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16話

相変わらず不定期です。

 しばらくして風華さんは話し掛けてきた。


 「亘くん、我が儘聞いてもらってありがとうね」

 「どうも」

 僕は少し顔を赤らめながら言った。女の子が肩を自分に預けてくるということは今まで生きてきた人生の中で一度も無かった。風華さんの柔らかな肌の温もりと華奢な身体の感覚が忘れられそうになかった。


 「うーん」

 風華さんは背伸びをしながら器用にも欠伸をした。無防備にも見えるその態度が僕の目には魅力的に映った。


 「ねぇ、亘くん。いつまでここにいられるのかな?」

 「あぁ、睡魔が来たら元の世界に戻るけど」

 僕がそういうと風華さんはこう言った。


 「なんか、戻りたくない。このままずっとここにいられたらいいのにって思っちゃう」

 「えっ?」

 風華さんの言葉を聞いて、僕は驚いた。確かに見たくない現実を見せ付けられたら戻りたくないと思う。だが、風華さんの口からそんな言葉が出て来るとは思わなかったからだ。風華さんはそうことを、例え思ったとしても口には出さない人だと思っていた。今まで風華さんの人となりを見て知ったことだ。間違いのはずがないのだが。

なぜ、僕の前で弱音を吐いたのか。ここに一緒にいるから、僕ならば誰かに言い触らしたりしなさそうだから、いろいろな理由が浮かぶ。さすがに、僕に気があるからという誠に身勝手な解釈は有り得ないとわかっている。僕は風華さんに気に入られるようなことを何一つした覚えはない。だから風華さんは僕という人畜無害な存在がたまたまという偶然で目の前にいたから弱音を吐いたのだと解釈した。

 と、いっても可能性が0に等しくても期待してしまうのが人間の(さが)だ。


 僕は風さんの顔をろくに見ることなしに言葉を伝える。

 「戻りたくないなんて言っちゃダメだ。僕らは例え辛いことがあっても逃げるなんて選択肢は選んではいけないんだ。辛いなら、手伝ってあげるから」


 僕の言葉に風華さんは笑ってありがとうと言った。



 そして待ち構えていたかのように暴力的な睡魔が僕達を現実へ誘った。






 ■■■


 「・・・・・・っ!」

 僕は睡魔から解放され意識が一気に覚醒した。

 夕日に照らされた図書室の中で僕と風華さんは睡魔に囚われていたようだった。周りには誰もいなく図書室にいるはずの司書の方も席を外したままだった。


 僕はやっと帰ってきた現実を前に、長らく向こうの世界にいたことを実感した。現実では1分も経っていない出来事だろう。だが、僕の中ではひどく長い時間を過ごした感じがした。



 僕はふと、目の前に座る風華さんを見て思った。


 向こうの世界でたしかに最後に廊下にいたはずだった。

 僕らは一体いつ元の図書室に戻っていたのだろうか。






頑張って更新進めていきます。

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