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倒れる騎士と倒れさせる令嬢 ~甘すぎて毎日尊死してますが、婚約者です~  作者: 秋乃 よなが


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第十九話 応援されたら、感動で倒れました


 模擬試合の一連の騒動が落ち着き、日常が戻ってきた頃。ティアラとエデルは一緒に穏やかな登校時間を過ごしていた。しかし二人の距離は未だ、手が触れそうで触れない。まだ訓練が必要なようである。


(この前あんなこと言っちゃったけど……でもエデルは元気になったし……今日もいつも通り話せるよね?)


(この前のティアラからの甘い言葉……思い出すだけで倒れそうだ……っ。平常心、平常心……)


 そのときふと、ティアラとエデルの目が合う。ティアラが普通に微笑めば、エデルが身体がびくっと反応した。


「……お嬢様、笑顔の火力を下げてください。朝は耐性がリセットされているので特に危険です」


「えっ? リセットってなんのこと?」


 そこへアルノーが通りかかる。以前よりも雰囲気が落ち着いており、清々しい目をしている。彼の傍を通る女子生徒たちも、『なんか爽やかになったね』などと囁いているようだ。


「おや、ラシエール」


「やあ、フィオレル」


 ティアラとエデルに気づいたアルノーが足を止めて、挨拶をする。以前は微妙に空気が重かった二人だったが、今はもう仲の良い友人のようだ。


(あ、普通に話して……)


 エデルとアルノーが穏やかに話をしている。それだけでティアラはうれしくなった。


「あのな、ラシエール。僕はあれからいろいろと考えたんだ。そして君に、伝えておきたいことがある」


「伝えておきたいこと?」


「僕はもうフローレンス嬢を追いかけない。彼女を守るべきなのは――」


 アルノーの視線が一瞬、ティアラへと向く。


「ラシエール、君だ。そしてまた彼女も、君を求めている」


 そう言ったアルノーの笑顔は、とても晴れ晴れとしていた。


 対してティアラは、彼の言葉に顔が真っ赤になっていく。エデルもまた言葉を理解するのに時間を要し、遅れて急激に顔を赤くした。


「っ、フィ、フィオレル! なにを……っ」


「君たちは互いを想い合っている最高の恋人だと思う」


 アルノーは平然を装っているが、その心は少しだけ痛んでいた。あれだけ想っていた恋心だ。そう簡単に忘れることはできない。それでも彼は、確かに前に進んだのだ。


「僕は、自分の恋を自分の弱さで歪めてしまった。でも、二人を見ていて分かったんだ。君たちの真っ直ぐさに勝てるわけがないって」


「フィオレル……」


「だから僕は――二人を応援する側に回る。そう覚悟を決めたんだ」


 アルノーの言葉にティアラは感激し、瞳をうるませる。エデルはそんなティアラを見て、尊死ゲージを上げていた。


「フィオレル……君のその言葉、僕はとてもうれしい……」


「ラシエール。フローレンス嬢を頼んだ。本気で幸せにしてあげてくれ」


「……っ、僕を認めてくれたんだな……?」


 するとエデルの身体が震え出し、なぜか白目をむいた。


「フィオレルのティアラを思った言葉が……! 尊い……!」


「エ、エデル!?」


 そのまま前のめりに倒れていくエデル。その身体を、アルノーが支えた。


「はい、尊死一名。……って、倒れる理由が増えてませんか、エデル様?」


 例のごとくカティアの手によって担架で保健室へと運ばれたエデル。ベッドで横になっているその姿を、ティアラ、カティア、アルノーの三人は見守っていた。


「模擬試合の尊死に加え、お嬢様の甘い言葉で倒れ、今日は感動で倒れ……倒れやすくなっているのでは?」


「わ、わたしのせい……?」


「いえ、これは完全にラシエールの問題ですよ、フローレンス嬢」


「そうですね。お嬢様の破壊力が高すぎるだけです。……エデル様限定で」


「破壊力ってなに!? 攻撃なんてしてないよ!?」


 おろおろとするティアラを見て、カティアとアルノーは目を合わせて笑い合う。そしてアルノーは、ティアラに向き直った。


「フローレンス嬢。僕は、君の幸せを本気で願っている。だから、もし困ったことがあったら相談してほしい。敵としてではなく、仲間として」


「フィオレル先輩……」


 アルノーの心強い言葉に、ティアラの胸を温かくなった。頼りになる先輩が味方についてくれたのだ。これほど心強いことはない。


「はい! これからもよろしくお願いします!」


「……ティアラ……?」


「あっ、エデル! 目が覚めましたか? よかった……!」


「ラシエールが目覚めたな。それじゃあ僕は先に行くよ」


 アルノーは三人に会釈して保健室を去る。その背中にはもう未練などなく、爽やかな雰囲気だけが残されていた。


「なんだか先輩、すごく変わりましたね」


「『恋のねじれ案件』が完全に解決した結果でしょうね」


 カティアは優しく微笑み、アルノーが出ていったあとを見つめていた。


「エデル、大丈夫?」


 ティアラはベッドへと近づき、エデルの無事を確かめるように、その手をぎゅっと握りしめる。


「ティ、ティアラ!? 手……っ」


「あっ、ごめんなさい! だめ、だったかな?」


「いや、大丈夫! 大丈夫なはず! ……たぶん」


「お嬢様。エデル様の様子を見ながらお願いします。今日の彼は、感情の負荷で瀕死状態なのですから。……はあ。本日の業務記録がまた増えましたね」


 こうしてアルノーは、カティアに続いて、ティアラとエデルの二人目の味方となった。そして友情という尊い絆を得たエデルは、尊死理由をまた一つ増やしたのだった。


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