19話
一ヶ月ぶりの投稿です。大幅に進行予定を変更してお送りします。
“想いの華”を前にして僕は行動を開始した。
僕は黄色、緑色、青色の順に“想いの華”に手を突っ込んだ。それぞれの想いが頭の中に流れ込んできた。
結果、彼女ら吹奏楽部がどういう活動をしてきたか、何を考えていたかがわずかながらわかった。それこそ至って普通に活動をしてきたが、如何せん周りとの音が合わないことが問題のようだった。
そして、ついに赤い“想いの華”に手を入れた。
僕の脳裏に“想いの華”に込められた人の感情が再現される。独白する声からしてどうやらこれはやはり風華さんのようだ。
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『・・・・・・』
辺り一面が灰色の世界の中で赤い光と青い光がそれぞれ寄り添うにして輝いていた。
これが・・・風華さんの精神世界か
『・・・るくん』
風華さんの鈴を転がしたような声が脳裏に響き渡る。
『・・・たるくん』
風華さんはしきりに何を言っているのだろうか。初めの方は小さい声のためほとんど聞こえなかった。
『亘くん』
僕は風華さんがしきりに僕の名前を呼んでいることを認識した。認識したと同時に疑問が生じた。
なぜ、僕の名前を呼んでいるのか。ただのクラスメート同士で、よく話したのはここ3日前の時だけだ。風華さんにとって僕は精々悩みを解決、いや余計に増長させた存在だ。
この精神世界はどうやらその人が普段から心の奥底から想っていることが反映されるようだ。それから当て嵌めていけば、風華さんにとって僕という存在は普段から気にかけているということなのか・・・?
『亘くん、私、あの時君に出会えていて良かったと思っているんだよ』
あの時。おそらく、3日前の図書室の出来事のことだろう。
『あの時、君の優しさに触れることができて、私の想いが膨らんでいったんだよ』
僕の優しさ・・・・・・あぁ、僕が不安に思う風華さんに気遣ったことか。あれは自分でも随分なことをして嫌われていなければいいなと思っていたが杞憂に済んだようだ。
『あの時からいろいろと君の良いところ気付いたんだ』
僕の良いところか。僕は傷付くのが嫌いな臆病な人間だ。そんな僕に良いところなんて・・・!
『亘くんって私に対してすっごく優しいよね。私が弱音を吐いても私のことを考えて叱咤してくれるし、私が落ち込んでいたら励ましてくれるし・・・・・・私、亘くんに期待しちゃう』
期待しちゃうって何が・・・
風華さんに“限って”そんなことはないと僕は自分の心に蓋をする。
そんな、まさか、都合の良いことが起きる訳ない・・・・・・はず。
『私、気付いちゃったんだ』
なに・・・に?
風華さんの想いを余すことなく聞きたいという気持ちとそれを聞いてしまったら今のままではいられないから聞きたくないという気持ちが攻めぎあう。
そんな中、風華さんの言葉が僕の脳裏に響く。
『亘くんのことが好きだってこと』
あぁ・・・・・・
そうだったんだ、だったら・・・
あぁ・・・目の前が真っ暗になっちゃったか。




