2話
僕が再び目を覚ました時、先生はぼそぼそとしゃべっていて辺りは色彩に溢れていた。
時間を見ると大して経っていなかった。
あれはやっぱり夢だったのかと結論付けて僕はそのことを忘れた。
次にそれを思い出すのはそれから3日後、つまり今日から4日前のことだった。
今度は数学の授業だった。この数学の先生は明朗快活でそれなりに面白い授業をしてくれる。授業内容は微分だった。
ちょうど先生が導関数について説明している時に、アレはやって来た。
僕は抗らうことさえできずその暴力的な睡魔に飲み込まれた。
その後すぐに目は覚めた。まるで電車がトンネルを抜けて外に出たかのように、目の前に光が差し込んだ気がして目が覚めた。といっても頭は完全に覚醒はしていなかったが。
辺りを見渡すと再び音も動きもない灰色の世界だった。
右隣に座っている人が真剣な表情でノートを取っているのが見えた。左隣の人が授業を受ける傍ら机の下に雑誌を置いて読んでいるのが見えた。
先生が口を半開きにしながら固まっているのが見えた。
僕は立ち上がった。机と椅子がガタリと音を立てた。僕はそのまま先生に近寄った。反応はなかった。
僕は先生のズボンのポケットから何かがはみ出ていることに気付いた。僕はいけないとわかっていながらそれに手を伸ばした。それはハンカチだとわかった、アイドルがプリントされたハンカチだった。
これはやっぱり夢なのだろうかと思った。あまりに風景が現実そのもので、忠実に再現されすぎだ。夢はその見ている人の記憶を元に再構成されたものだ。簡単に言えば夢を見ている人が知っているものしか夢には出て来ない。見たこともないものは夢には出て来ない。
もしもこれが夢ならば、なぜ数学の先生がアイドルがプリントされたハンカチがあったのだろうか。僕はその先生がそんなハンカチを持っているなんて知らなかった。その数学の先生はアイドルには疎いと思っていた。
それなのにこれは何なのだろうか。これは夢じゃないということなのか?
僕は教卓の脇に立ったままでいると再びあの睡魔がやって来た。
僕はなんとか自分の席に戻り、そして意識を手放した。