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独りが好きな回復職  作者: 昼熊
本編

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再会

 ロッディゲルスは意外にもすんなりと偵察隊に受け入れられた。そもそも、全員がライトを信頼しており、メンバーの大半が尊敬しているという状態なので、ライトのお墨付きがあれば何の問題もなく事が運ぶようだ。

 おまけとして一緒に来ることになったキマイラが女性に大人気で、黄色い声を上げ頭や体を撫で回している。


『僕は偉大なるキマイラなんだぞぉ。やめろ、勝手に触らないで。喉ナデナデすんなぁ、はうぅ』


 遠慮なく触る女性たちを羨ましそうに見ている、動物好きらしい男性も何人かいるのだが、あの輪には入りづらいようだ。

 ロッディゲルスとキマイラが加わった偵察隊は、ライトが目覚めるまでの間に充分な休憩をとっているので、このまま進むことを選ぶ。


 扉をくぐり暫く進んだ先には道を遮るように、所狭しと数多の闇の魔物が蠢いていた。

 その数、約三百体。

 スケルトンやゾンビという不死属性の代表格や五年前の戦いで見かけた灰色の人型等、不死、闇属性の魔物が、多種多様に取り揃えられていた。

 ざっと見たところCランク以下ばかりで、Dランクの魔物が一番多いようだ。


「これは多いなんてもんじゃねえだろ」


「あ、ああ。幸いと言っていいのかわからないが、Bランクの姿は見えないけど」


「これはあかんやろ。背中がぞわぞわってしたわ」


「何、怖気づいているのよぉ。これぐらいライト様なら、ちょちょいのちょいって蹴散らしてくれますよね!」


 冒険者チームの男性陣は諦めの空気が漂っているというのに、小柄な女性だけは強気で、信頼の眼差しをライトへ向けている。


「まあ、私は問題無いと思うのですが……」


 偵察隊の先頭に立っていたライトは振り返り、メンバーの顔を見回し自分以外の戦力分析を始める。

 キマイラを闇の中へ収納しているロッディゲルスに関しては、何の心配もしていない。問題は他だ。

 ファイリは回復要員としては能力が高いのだが、乱戦で接近戦となると自分の身を守れるか怪しい。だが、防御に特化した聖騎士と神官戦士に守られている為、そう簡単には落ちないと思ってはいる。

 イリアンヌは身の軽さを生かし敵の攻撃を避け続けるのも可能だろう。いざとなれば神速もあるので心配は無用だ。

 ただ、一番問題なのが冒険者チーム。バランスもよく連携もとれている良いチームだとライトは思っているのだが、全幅の信頼を寄せるまでには至っていない。

 この戦いで死亡する確率が一番高いのは冒険者チームだと、ライトは冷静な頭で答えを導き出す。


「一度引いてから、作戦を立て直しませんか?」


 そう問いかけるライトの表情から想いを読み取り、冒険者チームは顔を見合わせると大きく頷いた。


「すんません。何か情けない姿見せてもうて。心配せんとってください。わいらかて、やるときはやりまっせ」


「ああそうだ。虚無の大穴ではまだ、いいところを見せていないからな!」


「僕たちだってBランクの冒険者です。危険も承知していますし、足を引っ張るような真似はしません!」


「ライト様。どうか、私たちを信じてください」


 強い意志の宿った眼差しで懇願され、ライトは腹を括って大群に挑む決断をする。

 圧倒的な物量を前に息を呑む一同の中で、ライトとロッディゲルスは自然体で構え一歩踏み出す。


「今から奴らを駆逐しますが、皆さん覚悟はよろしいですか?」


「「「「「おうっ!」」」」」

「はいっ!」


 勢いのある男性の返事と甲高い女性の返事。


「えーっ」

「特攻はロマンだっ!」


 ヤル気の感じられない声と場違いなことを口走っている声。


「我とキミなら問題はあるまい」


 気負った様子もなく、掛けられる一言。

 背に守るべき存在の重さを感じ、ライトは苦笑いを浮かべる。


「だから、独りが気楽で好きなのですよ。では、行きましょうか皆さん!『聖光弾』」


 魔物が密集している場所へ投げつけた、特大サイズの聖光弾が開幕の合図となる。

 ライトは巨大メイスを取り出すと、魔物の集団へ突貫する。ライトの背後には影のように寄り添うロッディゲルスの姿があった。


「我ら二人で敵の注意を引きつけ殲滅する予定だが。撃ち漏らした相手はよろしく頼む」


 金の衣装は脱ぎ捨て、いつもの白い燕尾服に着替えたロッディゲルスが手をひと振りすると、指から解き放たれた鎖に魔物たちが貫かれていく。

 ライトがメイスを振るたびに何体もの魔物が砕かれ吹き飛ばされる。

敵が四方八方から一斉に襲い掛かるが、背後はロッディゲルスが放った鎖が縦横無尽に飛び回り、誰も半径二メートル以内にすら近づけない。

 ライトはわざと大きく、牽制も兼ねて横薙ぎの一撃を振り切る。軽く振られたように見えた鉄の塊は魔物たちの反射神経を凌駕し、触れたもの全てを粉砕していく。

 普通の魔物であれば仲間が無残に肉片や内臓を撒き散らす姿を見れば、恐怖を覚え萎縮し逃げ出すものがいてもおかしくはないのだが、不死属性や闇属性の殆どが恐怖という感情を持ち合わせていない。

 故に仲間の屍を平然と踏みにじり、攻撃を終えたライトへ迷いもなく襲いかかれる。


「少しは怯えるなりしてください、よ。可愛げのないっ!」


 いくら怪力とはいえ、尋常ではない重量のメイスを即座に切り返し迎撃するには難しく、ライトはあっさりと手放す。一見、無防備に見えるライトを嬲る目的で、魔物たちの手が掴みかかってくる。

 ライトは素早く息を吸い込み、腰を落とす。全身の力を適度に抜き、威力ではなく速さを求めた拳の連打を放った。

 魔物へ目にも止まらぬ速さで拳の雨が降り注ぐ。威力を抑えたとはいえ、ライトの怪力に永遠の迷宮産の鉱物から造られた手甲。この二つが合わさった突きは魔物を破壊するには十分な威力を兼ね備えている。

 突きを放った回数と同じだけ魔物が息絶えていく。ものの数分もしないうちに、ライトとロッディゲルスの周囲には無残な死体が転がっていた。

 幸運にもライトたちの攻撃範囲外だった魔物何体かが目標を変え、後方に控えていた冒険者チームへ襲いかかってくる。


「俺たちの力を見せる時がやってきた!」


「そうやな。でも油断したらあかんで」


 全身鎧男が両手剣を豪快に叩きつける。隙の大きな攻撃だが、後方からエルフ青年が矢を射ることによりカバーしている。


「僕らは僕ららしく戦おう!」


 眼鏡青年は派手な攻撃呪文ではなく、足元の土を液状化させる魔法を唱える。足首まで地面に埋まった魔物が歩くのも苦労しているようだ。


「うんうん。ライト様と結婚するのも生きてこそだしぃ『退魔陣』」


 動きが鈍くなった魔物たちが浄化の光に照らされる。光に包まれた魔物の姿が次第に薄くなり、浄化の光が消えた後には、光の粒子となった魔物の成れの果てが風に流されていた。


「ほう、なかなか彼らもやるものだ。我々とて負けてられぬな」


「はい! サンクロス教官!」


 闇属性の魔法を操る魔物たちが一斉に詠唱に入ったのを確認すると、二人は冒険者より体一つ前に出る。


『『聖壁』』


 二人の突き出した巨大な盾から青白い光の壁が立ち上がる。本来ならこの魔法は聖騎士にならなければ教えられない魔法なのだが、神官戦士のシェイコムは誰に教えを請うこともなく、自力でこの魔法を習得した。

 聖壁へ闇属性の魔法が突き刺さるが、光の壁はその全てを受け止めても揺るぐことがない。


「よし、そのまま耐えてくれ。でかいのをぶちかますぜっ」


 ファイリが両手を天に掲げ詠唱を開始する。穴から覗く空模様は曇りだったのだが、雲の上に太陽よりも光を放つ何かがあるかのように、雲が明るく輝き始める。


「俺の扱える最大級の広範囲撃滅魔法をくらいやがれっ!『天罰』」


 雲の切れ間から何条もの光が差し込み、辺りを照らし出す。その光に触れた魔物は苦痛の声を上げる間もなく一瞬にして蒸発する。


「これが天罰ですか。話には聞いていましたが恐ろしい威力ですね」


 ライトの周りでも光に照らされた魔物たちが次々と消え去っていく。


「人間には害がなく、不死、闇属性に絶大な威力を誇るという最高位魔法の一つ……ん? あ、ロッディゲルスこっちへ! 『聖域』」


 手の届く範囲にいたロッディゲルスを抱き寄せると、ライトは急いで聖域を発動する。

 聖域は全ての攻撃を防ぐ万能の障壁である。魔法攻撃も防ぐことが可能なので間一髪で間に合った聖域が天罰の光を遮断する。

 高威力ではあるが同じ聖属性であることが幸いし、その障壁が破られることはなかった。


「大丈夫ですか。あの光に当たったりしていませんか」


「ああ、問題ない。そうか……綺麗な光だと呑気に眺めていたが、闇属性の我が当たると大惨事になるのだな」


 ライトはロッディゲルスの腰に回していた手を離すと聖域を解除する。天罰の光が止んだ虚無の大穴には、動いている魔物が片手で足りる数しか残っていなかった。


「文句は後で言うとして、片付けてしまいましょうか」


 残った魔物を全て倒すには、そう時間はかからなかった。





 ロッディゲルスを危険に晒したとはいえ、天罰を発動していなければ数に押しつぶされ、死者が出ていた可能性が高い。それを考慮すると一概に間違っていたとは言えないライトは、どう切り出そうか思案していると、ファイリはロッディゲルスへ駆け寄り頭を下げた。


「すまん! お前の存在を考えていなかった。魔族だったのをすっかり忘れていた」


 ロッディゲルスは本気の謝罪内容に驚いたようで返す言葉がでないようだ。魔族だと思われていなかったのが、余程嬉しかったらしく、どうにか怒った顔を取り繕うとしているのだが目が笑っている。


「そ、そうか、なら仕方ない。我が魔族なのを忘れていたのか……ふーん」


 この二人は放っておいても大丈夫だと判断したライトは、地面に座り込み荒い呼吸を繰り返している冒険者チームと師弟コンビに歩み寄る。


「皆さん大丈夫ですか」


「あ、ああ。どうだ俺たちも中々だろ」


 全身鎧が疲れた表情で無理に笑うと、拳を掲げた。


「ええ、見事でしたよ」


 ライトはその拳に軽く自分の拳をぶつける。

 他の面々も疲れてはいるが無事のようだ。ライトは死者を出さずに済んだことに、そっと安堵のため息をついた。


「この大歓迎ぶり。敵に気づかれていると考えて間違いなさそうですね。となると一気に行ったほうがよいのですが。回復を待って一緒に行くか、引いてもらうか悩みどころです」


 皆から少し離れた場所で今後の展開について思慮する。

 今回の魔物の群れが、敵の切り札であったのなら何も問題はない。ただ、これが小手調べであって戦力がまだ残っているとしたら、正直彼らにはきついだろうとライトは結論を出す。


「ここは嫌われ者にでもなって、退いてもらいますか」


 脳内で相手の心を折る言葉を選び出し、文章を構築していく。台詞が完成すると、再び彼らの前に立つ。


「俺たちは先へ進むが、お前ら帰れ。こっから先へ行くには、はっきり言って力が不足している!」


 ファイリが一足先に強制退去通告を出していた。

 座り込んでいた面々が何か言おうと口を開きかけるのだが、結局誰も言葉を発せず、俯いたまま肩を震わせていた。


「皆、本当に良くやってくれました。ここから先は我々に任せてもらえませんか。今は耐えて退いてください。悔しいと思う心があるのならば、貴方たちはこれからもっと強くなります。遠からず貴方たちは肩を並べられる強さを手に入れることでしょう。その時は、こちらから頭を下げて頼みに行かせてもらいますね」


 仮面を外し、教皇モードに切り替えたファイリは、優しく包容力のある声で命令するのではなく頼みかける。

 冒険者チームで唯一、教皇の顔を知っていた小柄な聖職者は硬直しているが、彼女以外は仮面の下から現れた慈悲あふれる微笑みに、やられてしまったようだ。

 師弟コンビは片膝を突き深々と頭を下げている。

 冒険者男チームはぼーっとその顔を見つめている。


「貴方たちの進むべき道に光が射しますように。では、行ってまいります」


「「「「「はいっ!」」」」」


 小さく手を振りファイリが彼らから離れ、ライトの隣をかすめるようにして進んでいく。すれ違う瞬間にライトは声をかけられていた。


「ほら、さっさと行くわよ」


 ライトは頭を掻き、残る彼らへ軽く頭を下げ、ファイリへついて行く


「女性の二面性に驚くべきか、ファイリの教皇への切り替えを褒めるべきか」


 五年前とは彼女も違うのだなと、ライトは独り言を呟く。

 討伐隊が分かれた選択が正しかったのか。その答えはこの先にあるのだが、未来を見る術のないライトたちは、例え何が待ち構えていようと前へ進むしかない。





 大群を処理してからは静かなもので、虚無の大穴を下る一行は妨害にも合わず最下層を目指し歩み続ける。

 あれが総戦力だったのか判断もつかぬまま、最後の扉の前へとたどり着いた。そこにある巨大な銀色の扉は、他と同様に開け放たれている。


「ここまで何もないのは、罠だと考えるべきか」


「ええ」


 ライトは考えもせずに相槌を打つ。


「神眼には敵影も罠らしきものも写っていないぞ」


「そうですか」


 ライトの心がこもっていない空返事にファイリの頬がひくつく。


「おい、お前何考えてやがる」


「え、ああ、すみません。何の話でしたか?」


「だーかーらー、敵も罠っぽいのも見当たらないがどうするって話だ。何ぼーっとしてんだよ。またくだらないことでも考えていたのか」


 顎に手を当て、目を閉じて黙考している。不意に顔を上げると、偵察隊の残ったメンバーの顔をジッと見つめる。


「お二人共、もう仮面はいいのですか?」


「我にはもう必要ない」


「いいんだよ。というかその事には触れるな!」


 話をはぐらかされたことに腹を立てるファイリだったが、なにか理由があるのだろうと、それ以上の追求はしないでおいた。

 五年前ここを通った一行は感慨深げに辺りを見回している。

 懐かしんでいるだけではなく、昔の記憶と照らし合わせて異なっている場所がないか、注意を払って進んでいた。


 虚無の大穴の底が見えてくるぐらいにまで下りると、周辺の壁や床石に傷が目立ち始める。最深部に進むにつれ、傷は大きく多くなり、所々に亀裂や破損が見受けられる。虚無の大穴の底が見える位置にまで進むと、穴の中心部に目をやる。

 そこにはフード付きのマントを被った何者かがいた。距離が遠くてはっきりとはわからないのだが、男性にしては身長が少し低めに見える。

 地面に敷き詰められていた聖属性が付与された床はどこにもなく、大きく陥没した地面が剥き出しになっている。辛うじて残っている床石も高温で溶かされ原型を留めていない。ロジックの大魔法の威力がどれ程のものであったのか、嫌でも実感してしまう。


「大穴の真ん中にいないといけないルールみたいなのがあるのでしょうか」


 フォールが座っていた場所とほぼ同じ位置に立っている男を見て、思わず口に出してしまう。


「日当たりが良くて、居心地いいんじゃね?」


 ファイリの意見に納得したようで、ライトが感心している。


「そんな理由ではないぞ。この施設は闇を中心部に集めるように造られている。故にフォールもそうだったが、あの場所が一番闇を吸収するには向いているのだよ」


 見当違いな方向へ会話が流れているのを見兼ねて、ロッディゲルスが口を挟み解説する。


「ということは、フード男は闇を集めて召喚の糧にでもしているのでしょうか……案外、ただの演出ということも考えられますが」


「だといいんだがな。あいつも気づいているようだが、何もしてこないか」


 ライトたちが穴の底に降り立ち、男の元へ歩み寄る。フード男は緩慢な動作で体を正面に向け、そこでようやく声を出した。


「ふぉふぉふぉ。魔王を倒した英雄の方々ではないか。こんな場所で同窓会ですかな」


 いかにも老人といったしゃがれた声がライトたちの耳に届く。


「ご老人は徘徊中ですか。付き添いの方はいらっしゃらないので? 家族の方が心配されていますよ」


「ほっほっほっ。中々面白い男じゃのお。ただの筋肉バカだと思うていたが、いやいや、皮肉の効いた切り返しをしてきおるわ」


 マントから骨の浮き出た細い腕を出し、膝を叩いている。

 おかしな動作をしたら問答無用で間合いを詰め、一気に勝負を決めるつもりなのだが、討伐が本来の目的ではなく、あくまで情報収集が優先の為、相手の話に合わせて情報をできるだけ引き出すつもりでいる。


「定番の質問で申し訳ないのですが、貴方は何者で、ここで何をしているか教えていただけませんかね」


「ふむふむふむ。そうじゃのう、わしのやっておることは実験じゃの。人間に忌み嫌われる闇属性のみに特性があったわしが、人生の全てを捧げて極めた召喚術で何処までやれるか、見てみたくなったのだよ。老い先短いじじいの道楽じゃな」


「道楽で魔物を溢れさせられては、教団として黙っていられねえんだが」


 あまりにも馬鹿げた理由に黙っていられなくなったファイリが老人を睨みつける。


「おやおやおや、教皇様がこんな場所に出張してよろしいので。避暑地としては向いてないと思われますが」


「静かで涼しいからな。案外悪くないぜ」


「ご老人。小難しいことに興味はないが、我を召喚した償いどうとってくれる?」


 ロッディゲルスの冷たい眼差しが老人へと向けられている。そして、振り下ろした両手から伸びる黒い鎖の先端が地面に突き刺さった。


「いやいやいや、怖いのお。老人は労わるものじゃよ。おっと、これは失言だったかのお。わしよりお主の方がずっと年上じゃったわ。失敬、失敬、失敬」


 老人は手で額を叩き「かっかっかっ」と嘲笑う。

 その仕草で怒りの限度を超えたロッディゲルスが地面に突き刺さった状態の鎖を操り、地中を突き進ませ、老人の足元付近から挟み込むように飛び出してきた。

 避ける素振りすら見せない老人を鎖が捉えたように見えた。だが、その一歩手前で鎖は大きく弾かれる。突如現れた男が横合いから振り上げた大剣に、二本の鎖が防がれてしまう。

 老人を守った男は大剣を肩に担ぐと、ライトたちを見て不敵に笑う。


「よう、久しぶりだな。ここも、懐かしいぜ」


「あんたはエクス……」


 驚愕に目を見開き、かすれた声でファイリは呟く。

 ライトたちの目の前に立つ男は、五年前ここで壮絶な最期を遂げた剣聖エクス、その人だった。白銀の鎧に巨大な大剣を担ぐ姿は当時と寸分の違いもなかった。


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