表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗く深い井戸の底から世界を見下す。  作者: さんまぐ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/18

第8話 更生。

その晩の事を、永礼崇は後に悪夢の台風直撃と呼んでいた。


一晩でアクセサリーや不用品をリサイクルショップに売り飛ばされ、その金で真面目な服ばかりを買わされて、タバコにしても「ふかすな勿体無い。吸いたくなったら言え、殴ってやる」と言い出し、本当に一晩中ソワソワすると殴られ続けていた。



翌日、大学は騒然とした。


黒髪で真面目な姿に生まれ変わった…、正しくは高校生活の頃に戻った永礼崇が現れて、「おはよう」と後輩達に挨拶をする。


そして横にはあの乱暴者が居て、昨日飲み会を断った後輩に、思い切り猫を被った姿で報告をする。


「聞いてよ萩野くん、永礼先輩ってば、地元に帰った時に友達に説得されてヤンチャを辞めたくて、最後にあの姿で飲み会に行って謝りたかったんだって、私が話を聞いてきたんだよー」


猫を被った姿を見て、度肝を抜かれる永礼崇に『おい、バラしたらコロスぞ?』と心の声と共に殺気を向ける女。


後輩の萩野雄太は「え!?そうだったんですか?」と言い、散々泣かされてきた女子達は「え?天音ちゃん…、泣かされなかったの?」とひそひそ声で聞いている。

泣かされたのはこっちだと思う永礼崇は、初めてこの乱暴者が天音という名だと知る。


天音は永礼崇の空気を敏感に感じ取り改めて名乗る。


「永礼先輩?もしかして私の名前を知らなかったんですか?八幡天音やわた あまねですからね」


その際に、コッソリとスマホのメッセージ機能で[お前、人の名前も知らねえで、飲み会で大人しくしてたらブスだのなんだの言ってくれたんか?後でボコ決定な]と入れて来ていた。



・・・



背筋が凍った永礼崇の新しい日々が始まってしまった。

四六時中付き纏い、タバコを見つけたら「お前、どうせ裸を見せる彼女も居ねえよな?腹パンな」と言われて痣だらけになるまで殴られる。

タバコを吸いたそうにしたら殴られて、「タバコを意識したら痛いと覚えろ、パブロフの犬だ」と言われる。


食生活も見直させられて、バイト先も健全そうなファストフード店に変えさせられる。


そして嶋田烈との約束の日、永礼崇は渋々実家に行くと、親は泣いて喜び八幡天音に感謝を告げた。


「いやぁ、アタシなんてなんもしてないっすよ」


そう言って謙遜する八幡天音に、「お礼をさせて!なんでも言って!」と永礼崇の母が言い、父親も「遠慮なんてしないで、なんでも言ってくれないかな?」と続けた。


その言葉を聞いた瞬間に、ギラついた八幡天音の目を見て、永礼崇は背筋が凍ったがもう遅い。


「永礼先輩って案外頑固で、ボコボコにぶん殴って矯正したいんで、ご両親の前でも良いですか?」


よくない。

何を言い出すんだ。

自重してくれと永礼崇は思ったが、両親は泣いて感謝をしながら「好きなだけ殴って!」、「そうだよ!さあ!」と言いやがる。


そして次の瞬間、永礼崇は実家のリビングを転がっていた。


「おいクソ雑魚、お前はこんなにもご立派な両親を泣かせて何やってたんだコラ?痛いか?痛いだろう?だがご両親はその何倍も痛く辛いんだぞ?わかったかゴミカス!」


八幡天音は止まる事なく永礼崇に殴る蹴るを繰り返し、両親は止めずに泣いて感謝をする。


「や…やめ、と…とうさ…助け…」


その言葉に、八幡天音は永礼崇の胸ぐらを掴む。


「ちげーだろ?まず自分のことの前に両親に謝れ、手をついて詫びろ、地面に頭を擦り付けて反省をしろ」


永礼崇はそう言われて、自宅のリビングで2つも下の女の子にボコボコにされて親に土下座で謝らされると、永礼崇の両親は更に泣いて喜び、御礼がしたいと言い出し、八幡天音はとんでもない要求をしてきた。


「アタシ、料理はからっきしなんですよ。で、永礼先輩も碌なもん食べてないんで、夕飯だけの仕出し弁当とか頼めません?私も一緒に食べて監視しますし真人間にしますんで、私の分のご飯もいいっすか?」


よくない。

何を言い出すんだ。

両親よ、図々しいと言って断ってくれと思ったが、それこそ親は是非是非と頼み込む。


「恩返しをさせて」


更に母親が言うと、八幡天音は怖い顔で「いえいえ、私、勉強はからっきしなんで、少し聞いた感じだと永礼先輩は勉強しないでも成績優秀なんで、お世話になろうと思います!」と言って親の前でも永礼崇の肩に腕を回した。


「アタシを卒業させろ。わかったな?アタシが卒業するまでお前を躾けるからな。就職先もあっちで見つけろ、アタシが卒業したら転職して良いからな」


そう言い切られた永礼崇は、「…はい」と涙ながらに返事をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ