完全なまま張られた障壁はいとも容易く打ち破られ、同時に横へと避けていたミリオンの左肩に直撃する。


「がっ!」


 叫ぶ余裕すらなく、肩口から真下へ体が磨り潰され、左腕左脚が完全に消滅する。

 ライトは地面にメイスの先端が付く寸前に、無理やり力で持ち上げ鉄塊を跳ね上げる。無理な動きの結果、肩や足腰、全ての関節と筋肉が破壊された感覚があったが、これが最後だと体に言い聞かせ、全力で振り上げる。

 足元から閃光が体を貫き、頭に迫っていることを理解したミリオンは――どこか呆れたような達観した顔をしていた。

 振り上げたメイスから迸る光の奔流が天に登っていき、死者の街を年中覆っていた紫色の雲がかき消される。

 雲に空いた大きな穴から、太陽の日差しが注ぎ込む。

 死者の街ができて以来、初めて降り注ぐ太陽の光に街が照らし出される。

 地面には無数の穴が空き、街並みは完全に崩壊し、廃墟と化した街の中心で全身に光を浴び立ち上がるライトの姿は荘厳で、ファイリたちは言葉をかけることもできず、ただ息を呑みライトをじっと見つめている。


「もうこれは、見事としか言い様がないわ。油断がなかったとは言わないけど、完全にしてやられちゃった」


 上空から降って湧いた声に、全員の視線が向く。

 そこには大きくため息をつく、ミリオンの首だけが浮かんでいた。

いつの間にか、かなり距離を取り、雲の切れ間から射す光を避け、ライトに真剣な眼差しを向けている。

 ライトは体の状態を確かめるが、立っているのが限界で攻撃をする余力は何処にも残っていない。他の三名はいつでもいけるように身構えている。


「あー、貴方たち動かないでね。今の私なら三人力を合わせれば倒せるでしょうけど、変な動きしたら、ライトさん殺しちゃうわよ」


 ミリオンの忠告に、今にも飛び出そうとしていたイリアンヌの全身が小さく揺れる。


「私も見ての通りボロボロだし。ここは引き上げることにするわね。永遠の迷宮に潜っている双子には連絡取れないから放置しとくわ。あの迷宮って一種の異世界みたいになっているから、外部から一切干渉を受けないのよね。本当に厄介だわ」


 疲れた首をほぐすように頭を左右に振るが、首から下がないので頭が振り子のように揺れているだけだ。


「貴方たちは何を考えているのですか」


「考えることなんて一つよ。主の復活、ただそれだけ。その後の世界なんて興味ないし、私たちは主が生き返ってくれればそれでいいの……それだけの話」


 少し悲しげに顔を伏せるミリオンを見て、ライトは攻撃のチャンスだと考えたが、体は全く動かなかった。


「じゃあ、お話はここまで。また会うことになるでしょうから、その時はお互いに決着をつけましょうね。ライトさん、再び会えるのを楽しみにしているわ。心から」


 そう言って空間に生じた切れ目に、ミリオンの顔がゆっくり埋まっていく。ライトとミリオンは最後まで視線を逸らさずに見つめ合っていた。

 完全に相手の姿が消え、気配も感じられなくなると、ライトは大の字に地面へと転がる。


「ライト。お前、最後はいつも締まらないよな。ったく、まあ、お疲れさん『再生』」


 神力発動後の副作用で動けなくなっているライトへ、ファイリが回復魔法を掛ける。


「ミリオンに止めが刺せなかったのは残念だが、あの様子だと当分は回復できまい。厄介な敵を暫く相手にしなくて済むというのは、こちらにも都合が良い」


「そうね、そう考えないと、やってられないってのもあるんだけど。はぁー。でも、上手くいって良かったわよ。この力、使いこなせるか不安だったのよね」


「確かにな。俺はそのまま強化されている感じだから、問題は全くないが」


 自分の耳をそっと撫でているイリアンヌを見て、ファイリは目を閉じ「ありがとう、姉さま」と呟く。


「しかし、不思議なものだな。まさか、特別な贈り物スペシャルギフトが贈与可能だとは。まさに贈り物といったところか」


 この中で唯一、特別な贈り物所持者でないロッディゲルスがしみじみと頷いている。


「ライトから聞いたときは耳を疑ったがな」


「それは私も同じですよ。神から魔法の進化をしていただいた時に、魔法の効果と、特別な贈り物についての情報が流れてきたのですから。特別な贈り物所持者は自分の能力を、他の特別な贈り物所有者に与えることができる。この情報には正直驚きました」


「確か、所有者どうしのみが贈与が可能で、普通の人に渡すことは不可能なんだな?」


「ええ、そうです。それに強引に奪えるわけでもなく、相手が渡したいと心から望まなければなりません。もっとも、この街に住む所有者は予め、神からその情報を得ていたようですが」


 ロッディゲルスの質問にライトが淀みなく答えていく。


「まさか、キャサリンが神聴の所有者だったなんて。あの、武器防具に話しかけているのは本当だったのね。能力を開放すると、この戦闘服と短剣の声が微かにだけど聞こえてくるわ」


 鞘に収められた短剣と黒の戦闘服はキャサリンの心が込められている。イリアンヌの身を案じる優しい想いを感じ、ギュッと握り締める。

 ライトはキャサリンが特別な贈り物の所有者であったのにも驚いたが、それをイリアンヌに贈与するとは思ってもいなかった。だが、今思えば、それが相応しかったのではないかと思う。


「俺の神眼も姉さまの力をいただいて、本当の力に目覚めたぜ。姉さまと二人で神眼の力を分けあっていたなんてな」


 今は本来の色に戻っている瞳だが、神眼を発動すると以前までの金色と違い白銀に輝くようになった。その能力はかなり強化されており、今までに使えた能力は単純に効果範囲が倍に伸び索敵範囲がかなり伸びた。

 新たな能力としては魔力を完全に視覚で捉えることができるようになり、先ほどの戦いで見せた、防御魔法の弱い部分を見抜くことや、魔法の流れを完全に理解できるので相手の攻撃魔法の阻害や、自分が扱う魔法の改良も行えるようになっている。


「ここにきて、能力強化はありがたいことですよ。っと、彼らがゆっくりと、こっちに向かってきているようですね」


 ライトは地面に寝そべったまま、視界に入っていないフォールたちの存在を感じ取っていた。それは、ライト特有の磨き上げられた感覚ではなく、今のは匂いで判断をしている。


「ライトも力を贈与されたのだったな。確かマースが神嗅所持者だったか……馬鹿にするわけじゃないのだが、嗅覚の発達って実際役に立つのか?」


「そうですね。使い勝手としては微妙ではありますが、相手の感情もある程度匂いで捉えることができるので、喜怒哀楽は何となく匂いでわかりますし、嘘を見抜くのにもそれなりに使えますよ。あとは、こっちの方が重要かもしれませんね。特別な贈り物が増えると、体内の魔力が増え、他の特別な贈り物の能力も強化されていく」


 ミリオンとの戦闘で、ライトはその効果を実感していた。

 いつもより、発動時の負担が少ない。

 体の器官が強化され反動が抑えられている。

 神力の威力が増している。

 副作用が少しだけ楽になっている。これは今まさに体感中だ。


「本来なら全力で使えば、丸一日動けなくなるのですが、この感覚だと半日もあれば余裕で回復できそうです」


 相変わらず全身はピクリとも動かないが、回復が早くなっている実感はある。

 ライトたちが話している間に足音が徐々に大きくなり、その音が止むと、ライトの顔を誰かが覆い被さるように覗き込んできた。



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