出逢い
普段の起床時間は10時。
今日は7時。
いつもの時間なら完璧遅刻だから行かないのに。
今日は……行くかな。
そろそろ行かないと危うくなるだろうし。
そう決めると行動が早いのが私。
10分で支度完了して家を出る。
いってきますも言わずに…なんせ、いう相手が誰も居ないんだからしょうがないよねw
親が出ていって今は私は一人暮らし。
兄は…知らないけど。
私を(嫌々)引き取ってくれた叔母は学費だけは払ってくれてる良い人。
…とか考えてながら歩いてると目の前に見慣れた制服が。
…うちの高校じゃん
1年だったらかなり高い確率でダルぃ事になるからさっさと行く事にする…
と。
「ねぇ」
「ねぇってば!」
「聞いてる!?」
…しつこぃ…
『何ですか?』
あ、声出したの久しぶりだな
「天藤高校の方ですよね?」
…制服見て分かってよ
『そうですけど。』
「あ、の、俺1年の春白日向って言います、道わかんないんで一緒しても良いですか…?」
…ハルシラヒナタ…良い名前。羨ましい…
ってか1年なんだ!?み、見えない…顔整ってるし背高いし。
…ってかってか1年のくせに私の事知らないのかな
『私は良いですよ』
「あ、ありが『でも!あなたが苛められるようになるかもしれないので止めておいた方が良いと思います。では、これで』
これ、言っとかないとあとから恨まれたりするの嫌だもんなぁ…これ以上敵作りたくないし。
「待って」
痛…
『離して…っっ!』
「なら、理由を言ってください。何で俺が苛められるとかそういう話になるんですか」
知らないんだね…
『私は苛められてるの、だからそういう話になるんだよ、分かったでしょ、じゃあね』
「尚更、一緒に行きます。名前は?」
何考えてるの…この人!
『は?嫌だってば。名前なんか学校着いて誰かに聞きさえすれば分かりますよ』
しつこいんだけど。
「さっき、私は良いですよ、って言ったでしょ。いいから、名前。」
あぁ、もう、めんどくさ!
『分かりましたよ!もぅ…管田百合です。合わせたりはしないので勝手について来て下さいな。』
「了解。百合さんね。ありがとう」
…何て良い顔で笑うんだろ…
こんな笑顔初めて見た。
私は…いつから笑ってないだろ…
歩いてる最中、ハルシラ君は色んな事を聞いてきた
「百合さんって、1年何ですよね?」
…ってかさん付けなんだ…生真面目っていうか何ていうか。
『そだけど、それがどうかした?』
気のせいかな。
自分の口調が柔らかくなってる気がする。
まぁいいか。
「いや…特に何もないです」
『ふぅーん…ってか敬語止めなよ、一応同い年なんだしさ』
内心は、苛められてるヤツにそんな口調してたら君も苛められるよっいう事なんだけど…ね
ハルシラ君は言葉の通りに受け取ったみたいで、
「あ…はい!え、じゃなくて…分かった!」
何だろ…素直っていうか…誰にでも愛されるようなキャラなんだなって感じ取れた。
つまり、私とは真逆。
とかなんとか、話してると学校に着いた。
『あ、着いたよ、じゃあね』
「うんっありがとうね、百合さん!」
…敬語は止めたのに、さん付けは止めないんだな…
教室に入ると騒がしかった中が一気に静まり返った。
「何だよ…もう来ないかと思ったのになぁ!?」
小声で言ってるように見せかけての超大声。
ガキが。
別に、来たくて来たわけじゃないっての!
それを無視して席に座る私。
そんな私が気に食わなかったのか舌打ちをする男子生徒。
「あ、日向君だぁ♡おはよぉ〜っ♡」
…ヒナタ?
女子生徒の気持ち悪い喋り方は気に留めず私が反応したのはその名前。
…朝聞いたその名前。
「おはよ、藤咲さん」
「そんな、語っ苦しい呼び方じゃなくて〜名前で呼んで♡…ね?」
聞いたその声は…朝聞いた声だった。
嘘だ。
「ごめ、下の名前忘れちゃったんだ〜何〜?」
「あ・か・ね♡覚えてね〜♡♪」
「は〜い」
…私に気付かないで。
「あ…れ?」
やだ!
「百合さんじゃんか」
…隣の席…!
最悪だ………
「同じクラスだったんだね、百合さん!しかも、隣なんて…!」
「ちょ、日向君!そいつなんかにさん付けしかも、名前呼びなんてやめなよっ!コイツは苗字で呼べばいいのよ♡ね、管田」
管田の所だけトーンが違う事に…ハルシラ君も気付いたみたいだ。
「なるほどね。百合さん」
女の眉間に皺がよる。
『何よ?』
それを無視して返事をしてみる。
「朝、言ってたのはコレのことだったんだね」
『そだよ。』
「ちょ、日向君、朝って何!?まさか…コイツと一緒に登校でもしたの!?」
うっるさ!
「だったらどうしたの?」
…ハルシラ君はとても顔には似合わない低い声でそういった。
「イジメとかそんなんつまらんと思わんわけ?次元の低い事やってますね」
そう、最後は満面の笑みで。
そして、私に話しかけるハルシラ君。
「百合さん、呼び捨てで呼んでもいいかな?」
さっきとは、全然違う、朝聞いた声だった。
『…うん。いいよ』
「ありがとう♪」
こんな短いやり取りだったのに。
こんな短いやり取りのおかげか
私へのイジメが軽くなった。