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独りが好きな回復職  作者: 昼熊
本編
101/145

光の神 闇の神

 開け放たれた扉の先は白銀に輝く空間だった。

 その空間に寝転んでいるライトの黒い法衣が白銀の空間で際立って見える。


「動かないけど死んでないよな?」


「心の世界なのだから死んでいるという定義が当てはまるのだろうか。まあ、取り敢えず、エクス引っ張り出してよ。リーダーなのだから」


「リーダー頑張っ」


「カッコいいわよエクスちゃん!」


 日頃は誰もリーダーだとは思ってないくせに、都合のいい時だけリーダー呼ばわりされることに不満はあるようだが、責任感はあるようで渋々ながら扉内部へと足を踏み入れる。

 エクスはライトの両脇に腕を回し、足を引きずるようにして扉から出てくる。

 ライトの体が完全に外へ出ると、扉が一気に風化し跡形もなく崩れ落ちた。


「さてと、ライトちゃんを助け出したのはいいのだけど、起きる気配がないわね。らいとちゃーん、朝よー」


 きつく閉じられた瞼が開くことはなく、体は寝た体勢のまま微動だにしない。他の面子も声を掛けるのだが、起きる気配は全くない。

 ミミカとメイド長がライトの顔の近くにしゃがみ込み、両方からライトの頬を突いている。それでも、ライトは反応を示さない。


「ここはやっぱり、人工呼吸しかないわね! 意識を失った相手への定番であり王道! じゃあ、私が試しにやってみるわ」


 言い終わるより早く、ライトの元へ移動したキャサリンがミミカを押しのけ、眠ったままのライトの唇へ自分の唇を近づけていく。


「ちょっと待ってよ! そういうのは男の扱いに長けた私の出番よね! 百戦錬磨の私のテク見せつけてあげるわ」


 『全身強化』を発動させ、体当たりによりキャサリンを弾き飛ばしたミミカが、長い髪を右手で掻き上げ舌なめずりをしながら、徐々に顔を寄せる。


「何が百戦錬磨だ……戦ったことすらないくせに」


 ぼそっと呟いたエクスの声が聞こえたらしく、ミミカは顔を上げ睨みつけている。


「うふふ、両方とも新品なんだから二人でいちゃこらしてなさいな。ここから先は、お、と、な、の時間よ」


 頬に指を当てしなを作って二人に笑いかけている。その態度が癇に障ったらしく、二人がキャサリンへ噛みつく。


「うっせぇ! お前に接吻されたらライトは一生トラウマを背負うぞ!」


「こういうのは、美女か美男子がするって相場が決まっているの!」


「ばっかね。男のツボは男が一番わかっているの!」


 三人が罵倒を始め、誰が人工呼吸をするかという話だった筈なのに、今はお互いの性格や性癖についての口論が始まっていた。

 そんな三人を呆れた顔で眺めていた、ロジックと土塊だったが、ふと、あることに気づきライトへと視線を集中する。

 そこには、騒ぎには目もくれずライトの頭をそっと持ち上げ、膝枕をしながら頭を愛おしそうに撫でているメイド長の姿があった。


『騒がしくてすみません、ライト様。では、ここは僭越ながら私が口づけを……』


 漁夫の利を得たメイド長が、静かにゆっくりとライトの唇を奪う為に唇を――手で塞がれる。

 その手を伸ばしたのは眠っていた筈のライトで、きつく閉じられていた目を大きく見開き、状況が掴めないまま上半身を起こした。

 寝起きで焦点の定まっていない顔で辺りを見回し、仲間たちの顔をぼーっと眺めている。


「すみません。状況が全く掴めないのですが。あれ、メイド長薄くなっていますよ。それに、何故、メイスの中の皆さんもいるのでしょうか……もしかしてここは死後の世界なのでは? そうですか、死んだのですか。辛いこともありましたが、それなりに楽しい人生でした」

 しみじみと今までの人生を顧みて頷いているライトに、仲間たちはどう声を掛けていいのか迷っていた。

 胡坐をかいて座りこんでいたライトは両膝を手で叩き、最後に大きく頷くと俯いていた顔を上げ、仲間を正面から見つめる。

 その顔に浮かぶ表情は真剣そのもので、さっきまでの惚けた表情は消え去っていた。


「何があったのか教えてもらえませんか。急に頭の中で呼ぶ声が聞こえたと思ったら、気を失ってこの状況です。とんでもないことが起こったのは理解できます。そして、おそらくですが、それに私が関わっていることも」


 そこで言葉を区切ると全員の顔を見渡す。

 エクスたちは頷き合うと、仲間を代表してメイド長が口を開いた。


「何があったのか、口で説明するより私の『神触』で見せた方が早いと思います。ですが、この出来事にライト様は責任がなく、私も後悔はしていません。それだけは、知っておいてください」


 右手をライトの額に当て、瞳を見つめてくるメイド長にライトは力強く頷いた。

 メイド長が微笑み、目を閉じて意識を集中すると手の平から暖かいものがライトの頭へと流れ込んでくる。

 次々と流れ込んでくる記憶には、ライトが光の神に乗っ取られ、シェイコムの体を貫き、メイド長を握り潰した瞬間の映像が鮮明に残されていた。その後、心の中で繰り広げられた戦闘とその内容も把握できた。

 全てを見終えたライトは目を閉じたまま大きく長い息を吐く。

 誰もが黙り込み、重い沈黙がこの場を支配していた。


「シェイコム君……メイド長、本当にすみません。そして、ありがとうございました」


 ライトは深々と頭を下げ、心から感謝の言葉を口にする。ライトが滅多に見せない行動に仲間たちが戸惑い狼狽する中、ライトは顔を上げ仲間たちを正面から見据える。


「私が乗っ取られてしまったことにより、二人も犠牲にしてしまいました。何故、私の中で光の神が眠っていたのか、光の神が何故、仲間を殺したのか。わからないことだらけですか、私は二人の敵を討ち、落とし前をつけなければなりません」


 強い意志の光を秘めたライトの瞳を前に、仲間たちは口を挟むことなく聞きいっている。


「二人を殺害したという事実。酷いようですが、それを悔やみ悩み考えるのは全てが終わってからにします。戦いにおいて冷静さを失う恐ろしさは……身に沁みて知っていますので」


 生まれ故郷の村において、母を殺され冷静さを失った自分がどうなったのか。それを経験したライトはどのような戦いにおいても、我を失うことは無くなった。

 後悔はこの一件に終止符が打たれてから幾らでもすればいい。実力を発揮できずに自分が死ねば、彼らの死は無駄になってしまう。ライトにとって、それが何よりも許せない。


『はい。シェイコム様も私と同様にライト様の活躍を願っている筈です。私たちが命を託した甲斐があった。そう思わせてください』


「ライトアンロック、この命に懸けましても」


 そう断言したライトを見て、仲間たちは安堵の息を吐いた。

 最悪の展開を想像していたミミカやキャサリンはどうやって、ライトを励ませばいいのか頭を悩ませていたのだが、決意漲る表情にその必要はなかったと、緊張していた顔が少し緩んでいる。


「よっし、話はついたようだな。じゃあ、ここからはこれからの話をしようぜ。どうやって、自称光の神からライトの体を奪い返すか、それを考えないとな」


「ライトさんが目覚めたっていうのに、何にも変化ないものね……ライトさんは、光の神が本物だったとしても、倒せる?」


 自分の中で踏ん切りがついているミミカだったが、同じ聖職者であるライトも同様の葛藤があるのではないかと心配して問いかけてきた。


「はい、何の問題もありません。本物であったとしても、顔面を拳で原形を留めぬほど殴りつけた後に、肥溜めに沈めるぐらいは躊躇なくやれますよ」


 笑みを浮かべたまま言い切ったライトに、若干引いてしまうミミカだった。


『ひっどいなー。一応これでも、キミたちが崇めている神様なのだよ?』


 ライトの心の中である荒野に前触れもなく響いてきた、無邪気な若い男の声にライトたちが一斉に反応して立ち上がる。

 その声はライトにとって忘れられない声であり、憎悪の対象でもある光る神の声に間違いなかった。


「御姿を拝見させてはもらえないのでしょうか?」


 腹の底から湧き上がる溶岩の様な煮えたぎる怒りを抑え込むと、ライトは平静を装い落ち着いた声を掛ける。


『うーん、どうしようかなー。でも、姿見せた方が面白そうだよね。じゃあ、お誘いに乗らせてもらうよ!』


 ライトたちは背を合わせ、死角ができないように周囲を警戒している。

 そんな彼らを嘲笑うかのように、ライトたちの頭上が膨大な光を放ち、まるで太陽が天から降ってくるかのような錯覚を起こしそうになる。

 全員が一斉にその場から離れると、彼らがさっきまでいた位置に光り輝く物体が降り立つ。その物体から発せられていた光は徐々に収まり、光が完全に消えた後にはライトと同じ容姿をした青年が立っていた。

 だが、ライトと対照的にその服装は純白の法衣で、顔に浮かぶ表情はライトが浮かべることのない無邪気な笑み。


「初めましての方は初めまして。僕が光の神だよ。キミたちの活躍と奮闘ぶり楽しませてもらったよ。こうやって姿を見せたのは、そのご褒美でもあるんだ」


 ライトの姿形をしている男が、心から楽しそうに笑う姿に違和感を隠せない一同だった。ライトに至っては、しかめ面で相手を睨みつけている。


「それはわざわざすみません。ところで自称光の神様。貴方の正体と目的は何なのでしょうか。矮小なる人の身では、偉大なる神の崇高な考えなど微塵も理解できません」


 丁寧と言うよりは慇懃無礼な態度で、一応へりくだっては見えるが、ライトに相手を尊敬する気持ちが全くないのは、火を見るよりも明らかだった。


「ライト君のそういうところ好きだよ。丁寧に接しているようで実は馬鹿にしている。まさに神をも恐れぬ、その態度。いいねー実にいいよ。物語において、こういった場面だと悪者はぺらぺらと秘密を暴露して説明を始めるのだよね。じゃあ、僕も見習って昔話を始めるとしようかな」


 ライトの姿形をした自称光の神は、嬉しそうに突拍子もない物語を語り始める。


 昔々、あるところに創造神と呼ばれる存在がいました。

 創造神は闇しかない無限に広がる空間に、幾つもの星を作り、その星の幾つかに生物を生み出したのです。

 何百、何千、何万、何億もの星々を眺め続けていた創造神は、大量に作りすぎた星々全てに目が行き届かなくなり、そのうちの幾つかを自らが作り出した人形に任せることにしました。

 人形には感情がなく、ただ神に言われたことを実行するだけの存在でした。

 神からの言いつけは三つ。


 星で生まれ育った生物に直接手を下すことを禁じ、星の営みを見続けること。

 そこに住む生物が他の星へ悪影響を与える存在になった場合は例外とする。

 その星が消滅した場合は速やかに報告にくること。


 人形はその指示を頑なに守り、何百、何千、何万もの時が過ぎても目を逸らすことなく星を見続けていた。

 人形がどれくらいの時が経ったのかも理解できなくなった頃、星には知的生命体と呼べる存在が現れる。

 それは人と呼ばれる存在で、今まで見てきたどんな生物よりも妙な事をする生き物だった。いつの間にか人形は人から目が離せなくなっていた。

 他の生物と比べて肉体的には劣る人は、それを補う為に様々な創意工夫を用い、いつの間にかこの世界において最も繁栄した生物となり、人形を驚かせる。

 人形が人と呼ばれる存在に最も興味を抱いたのは、その感情である。喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、様々な表情を浮かべ理性的でも野性的でもない奇妙な行動をする。

 それが何なのか、理解できなかった人形はもっと詳しく知る為に、時には人に化け共に暮らし、共に語り、一生涯を人の伴侶と過ごしてみたりもした。

 その結果、人形は感情というモノを知る。


 人形は内に芽生えた感情というモノに戸惑いを覚えた。喜び、楽しいという感情はとても素敵なもので、これがあるだけで退屈だった日常が生き生きと輝き始めた。

 だが、怒りや哀しみといった、気持ちを悪くする感情これは必要なかった。これがあるだけで、日々が暗くなり胸が締め付けられる。

 そこで人形は考えた。自分を二つに分けてみたらどうだろうかと。

 楽しい、嬉しいという明るい感情は自分が受け取り、怒りや哀しみといったどうでもいい感情はもう一人の自分に受け渡せばいいと。


「それが、光と、闇の神だというのですか」


「その通りだよ。僕は光の神として楽しむことを重点に置き、闇の神は良くない感情や汚い部分を担当してもらったのさ」


 光の神から語られる驚愕の事実に、一同はただ息を呑み、呼吸を繰り返すだけだった。


「それでね、僕は楽しい事が大好きだからさ、人の生み出した小説や演劇といった娯楽。特にゲームが凄く好きなんだ。でさ、僕は思ったのだよ。一番好きなゲームに僕も参加してみたいと」


 悪い予感しかしないが先の言葉が気になる一同は黙り込んだまま、一言たりとも聞き逃すまいと耳を澄ましている。


「戦争。いいよねあれは。人の命を賭け金として、お互いの領地と富を奪い合う。策略と武力を尽くし、死に物狂いで戦う。あれこそが究極の遊びだと僕は考えた。でも、僕は創造神から、この世界に産まれたモノへ直接手を出すことが禁じられている。そこで考えた僕は妙案を思いついたのさ。別れたもう一人の自分。闇の神と戦争をすればいいってね。その為に別に必要なかったのだけどさ、死んだ人間の中からそれなりに使えそうなモノを選んで、配下にいれ手駒を増やしたんだよ。一度死んでいるモノを再利用して、僕が生み出したのだから創造神からの言いつけには反してないしね」


 自慢げに胸を張る姿が自分と同じというのが更に苛立ちを倍増させるが、ライトは機会を窺い今はまだ大人しく聞いている。


「闇の神に宣戦布告をしておいて戦力をかき集め、何とか手駒が揃った時には、闇の神も陣営を整え終わっていたのさ。そして、人間たちが、神々の戦争と呼ぶ戦いが始まったのさ」


「くだらない。本当にくだらない理由ですね。我々が崇めていたモノが、そこまで馬鹿な存在だとは思いもしませんでしたよ」


 ライトはそう吐き捨てると、侮蔑を込めた瞳で光の神を睨みつけている。

 仲間たちも言葉にはしていないが、気持ちは同じようでその視線には殺気が満ち溢れていた。


「あれあれ、僕は戦争の楽しさを人から教わったのだけどね。キミたちも闇の神と同じような事を言うのか。まあ、いいや、神罰を与えるにしても最後まで話してからかな。でね、戦いが始まった時には僕は楽勝だと思っていたんだよ。二つに分かれた時も、実は僕の方が多めに力を受け取っていたから、闇の神に勝ち目が無かった筈なのに、配下の実力が全然違ったのさ。闇の神が集めた駒も僕と同じように元々は人間だったのに、何故か一人一人の強さが僕の駒を超えていたのだよ。もう、びっくりさ」


 肩をすくめ頭を左右に振る仕草がわざとらしく、下手な芝居を見ているような苛立ちを覚える。


「でさ、聞いてみたんだよ。そしたら、闇の神って力なく苦しんでいる人を見つけては、自分の力を分け与えていたんだって。で、その力を得た人々は努力し更に力を強化させたとか言うんだよ。ずるいよね! 正々堂々と戦えないなんて神の風上にも置けない行為だよ。そう思わないかい」


 自分を棚に上げて、怒ったような素振りを見せる光の神だったが、その顔に浮かぶ表情は怒りではなく楽。どう見ても、喜んでいる様にしか見えない。


「あ、ごめん話が長くなっちゃったね。でさ、駒は負けたのだけど、ほら、そのものの実力は僕が圧勝だから。生き残った駒を一気に壊滅しようと思ったら、そいつら自分の命ごと力を闇の神に返したんだよ。そしたら、僕より弱かった筈の闇の神が僕と対等レベルまで強くなっちゃって、大誤算だよ。ぎりぎりで負けちゃった僕は、消滅させられないように世界各地へ散らばり、大地の底に沈んだんだ。あ、キミたちは知らないかもしれないけど、星の中心には熱い土が解けた塊があってね、そこを刺激すると星が壊れるんだよ。僕はそこに陣取って、闇の神が手を出して来たらこの世界を消滅する計画を立てたんだ」


 あまりに低劣で品性の欠片もない行動に、ライトは呆れを通り越し、少し冷静になった頭で相手の心理や行動原理を読み取ろうと、脳をフル回転させている。


「そしたら、あいつ何したと思う? 自分の体を分断して僕が飛び散った場所に埋め込んだんだよ。そして部位を強力な結界として、二度とこの世に出てこられないように封印するなんて。信じられないよね! 人の魂に潜り込ませ、何世代にも渡って復活のタイミングを見計らって潜んでいた魂の欠片も見つけられるし。本来ならライト君を幼少の頃から侵食して、成人になった頃には完全に自分のものにする予定だったのに、とんだ誤算だよ」


「光の神よ。一つ質問してもよろしいでしょうか?」


「ん、何だいライトアンロックくん」


 ライトの中で断定とまではいかなかったが、何となく想像はついていたある事柄が、光の神の会話内容により確信へと繋がったある事を訊ねる。


「私の魂が侵食されるのは防がれたのですよね。それはどうやってなのでしょうか?」


「ああ、知らなかったんだね。そうか、そうか。うん、うん。それはもちろん――」


 そこで言葉を区切ると、口元を邪悪に歪め、心の底から嬉しそうに笑顔を作った。


「ライトアンロックくん、キミの育ての親だよ。そして、闇の神の欠片でもあり、死を司る神とも呼ばれている存在だね」


 今までの会話だけでも創造の範疇を遥かに凌駕していたというのに、ここでの更なる事実にライトの仲間たちは完全に言葉を失っていた。

 仲間たちがライトの心中を察し、一斉に視線を向けるが、ライトは動揺した様子も見せず平然とその場に立っている。


「あれ、意外な反応だね。ライトくん、無理せずに驚いていいんだよ?」


「少しは驚きましたが、予想はしていましたからね」


「へえー、そうなんだ。聞いたかい死を司る神。そろそろ姿を現したらどうだい。ライトくんにどう思われているか心配していたんだろ? どうやら杞憂に終わりそうだよ」


 光の神がライトから視線を少しずらして後方へ向け、話しかけている。

 ライトの背後に闇の霧が渦状に発生すると、中から一人の女性が歩み出てきた。

 細身の体に露出度の高い黒のドレス。異様に長い白髪を首に巻き付け、色白の整った顔に並ぶ切れ長の目からは、血の涙が流れ続けている。


「ライトさん……いえ、ライト。いつから気が付いていたのです」


「始めは威圧感と見た目のインパクトで騙されていたのですが、話しているうちに何となくわかるものですよ。私たちは家族ですからね、母さん」


 隣に並んだ死を司る神に、ライトは優しく微笑んだ。



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