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暗く深い井戸の底から世界を見下す。  作者: さんまぐ


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第6話 再会。

永礼崇の両親は帰ってこない息子を心配していた。

学校から届く書類には、最低限の出席日数で通学していることがわかり、母が近況を聞いてもバイトをしているとしか言わない。

確かに最初はやり直してほしい一心で送り出したが、帰ってこないのは話が違う。

成人式すら戻らない息子、振袖姿の三浦菜央の可愛らしさを見て、スーツ姿の嶋田烈の凛々しさに感動をした。


だからこそ息子の身を案じて、顔を見たくて、永礼崇の祖母である母を頼らせてもらった。


帰ってきたら何を話すか、将来への思いを聞こうと思った親は、突きつけられた現実に言葉を失った。



永礼崇には面影らしい面影は無くなっていた。


上京して都会に染まり、垢抜けて面影がなくなる話なんかはよく聞くが、東京を離れて地方に行って、垢抜けるなんて思いもよらなかった。


垢抜けるなんて言葉では足りない息子の変化に、永礼崇の母は熱を出してしまった。


髪を金髪に染めて、耳にはピアスを開けて、眉を細くしてタバコを吹かす永礼崇。

キチンと食べていないのがわかる不健康そうな顔と身体。

首から見える不似合いなネックレスに指輪。

風呂をサボっているのか、体臭を隠すためか、食事の味もわからなくなる香水。

祖母は泊まりの予定を辞めて帰って行ってしまった。


永礼崇の父は、まだそれでもこれが息子が求めた姿なら受け入れようと思い、将来について聞いたが話にならない返答に頭を抱えた。


「俺だからなんとでもなる」


まだビジョンがあれば受け入れたが、ビジョンも何もなく態度だけは大きく、見聞きしただけの知識で、わかった気になり人を見下し馬鹿にする。

親にすら、親だからこそバカにしてくる態度に、永礼崇の父は遂に寝込んでしまった。




・・・



勝手に人の姿を見て寝込むとは程度の低い親だと思い、帰るべき場所に帰ろうと家を出た永礼崇の前には三浦菜央がいた。

三浦菜央は目を丸くして永礼崇を見て「崇?」と声をかけてくる。


「菜央、久しぶりだな。お前は変わんないな」

「崇は変わったね」


話す気もない永礼崇は「おう。もう俺は昔の俺じゃない」と言って駅まで歩くと、駅で門倉朋代と腕を組む嶋田烈を見た。


永礼崇の心の中は一瞬で冷え切った。

高校二年の時から4年経っても仲睦まじい姿。

だがそれは自分がいたからこそ得られたもので、そもそも散々人を酷評してきた嶋田烈が手にしていいものではなかった。


永礼崇は地元に戻るべきではなかった。

かつてを知る人間からすれば絶句してしまうが、それを自身が強くなったと誤認していた。


そのことに気づかない永礼崇は、おもむろに嶋田烈の背後から肩に手を置いて振り向かせると同時に、顔面を殴り飛ばした。


嶋田烈の「がっ!?」と言う声と門倉朋代の悲鳴。


達成感でどうにかなりそうな気持ちのまま、大学に帰ろうとする永礼崇は「イカレてんのかテメーっ!」と言った嶋田烈の蹴りで飛ばされる。


永礼崇はそのままマウントを取られて、嶋田烈に「いきなり何しやがる!?ゴツい指輪で殴りやがって!朋代には指一本触れさせねーぞ!」と言われながら暫くボコボコに殴られる。


「あれ?崇かお前?」


そう言って手を止めた嶋田烈は、「久しぶりじゃんか!いきなり殴りかかって来るとか元気だなお前!」と言って笑顔で永礼崇を起こして、「指輪はやべーよ指輪はよ!」と言ったところで警察のお世話になった。


嶋田烈と永礼崇は友達だと言ったが、ゴツい指輪で殴られた頬はザックリと切れていて、門倉朋代が「死んじゃう」と泣きながら頬にハンカチを当てていて、嶋田烈は「ばーか、死なねーよ。唾つけときゃ治るって」と笑い飛ばしてみたが、警察署に連れて行かれてしまった。


遂に永礼崇の母は寝込むだけでは済まずに倒れてしまった。


嶋田烈は笑顔で「じゃれあい」と言ったが、永礼崇は警官からの問いに「烈は俺の憧れで、あんな女と仲睦まじくしていい存在じゃない」と意味不明な説明をしていて、父親の説明でようやく警察は納得をしてくれた。

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