6話
その光はわずかに暖かった。ほわっとするような感触だった。
そして、僕は心の中に何かが流れ込んでくるのを感じた。僕は目を閉じて心の“目”を開いた。
それは、画像や映像だった。どうやら学校のものばかりだ。普通に写真を撮ったものではなく、目で見たような日常目にする風景だった。
それらには必ず一人の少年の姿が写り込んでいた。ある時は正面から、ある時は横から、そのまたある時は背後から、撮ったような画像・映像だった。写っている少年を見ながら、それが誰なのかわかった。クラスメートの一人だった。
「何なんだ?」
僕は首を傾げた。なぜ、こんな画像・映像があるのだろうか。何のものなのだろうか。僕には想像がつかなかった。
映像を見ている内にナレーターのような声が聞こえた。始めはその光景の説明のようなものだったが、次第に様子が変化した。
言葉に詰まり始め、最後にこんな言葉が聞こえた。
『・・・くん、私はあなたのことがずっと好きです。でも・・・くんは私のことをどう思っているのかな。もしも、私のことを少しでも良く思ってくれているのなら、告白したいと思うんだけど・・・・・・』
僕は心の“目”を閉じた。僕はまだこの世界にいられることを願いながら、一人のクラスメートの“彼”を探しに走り出した。
僕は走りながら先程の光景を思い出していた。
僕が思うに、心の中に流れ込んできた画像・映像はきっとその人の“想い”なのだろう。あの“彼女”はクラスメートの“彼”が好きなのだろう。だからあんなに“彼”が写ったのが多かったのだろう。
僕はそれを知って、居ても居られなくなった。僕は恋愛経験はないが、人並みに興味はある。目の前に好きな人がいる人を見れば、ぜひ応援したいと思う。まして相手の心を覗ける可能性があるとすれば尚更だ。例え、自分自身に関係なくとしても。彼等が幸せになれば僕だって嬉しいものだ。リア充爆発しろってぐらい言うかもしれないが、目の前でその瞬間に立ち会えるとしたらぜひ手伝いたいものだ。
僕は教室の扉に手を掛けた。まだ終了の睡魔が来ないことを必死に願いながら。
教室の片隅に“彼”はいた。胸の辺りにほのかに赤い光が見えた。
僕は躊躇うことなく、手を伸ばしてその光を掴んだ。
僕の中にたくさんの画像・映像が流れ込んできた。
どれも“彼女”が写り込んでいた。真正面から、横顔、うなじが見えるような後ろ髪。
聞こえてくる“彼”の声。
『・・・さんに想いを伝えられたら伝えたいんだけど、きっかけが・・・・・・』
そんな不安を隠しきれない声。
僕はその瞬間確信した。
僕はその光から手を離した。光は依然としてほのかに光り輝いていた。
僕は次にすることを考えながら教室を後にしようとしている所に、あの睡魔がやって来た。
僕は知り得た情報にほくそ笑みながら教室の床に転がりながら睡魔に捕われた。
不定期更新ですがよろしくお願いします