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独りが好きな回復職  作者: 昼熊
外伝
138/145

独りになった回復職を目指す者

「はあはぁ、ね、姉ちゃんもう走れないよぉ……」


「もう少し、もう少し頑張って! 捕まったら食われるのよ!」


 薄暗い森の中を二人の姉弟が駆け抜けている。

 体は泥にまみれ簡素な服の至る所が破れほつれていた。

 十代半ばであろう姉が自分の半分も生きていない弟の手を引き、励ましながら時折後方へ視線を向ける。

 視線の先には生い茂った雑草と木々が見えるだけで、他の生き物の姿は無い。それでも、姉の足は止まらなかった。村で見た――アレがまだ追ってきている気がして、体の震えが未だに止まらない。


「も、もう、無理だよ……」


 足を引きずるようにして、それでも懸命に進み続けていた弟がその場に座り込んでしまう。


「バカ! ここで止まったら」


「姉ちゃん! アレ、アレは何なの! おっきな蜘蛛みたいなのが村にきて、父ちゃんも、母ちゃんもっ……ひっ、うう、ううぅぅぅ」


 姉は泣き崩れる弟に掛ける言葉が見つからなかった。

 アレが何なのか。そんなの私が教えて欲しいと姉は思う。大きな町からかなり離れた辺境の小さな村に突如現れた異形の化け物。それも一体ではなく何体も。

 村の周りにも魔物が出ることはあるが、あんな化け物は見たことも聞いたこともなかった。狩猟で生計を立てている腕に覚えがある村人が勇敢にも挑んでいったが、あっという間に殺され食われていった。

 あの時、姉弟がいつも自慢している村一番の狩人である父親も、村の騒ぎを聞き飛び出していった。母は姉弟を連れて村から逃げようとしたが、蜘蛛のような魔物に行く手を阻まれ、襲われそうになったが、駆け戻ってきた父親に何とか助けられた。


「お前たちは逃げろ! 少しでもここから離れるんだ!」


 父親は子供と嫁を背後に庇い、振り返ることなく大声で子供たちへ指示を出す。


「父ちゃんは! ねえ、母ちゃんも逃げよう!」


「ごめんね……母ちゃんは足をやられちまった。弟のこと頼むよ。お姉ちゃんなんだから、守ってあげてね」


 左足からおびただしい量の血を流す母が弱々しく笑うと、胸に抱えていた弟を姉へと差し出した。


「やだあああっ! やだやだやだやだっ! 僕もここにいるううぅ!」


 弟は泣き叫び、母親から離れようとしない。


「二人とも良くお聞き、父ちゃんも母ちゃんもあんたらがいたら、本気を出せないんだよ。父ちゃんの強さは良く知っているだろ?」


「う、うん、でも、でも……」


「そんな父ちゃんが母ちゃんに勝ったことあったかい?」


「「ない」」


「おいおい、お前らなぁ」


 声を揃え断言した子供たちを横目で確認すると、父親は苦笑いを浮かべ目元を緩める。


「だったら安心だろ? ほら、行った行った! 暫くしたら迎えに行くから、思いっきり走るんだよ。一番遠くまで走れた方の、おやつ倍にしてあげるよ。そら、よーいどん!」


 姉は涙を拭い、弟の手を引き走り出した。姉にはわかっていた、両親が死ぬ気だということも、二度と会えなくなることも。それでも、泣き言を言わずに両親の想いを受け取った。

 弟は良くわからないながらも、姉に従い一緒に走る。何度も何度も後方へ振り返り手を振っている。

 姉は唇を噛みしめ、前だけを睨みつけて、村中から聞こえてくる叫び声を振り払い、村の古ぼけた木製の門から飛び出していく。

 姉弟の両親は小さくなっていく子供たちの姿を見送ると、見つめ合い小さく頷いた。


「せめて、あの子たちだけでも」


「そうだな。すまない、お前も逃がしてやりたかったんだが」


「私はもう駄目ですよ。貴方もわかっているでしょ」


 男は力尽きたように大地へと寝そべった妻の頭を撫で、顔を近づける。


「幸せだったよ、ありがとう」


「それは私の台詞ですよ。愛していますよ……あ、な……た……」


 それ以上何も話さなくなった妻の唇にそっとキスをすると、男は雄々しく立ち上がる。

 男は胸元に手をやると、そこに突き刺さっている千切れた魔物の細腕を引き抜いた。鮮血が溢れ出すが、それを気に留めることもなく男は前へ前へと進む。


「さあ、化け物どもよ。血の匂いによって来い! ガキや痩せこけた老人より、美味そうな肉がここにあるぞっ!」


 子供たちが逃げていった逆方向へと、大声を張り上げ男は走り出す。村人を喰らっていた魔物が男の声に反応し、男へと襲い掛かる。

 死力を振り絞り逃げる男は、屋根から目の前に飛び降りてきた魔物を見つめ拳を握りしめた。


「生き延びてくれ――おらああああっ!」


 無謀にも殴りかかってきた男に魔物は無慈悲にも何本もの腕を突き刺す。

 魔物の複眼は他の村人のように泣き叫ぶわけでもなく、口元に笑みを浮かべたまま死んだ男を凝視していた。





 村の門を潜ってからどれだけの時が流れたのだろうか。

 五分? 三十分? 一時間? それとも、半日?

 大木の幹に背を預け、足を伸ばし座り込んでいる姉は虚ろな瞳で虚空を見つめている。


「母ちゃん……父ちゃん……」


 疲れ果て眠りこけている弟に自分の上着をそっと被せ、姉は大きく息を吐いた。


「助かったのかな。でも、どうしよう。ここが何処かもわからないし。村から離れすぎたら魔物がうじゃうじゃいるから危ないって父ちゃんも言っていたよね」


 村を襲っていた魔物から逃げ切れたことによる安堵感はあったが、落ち着いてきた今、新たな問題に直面していた。

 改めて周囲を見回すと、人の手が全く行き届いていない森の奥深くの様で、村の周辺では見たこともない大木がそこら中に生えている。

 そのまま頭上に目をやると、空が闇に染まり始めていた。


「夜が来る」


 姉は慌てて立ち上がると、何処か身を隠す場所が無いか探し始める。

 魔物は夜になると活性化する種類も多く、森で遭難した場合は「身を隠せる場所で物音を立てずに、一晩過ごして明るくなってから動きなさい」と何度も口を酸っぱくして言っていた母の言葉を思い出していた。


「早くしないと……洞窟なんてあるわけないし、穴を掘るにしても道具が」


 行き詰った姉は何も手が思い浮かばず、無情にも時間だけが過ぎていく。

 近くに転がっていた大きな石を拾い、何とか地面を掘り始めた姉だったが、作業は一向に進まない。それでも懸命に掘り続けていた姉の耳に――何かが草を踏みしめる音が届く。


「誰っ! あっ……」


 慌てて口を押え弟の隣まで移動すると、眠りこけている弟の頭を抱き締め周囲を警戒する。抱え込んでいる弟の温もりを感じ、姉は最後まで諦めてたまるものかと、息を殺す。

 足音は徐々に大きくなり、姉が見つめていた正面の茂みが二つに割れ、そこから――少年が顔を出した。


「えっ?」


「あれ、獣人?」


 黒い革のコートを着込んだ、自分と同じ年齢に見える少年を見つめ、姉は頭から生えている大きな猫の耳をぴくぴくと動かした。

 




「さてと、煮えたかな。はいどうぞ」


「ありがとう、兄ちゃん!」


「ありがとうございます……」


 あの後、コートの少年は敵意が無い事を示し、お互いの素性を説明しようとしたところで弟の目が覚めてしまう。


「お腹空いたぁ」


 と呟いたのを聞き逃さなかった少年が、手際よく夕食の準備を始めた。

 警戒を解くことなく少年の動向を見守っていた姉だが、そんな視線を気にもせず手際よく食事の準備を完了し今に至る。


「そっちの事情も気になるけど、まずは腹ごしらえといこうよ。お腹空いていたら考えがまとまらないからね」


 そう言って屈託のない笑顔を向けてくる少年から少女は視線を逸らした。その視線は行き場を失い、取り敢えずは手元のお椀に向けられることになる。

 木のお椀の中にはごろっと大きめに切られた野菜と牛の肉が、赤黒い液体の中に沈んでいる。見たこともない料理だが、食欲をそそられる香りに姉の喉が鳴る。


「あっと、何か苦手なものとかあったかな?」


「いえ、そうではないのですが」


 いつまでもこうして口を付けないで警戒しているのは、善意で施してくれている相手に失礼だと、意を決し匙ですくう。


「あっ、美味しい……」


「姉ちゃん、これめっちゃうまいよ!」


 おっかなびっくり口にした姉の隣で、全く警戒もせず弟が椀の中身を掻き込んでいる。

 一口目を呑み込んでからは早かった。姉も匙を黙々と動かし続け、結構な量が盛られていたというのに気が付けば空になっていた。


「兄ちゃん、おかわりある!?」


「あるよー。はい、どうぞ。良かったらお姉さんもどう?」


「いえ、もう充分です。ご馳走様でした」


 本当はもう一杯食べたかったのだが、ここはぐっとこらえ、姿勢を正す。


「食事をお恵みいただきありがとうございました。私の名はミルケ、弟の名はタルマです」


 深々と頭を下げる姉の隣で弟が匙を口にくわえたまま、姉の真似をして頭を下げる。


「ご丁寧な挨拶ありがとうございます。僕の名前はライトアンロックと言います」


「ライトアンロック様ですね。不躾な質問なのですが、何故貴方は私たち相手に普通に接しているのですか?」


 問われた当人であるライトは、質問の意味が解らないらしく首を傾げている。


「私たちは見てわかるように猫型の獣人です。人間は獣人を見下し、侮蔑し、嫌悪するではありませんか」


 ミルケの言っていることは間違いではない。この世界において、獣人は人と魔物が混ざり合った存在とされ、人にもなれず魔物にもなれない半端な生き物とされている。

 だが、身体能力は人よりも優れているので、獣人でありながら冒険者として名を残している者も多く存在する。身体的には強者ではあるが種族として数が少なく、圧倒的な物量を誇る人間に歯向かうことは無い。

 ミルケの住んでいた村は、そんな人間たちに関わらずに済むように、獣人たちが集まり密かに暮らす小さな村だった。


「そうなの? 僕は常識に疎いので良くわからないな。それに僕は初めて会った獣人より――人間の方が怖いよ」


 ライトの寂しそうな横顔にミルケは息を呑んだ。

 会ってからずっと顔に笑みを貼りつけていたライトの初めて見せる、笑顔の消えた悲しそうな表情だった。


「あ、ごめんごめん。変な事を言ったね。そうそう、僕の方から自己紹介すると、名前はさっき言った通りライトアンロック。辺境の村に住んでいたのだけど、母が亡くなったので村を飛び出して、首都に向かっている途中だよ」


「兄ちゃん、首都に何しに行くの?」


「うんとね、聖職者になりたいから学園に行くんだよ」


「すっげー! じゃあ、魔法とか使えんの!」


「こら、タルマ。ライトさんは話の途中でしょ。邪魔しないの」


 目を輝かせ矢継ぎ早に質問を投げかけてくるタルマを、ミルケが軽くたしなめる。


「いいから。神聖魔法なら少しは使えるよ?」


「うおおおっ、見せて見せて!」


 魔法に憧れがあるのだろう、タルマはライトの袖を掴み見せて欲しいとせがんできた。

 目に余った姉が止めに入ろうとしたのだが、ライトはそれを手で制した。


「じゃあ、何処か怪我としてないかい?」


「僕は平気だよ! あ、お姉ちゃんしてもらって。尻尾から血が出てたよね」


 その言葉につられてライトがミルケのお尻の方へと視線を向ける。そこにはお尻の付け根から伸びた、ふさふさの毛触りが良さそうな尻尾の丁度中ほどだろうか、血で湿った箇所があった。


「だ、大丈夫よ。もう痛くないから」


 お尻付近を見られるのが恥ずかしいらしく、尻尾を振ってライトの死角へと移動させる。


「小さな傷を甘く見たらダメだよ。僕の神聖魔法が信用できないのなら、薬と包帯があるから使って。ちゃんと傷口は水で流してから」


 ライトは母の形見である収納袋から、瓶に入った塗り薬と清潔な包帯、新鮮な水が入った水筒を出してミルケへ渡そうとする。

 ミルケはライトの真剣でありながら、自分を心配している眼差しに、警戒を続けている自分が馬鹿らしく思え苦笑してしまう。


「どうかした?」


「いえ、すみません。あの、もしよろしければ、神聖魔法を掛けてもらってもいいですか」


「勿論だよ」


 ひょこっと姿を現した尻尾を優しく掴むと、念の為に傷口を清潔な水で流してから『治癒』を発動させた。

 怪我した部分は毛がなくなり地肌が見え、赤く裂けた傷が見えていたのだが、ライトの魔法により傷口が塞がり、小さく痛み続けていた感覚も嘘のように消え失せていた。


「うわぁ、凄い。本当に傷が治った」


「本当だ、すっげぇぇ」


 ミルケの居た村には治癒を使える人が誰もいなかったので、初めて見る神聖魔法の力に驚いている。


「上手くいったみたいだね。母と自分以外には使ったことなかったから、ちょっと心配だったけど。さてと、僕の説明はそれぐらいだけど、二人は何でこんなところに?」


 その言葉に、はっとした表情を浮かべる姉弟。特に弟は寝起きの寝ぼけた状態で食事をとったことで、今の今まで忘れていた――いや、無意識の内にその事を思い出さないようにしていたようで、今にも泣きだしそうな顔になる。

 姉はそんな弟をそっと抱き寄せると頭を撫で、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。


「私たちの住んでいた村が魔物に襲われ……私たちは命からがら逃げてきたところです」


「そうなんだ。こんな事、聞くのも何だけどこれからどうするつもり? 当てとかあるのかな」


「……ないです。親戚も居ませんし。このまま近場の村で住まわせてもらうのも難しいと思います。獣人の子供ですから」


「姉ちゃん、何言ってんだよ! 村に戻ろうよ! 父ちゃんと母ちゃんが待ってるよ!」


「タルマ……お父さんたちはもう……」


 弟は両親が生きていると信じているようだが、姉はもう村は壊滅状態で生存者の望みが薄いことを知っている。

 ミルケも村に戻って両親の安否を確認したい。死んでいたとしても、せめて亡骸ぐらいは弔ってあげたいと思う。でも、今も魔物が残っている可能性が高く、危険性のある場所に行くのは危険すぎる。折角助かった命を投げ捨てるわけにはいかない。


「じゃあ、一緒に村の近くまで様子を見に行こうか。それで、安全が確保できたら村に入るってどうだい」


「駄目です! 見たこともない魔物が沢山いました! 見つかったら殺されますよ! それに貴方を巻き込むわけには」


 ミルケはそれ以上口にすることができなかった。ライトが手を伸ばしその口を塞いだからだ。その手が目から零れ落ちた涙に濡れていく。


「僕はこう見えてもなかなか強いんだよ。と言っても信じられないよね。よいしょっと」


 ライトはその場に立ちあがると、少し離れた場所のミルケたちが背を預け休憩していた大木に歩み寄った。

 ライトが両手を広げ三人並べば大木の直径とほぼ同じぐらいの、そんな太さがある大木の前でライトは腰を落し、腕を引く。


「ふんっ!」


 ライトは躊躇うことなく大木の幹に正拳を叩き込んだ。その腕が肘付近まで大木にめり込み、そこから亀裂が広がっていくと、大木が樹皮や木片を撒き散らしながら爆ぜた。


「「へっ?」」


 二人が知る常識を逸脱した目の前の光景に、理解が追い付かず間の抜けた声が漏れる。

 大人が一人通れる程の大穴が開き、大木がゆっくりとライトたちの居る方向へ倒れてくる。


「「ええええええええええええええっ!?」」


 このままでは押し潰されると目を閉じ抱き合う姉弟の前に、いつの間にか現れたライトが唸りを上げ迫りくる大木を前に両手を差し出す。


『上半身強化』『下半身強化』


 強化魔法を唱えたライトはそのまま倒れてきた大木を受け止めて見せた。

 重量と衝撃にライトの足が足首辺りまで地面に埋まるが、大木は三人を押しつぶすことなく制止した。ライトは受け止めた大木を、軽々と無造作に横へ投げ捨てる。

 大木が地面に触れるとその振動で姉弟の体が浮かび上がった。


「ね、これぐらいは力があるから、魔物が残っていても一体なら何とかなるんじゃないかな」


 姉弟は目を見開いたまま、何度も頷くことしかできなかった。

 その後、ライトは姉弟と共に首都まで一緒に向かうことになり、様々な出来事に遭遇することとなるのだが。





 騒乱のうちに終わった争奪戦に続き、死者の街を襲った魔物の群れの殲滅という、大事を成し遂げてから数日が過ぎた。

 街はいつもの雰囲気を取り戻し、活気のある死者という矛盾を抱えた存在が今日も街中で忙しそうに働いている。

 そんな人々を眺め、あれから更に有名人となったライトは気配を殺し、人目を避けるようにして人気の少ない路地へと入り込んでいく。


「ライト! ねえ、ライト。何、猫を見てニヤついているのよ。あんた、猫好きだったっけ」


 死者の街の一角で屈みこみ、子猫二匹を撫でているライトの後ろに忍び寄ったイリアンヌが、肩口から覗き込んでいる。


「ええまあ、好きですよ。猫は気まぐれなところもありますが、一度懐くと可愛いですよ。一緒にいると情も湧きますから」


「そんなもんかしらね。そういや、私って猫っぽいって言われるけど、どう思う? にゃー」


 顔の横に持ってきた手を猫の仕草を真似るように、くいっと曲げて見せている。


「可愛らしいと思いますよ」


「へっ?」


 素直に褒めてきたライトの言葉が予想外過ぎたようで、イリアンヌはその格好のまま硬直している。


「な、な、何言っているのよ! わ、私、ちょっと用事思い出したから!」


 顔を真っ赤に染めてその場から走り去るイリアンヌの意外な一面を見て、ライトは微笑ましい気持ちになっていた。


「そういえば、あの子も照れ屋でしたね――貴方たちは仲良く長生きするのですよ」


 収納袋から猫にも食べられるようなものを取り出すと、二匹に与えライトはその場を去ろうとしたが、路地を抜ける直前に一度だけ振り返る。

 猫たちが寄り添うようにして、一心不乱に食事をしている姿が、初めて出会った頃の獣人の姉弟と重なる。ライトは複雑な思いに駆られ少し悲しそうな笑みを浮かべると、飽きることなく仲の良い猫たちを見つめ続けていた。


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