21話
久しぶりの投稿となりますね。
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あの後から、風香さんは毎日のように音楽室に通い練習に練習を重ねた。僕は毎回毎回風華さんに連れられ、吹奏楽部でもないのに音楽室にいた。おかげで良くも悪くも吹奏楽部のメンバーと家でも出来る範囲で練習しているらしい。
どうやら、風華さんが熱心に練習している姿を見た何人かが感化されて練習に打ち込み出したらしい。風華さん曰く、「私が頑張ることでみんなが頑張ってくれればいいなって思うんだ」とのことだ。
それから幾許か昼と夜を繰り返した頃。
その日は吹奏楽部の定休日で、僕は風華さんと別れ、一人図書室にいた。
少し調べ物があったからだ。
僕は図書室の架台からそれらしい本を取り出し、内容を確認する。
何冊か調べて、ようやく目的の本を見つけた。
僕がその本の中身を読みながらカバンを置いた席に戻ると、そこに風華さんがいた。
「なんか、ここにいると思ったら来ちゃった」
「あぁ、いいよ別に。それこそいいの?何か用事とかなかったの?」
「どうせ家に帰ったって何もないし。それより・・・」
風華さんはそこで言葉を止めた。
「それより・・・?」
「それより・・・亘くんのことが気になっちゃって」
風華さんは顔を赤らめながらそう言った。両手をお腹の上に下ろしもじもじとしていた。
僕はそんな風華さんに気付きながら触れないことにした。
「そうか・・・・・・」
「うん・・・・・・」
僕の隣に風華さんが寄り添うようにして座った。
僕はどういう風に反応すればいいか全くもってわからなかった。頭が真っ白になるってこういうことを言うのだろう。今まで考えていたことがすっぽりと頭から抜け落ち、どうしようどうしようという気持ちだけが頭の中をぐるぐると駆け巡っているのだった。
「ねぇ、亘くん」
「何?風華さん」
風華さんは顔を赤らめながら言葉を紡いだ。
「……あした。明日になったら亘くんに大事なこと伝えるから」
「うん」
「明日、ね」
風華さんは立ち上がり、図書室を後にした。
僕は風華さんが去って僕以外誰もいなくなった図書室で一人になった。
外から聞こえてくる賑やかな声と夕日が僕の心に染み渡ってくるように感じた。
カチッ
「・・・ん?」
どこからから聞こえてきた音に僕は首を傾げた。
しかし、その音はそれっきり聞こえてくることはなかった。
「ふぅ。明日か・・・たぶん、アレなんだろうな・・・」
僕は椅子に深くもたれかかりながらぼんやり思考の海へ潜っていった。




