17話
■■■
あれから3日が経った。
僕と風華さんは至って普通通りのクラスメートの関係を保っていた。互いにあの出来事がなかったように接しあった。せいぜい挨拶をするくらいだった。
僕はこの3日間、あの日の出来事を何度も何度も思い出した。
傷付くのが怖い僕が人の心に触れる場所。“想いの花”が咲く場所。
僕は無意識の内にあの世界へ行くことを渇望していた。風華さんと一緒にいられるかも知れないという根拠もない微かな期待と、自分に目を向けなくて済むように人の心を覗いていたいという身勝手な願いだった。
だけど、あの暴力的な睡魔が僕を誘ってくれることはなかった。
「はぁ・・・」
放課後。僕は部活に入っていないため、この後の予定はなかった。強いて言えば家に帰ることだけだった。特に誰かと強く関わる訳でない学校生活。僕は選んでそんな学校生活を過ごしているが、どうも最近その生活に嫌気がさしている。桃色の青春を送りたかったという訳ではないのだが、もっと積極的になっても良かったのではないかと少し後悔していた。
僕は家に帰るべく鞄を背負った。そんな僕に誰かが話し掛けてきた。
「ねぇ、亘くん」
「風華さん?どうしたんですか?」
僕に話し掛けてきたのは風華さんだった。風華さんの顔には不安と期待が入り混じった表情が浮かんでいた。
「私、吹奏楽部を変えたいの!手伝ってくれない?」
「はぁ、ってなんで僕がそんなことを手伝わなければならないんですか?」
「手伝ってくれるって言っていたでしょ?私覚えているんだからね」
風華さんは茶目っ気たっぷりにウィンクをした。
僕はあまりに驚いたため何も言うことはできなかった。
■■■
「それで、風華さんは何をするつもり?」
「私は、今までそんなに熱心にフルートを吹いてこなかった。周りのみんなはどうなのかはわからないけど、あまり何人か熱心じゃない人がいるのはわかる。それらが先生が心から憂いている原因なんだと思う。
もしも、誰かが熱心に練習し始めたらみんなが熱心に練習するかもしれない。だから私が率先して練習して周りの人たちを圧倒させてみたいのよ」
「それで僕は何を手伝えばいいんですか?あまり変なことは手伝えないんですけど」
「大丈夫。私が練習するのを見ててくれればいいから」
「・・・一人で出来ることじゃないですか?」
「亘くんに見ててもらえば、私やる気出るから」
「えっー!」
そして僕は風華さんに音楽室まで連れられていかれた。風華さんに連れて行かれる間、僕は抗うことはできなかった。
この小説がどんな方向に向かおうとしているのか、筆者にもわからないです。あまり睡魔が関係なくなっていく・・・




