ポテチに負けた俺、女神に無限の力を貰った結果、異世界生活12秒で世界を終わらせる
のりしお味のポテトチップスはいつ食べても美味しい。
バリバリと音を立てて貪っていた、まさにその時だった。
縦になったポテチが喉の奥に思い切り突き刺さる
「ん…ぐぁ…」
それが、のりしおポテチに負けた男の声だった。そしてその男の人生最後の言葉はそれだった。
嘘だろ。のりしおポテチに殺されるのか俺は。
意識が薄れる中で思った最後の感想がそれだった。
気がつくと、俺は真っ白な空間にいた。
目の前には、絵に描いたような女神のような美少女が涙目で佇んでいる。
「可哀想に……! ポテトチップスごときに命を奪われるなんて! 次の人生では絶対に何物にも負けないよう、あなたに【無限の力】を授けます!」
「無限って、具体的にはどのくらいですか?」
俺は念のため聞いた。
女神は涙を拭いながら、胸を張った。
「無限です!」
「説明になってない」
「大丈夫です。異世界では力こそ正義ですから!」
力こそ正義。
その言葉には、男なら一度は憧れる響きがある。
俺は少し考えた。
死因がのりしおだった人間に、次の人生で負けない力を与える。
なるほど。筋は通っている。
通っているか?
「では、いってらっしゃいませ!」
女神が両手を広げると、足元に光の輪が広がった。
視界が白く染まり、体がふわりと浮く。
最後に、女神の声が聞こえた。
「今度こそ、何物にも負けない人生を!」
次に目を開けた時、俺は草原に立っていた。
青い空。
見たこともない巨大な鳥。
遠くには石造りの街。
そして目の前には、鎧を着た兵士らしき男がいた。
「おお、新たな召喚者か」
兵士は俺を見て、少し安心したように笑った。
「まずは能力確認だ。軽く拳を握ってみてくれ」
「拳?」
「そうだ。力の適性を見るだけだから、気楽にやればいい」
気楽に。
俺は言われた通り、右手を軽く握った。
その瞬間、空が黒くなった。
「え?」
兵士が空を見上げた。
雲が渦を巻いていた。
鳥が悲鳴を上げる暇もなく、空の一点へ吸い寄せられていく。
遠くの山が、まるで布をつままれたみたいに歪んだ。
俺の手の中に、黒い穴があった。
「……これ、まずいやつでは?」
頭の中に、女神の声が響いた。
『すみません』
「早いな謝罪が」
『無限は、少し多かったようです』
「少し?」
地面が浮いた。
街が浮いた。
兵士が浮いた。
俺も浮いた。
異世界生活、開始十二秒。
俺は二度目の人生で、初めて拳を握り、
世界を終わらせた。
死因:のりしお。
異世界の死因:握力。




