第9話 謝罪。
終わらなかった。
八幡天音地獄はまだまだだった。
「おい雑魚、嶋田さんに会わせろ」
「え…烈は忙しいんじゃないかな」
最後まで言い切る前に顔面を殴られる永礼崇。
「クソ雑魚、お前に許された返事は『はい。わかりました』だろ?いい加減に覚えろ。アタシが会うって言ってんだよ」
そう言われている横で、両親は拍手喝采。
痛みと惨めさで思わず涙が出てきた。
「泣けば許されるなんて思うな。お前は散々飲み会で女の子達を悪く言って泣かせてきた。だから泣いてもチャラにもならねえ。しかもお前はわかってねえな?ここには嶋田さんが居る。嶋田さんが顔面を殴ったことにすれば殴り放題だ。普段みたいに服の中限定にしないで済む。もう一度言ってやる。嶋田さんに会わせろ」
凄まれた永礼崇が電話をすると、すぐに嶋田烈は永礼家に飛び込んできた。
「おお!元に戻ってる!すげぇ!」
そう喜んで、名前も知らない八幡天音に「サンキューな正義の味方!」と呼ぶと、名乗って居なかった事に気付いた八幡天音が、「ああ、八幡天音っす」と自己紹介をした。
嶋田烈はニコニコと「サンキュー天音!」と言い、八幡天音が「いえいえ。これからも嶋田さんの名前を借りて、このクソ雑魚をぶん殴って躾けさせてもらいますよ!」と言ってガッツポーズで力こぶを見せた。
この返しが楽しかった嶋田烈が「クソ雑魚!ウケる!」と喜んだ時、左頬に傷が見えた。
永礼崇が驚いて「あ…。その傷…烈?」と聞くと、嶋田烈は何の事もないように笑い飛ばす。
「あ?ああ…お前の指輪パンチの奴な。まあ朋代の奴はキレ散らかしていたけど、別に生きてるしなんともねーよ」
この話をキチンと知らない八幡天音は、殺気を振り撒きながら「おい、クソ雑魚。初耳だな。なんだ指輪パンチってのは?言え」と詰め寄って来る。
一通り話すと「あのボコボコの発端かよ!?しかも自分が怖くて振った彼女と仲良くしてて、苛立ってパンチ?あのクソゴツい銀の無駄遣い指輪で?死ね!死んで生まれ変われ!」と言いながらボコボコにされる永礼崇は、初めて保身の為以外に八幡天音を止めて、笑って見てる嶋田烈の前で土下座をして「烈ごめん!」と謝った。
「別にいーって、なんか漫画のキャラみたいで格好いいだろ?」
「でもそんな深い傷が残るなんて思わなかったんだ!ごめん!」
本気の謝罪に、八幡天音は「ようやくわかったか」と呟き、「殴りすぎて手が痛え」と見守る中、嶋田烈は「謝るなら俺じゃなくて、菜央と朋代に謝れよ。菜央は冬になると手首をさすってるし、朋代はお前の言葉でいまだに自信を無くして俺に『烈も私にチェンジって言う?』とか聞いてくんぞ」と言った。
「え?菜央…。門倉 さん…。そんなに酷いことに?ちょっとのつもりだったのに…」
そう言って土下座の姿勢のまま驚く永礼崇は、次の瞬間には後頭部から思い切り踏み抜かれてリビングのフローリングにおでこを強打していた。
頭に足を乗せたままの八幡天音が「おい、カス。なんだその新情報は?お前はアレか?私の忍耐力を試す為に天が使わしてきた何かか?アァン?」と言いながら足をグリグリさせる。
「嶋田さん、その2人って忙しいっすか?このカスの謝罪を聞いてくれますかね?」
「んー…?暇なんじゃね?朋代なら休みの時は俺といつもいるから呼べば来るし、菜央は隣の家だから、いれば来るよ」
八幡天音は土下座で頭を踏まれる息子を見ても感謝を告げる永礼崇の母親に頼み込む。
「すみません。その菜央さんを呼んできて貰えませんか?勿論酷い事をされて許せない気持ちもあるとは思いますが、ここはアタシに免じてなんとか」
永礼崇の母も三浦菜央とは遺恨が残ってしまっていて、ずっと気にしていたので飛んで迎えに行く。
嶋田烈は「天音はおもしれーな。じゃあ朋代も呼ぶか」と言って「一生思い出に残るおもろいもんが見られるから来い」と言いながらメッセージを送った。




