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暗く深い井戸の底から世界を見下す。  作者: さんまぐ


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第17話 報告。

八幡天音の地元では八幡天音を知る人間が何をしてくるか分からない。

妬みや嫉みで悪意を持って接してくる。


可愛いものなら不良をしていた頃の天音の写真を持ち出してくるのも居たり、恥の歴史を武勇伝のように語って落としてくる輩も現れかねない。


タチが悪いのは名前と顔すら一致しない八幡天音と肌を重ねた男達を連れてこられて、八幡天音の特徴を語り出す輩まで出てくる恐れがある。


母親もそれをわかっているので、静岡駅まで出てきて、単価の高い個室がある店に入り輩を回避しながら顔合わせをした。

店の中は初詣帰りの連中なんかも居たが、なんとか無事に個室に入れると、八幡天音は緊張しながら「崇、この人がアタシの母さん八幡初音だ」と言い、母親には「母さん、この人がアタシの彼氏の永礼崇さんだ」と紹介をした。

永礼崇は「はじめまして!永礼崇です!手土産は天音さんに止められたのですが、なんとか珈琲をご用意しました!」と言ってコーヒーの詰め合わせを渡すと、「あら、ありがとう。ふふ。よろしくね崇さん」と言われる。


順調な顔合わせ。

だが八幡天音は永礼崇が何を言い出すかヒヤヒヤしていた。


そして案の定、八幡初音が「崇さんは将来東京に帰られるの?離れてしまうと少し寂しくなるけどたまには会ってね。まああの土地にはいい思い出がないから、天音が地元を離れるのは嫌じゃないのよ」と漏らした瞬間に、永礼崇は「お任せくださいお母さん!」と言い出し、「お母さんは同居とかどう思われてますか?」と聞き始めた。


「はい?」

「崇っ!」


永礼崇は真面目な顔で、八幡天音に意見をする。


「天音さんを産み育ててくれたお母さんだよ?嫌じゃなければ同居を、せめて近くに住んでもらいたいよ!」


その言葉に、八幡天音が慌てて「お前!お前だってひとりっ子で、東京にはご両親と立派な戸建てがあるだろうが!?」と突っ込むと、「天音さん、三世帯住宅って平気?嫌ならウチの親は放置でOKだよ」と言いやがる。


八幡天音は慌てて「バーロー!立派で素敵なご両親だろうが!大切にしろ!」と注意をすると、ケラケラと笑った八幡初音は「崇くん。ありがとう。でも私はこの一年で一人の楽さを知ったから、近くには住めても同居は無理かしらね」と言う。


「それに天音だって二人きりがいいはずよ?」


この言葉に八幡天音は「母さん、ダメだって」と言うが、永礼崇は「天音さん、本当!?」とニコニコ笑顔で聞いてきて、八幡天音は真っ赤な顔で「本当だよ」と返した。

その仲の睦まじい姿にようやく肩の荷が降りたと八幡初音は喜んでいた。



・・・



永礼家は永礼崇を更生させた女神として二人の交際を喜び感謝をする。


八幡天音は申し訳なさそうに、「アタシの地元は荒れていて、人に自慢出来る生き方をしてないんです」と説明したが、永礼父も永礼母も誰一人として悪い感情を持たずに、「それが?」、「今は?」、「崇と仲良しなのよね?」、「崇を真人間にしてくれたし」と交互に返されて話にならない。


八幡天音が「え?よく過去が暴かれて破談になるドラマとか…」と言うと、永礼母が「ドラマでしょ?」と言うし、直後に永礼父も「ドラマだね」と言う。


永礼崇が「天音さんは現実の人だし」と言えば、永礼母は「そうよ。崇といてくれるなんてありがたいわ」と言い、永礼父が「本当だね。嫌にならないでおくれよ」と言う。


もう敵わない。

後ろ暗い過去を出しても、明るさでかき消す永礼家の前では話にならない。


八幡天音は泣いてしまい、心配する永礼崇に「嬉しいの」、「どうしよう」と言って「もっと嬉しい気持ちで居ていいんだからね」と返されていた。



おまけになるが、八幡天音が来ていると聞いて、三浦菜央と嶋田烈がやってきて付き合った事の報告に自分の事のように喜ぶ中、三浦菜央が「ねえ崇?」と声をかけて永礼崇が「どうしたの菜央?」と聞き返す。


「クリスマスの夜にラジオ聞いてた?」

「うん。俺はラジオ派だからね。天音さんといる時に聴いたよ」


「お、なら菜央の手紙を聞いたか?」

「烈?手紙?」


このやり取りに八幡天音は嫌な汗が背中を走る。


「あれ?本当に聴いてた?崇と天音さんの為にメールしたら読み上げて貰えて、崇の好きなPowder Snowをリクエストしたんだよ?」

「あー…?んー?聴こえた気がした。あれ、菜央だったんだ。ありがとう」


微笑む永礼崇とは別で、八幡天音は真っ赤な顔で俯いていた。

クリスマスの夜は、そういう時以外はラジオの話で盛り上がっていた。

聞こえなかったというのはそういう事だ。


嶋田烈は理由を察してかなりマイルドにして、「なるほど、菜央のメールよりイチャイチャのが先だったんだな。菜央の願いが通じて良かったな」と言うと、三浦菜央は八幡天音の顔が赤い理由を理解して真っ赤になっていた。


その後で「なあ菜央、メール読んでやれよ」と嶋田烈が言うと、「恥ずかしいよ!」と言ったのだが、永礼崇から「天音さんが喜ぶと思うから頼むよ菜央」と頼まれると、「うぅ…。立派な文章じゃないから恥ずかしいのに。絶対に録画とかしないでよね」と言った後でラジオに送ったメッセージを読み上げた。


八幡天音は「嬉しい」と言って泣いて三浦菜央に何度もありがとうと言っていた。

最後には感極まって抱きしめ合うと三浦菜央も泣いていた。

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