11話
「それで、どうしたんですか?」
夕日が図書室を照らす中、僕と橘さんは向かい合って座っていた。どうやら僕に用があったようだ。
「たまたま夢野くんを見掛けたから声を掛けたんだけど。夢野くんは何をしていたの?」
「あぁ、僕は問題集を解いていたんだ」
「そうだったんだ。いつから?」
「今日は昼から」
「おー、凄いじゃん。今から勉強しているなんてさ」
「いやいや、ただ自信がないだけなんだよ。後一年あるからといえども志望の大学に入れないことを考えると怖くて」
「そっかー、将来のこと考えているんだね。私なんて今の今しか考えられないよ。それに比べて夢野くんは凄いと思うよ」
「そんなそんな」
会話が途絶え、吹奏楽部の練習する音が聞こえてくる。
「そ、そうだ。せっかくだからちょっと私の話に付き合ってくれない?」
「え?」
「最近変なことが起きていて。周りの人に言っても嘘だって言われて。夢野くんなら頭ごなしに否定しないで話聞いてくれそうだから、ね?聞いてくれる?」
「構わないけど。で、どんな話?」
「それがね、私最近眠りが浅いんだよね」
「へぇ、そうなんだ」
「それでなのかはわかんないんだけど、授業とか聞いてるとたまにうとうとしちゃって変な夢を見るの」
「夢か。どんなの?」
「それがね、聞いて笑わないでね。灰色なの」
「はい?」
「一面が灰色で、たぶん教室なんだろうけど、みんなは授業受けてて。私だけ色があって・・・」
「音は?」
「んー、しなかったね。何の音もしなかった」
僕のそれまで疑念だったものが確信へ変わった。アレだ。あの世界だ。
「それでその“夢”を見る時に何かあったりする?いつもとは違った何かが」
「そうだね・・・まだこの夢は2回しか見たことないんだけど、なんか2回ともすぅーって眠りに入ってたんだよね。自分が寝てるって気付かない内に」
「・・・・・・」
間違いない。あの暴力的な睡魔に誘われて橘さんはあの世界に行っていたんだ。
「どう?やっぱり変だよね」
橘さんは不安げに聞いてきた。
それに対して僕は
「そんなことないよ。橘さんは変ではない」
「夢野くん・・・」
「大丈夫だ、それはきっと“夢”なんだ、怖がることはない」
「夢野くんは、優しいんだね」
「えっ?」
僕は自分に言い聞かせるように言っただけだ。それなのに、優しいだなんて。僕はただ怖いだけなんだ。
「夢野くんに、そう・・・だん、して」
「橘さ・・・くっ」
何ヶ月ぶりだろうか。再びあの暴力的な睡魔が僕に襲い掛かってきた。僕は意識を保とうとした。橘さんもあの暴力的な睡魔に襲われているようだった。
「ゆめの・・・くん」
「くそっ」
僕と橘さんは同時に暴力的な睡魔に誘われた。
なんだかんだでこの作品も二桁まで話数行ってしまいました。そんなつもりはなかったのですが・・・とりあえず完結目指して頑張っていきます。




