3話
僕はやっとこさ取り戻した意識を頼りに目を開けた。
目の前は教室。黒板には数式が次々と書かれ、先生が説明をする。そんないつもの光景が広がっていた。
僕はふと教卓の上のものに気が付いた。ハンカチだ。僕が先生のポケットから取り出してそのままにしておいたものだ。僕がそのハンカチをじっと見つめていると、先生は教卓の上に置いてある教科書を見に教卓の元へ戻ってきた。そしてハンカチがちょこんと置いてあることに気が付いた。先生は何事もないような顔をしながら手元だけは素早く動いた。
僕はそんな先生を見ながらぼんやりと考えていた。
あれは何だったのか。あの時ハンカチを出しっぱなしにしておいたら、現実でもハンカチは出しっぱなしになっていた。これはどういうことなのだろうか。
結局僕は結論を出すことはできなかった。
それからわずかばかり日は過ぎ、昨日の話。
僕はあの暴力的な睡魔を恐れる一方で、楽しみにするようになっていた。あの世界は何なのか。夢か、幻覚か、それとも・・・・・・
そして僕が帰る支度をしているところにあれはやって来た。
その日の授業が全て終わり、皆が帰り支度や部活動の準備をしている中、帰りのHRは粛々と終わりに近付いていった。担任の先生が本日の注意事項を読み上げていた。周りの生徒達はけして騒がしくはない程度に話していたりした。
僕も隣の人とひそひそとどうでもいい話をしていた。
そんな中、あの暴力的な睡魔がやって来た。
僕はあっという間に眠くなった。僕は隣の人に気付かれないように自分の鞄のものを探しているような体裁を整えた。
そして、僕は全身の力を抜いた。目の前は真っ暗になった。意識が眠りにつく前にまぶたが降りたのだと気が付いたのはそれから少し経ってからのことだ。
僕はぱちりと目を覚まし、辺りを見渡した。辺りは当然といってもいいのか、灰色で音はもちろん動くものは自分だけだった。
僕は椅子から立ち上がり、隣の人の頬を指で突いた。
ぷにっとした女の子らしい感触が指に伝わった。だけれども相手から反応が返ってくることはなかった。僕は調子に乗ってぷにぷに突いた。
普段の僕は女の子相手にこんな過度なスキンシップなんて取れるはずがない。精々親しくなった子と少し話するのが限界だ。
別に僕は女性恐怖症だという訳ではない。人並みに興味は持っている。だけど面と向かった時、どのように接していいのかがわからない。ただそれだけだ。
だから、僕はこの状況に感謝しながら今だ知らずにいた神秘に触れているのだった。
僕はひとしきり楽しんだ後、再びあの睡魔がやって来そうな予感がした。
僕は席に戻って睡魔が襲い掛かってくるのを待った。そして、僕は先程の感触を感じながら眠りについた。